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DQ1長編小説―ハルカ・クロニクル

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Chapter-4 第16話

 
前書き
前回のリベンジから。 

 
Dragon Quest 1 ハルカ・クロニクル

Chapter-4
太陽と雨
第16話

目を覚まして、ローラ姫と会話して数時間後、ハルカはベッドから降り、いつものアンダーシャツ、ズボン、兜、鎧、ブーツ、グローブを身に着けた。
シャツとズボンは綺麗に直されていた。
そして、国王のいる、謁見の間へ向かう。
「おお、意識を取り戻したか、勇者ハルカよ」
「ご迷惑をおかけいたしました」
「いや、いいんじゃ。そなたが血だらけで倒れていた時は驚いたが、生きておると知って安心したぞ。そなたはかろうじて逃げてきたんだな」
「ええ。お見苦しいところを…」
ハルカは国王に対して、様々な意味ですまないことをした、と反省していた。
もう少し早く逃げていれば、と思った。
「気にしなくてよいぞ。負けたくないという気持ちもあったであろう。しかし、逃げることも必要だ。勇者ハルカよ、一刻も早く竜王を倒して欲しいという気持ちもわしにはある。しかし、焦って竜王と対面する前に命を落としてしまっては元も子もないからな。……焦りは禁物だ」
「はい。では、慎重に…」
ハルカは立ち上がろうとしていた。しかし一瞬、体が痛み、よろけて転んでしまった。
「今は完治はしておらん。数日間の間、ここで休んでいくが良い。今行っても、今以上に悲惨な結果を生みかねない」
「……そうですね」
ハルカは苦笑いを浮かべながら体制を整えた。
(本当、まだ体が痛いな。……僕はまだ弱いというのだろうか。まあ、悩んでも仕方ない、休養しつつ、少しでも鍛えなおさなければ)

そして。
ハルカは休養していた。休養中でも剣術や呪文の練習は行っていた。ラダトーム城に篭りきりだった。
体が鈍ってはいけない、いや、より強くならなければならない、そんな気持ちがハルカにはあった。
スターキメラ・ルヴァシド戦での敗北は、セサヴァー相手に敗北したときより、嫌悪感がひどかった。
(もしかしたら、僕から親を奪ったのは……いや、違うかもしれない。しかし…少なくとも、あいつは関わってはいる……!)
それが恨みなのか、それとも別の悪い感情なのかはハルカにも解らなかった。

そして、ハルカの怪我は完治し、準備を行った後、旅立つこととなった。
城の正門前。ローラ姫はハルカの腕にしがみついていた。
「ハルカ様……」
「大丈夫。僕はもう逃げないから」
ローラ姫の心配にも、ハルカは笑顔で返した。
「ゴメンね。でも僕は行かないといけないんだよ」
「……解ってます。何かあったら……」
「ええ。戻ってきますよ。今度はしくじらない様にしなければ」
ハルカはローラ姫の頬に口付けをすると、「行ってきます」と声をかけた。
「ハルカ様!どうかご無事で!」
「ああ」
ハルカはローラ姫に向けて、精一杯の笑顔で手を振った。

ラダトームから出たハルカ。ローラ姫に見せた笑顔もすっかり消えていた。
ハルカの足は速まる。魔物には目もくれずひたすら歩き続けた。

3日後、再びドムドーラ周辺へたどり着いた。
まずは周辺でいくつかの魔物を倒した。
影の騎士には少してこずったので、倒した時はチッと舌打ちをした。あいつは僕の攻撃を良くかわすんだ、と。
ハルカは自分でもおかしいと思うくらい何体も魔物を倒していった。
体力が減れば薬草と食料で、魔力が減ればローラ姫から貰った祈りの指輪で回復、と言う感じにひたすら戦っていた。
(僕は……狂っているのかな)
鎧の騎士の残骸を目の前にして笑うハルカはそう思った。
ただ、ルヴァシドに負けたのが悔しかっただけかもしれない。
……しかし、ドラゴン・セサヴァーに敗北した時よりひどい嫌悪感を感じていたのが気になる。
体に受けたダメージの量か?相手した時の体力のすり減り具合か?どちらもルヴァシド戦の方が大きかったが。
(とにかく、あいつは倒さないと)
ハルカはしばらくし、ドムドーラへの突入を決めた。

どこかドムドーラは以前より異臭がひどい気がした。
「…また来たか。弱い勇者め」
ルヴァシドはケッケッと笑う。
ハルカは黙って、ルヴァシドに斬りつけた。
「!?」
ルヴァシドは避けきれずに傷を負う。
「……何にせよ、僕は貴様を許さない。貴様は、僕の親の命をを……奪ったのだろう!?」
ハルカは思い切りルヴァシドを睨み付けた。ローラ姫が見れば引いてしまうほどの鋭い目をしていた。
「……お、俺じゃない!まあ、お前が勇者ロトの血を引く人間だとは見抜いて、命を奪おうかとは思ったが」
「なら、許さない」
ハルカはブツブツと何かを呟き始めた。
すると、ハルカの剣が赤く光り始めた。
「ふん、俺にはお前は一生勝てないさ」
傷を負ったものの、ルヴァシドはまだ余裕の表情だった。
「……僕は貴様に勝ってみせる!……」
そもそも勝たなければ竜王軍は倒せないのだ。ハルカは赤く光った剣を掲げた。
そして、何もいわず、ルヴァシドを十字に切り裂いた。
「なあっ!?痛い痛い!!お前は剣に一体何をした!ギラか!?ギラは俺には効かないはずだ!…毒か!?そんなはずはない!けど、焼ける焼ける!あああああああああああ!!」
ルヴァシドは耳を劈くような悲鳴を上げた。苦悩の悲鳴だ。
ハルカは何も言わず、苦しむルヴァシドを見ていた。
そしてしばらくして口を開いた。
「それはお前には関係のないことだ。竜王軍は皆僕の天敵だ。お前含め、竜王軍の幹部は皆潰さなければならない」
「……畜生!」
もがき苦しむ。苦しめば苦しむほど、体の痛みは激しくなる。ルヴァシドはそれに怒りを感じていた。しかし、もはや限界だった。
ついにルヴァシドは事切れた。どさりとスターキメラの体は地に落ちた。
(……勝った)
ハルカは剣を鞘に収めた。
そして廃墟と化したドムドーラを歩く。

魔物は砂漠にいる魔物より強かった。
ハルカは考えながら戦ったり、時には戦わずに回避したりもした。
しかし、ドムドーラには、情報を得られるような物はなかった。
ただ、妙に不自然に、枯れかけているのに、倒れる気配のない大木があった。
(変な気配がする……しかし、今は……)
メルキド方面へ行こう、そう考えた。
ハルカはルヴァシドは倒したが、気分は晴れないままであった。
そこで先に進もうと決めたのだ。
ハルカはまたここに来るであろうと思いながらも、ドムドーラを後にした。

ハルカはひたすらメルキドを目指す。
魔物も強くなってきたが、ハルカも負けてはいない。
絶対に、という気持ちが強いのだ。
絶対にメルキドにいく、絶対に負けない、絶対に竜王を倒す。
時には血眼になってメタルスライムを追いかけたりもした。
たまたま一匹だけ会心の一撃で倒せはしたが、あとは逃げられてばかりだった。
メタルスライムは固く、素早い。臆病なのかすぐ逃げるのだ。
逃げられるたび、ハルカは一瞬悔しがるが、大人気ないと念じて心を落ち着けるのだ。
そしてキメラ族の新たなる敵、メイジキメラ。
ハルカが攻撃してもべホイミで回復するのだ。しかしハルカは負けじと斬りつけた。
「僕は負けるわけには行かないからな」そう言いながら。

とある夜、ハルカは野宿に最適な洞穴を見つけ、休むことにした。
そして久しぶりに“王女の愛”を取り出す。
「ハルカ様!」
ローラ姫の可愛らしい声。生で聞くより少し幼い気がするが、それもまた好きだ、とハルカは思う。
「よかった。順調なんですか?」
「ええ。何とか。明後日にはメルキドに着きますよ」
「そう。危なかったら戻ってきてくださいね……。私、ハルカ様のあの傷ついた姿、初めて見て……」
一瞬、鼻をすする音が聞こえた。泣きそう(いや、少し泣いているのか?)な感じである。
「……すみません。僕の配慮不足ですね」
ローラ姫を悲しませてしまった。と、ハルカは反省する。
「いえ。ハルカ様があれほど大変な戦いをなさっているんだと改めて知りましたわ。それなのに、私は……非力で、威力の弱い攻撃呪文しか扱えなくて……。少しでもハルカ様の……戦いの力になれれば……良かったのに」
「僕は十分に貴女に元気を貰っています。傷ついた僕を必死で癒そうとしたでしょう?何度もベホイミをかけたというじゃないですか。僕はそれだけでも嬉しいのです。それより貴女を危険な目に合わせないことが、僕の願いです。だから、気になさらずに。僕の無事をお祈りするだけでいいのです。……僕は貴女がいてくれて、本当に良かったと思ってますから」
ハルカはローラ姫を元気付けようと、精一杯声をかける。しかし、言葉に嘘はなかった。
ハルカとローラ姫は、結ばれた関係にあるのだ。
「ハルカ様……私は貴方をお慕いしていますわ」
「僕もです」
「ハルカ様、大好きです」
「僕も、貴女の事が大好きです」
ハルカとローラ姫は同時に“王女の愛”軽く口付けをする。そして会話を終えるのだ。
(この、“RAIL”そしてローラ姫の“PLATINUM”のことも分かりたいですし)
ハルカはこれからも生き抜くことを、心の底から、強く誓った。

次の朝のこと。
メルキド方面には二つの道がある。
ハルカはどちらに行くべきか思案していると、
「南だよ。北はフェイクさ。旅人を迷わせるためにメルキドの兵士が作ったんだ。……かなり昔にね」
と、ひょっこりスライムが現れた。通常のサイズよりは少し大きめと言われている。
「あ、ありがとう。君、ここは危ないよ」
「大丈夫。僕、鍛えてるから。少し呪文も覚えてるし」
スライムは胸を張って(?)、自身ありげに答えた。ハルカは滑稽な姿に見えたスライムにつっこみたい気持ちを抑え、
「そうか。気をつけて。僕も気をつけるから」
と、笑顔で手を振った。
「うん、お兄ちゃんも気をつけてねー。ゴーレムも怖いし」
と陽気な声で弾みながらスライムは去っていった。

さて、ゴーレムとは。
メルキドの門番のはずだった魔物である。
勇者ロトの時代に既に構想は出来ており、それを元に、20年前作られた。
しかし、最近では暴走し、魔物だけでなく、守るべきものだった住民までも襲うようになってしまった。ラダトームにも、ゴーレムに襲われた死傷者の情報が時々流れてくるのだ。
「もう限界だから、誰か破壊してくれ!何、メルキドの兵士は昔より強くなったからゴーレムがいなくなっても困ることはあるまい」
という事が書かれた紙がいつか《キメラ便》にてアレフガルド中にばら撒かれたのだ。
ハルカはゴーレムの倒し方を知っている。
(確か、この妖精の笛が使えるんだっけな)
ローラ姫を救出して帰りにマイラに寄ったとき、ロッコという男の情報を元に見つけ出した妖精の笛。使う時が来たのだ。
ハルカは二つの道のうち、南にあるほうの道を選び、進んでいく。

そこからさらに1日が経過し、ようやくメルキド付近までたどり着いた。
(長かったな…)
ハルカはふうっと息をつく。
(しかし、メルキドの街に入るまでは油断は禁物だ。さて、ゴーレムは強いらしいからな、気をつけなければ。……妖精の笛の力も借りて)
ハルカは頷いて、歩く。

空は濁りつつ、秋空だと分かる青い空だった。
もう、オパールの月も終盤である。
ハルカが旅たったときよりも涼しくなった気候。
しかし、ハルカにとっては、もう長く旅をしているかのような感覚もあった。
一人で黙々と、敵を倒しながら進んでいく。
途中からは愛しいローラ姫の存在はあれど、旅に出るのはハルカ一人である。
(竜王を倒したら、僕はローラ姫を連れて……、いや、考えるのは後にしよう)

そして何もいわずに魔物をなぎ倒しながら、ハルカはメルキドのすぐ近くまで来た。 
 

 
後書き
ルヴァシド戦でハルカが何をしたかはご想像にお任せします(え)。 
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