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神々の黄昏

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第三幕その五


第三幕その五

「そのうえであらゆることを教えてくれた」
「とはいっても」
「恩には感じていないのだな」
「そうだ、感じたことなぞ一度もない」
 そのことも家臣達に話した。
「大嫌いだった」
「そうか、やはりな」
「それは」
「その通りだ。感じたことなぞない」
 また言うジークフリートだった。
「全くだ」
「そしてだ」
 ジークフリートの言葉は続く。
「弟子は彼のできなかったことを成し遂げたのだ」
「成し遂げたのか」
「それは何なのだ?」
「砕かれた鉄の破片から剣を鍛えあげたのだ」
 ここでその剣ノートゥングを誇らしげに出してみせた。
「父の武器を私が鍛えなおしそのうえで私が大蛇を倒した」
「君一人でか」
「そうだ、一人でだ」
 まさにそうだと話すのであった。
「あのファフナーをだ」
「一人で」
「まさに大蛇を」
「そして」
 ここでだった。ジークフリートの言葉の響きが変わった。
「ここからの話はよく聞いて欲しい」
「というと」
「どういうことなのだ?」
「私はその大蛇の血を浴びたのだ」
 話されたのはこのことだった。
「それを浴びあまりの熱さに私の指は火傷をした」
「そこまで熱い血なのか」
「大蛇の血は」
「それを舐めるとだった」
 話はそこが最も重要なのだった。
「小鳥達にさえずりが聞こえるようになった」
「それでか」
「大蛇の血を舐めて」
「その通りだ。木の上の小鳥達がさえずっていた」
 それから話す言葉こそがだった。
「ニーベルングの宝はいよいよジークフリートのものとなると」
「そうさえずっていたのか」
「小鳥達が」
「その通りだ。そして」
 さらに話していく。
「隠れ兜が見つかればいい。最後に指輪も」
「指輪!?」
「指輪を」
「小鳥達は言っていた」
 そしてだった。
「指輪は私をこの世界の支配者にしてくれると」
「それで指輪と兜を手に入れたのだな」
「そうだ」
 まさしくその通りだとハーゲンに答える・
「そうして兜と指輪を手に入れ」
「それでか」
「その二つを」
「そしてだ」
 さらに話す彼だった。
「ミーメを信じてはいけない。私の命を狙っていると」
「その言葉も真実だったのだな」
「その通りだった」
 言葉に忌々しげなものが戻っていた。
「あの男は自分からそれを曝け出した。だから私は斬ったのだ」
「ミーメを」
「それによってか」
「そして小鳥はさらに言った」
「何と」
「それで」
 家臣達はその話を待ち遠しくなっていた。話をさらにせがむのだった。
「言ったのですか?」
「どうしたさえずりを」
「後は山に行くべきだと」
「山に」
「そこにですか」
「そうだ、山にだ」 
 まさにそこにだというのである。
 
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