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宇宙を駆ける一角獣 無限航路二次小説

作者:hebi
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第二章 二話 後ろに向かって前進 前編

 
前書き
がんばって連続更新。目指せ次回は一万字。 

 
ネージリンス宙域

ネージリンスの青い宇宙を静寂が覆っている。
その中をさらに、静かに航行するネージリンスの民間商船【ハルツール号】。
それを、悪名高いスカーバレル海賊団の艦隊が狙っていた。 艦隊はアステロイドの影に隠れてハルツール号が最も接近してくる瞬間を狙っている。

そして、艦隊に気がつかないハルツール号が背を見せたその瞬間、艦隊所属のフランコ級及びジャンゴ級のエンジンが起動。背後からハルツール号を一撃で仕留めるべく最大船速で襲いかかる。

ハルツール号もようやく艦隊の存在を察知し、逃走を図るが既に完全に包囲されており逃げ道はどこにもない。
フランコ級の水雷が発射され、ハルツール号を沈め………なかった。

発射される寸前に、遠方より飛来した極大のプラズマ弾が水雷ごとフランコ級を消し去ったのだ。

そして、アステロイドの影から巨大な銀色の戦艦が顔を出す。
ゼスカイアス級戦艦【ユニコーン】である。



ユニコーン ブリッジ

「やはりここだったか。」

「ええ。やはり、この辺りの宙域に潜んでいたようですね。エサにつられてまんまとおびき出された訳です。」

ユニコーンのブリッジでは艦長の白野が吹き飛ばされたフランコ級のいたところに空いた包囲網の穴を抜けてハルツール号が脱出するのを確認していた。

「敵艦隊、こちらに向けて攻撃開始。第一波、来ます。」

敵艦隊の陣容は、先ほど吹き飛ばしたフランコ級を除くと旗艦であるオル・ドーネ級が一隻と後はジャンゴ級だけである。
ユニコーンの装甲と機動性を持ってすれば、完全にノーダメージに済ませる事ができる。

「無駄だ。そんな盲撃ちでは擦りもしない。」

白野が言ったとおり、ユニコーンは細かくブースターで位置を調節して砲撃をことごとく無駄玉にさせた。

「メテオプラズマのエネルギー再チャージまで、あと五十秒。」

「トドメは派手に行こう。護衛艦はプラズマ砲で沈めてやれ。目標固定した後、集中砲撃。」

ユニコーンのプラズマ砲を狙点を定め、ルートンの的確な照準と発射タイミングによってプラズマ弾が放たれ、護衛艦であるジャンゴ級が無残なスクラップとなる。
不利を悟ったオル・ドーネ級が反転して逃走を図るも、ユニコーンのメテオプラズマの再チャージが完了してしまう。

「メテオプラズマ、再チャージ完了。」

「照準固定。メテオプラズマ、発射!」

再び極大のプラズマ弾が放たれ、逃げをうったオル・ドーネ級のブースターノズルを直撃し、その船体を完膚なきまで破壊した。

「………敵艦隊、全滅。民間商船も無事脱出した模様。」

「バウンゼィより入電。こちらも敵艦隊を撃破。これより合流するとの事です。」

「わかった、と返信しろ。これよりユニコーンはアミタスに帰還する。」



十二時間前 宙域パトロール部隊基地 人工惑星アミタス

ギリアスのバウンゼィの修繕が終了し、いよいよ本格的に海賊退治に参加する事になった白野は、基地司令も兼ねているワレンプス大佐に呼び出しを受けて作戦室へとやって来ていた。

「うむ、来たかね。早速だが、今回の作戦を説明する。」

大佐はディスプレイにこの辺り一帯の宙域図を表示する。

「ここが、現在位置のアミタス。そして、ここが海賊の出没が確認されているアステロイドベルトだ。」

人工惑星とアステロイドの間には一本の航路で繋がれている。

「このアステロイドベルトは海賊が隠れるにはもってこいの立地だ。ネージリンスの海賊被害はほぼこことボイドゲート付近に集中している。
そして、今回の作戦はこちらが用意した囮の民間商船を使って海賊をおびき寄せ、出てきたところを奇襲して一気に撃滅する事だ。だが、同時に宙域パトロールも行わなければならない。これには君の他に志願してきた0Gドッグの艦隊が当たる。ギリアス君はこちらの任務につく。何か質問は?」

「パルパードル大佐は奇襲する側の担当か?」

「ああ。私の空母【グランティノ】と護衛艦のリーリス級二隻。それに、君のユニコーンさえいれば事足りるだろう。」

「了解した。それでは出港準備を始めるからこれで失礼する。」

白野は踵を返して作戦室を後にした。



同時刻 空母グランティノ艦橋

ユニコーンから敵艦隊撃破の報告を受けて、万が一のために後詰に回ったワレンプス大佐はほっと一息つこうとして………オペレーターの叫び声にそれを遮られた。

「大佐、敵の別働隊です!九時方向から三隻接近!艦種照合………ゼラーナ級二隻、ガラーナ級一隻、加えてオル・ドーネ級一隻!あ、ゼラーナ級から艦載機が発進しました!」

「うろたえるな。艦載機部隊は直ちに発進。敵艦載機を迎撃せよ。前衛のリーリス級は敵艦最前列の艦に砲撃を集中。艦載機部隊と連携して敵を撃破せよ。」

ワレンプス大佐の冷静な判断によって、前衛のリーリス級二隻が砲門を開いて迎撃体制をとり、グランティノのカタパルトからは搭載されている艦載機【メテオン】が出撃していった。

「前衛二隻、砲撃開始。艦載機部隊も敵艦載機部隊に会敵。……ところで、ユニコーンへの連絡はどうします?」

「我敵艦隊と遭遇せり。と伝えてくれ。すぐにきてくれるだろう。」

「了解しました。」

モニター上では既にメテオン艦載機部隊がゼラーナ級から発進した敵艦載機部隊に先制攻撃をしかけていた。



ユニコーン ブリッジ

ワレンプス大佐からの支援要請を受信したゲイケットは、すぐにその内容を白野に告げる。

「後詰に回ったグランティノが敵の別働隊と遭遇したようだ。支援要請がきている。」

「グランティノの位置は特定できているな?」

「勿論だ。」

「ならば考えるまでもない。ユニコーン発進。グランティノの支援に向かう。バウンゼィにもその旨伝えて遅くなると知らせておいてくれ。」

「了解した。」

ユニコーンは撃破したフランコ級やその他の海賊船の残骸を突っ切って加速しながらグランティノのが戦っている座標のポイントへと急行する。
複数のアステロイドを、時に巧みな操艦技術で躱し、それでも回避できない時はプラズマ弾で吹き飛ばして全く減速せずに突き進む様は芸術的とさえ言えた。
もともと小マゼランでは存在し得ないほどの巨大戦艦であり、しかもそれをアステロイドという障害物が多い宙域で傷一つつける事なく驀進しているあたり、白野の卓越した操艦技術が示されている。

数えて52個目のアステロイドをスラスターのワンショットでかわすと、ようやく戦闘中のワレンプス艦隊をレーダーが捕捉した。
だいぶ苦戦しているようで、既にガラーナ級一隻とゼラーナ級一隻は撃沈されていたが艦載機部隊は敵艦載機部隊を壊滅させたが補給のために帰艦してしばらく動けず、リーリス級の片方は損傷が激しく戦線から離脱。残った一隻も継戦は可能だがあまり長くは持たないだろう。

「援護砲撃、目標ゼラーナ級駆逐艦。撃て。」

ルートンはいつも通り完璧な砲撃技術を披露してくれた。
レーダー索敵ギリギリのラインで射程内の兵装であるプラズマ砲Lサイズ二門を斉射。計六発の大型プラズマ弾が全てゼラーナ級に吸い込まれるように命中し、爆砕する。

「ワレンプス大佐、助けにきたぞ。」

「おお、救援に感謝する。白野艦長、敵はあと一隻だ。このまま仕留めてしまおう。」

「わかった。………ルートン、全砲門のバーストリミッターを解除。徹底的に叩け!」

「合点承知!腕がなるな!」

ユニコーンのプラズマ砲にかけてあった出力調整のためのリミッターが解かれ、その本来の連射性能を一時的に解放する。

「撃て。」

そして、一角獣の獲物となった哀れなオル・ドーネ級は断末魔のインフラトン光さえもプラズマ弾の赤に塗り潰されて轟沈した。



グランティノ ブリッジ

まだ宙域をプラズマ弾の赤が照らし続けているなか、グランティノの艦橋ではその凄まじいまでの戦闘力を目にしてオペレーターの士官が惚けたような顔をしていた。

「………敵艦隊、全滅。」

「ふう………どうやら、切り抜けられたようだ。しかし、大マゼラン製の艦である事を含めてのあの戦闘力は凄まじいな。」

すると、そのユニコーンから通信が入る。モニターに白野の姿が現れる。

『ワレンプス大佐、そちらは無事だな?戦線から離脱したリーリス級を一隻確認している。こちらの方が距離的に近いから我々の方で基地まで牽引するが構わないな?』

『こちらの損傷は軽微だ。心配いらない。破損したリリース級の牽引は………そうだな、お願いしよう。』

『任された。通信終わり。』

オペレーターの士官は反転してリーリス級の牽引を開始したユニコーンを見て感心したように言う。

「しかし、凄まじかったですな。あれほど激しい砲撃は今まで見た事がありませんでしたよ。やっぱりランカーっていうのは超人の集まりなのかな………」

「そうかもしれんな。とにかく、作戦は成功だ。基地に帰還して報告書をまとめなければならないな………」

ユニコーンがリーリス級に牽引用アンカーを取り付けて乗組員を収容するのを確認してワレンプス大佐はグランティノを反転させて基地へと帰還の途についた。



宙域パトロール部隊基地 アミタス

アミタスのドックには、先ほどの作戦で囮をしたハルツール号が収容され、中からパトロール部隊のメンバーがぞろぞろと下船してきていた。
そして、その横には見事大戦果を上げたユニコーンとグランティノ、そしてユニコーンに牽引されてきたリーリス級と健在であったリーリス級が収容されて補給と整備をうけている。
さらにその向こうのドックには、宙域パトロールに参加したギリアスのバウンゼィとその他の志願した0Gドッグたちの艦が並んで同じく整備を受けていた。

そして、その艦の艦長達はアミタスの酒場に集まって勝利の祝杯を上げていた。

「ハッハー!いやーちょろかったぜ!」

調子に乗りやすいギリアスを白野が軽くたしなめる。

「あまり調子に乗りすぎるな。油断はベテランの足をもすくう。勝って兜の緒を締めよ、という言葉もある事だしな。」

「ん?なんだ、その………かってなんとかかんとかって?」

この時代にはことわざは絶滅しているようだ。嘆かわしい事である。

「わかりやすく言うと………そうだな、一流の戦士はたとえ勝ったとしても油断せずに次の戦いに備える、という意味だな。」

「なるほど………確かに、今考えたらあの時の戦い方にはまだまだよくできそうなところがあったような気もするな。」

話し込みながら白野はウイスキー、ギリアスはソーダを飲んでいるとユニコーンのオペレーター、ゲイケットと主計官のバウトが連れだってやってきた。

「よう、艦長にギリアス少年!楽しんでるか?」

ゲイケットはだいぶ酔っているようだ。

「例によってエーヴァさんがしこたま飲ませたんですよ………」

げっそりした顔でバウトが白野にそう耳打ちする。どうやら、エーヴァの魔の手からゲイケットを救い出してきたようだ。
エーヴァの悪夢を早く忘れたいのか、バウトは自分の専門職の話を始める。

「今回の報酬でユニコーンの財政もだいぶ明るくなるでしょう。私は非戦闘員ですが、そうでない範囲のサポートには全力を尽くしますよ。」

「ああ。今まで通りの活躍を期待している。頼んだぞ。」

「そう言えば、バークが艦長を探してましたよ。」

バークはユニコーンの整備士で、超人的な整備能力を有していて短期間でユニコーンにカルバライヤ名物のディゴマ装甲処理を施したりしてその天才ぶりを示している。

「バークが?なぜ?」

普段はユニコーンの整備庫にこもって何かを開発しているセミ・ヒッキーである。

「何でもユニコーンの画期的な改造プランがあるとかで。」

「ほほう?」

バークは今まで様々な改造プランを提示してきた。その中にハズレはなかったし、ユニコーンの性能はそのおかげで相当高まっている。今回の改造プランもそうである事の期待は大だ。

「おうい、飲めよ。」

視界の端ではゲイケットがギリアスに絡んでいる。未成年の飲酒は禁止です。大人はしっかり止めてあげましょう。
お酒はハタチになってから。

「いつまで酔っている。さっさと目を覚ませ。」

ゲイケットに冷水を飲ませる白野。

「うーむ………」

そのまま酔いつぶれるゲイケット。どうもエーヴァはこの男が酔いつぶれるほど過剰に飲酒させたらしい。外科とはいえ一応医者なのに………
テーブルに突っ伏したゲイケットを置いて、白野は酒場の外に出る事にした。バークを探すためでもあり、そろそろ外の風を浴びたいとも思ったからである。
ウイスキーのボトルは二つ空になっていた。



アミタス 酒場の外

人工惑星にも空はある。それこそ人工のものだが、昼と夜もしっかり入れ替わる。今は、ネージリンスの標準時で午後十一時を回ったところだ。
その人工の星空の下に白野はいた。アミタスはもともと新たな移民地として建造されたらしいが、ちょうど完成直前にスカーバレル海賊団のバカ騒ぎによって宙域の治安が不安定になり、入植が全面的に中止となりその代わりに宙域パトロール部隊の基地として政府が軽く改修したらしい。
だから、内部はそこらの惑星と遜色ない自然が再現されているのだ。

そして、その近くのガード下に白野を探していたはずのバークがいた。何をしているかと思えば、携帯端末を操作して何やら設計図を記しながらどこで手にいれたのか、ハンバーガーをかじっていた。

「よう、バーク。」

「艦長、これ。」

言葉数少なく、バークが渡してきたのは一枚のデータプレートだった。内容を確認すると、ユニコーンの設計図のようだが、決定的に違う部分がある。

「カタパルト………しかもレールタイプか。」

レールタイプカタパルトとは、例を上げればグランティノのカタパルトのように細長いタイプのカタパルトである。
それがユニコーンに搭載できるようにした設計図である。
ユニコーン後部のブースターを改造してカタパルトに仕上げてある。それが伸びているので、ユニコーンの舷側を二本のカタパルトが覆っている形になっている。

「無茶な改造でありながら艦船全体のバランスが全く崩れていない………流石だ。」

「時間さえもらえれば………」

実際にユニコーンをこうしてみせる。そう言いたいのだろう。

「いいだろう。今回の報酬でユニコーンの改造資金も十分用意できる。どこか設備の整った宇宙港で、好きなようにやってみるといい。」

「感謝します。」

ぺこり、と頭を下げるとバークはドックの方向へと去っていった。



しばらく風を浴びていた白野だったが、所持している携帯端末にワレンプス大佐から連絡が入ったので内容に目を通した。

要約すると、ギリアスが参加していたパトロール部隊と遭遇した海賊船に白兵戦を仕掛けた艦があり、その際に捕虜にした幹部クラスから敵のネージリンスにおいての本拠地の位置情報を引き出したという。
そして、政府の全面協力の元で拠点攻略作戦が展開されるらしく、やって来た援軍とワレンプス大佐率いるグランティノを旗艦とした艦隊をメインとした攻略作戦を実行するらしい。

「政府の全面協力か………なかなか面白くなってきた。」

白野は踵を返すと颯爽とした足取りでドックへと向かっていった。ウイスキーのボトル二つ分の酔いなど既に吹き飛んでいた。



翌日、再びアミタスの作戦室にやってきた白野とその他の志願した0Gドッグたちは、ワレンプス大佐から恐らくは最後になる作戦の内容を聞いていた。

「私の艦隊は援軍と共に真正面から攻撃をしかける。つまりは陽動だ。本命は君たち。白野艦長のユニコーンを旗艦として………惑星側面から侵攻し敵の本拠地、放棄された旧移民星【シャンプール】を攻撃する。シャンプール上空の宇宙戦力を全力で排除してくれ。その後、強襲揚陸艇編隊がHLVを投下して宇宙港を確保する。最終的にはシャンプールの地上に建設されたスカーバレル海賊団の本拠地兼補給基地を破壊する。………なにか質問は?」

白野が質問した。

「旗艦はユニコーンが務めていいのだな?」

「勿論だとも。ランカーである君の能力はここにいる全ての人間が承知している。」

「わかった。謹んでその任を受けよう。」

もう一人、志願した0Gドッグの中の一人が質問した。

「シャンプールの側面から回り込んだとして、そちらとの連携は?」

「問題ない。君達が宇宙戦力と戦闘を開始する頃には既にこちらも陽動から転じて全面攻勢にでる。つまりは挟撃、挟み撃ちという事だ。」

最後に一人質問した。

「今回の作戦名は?なにかあるんだろう?」

「そうだな。今回の作戦名はシャンプール攻略戦だ。それでは各自出港準備を進めてくれ。」

イマイチ独創性にかける作戦名が告げられ、0Gドッグ達はアミタスを発つためにそれぞれの乗艦へと向かっていった。

続く 
 

 
後書き
キャロ・ランバースの将来を明るいものにするためのアイデア

敏腕女社長、キャロ・ランバース

スーパーアイドル、キャロ☆ランバース

若手0Gドッグ、キャロ・ランバース

友人とアイデアを出し合った結果、この中のどれかにするという事で落ち着きました。
どれになるかはまだ未定です。 
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