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魔法少女リリカルなのは~その者の行く末は…………~

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Chapter-1 First story~Various encounter~
  number-10 beginning a movement

 
前書き



動き始める。



この場合は、三桜燐夜。高町なのは。フェイト・テスタロッサ。クロノ・ハラオウン。リンディ・ハラオウン。 

 


温泉宿での一件からそれ程特別に起こることもなく、なのはたちやフェイトたちは日常に戻っていた。
燐夜にとっては、なのはにフェイトとの関係が知れたのがちょっとなのはに何するか分からない不確定な状態とさせているが、なのはのことだからいきなり武力行使に出ることはないと思うが。
…………なのはがアリサやすずかのことでしたことを考えるとちょっと不安になる。


そんなことを頭の片隅に置いておいて。
燐夜は以前フェイトのことについて調べた時の資料を持っていた。
あの時には見落としたところ、正確にはフェイト・テスタロッサをだれが作り出したかという点。


「――プレシア・テスタロッサ…………!」


思わず手に力がこもる。
燐夜の表情は憤怒に染まっていた。


プレシア・テスタロッサ。
前にはそんなに詳しく説明を呼んでいなかった。名前だけではピンとこなかったのだから。
突然、ふと何気なく資料を手にしたことでようやく気づけた。


当時、新型魔導炉『ヒュードラ』の開発スタッフ主任であったプレシア。
彼女は新型魔導炉なだけあって、慎重に開発を進めていたらしい。
だが、その慎重さを快く思わなかった上が――――上層部がスタッフの入れ替えを半ば強制的に行い、ほぼ完成しつつあった『ヒュードラ』の稼働テストに入った。
プレシアは何度も上層部に抗議した。安全性について何度も力弁したほどなのだ。


――――しかし、上層部は全く耳を貸さずに結果を早く求めるあまりに、安全性を疎かにした状態で稼働させ、そして魔力暴走。
魔力の奔流が辺りに迸った。


魔導炉付近にいたプレシアや他数名の魔道士が結界を張り、何とか強い魔力の奔流を凌いだが、遠くにいたプレシアの愛娘であるアリシア・テスタロッサは助からなかった。
意識だけを失い、綺麗な体を残したままアリシアは逝った。


そうしてプレシアは地位を剥奪され、人の目を避けるように消えていった。
そんなプレシアが目をつけたのが『projcetF.A.T.E』だった。


この計画を使ってクローンを生み出そうとしているところに発案者がプレシアに対して交換条件を出したのだ。


――――私の実験に参加してくれたら、その計画は自由にしてもいい。


その計画が、奇しくも一人の少年が死に、三桜燐夜という人物が生まれた非道な実験であった。
燐夜はプレシアの顔はよく覚えていた。
憔悴しきって、目の下には黒々としたクマが出来てもう何日も寝てないといった表情であった彼女を。


そんな彼女を心配して、少年は話しかけたのだ。――――大丈夫? と。


――――哀れね。これから何が起こるか知らないというのは。


そう言った。そう、彼女は言ったのだ。疲れた表情をして、そんな目に憐みの色を浮かべて。
その時の様子はよく覚えている。
彼女は途中で実験メンバーから外れた。もともと期限付きの契約だったらしい。
……その一週間後、事件は起きたのだが。


天を仰ぎ、あの時のことを一つ一つ思い出していく燐夜。
プレシアには、直接の責任が無い様に思われるが、そうでもない。
燐夜の人生が一変したあの計画は連名で総責任者の名前が記載されていたはずである。
確か、プレシア・テスタロッサと――――


「――――ッ!」


まただ。
あの時のことを思い出そうとすると頭に激しい痛みがする。
まるで鋭利なものに刺された時のような鋭い痛みが。その痛みを外部的痛覚で打ち消そうと思っても消えない。考えることを放棄しなければ、収まらないのだ。


必死に声を押し殺して痛みに耐える。
隣にはフェイトの家がある。大声を出すと飛び込んできかねない。それを防ぐために、必死に耐えるのだ。


痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い―――――


      ◯


結局燐夜は、学校に温泉旅行の前日以来登校していない。いや、そう言うより一度も家から出ていないと言った方がいいだろう。――――海鳴市には。


燐夜は、ずっと管理外世界にいた。
理由は簡単。この前ジュエルシードに願い、捻じ曲げられることなく叶えられたあの願い。黒い力の制御、それに碧い力を混ぜ合わせてより強く能力を使う練習をしていた。
少しでも間違えれば、力の込め具合にもよるが命の危険に瀕するのは目に見えている。
だから、だからこそ燐夜は迷うことなく力を行使する。


「…………ふうっ」


一息ついて、その場に座り込んだ燐夜。
何日も休むことなく、ぶっ通しで力を使っていたんだ。むしろ倒れないことの方が可笑しいと感じさせる。
限界まで力を使い切って、もう座り込んだまま動けない燐夜は、なのはやフェイトたちのことを思っていた。


風の噂で聞いた。
なのはとフェイトの間に起こっている争いに時空管理局が介入したということを。
そして、なのはは艦長だかの思惑に見事にはまって協力を申し出たこと。
これには、燐夜は仕方のないことだと思っている。
なのはの性格からして、困っている人を見逃せないたちなのだ。それに、協力すると言って最後までしないというのもなのはらしくない。
だから、なのはらしい選択だったのだ。


風の噂で聞いた。
なのはとフェイトが全力全開で
死力を尽くした戦いを次に会った時、執り行うことを。そして二人は了承済みであることも。さらには、その戦いは明後日であることも。


風の噂で聞いた。
二人の戦いが終わった後、管理局はプレシアが居る所――――移動庭園『時の庭園』――――に突入するらしい。
燐夜もいずれはここへ行かなくてはならない。ここ数日のうちに。
プレシアと話すために、あの時のことを聞くために。
……場合によっては、殺すことも躊躇わない。


「くっ…………」


悲鳴を上げる体に鞭打って、もはや最後の力といっても過言ではないが気力を振り絞って転移魔法を行使する。
一瞬にして展開された魔法陣の中心に立っていた燐夜は、音もなくこの管理外世界から去った。
燐夜がいたところには黒い魔力の残滓が淡く輝いて、空に消えていった。


後に残ったのは、地面に残った大量の損傷、または破壊された武器と、大きく開いた穴。


      ◯


それぞれの思惑が交錯する中、ただ純粋にある少女を助けたい少女――――なのはは、その瞳に強い意志を持って戦場へと向かっていく。
その心には、少女を助けたい思いと、それに勝るとも劣らないある少年に対する思い。


――――早く、会いたいな……


その二つの想いが心を占めていた。
それでも今は、一つのことだけに。――――強くなりたい。


      ◯


燐夜は、とある大きい結界内にいた。
それは、なのはとフェイトの戦いとみるため。勿論管理局側には姿などは捉えられない様にしている。
さらには、被害が無い様に結界の限界まで外側にいた。


昨日のうちに休息は取った。
そうでもしないと動けそうにもなかったからだ。


燐夜は最後までこの戦いを見ようとは思っていない。
決着がつきそうであれば、すぐにでも時の庭園に転移する予定だ。ただ――――


「ちっ……しゃあないか」


予想以上に管理局側の監視体制が厳しかった。
たったの5分程度だったはずだが、もう目の前を20回は通り過ぎている。
中には気づかれそうになったケースもあった。
やはり現実はそう甘くないか。燐夜は、予定を前倒しして時の庭園へ転移した。



だが、いくら燐夜の転移魔法が特殊で結界内から転移できるとしても、結界内からでは相手方に察知されてしまう。


「艦長! たった今、結界内で転移魔法反応確認。転移先は不明です!」
「誰だかわかる?」
「やってみます!」


転移魔法反応を察知した相手方。この場合は、管理局。
巡航L級8番艦アースラ。その艦長のリンディ・ハラオウン。通信主任、エイミィ・リミエッタ。そして、現場主任であり執務官であるクロノ・ハラオウン、その他管理局魔導師数名である。


「艦長、どうかしましたか?」
「ああ、クロノ。いやね、結界内に転移魔法反応があってね、今エイミィに当たらせてるところよ」
「! ……そうですか」


驚いた表情をクロノがするもいつもの真面目な表情に切り替えて、モニターを見つめる。
モニターには6つの方向から結界内の様子を映し出している。
どうやらまもなくなのはとフェイトの戦いが始まるようだ。


「艦長分かりました! 今、第3モニターに映します!」


そしてモニターに映し出される。


「……! これは……」


そこにいたものが見たものは、黒いと感じさせる容姿。一際(ひときわ)目を引くのは、両目の深紅の双眸。世の中すべてに悲観したような、絶望しきった眼。見る者を吸い込むような引力さえも感じられるような気がしてきた。


そして、その銀髪で深紅の双眸を持っている少年をリンディは知っていた。
その人となりは忘れることが出来ない――――


「艦長、ご存じなんですか?」


クロノがモニターから目を離さないリンディに問いかける。
リンディは質問をぶつけたクロノの方を見ることなく、モニターを見たまま答えた。


「…………6年前、最年少で管理局執務官に任命された少年。彼が立てた功績は数知れないが、その半年後急に退職した。……クロノ」


リンディは、クロノに呼び掛ける。
だが、クロノが答える前に話の続きを話し始めた。


「推定ランクSS+。あなたでは手も足も出ない相手よ。せめて、神君クラスの魔力があれば……ごめんなさい、こんなこと言ってもしょうがないわね。何せ――――」


――――私があの子の試験官を務めた時、私の全力を持ってしても、あの子には歯がたたなかったのだから。


そんな艦長であり、自身の母親でもあるリンディのつぶやきを聞いてしまったクロノは、何も言わずに管制室から退出した。
期待されていない、そんな母親からの感情から逃げるために。





 
 

 
後書き

何とか更新。
ちょっと微妙だったかなぁ…… 
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