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兄弟対決

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第四章

「幾ら何でもな」
「あの打順はないだろ」
「また二人でいがみ合って打線が機能しないぞ」
「肝心の三番四番がいがみ合ってどうするんだ?」
「これじゃあ今回は優勝出来ないぞ」
「野球だけじゃなくてあらゆるスポーツでも日本に向かって来る国があるんだぞ」
 どの国かは言うまでもない。
「あの国はもう手を叩いて喜んでるぞ」
「ああ、実際にネットでもう勝ったとか言ってるぞ」
 早速そうなっているというのだ。
「これ本当にまずいぞ」
「あの監督何考えてるんだ」
「これは大会投げたな」
「ああ、今回は俺はもう諦めた」
「俺もだよ」
「はい、終わり終わり」
「残念だったな」
 こうしたことがネットでも巷でも言われた、誰もがこれは駄目だと思った。
 その絶望の中で大会がはじまった、すると。
 日本は勝ち進んだ、野球での日本の実力は健在だった。  
 だがその国が問題だった、その勝ち進む中で。
 日本はそのチームに負けた、するとだった。
 これまでもやってきたことだがマウンドに自分達の国旗を差し込んだ、それを見てだった。
 サムライジャパンの面々は顔を顰めさせてこう言い合った。
「またやったよあいつ等」
「日本に勝つと絶対にするな」
「ああ、しないではいられないんだな」
「というか何度注意されたんだ」
 それでもやったのだ、マウンドに旗を突き刺す行為は神聖なマウンドを汚す行為であると認識されかねないのだが。 
 それをした彼等を見て話すのだった。
「何かあれ見る度に嫌な気持ちになるな」
「そうだな、本当にな」
「いい加減あの国と試合するのを免除する権利とか出来ないか?」
「野球だけじゃないからな」
 このスポーツに留まらないのがまた厄介なのだ。
「サッカーでもやったな」
「ああ、オリンピックでな」
 しかも他国が主催しているオリンピックでやらかした、無論ワールドカップでは悪い意味での伝説を築いている。
「柔道にバスケに」
「バトミントンでもだからな」
「それで野球でもか」
「前回も前々回もでな」
「それで今回もか」
「本当にいい加減にしろよな」
 シリーズ全体は順調に勝ち点を挙げている中での嫌な敗戦だった、だが。
 監督はその彼等にこう言ったのだった。
「次だ」
「次の試合ですね」
「その時にですね」
「勝てばいい」
 これが監督が言うことだった、彼は冷静だった。
「それだけだ」
「そうですね、勝てばいいですよね」
「これまでと一緒で」
「こっちはスポーツマンシップを守ってですね」
「そのうえで」
「そうだ、勝て」
 こうナインに告げたのである。
「わかったな」
「はい、それじゃあ次あの国と試合する時は」
「絶対に勝ちます」
 ナインもこのことを誓い合う、雪辱を晴らさんと誓っていた。
 そして秀喜と一郎はというと。 
 二人で無言でマウンドのその国旗を見ていた、そしてだった。
 お互いに顔を見合わせた、二人で無言で頷き合うだけだったが。
 確かに頷き合った、そうしたのである。
 シリーズも準決勝になり日本はそこまで進んだ、その国も。
 その準決勝の前に監督はミーティングの場でナインに言った。 
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