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【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス

作者:海戦型
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役者は踊る
  第二一幕 「非凡人的凡人」

 
前書き
暫くエネルギーチャージのためにちょっと更新止めます。1週間以内に帰って来るけどね。もう40幕位まで書き終わってたりする。


この小説書いててよく思う。
IS原作の世界って謎だらけだ・・・ 

 
前回のあらすじ:病弱少年、知らないうちに囮にされる


突然だがIS学園は2年生より学部選択が存在し、その中にIS研究学部というものがある。
IS研究学部とは言葉そのままIS研究・・・つまり主にISに使われる技術や構造などを理解し、発展させるための学部だ。特に整備科は実際にISに触れてメンテナンス・改造などを行う科であり、その技術力は学生とは思えないほどであるという評判だ。
その話を聞いたシャルロット・デュノアは早速自機に“ある改造”を施すため整備科の扉を叩いた。事情を聴いた整備課の面々はノリノリでこれを承諾、他にメンテルームを利用していた人たちも巻き込んで“ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ”の改造に取り掛かっていた。

「出来た?」
「うん、ウィングのPIC固定値は設定し終わったよ」
「追加の装甲板のインストール完了!思ったよりバススロット食わなくて良かったわ~」
「ジョイントの具合が良くないなぁ・・・ちょっと形状を見直した方がいいかも」
「MRSはどう?弐式のを流用できそう?」
「実働データが足りない・・・実際に撃ってデータを取らないと、難しい」
「射出角と装甲の位置に誤差がないかシミュレートします!」

慌ただしく人が行き交い、次々に口頭での報告が飛ぶ。皆曲がりなりにも最新鋭のISを弄れるとあってか生き生きとしながら作業を続けている。参加者の中には簪も混ざっており、最初からメンバーの一人であったかのように溶け込んでいる。ユウも見学がてら参加しており、素人ながらなかなか手際の良い作業を見せている。

「それにしてもいいんですか?」
「何が?」
「もちろんラファールの事ですよ。デュノア社の試作機なんでしょ?開発部の許可は得ているんですか?」

とぼけるシャルロットに作業しながらユウが聞く。
デュノア社とはフランスに本社を置く大きなIS企業だ。ISに関しては世界第三位のシェアを誇り、第2世代機である“ラファール・リヴァイヴ”はその扱いやすさと汎用性の高さから非常に高い評価を得ている。
が、現在デュノア社は第3世代機の開発が難航しており、欧州連合の統合防衛計画『イグニッション・プラン』の第3次次期主力機選定にも参加できていない。つまりそんな中に開発されたラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡには社の存亡がかかっているかもしれないのだ。イギリス、ドイツ、イタリアの3国に大きく後れを取っているデュノア社にとって試作機であるカスタムⅡはかなり大事な機体の筈。
シャルロットはその姓から分かる様に社長令嬢(本人の話によると養子らしいが)でありテストパイロット、更にはフランス代表候補生を務めているからそれなりの権限はあるだろう。が、だからといってこんなに簡単に改造してしまっていいのだろうか?その疑問にシャルは、あっけらかんと答えた。

「良くは無いよ?」
「・・・ゑ?」

・・・このお嬢さんはサラッと何を言っているのだろうか?デュノア社は先ほども言ったようにかなりの大企業だ。あれだけ大きな企業の意向を無視すれば後後どんなことになるか分かっているのか?と周囲が青い顔をする。
下手をすれば首を切られるどころか場合によってはもっとひどい事をされる可能性さえある。が、シャルロットはいたって涼しげな、そしてとてもいい笑顔でサラッと言い放った。

「でもいいんだよ。社長(あのひと)は僕に逆らえない。弱みを握られているからね♪」
「よ、弱みって・・・それ、脅迫・・・?」
「まさかぁ!唯の“身から出た錆”ってやつだよ。あの人も叩けば埃が出る人だもんねぇ、ふふふ・・・」
((((こ、この娘・・・黒い!))))

シャルロット腹黒説、浮上。
なお、施した“ある改造”の内容は、今は秘密にしておこう。



 = =



さて、シャル達が何やら格納庫でいろいろやっている間に、校舎内ではベルーナが遂に追い詰められようとしていた。
それはそうだ。病弱で体力のないベルーナが元気凛凛高女子力の学園生徒達から長く逃げられる訳もない。着ぐるみパジャマの刑から必死に逃げるベルーナには、もはや逃げ込める場所は限られている。保健室か警備室、又は職員室の三つならそこにいる大人が守ってくれるだろう。しかし―――

「どう?ベルーナ君はいた?」
「ううん、こっちには来てないよ?」
「もう・・・せっかくベルーナ君用に秘蔵のコスプレ衣装を引っ張り出してきたのにぃ~!」
「す、スクール水着・・・それ着せるの?マヂで?」
「大マヂよ」

(先回りされてるっ!?)

残念ながらそれらの場所へ行くルートは軒並み欲望全開の生徒達に閉鎖されていた。
ベルーナは既にフラフラの身体を引きずりながら自問自答する。

「・・・・・・ッ!!」

僕、何か悪いことしたっけ?・・・ああ、あの二人を邪険にしたことがあったな。結局自分の捲いた種か。だが、それにしてもこの人数で追い回すことは無いじゃないか。
ああ、気分が悪い。吐き気とめまいがしてきた。ついでにもう息が続かない。
無理やり着ぐるみパジャマを着せられるなどベルーナはまっぴらごめんだった。僕は着せ替え人形ではないのだから。そしてなによりあの人たちは、なんか怖い。普通の人からは感じられない異様な気迫、鬼気迫る目、口元から垂れる欲望の涎、捕まったら他にも何かされるかもしれないという得体の知れない恐怖がベルーナの身体を動かした。地元の学校にも少数ながら似たような女子がいたが、いったい何が彼女らをそこまで掻き立てているのか・・・ある種の狂気さえ感じる。
だが、このままでは近い将来に・・・

「・・・!」

いや、待てよ。ひょっとして、あの人なら僕を助けてくれるかもしれない。そう――

―――学校内でもなんか困ったことあったら頼っていいし―――

――サトーさんなら!!

その希望に一縷の望みに全てを懸けた、ベルーナの最後の逃亡が始まった。



 = =



「待てぇぇぇぇぇ!!」
「あ、佐藤さーん!!ちょっとベルーナ君捕まえて~!!」
「・・・はぁ?急に何を・・・って、おぉう!?」

廊下から聞こえた突然に何事かとそちらを向くと、何故か疲労困憊(ひろうこんぱい)のベル君。ベル君は私の顔を見るや一直線に向かってきて、私の背中の後ろに隠れてしまった。後ろから掴まれた服からベル君の震えが伝わってくる。
そしてベル君を追いかけてきたと思われる軍集団があっという間に私を取り囲んだ。え、なにこの状況。リンチ?それともエロ同人みたいに乱暴されんの?

「佐藤さん!大人しくベルーナきゅんを差し出しなさい!さもないと・・・」
「そうよ佐藤さん!独り占めはずるいわ!」
「佐藤さん・・・これもベルーナ君と友好を深めるために必要な事なんだよ?さぁ、ベルーナ少年を差し出しなさい」

・・・なんで皆苗字でさん付けなの?あれですか?呼び捨てにするほど親しみを感じないんですか?ちょっと悲しいな、グスン・・・などと言っている場合でもなさそうだ。皆からは得も言われぬ気迫のようなものが感じ取られるため、ここはベル君を大人しく差し出した方が得策なのだろう。それがベターで普通の無難な行動だ。だが・・・

「・・・・・・っ」
「・・・・・・大丈夫だよ、ベル君」

怯えるベル君の頭を優しくなでてあげる。手が触れた瞬間少しびくっと体を震わせたが、それ以上拒もうとはせず大人しくなでられる。周囲から「あぁ!」とか「ずるい!」とか「私も!」とか言う声が上がるが無視無視。
可哀想に、皆に追い掛け回されたことで精神的にも肉体的にも追い詰められてるようだ。そんな同級生が助けを求めに来たというのなら、それに応えない訳にはいかない。それにみんなに言いたいことも出来たし。
慈しむような目でベル君を見た後、改めて正面の集団――具体的には首謀者と思われるワンサマーとのほほんサンを睨みつける。若造どもめ、精神年齢40歳越えの私が直々に説教してくれるわ!

「そこの首謀者二人!!よくベル君を見なさい!怯えちゃってるじゃないの!」
「う、で、でも・・・」
「だってべるるん逃げるんだも~ん・・・」
「デモもストも無ーい!嫌がってるから逃げてるんでしょ!?こんな大人数で追い掛け回されたら誰だって怖いはずだよ!!ほら、こんなに震えて・・・可哀想だと思わないの!?こんなの虐めと一緒だよ!!」

理由がどうあれ、本気で嫌がっている相手に行為を強要するのはされる本人にとっては苦痛でしかない。子供のうちならまだしも、高校生くらいになると笑って済ませられないことだって存在するのだ。何せ体力的にも成長した学生達だ。一時の場の空気に流されて冒す過ちは、時に驚くほど重い責任を伴う。

「う、そう言われると・・・」
「そこまで気が回らなかったかも・・・」
「他の皆もだよ!?ベル君が病弱なの解っててこんなことをして!仲良くなりたいのは分かるけど少しはベル君の事を考えて行動しなさい!皆は楽しくてもベル君はちっとも楽しくないんだよ!?」

私の言葉に皆が皆思い当たる点があったのか申し訳なさそうに俯く。ベル君の震えも少しずつ治まってきているようだ。ふっふーん!伊達に精神年齢四十路超えてんじゃないのよこっちは?言葉の重みの違いを思い知ったか!とばかりに大して大きくもない胸を張る。・・・自分で言っててちょっと悲しい。いいもん、形重視だもん。

「申し訳なく思ってるならベル君に謝りなさい!」
「う~・・・ごめんねべるるん?みんなで悪乗りして・・・お詫びにこのパジャマあげるから」
「・・・・・・いらない」
「ゴメン、ベルーナ・・・俺、お前のこと考えてるつもりだったのに・・・」
「わ、私も・・・」
「ゴメンなさい!」
「許してベルくん!」

ベル君は私の背中から顔だけ出して、軽く目を細め、再び私の後ろに引っ込んでしまった。
二人の落胆のうめき声が響く。

「だ、ダメか・・・うう」
「今更都合よすぎる、よね・・・」

「皆何言ってるの?ベル君はもう気にしてないよ?」

「「「「・・・へ?」」」」
「ベル君さっきちょっと目を細めたでしょ?あれは“別に気にしてない”って時の顔だよ。ベル君の心の広さに感謝するんだね!」

・・・・・・・・・・・・

「・・・ヘァ!?」
「ファ!?」
「ち、ちょっと待ったぁ!!」
「佐藤さん、今のそれだけでベル君が何考えてるか分かるの・・・!?」
「え?何かおかしい?ルームメイトなんだからそれ位分かる様にならないとダメでしょ?」

あっけらかんと答える佐藤さんに周囲は愕然とする。あの一瞬の目の動きだけでそこまで分かっちゃうの?いやむしろ“ルームメイト”ってそこまで出来るのが佐藤さんの“普通”なのか・・・?
この周囲との認識のずれ、佐藤さん自身は全く自覚してない。なまじ前世の記憶など持っている所為か、周囲の感情の機微に敏感な佐藤さんは今まで自分が浮きすぎないようにとこれくらいの事は当たり前にやってきていた。その所為か、いつの間にやら佐藤さんの脳内でこれは当たり前の行為だ、と固定づけられていたのである。まさにモブ(笑)!
周囲が思わずゴクリと唾を呑む。この女、ベルーナ君に頼られるわけだ・・・!私たちうわべだけの連中とは“格”が違う!すごい・・・すごいコミュ力だ!

「佐藤さんスゲェ・・・」
「佐藤さんパネぇ・・・」
「佐藤イズグゥレイトォ・・・」
「は?え?何よ皆急に・・・なんで跪いてんの!?ちょっとやめてよその崇めるようなポーズ!恥ずかしいから!!」

周囲の皆は佐藤さんをまるで救世主を崇めるがごとく次々に頭を垂れていく。当の佐藤さんは状況を飲み込めずただただ当惑するばかりである。ちなみに後ろのベル君はドン引き中。

「師匠と呼ばせてください!」
「姉御って呼んでいいですか!?」
「佐藤御大ばんさーい!!」
何故(なぜ)!?何故(なにゆえ)!?何事ぞ!?」

その日から佐藤さんは妙に周囲から尊敬の目を向けられるようになり、更にベルとも会にしつこく付きまとわれることになったのであった。また、密かに「ベル君」という呼び名が学校に広まり始めた日もこの日であったとどこかの新聞部の情報通は語る。
なお、佐藤さんは誰も名前の方を呼んでくれないことを寂しく思ってかベルーナに「名前で呼んでくれない?」と頼んだのだが・・・それがまた後に面倒事を呼ぶことになるとは、疲れて頭が回らなかった佐藤さんには予見出来ぬことだった。
 
 

 
後書き
日常編はいったんここで区切ります。

ところでアニメによるとIS学園って1学年8クラスらしいですね。2,3年も同じで1クラス30人が基本だとしたら全校生徒720人。土曜授業もあるようで。世界の軍事技術最先端を担うにしては人数が少ないように見えます。(ISの数が限られているのが原因かもしれませんが)ま、学園に通わなくともISに関わるのは不可能ではなさそうですが。男性IS技術者は例外なくその類でしょうし、候補生たちも一夏がいなけりゃ来ませんでしたってのがいるし。
IS知識教えるにしても卒業生がそれなりの数揃えばわざわざ中立のIS学園に通わせずとも自国で教育は出来るし・・・はっきりとは分からないけど、1組のメンツを見る限り日本人が大多数を占めているっぽいところを見ると、案外原作世界ではIS学園はそこまで重要な教育機関でなくなりつつあるのかもしれません。
という無駄で無意味な考察をしてみたり。 
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