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DQ1長編小説―ハルカ・クロニクル

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Chapter-3 第11話

 
前書き
勇者ハルカとローラ姫は相変わらずラブラブですすいません。 

 
Dragon Quest 1 ハルカ・クロニクル

Chapter-3
ローラ姫
第11話

朝、賑わい始めた街を、手を繋ぎながらゆっくりと歩くハルカとローラ姫。
ローラ姫はあの水の羽衣を着ていた。
「この羽衣とももうすぐおさらばと考えると少し寂しいですね」
と笑いながらローラ姫は話していた。気に入っていたようだ。
「まあ、私は戦闘能力の皆無の、ホイミとバギしか呪文が使えない姫ですもの。仕方ないですわ。でも、楽しかったです」
「そうですか。僕も楽しかったです」
「まあ、ハルカ様ったら」
二人は頬を赤く染め、笑いあう。その姿はまるで、
「恋人同士みたいだね」
である。ちなみに、この言葉は……ロッコのものだった。
「僕達みたいに」
「そうね。でもあなたはもっとしっかりしなさいよ」
「あはは…」
隣にはナナもいた。しっかり者で少し気が強そうな女性である。
ナナに押され気味のロッコだが、仲はよさそうにしている。ナナも「私がついてきゃ」と小声ながら楽しそうに言った。
その様子を、ハルカとローラ姫はやはり見ていた。
「……ですって、ハルカ様。照れますね。でも嫌な気は全くしないんですよ」
「ええ。僕もです」
そういって顔を見合わせ、笑いあう。
ロッコとナナ以外の街の人々もハルカとローラ姫を見ていた。
仲をからかうものはいたが、二人を妨害しようとする者はいなかった。
朝のさわやかな風が街を駆け抜ける。
「気持ちよいね」という声も聞こえてくる。
ようやく朝は涼しくなってきた、と感じる。……ただし、朝は。
昼は相変わらずの気候である。竜王軍が猛威を振るってから、毎年のように異常気象が起こるのだろう。
「あ、着きましたよ」
「はい、ハルカ様」

仕立て屋の男はハルカとローラ姫を大いに歓迎して出迎えた。男は得意げにドレスを掲げる。
「ほら、ドレスだ。仕立て直したんだんだが、どうかね?」
「まあ!」
それは二人が思っていた以上の出来だった。輝くレモン色のドレス。
「前より綺麗になってますわ!」
ローラ姫は明るい声で軽くポンと手を叩く。
「良かったですね、ローラ姫」
ハルカも大満足の出来であった。
「ええ。本当にありがとうございますわ。感謝しきれないくらい」
「喜んでくれて嬉しいぜ。さて、着替えるかい?」
「はい!」
ローラ姫は少し名残惜しそうに水の羽衣を見ると、綺麗になったドレスを見て微笑んだ。
そして、ローラ姫は再び、ドレス姿に戻った。
「水の羽衣、ありがとうございました。少しの間だけでしたが、とても着心地が良かったです」
「そうか。水の羽衣は貴重なものだからな、ここで預かっているんだ。すまないね」
「いいんですわ。ね、ハルカ様」
「ええ。ありがとうございました!綺麗な水の羽衣姿と、美しいドレス姿を見られただけでも僕は万々歳です。また何かあればよろしくお願いしますね!」
「おう!ハルカ!必要だったらいつでも来いよ!安くしておくから!」
仕立て屋の男はハルカに対し、親指を上に向けた手を前に出した。“グッドラック!”の印である。

再び手を繋いで街を歩く。すると、ローラ姫はきょろきょろと辺りを見回した。
「ここを訪れたのは一年前なのに、かなり変わっていますわ」
町並みのことである。賑わった町並みをよく見ると、ペンキの塗り残しや看板の跡が見つかる。店が以前より入れ替わっているということである。ハルカは最近初めて来たばかりなので一年前の姿はよく知らないが、ローラ姫の言葉は理解できた。
「そのようですね」
と、その時であった。
「ねえ、ハルカ様、これは何ですの?」
目を輝かせて、ハルカの半袖を引っ張って見る先は、お菓子屋だった。
「私、あのお菓子が食べたいですわ!」
「ローラ姫……」
苦笑いをしながら、心底では(可愛い)と思っていた。
「私、いつも城お仕えのパティシエのお菓子しか食べたことありません。城下町のお菓子も食べさせてもらえなかったのです」
「お姫様育ちだから……でしょうか」
「ええ。だから、ねえ、ハルカ様!」
「分かりましたよ。行きましょうか。――そうそう、あれは、マカロンというものですよ」
「まあ、美味しそう!少しだけでいいです、食べさせてください!」
幼い子供のように目を輝かせて見つめるローラ姫の姿に、ハルカは微笑んだ。
「分かりました」
お菓子屋に足を運んだ二人は、数個のマカロンを買った。そして、お菓子屋に置いてあるベンチで二人、食べた。
そのマカロンは生地はもちろんのこと、クリームも程よい甘さで、とても美味しかったのだ。
「美味しいですわ!私、お菓子は食べるのですが、こういうお菓子は初めてですの。本当に美味しい!」
「そうかい。あたしは嬉しいよ。お姫様の口に合うマカロンを売っているってことになるからね」
ふくよかな体型のお菓子屋の女は得意げに胸を張った。この言葉はハルカに向けて言ったものである。
ハルカも笑顔で返した。
「僕も初めてですが、マカロンってこんなに美味しいお菓子だったのですね」
「そうだよ。実は今日初めて売り出したんだ。気に入ってもらえてうれしいよ。……ローラ姫、ご満足でしたか?」
「ええ!」
ハルカはお菓子屋が提示した値段より一割増のお金を置いて、「ご馳走様でした!」と去ろうとしていた。
「おや、多すぎるよあんた。いくらお姫様と一緒で、このマカロンが美味しかったからといってもね。こんなに貰っちゃ悪いよ」
「いいんですよ。僕達は満足です」
「いや。お返しするよ。気持ちだけ受け取っておくよ」
と、お菓子屋の女はハルカに余った分のお金を返した。女は嬉しそうだった。
「そうですか。では、僕達はこれで」
「ああ。元気で頑張ってくださいな!」
女とハルカとローラ姫は大きく手を振った。
「……あの二人、お似合いのカップルみたいだね。あの勇者の男も、なかなかのイケメンだし」

二人は水の都、リムルダールの町を歩く。水路も見える。水路では、ボートで運搬する者や、釣りをする者もいる。
(そういえば、ここは水の都だったな。……竜王軍が滅べば、この街ももっと美しくなるだろうね)
ローラ姫を救って、ハルカの心に変化はあった。ひたすら独りで戦うだけの旅から、一人の女性と共に旅をするに変化して、心に温かいものが流れた。しかし、竜王軍を倒さなければならないという気持ちは当然のことながら失ってはいない。
「……そろそろ行きましょうか」
「城に?……私、マイラに行きたいですわ。温泉に入ってみたいですの。……ダメですか?」
「行きますよ、マイラに」
「うれしゅうございますっ」
「では、行きましょうか」

ハルカはローラ姫をお姫様抱っこで抱えると、未完成のルーラ、浮遊術を用いて、その日の夕方にマイラに到着した。
器用に戦闘を行ったり(ローラ姫もバギでハルカの戦闘の手伝いをした。威力は低いものの、ダメージは確実に与えていた)、暗闇ではレミーラを強化した術で魔物たちを遠ざけつつ、進んでいった。
ハルカ、そしてローラ姫は歓迎された。
マイラの街は一気に沸いた。屋台の数は以前よりは少し減った程度だったが、まだ残っていた。
「おお、ローラ姫だ!さすがマイラの英雄!」
「格好いいよ!勇者ハルカ!」
「まあ、本当に美しいわね、ローラ姫」
「というかなんだか勇者ハルカと似合ってるな」
……ここでも、ハルカとローラ姫の仲を高く評価するものがいた。
中には怪しげな老婆もいて、
「わしの思っていた通りじゃ」
と、なぜか肯いていた。
ローラ姫は少し恥ずかしそうにハルカを見つめる。
「大丈夫。貴女も歓迎されているのですよ」
「ええ。解っていますわ」

温泉施設と宿屋の近くまで来たその時、見たことのある若い女性が走ってきた。後ろにはセリアもいる。
「あ、ハルカさん!来たんです!夫、ダンからの手紙!生きていたんです!私嬉しくて……きっと、ハルカさんのおかげだと…」
クレアが嬉しそうに走ってきた。ダンから届いた手紙を片手に。
「いえ、僕は何もしてませんよ。僕はダンさんに会っただけです」
「いいえ。あなたがダンに会ったから、ダンが私に手紙をくれたのだと思うのです」
「手紙貰ってからのクレアは生き生きしててねえ。おや、その少女は……ローラ姫かい!ハルカ、あんたは格好いいよ!あたしの旦那とは大違いだ。ラダトームに帰ったら皆大喜びだろうね。将来はローラ姫の旦那さんかい?」
セリアのいきなりの発言にハルカとローラは一気に顔を赤くした。
「え……あ…………その……僕達は……」
「……」
ローラ姫はハルカの胸に顔をうずめるようにして俯いた。セリアは楽しそうに笑い、
「おやおや、否定はしないのかい。若いっていいねえ」
と言った。
「セリアさん……」
クレアは隣で恥ずかしそうに苦笑いをした。
「おっと、今日は宿屋で泊まるのかい?」セリアは一呼吸おいて落ち着きを取り戻すと、そう言った。
「ええ、まあ。温泉にも入る予定です」
「そうかい、じゃ、楽しんでおいてよ!」
「ローラ姫もきっとマイラの温泉、気に入ると思いますよ」
「はい、入る予定ですわ」
「では、突然話しかけてきてすいませんでした。ハルカさん、ローラ姫、旅のご無事を祈ってます!」
クレアはハルカ達に頭を下げると、セリアと共に街中へ去っていった。
「ハルカ様、なんだかドキドキしてます」
ローラ姫はセリアの言葉が頭に残っているようだった。ハルカも照れ笑いをして頷いた。

「ハルカ様、何をしていらっしゃるの?」
ハルカは温泉施設の塀の近くの隅を鋭い石で掘っていた。
「探しものですよ……あった!」
古びた宝箱を開けると、そこには笛があった。美しい笛だ。
「妖精の笛ですよ。不思議な能力を持つ笛です」
「素敵な笛ですわね。旅に役立つのですね」
「メルキドのゴーレムを眠らせる為、とリムルダールに住む人が言ってました。妖精の笛は勇者ロトがルビスの呪いを解く為に解いた笛と聞きました。ただ、詳しいことは分からないんですが、聖なる者は目を覚まし、悪なる者は眠りにつくという話は僕も聞いたことがあります」
「ハルカ様なら使いこなせるのですね!」
「ええ。そうですね。さて。温泉に入りましょうか」
「はい!」

2人が温泉に入る頃にはすっかり夜になっていた。
温泉は混浴である。しかし、抵抗を持つ人の為に、水着を貸し出している。ハルカもローラ姫も、水着に着替え、温泉に入る。
「すいませんハルカ様、あまり派手な水着でなくて」
「いえ、お似合いで素敵ですよ」
「ハルカ様こそ」
ローラ姫はフリルの付いた清楚なワンピース水着、ハルカは青色のハーフパンツ型水着を着用していた。ハルカの上半身は傷だらけの筋肉で引き締まった体(細マッチョ寄り、だろう)で、ローラ姫は言葉を発しながらドキドキしていた。
他に人はいなかった。……いや、呼び込みの若い女がこっそり覗いてはいたが。ハルカが問うと、女は「監視よ」と誤魔化していた。
「ハルカ様、本当に、ありがとうございます。本当に、ありがとうございます。何度もお礼を言いますが…」
ローラ姫は自分がハルカによって助け出された事を思い出す。傷だらけの体、高い運動能力。そして、凛々しい顔と自分に見せた優しい笑顔。また、自然とお礼が言いたくなったのだ。
「いえ。どういたしまして」
「ハルカ様……幸せです」
「僕もです」
「温泉も初めて入りました。本当に気持ちいいですね」
「そうでしょう」
2人は幾つか穏やかな会話を交わした後、着替えてから、宿屋へと戻った。

宿屋の部屋。
まだいつもの鎧とドレス姿のハルカとローラ姫である。
しばらくの沈黙(気まずくは無い。お互いドキドキしている)の後、ローラ姫が口を開いた。
「ハルカ様、そろそろラダトーム城に戻るのですか?」
「ええ。宿屋で寝るのはおそらくこれで最後かと」
「……ハルカ様!」
思わずローラ姫はハルカに抱きつく。
「もっとハルカ様と一緒にいたい!……でもいけないなのは分かっています。私はホイミと威力の弱いバギしか使えません。ハルカ様のように戦えないのです。……ハルカ様は竜王軍を倒さなければならないのですから」
「ええ。僕も貴女ともっと一緒にいたかったですよ。でも、竜王軍を倒す為にまた僕が一人旅に出ても、僕は貴女のこと、想っています」
「ハルカ様……」
ハルカはローラ姫を抱き寄せる。
「僕は、貴女のことが大好きです」
「……私もですわ!」
とうとう、我慢できなくなったのだ。心に秘めていた気持ちを。お互い。
そして、二人は、そっと、口付けを交わしたのだった……。

そしてその晩も、同じベッドで手を握り合い、眠りに付いたのであった。

翌朝、今度はマイラの宿屋の主人に
「昨夜はお楽しみでしたね」
と言われ、赤面する勇者ハルカとローラ姫の姿があった……。 
 

 
後書き
告白シーンとかキスシーンとか書いてしまいました。
CPモノだとラブラブに書いてしまう私でした。 
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