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魔法少女リリカルなのは~その者の行く末は…………~

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Chapter-1 First story~Various encounter~
  number-9 battle and reconciliation

 
前書き



戦いと和解。



この場合は、三桜燐夜。高町なのは。フェイト・テスタロッサ。アルフ。ユーノ・スクライア。神龍雅。


 

 


燐夜が頭に直接聞こえてくる声に従って歩くこと、10分。
途中、明らかに人為的に外界と隔離された結界内に入り、ジュエルシードの前まで来ていた。
あとはこれに己の願いを述べるだけ。それだけなのだが――――


目の前に先ほどまで戦っていたなのはとフェイトが立ちはだかっているのだ。
どうして共闘なんかしているのだろうか。
あの二人は争っていたのではないのか。戸惑いを覚え、後ろから来る気配に気づかなかった。
むしろそれに一番最初に気付いたのは、意外なことになのはだった。


「えっ!? どうして神君がここに!?」
「――――ッ!!」


なのははあまりにも突然のことで何が起こったのか分からなかった。
フェイトも反応できなかった。
ユーノもアルフだってそうだ。


どうして目の前にいる人の胸からカタナが伸びているのか。
そしてその刀を差したのが、後ろにから来た神龍雅だったのだから。
――――龍雅がさした人物が三桜燐夜だったのだから。


龍雅は非殺傷攻撃ではなく、明確な殺意をもって明らかに狙って心臓部を刺してきた。
さらにはその攻撃が燐夜がした変装の一定の耐久を超えてきたことだ。それで変装が解けて、二人の前に素顔を晒してしまった。
何とも呆気ないものなのか。ばれないためにわざわざ変装までしたのに、二人と会って数分でばれるとかどこのB級映画なのかと思ってしまったほど。
現実はそううまくいかない。


「え……どうして燐夜君が、ここに……?」
「燐夜ぁっ!!」


いきなりのことでなのはが呆けている間にフェイトが燐夜のもとへ駆けつけようとする。
しかし、それは龍雅の手によって止められた。
フェイトはそれでも尚、燐夜のもとへ駆け寄ろうとするも、龍雅がバインドしてフェイトの行動を抑えた。


なのはは、力が抜けたのか、その場にへたり込んでしまった。
焦点の定まらない眼で、ただ燐夜を見続けている。
ユーノはどうすることも出来ない。それほどまでになのはの心の中には燐夜がいたのだ。
自分ではなのはを助けることが出来ない事実に行き場のない憤りを感じながら、何とか手を強く握りしめることで自分の感情を抑え、なのはを守ろうとする。
握りしめた右手からは血が地面に向かって滴り落ちていた。


「くっ……!」


燐夜は背中から刺さっているカタナを何とかして引き抜き、朦朧とした意識の中龍雅と向かい合う。
段々力が入らなくなってくる。


「……システム1、リミッター解除」


そんな燐夜の口から抑揚のないまるで機械のような声が聞こえてくる。
そして、その言葉が紡がれた後、燐夜から検知できる魔力量が格段に跳ね上がった。
魔力光は碧。瞳の色とは正反対の色。


燐夜の瞳、深紅が熱血、情熱などと言ったことを指すのであれば、碧は、冷静。気持ちを落ち着かせる色である。


龍雅は、感じられる魔力が跳ね上がったところから油断はしていない。
むしろ相手との力量差を実感しているところだった。
今持てるすべての力を出し尽くしても、あいつには勝てない。そう、本能的に判断していた。


魔力量でいえば、なのはと同じAAAランク。まだ、SSランクである龍雅には及ばない。
だが、燐夜にはそれ以外に底の知れなさ、得体の知れなさがある。
まだ何か力を隠し持っているのではないのか。今でも勝てないのに、これ以上強くなるのか。
思わず、再び手に創造したカタナを燐夜に向け、斬りかかった。いや、斬りかかってしまった。


――ガァン!!


鈍く高い音を上げて、龍雅のカタナは折れた。
いつ出したのか、燐夜が持っている、黒を基調にして青いラインが入った1mはありそうな剣によって。しかしそれは、なんの力も通っていない物理攻撃のためだけの剣だった。だったはずだった。


龍雅は素早く後ろへ下がり、折れたカタナを燐夜に向かって放り投げて言葉を紡いだ。


「壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)」


すると龍雅が創造したカタナが爆発。
近くにいた燐夜をも巻き込んで辺りを黒煙で包んだ。
龍雅は一瞬頬を緩めるが、またすぐに引き締める。


龍雅の起こした爆発を食らっても無傷であった燐夜。だが、最初の不意打ちでくらったダメージは大きいものでこうして力を込めているだけで痛みを感じる。
込めずとも力を行使している時点で体中に激痛が走っているのだが。
激痛の中でも意識は途切れることはなかった。
逆に鮮明と龍雅の行動一つ一つが見て取れた。


〔汝の願いを申せ。さすれば、その願いは叶えられるだろう〕


まただ。
またこの低い男性の声が頭に直接響くように聞こえる。
ずっと先ほどから響くこの声。
近くにあの宝石があるのだろうか。あの青い《ジュエルシード》が。


後になって思うと、この時の燐夜はただこの場から逃げることしか考えていなかったと思う。
龍雅の攻撃を甘んじて受けたのも、自ら攻撃しないのもそうだったに違いない。
だから、だからこそこんなことをしたのだろう。


「聞こえてるか、願いを言えば叶えてくれるんだろ」
〔そうだ、汝の場合は叶えられないこともあるが、それは一部だ〕


周りに聞こえない声量だと思っていたが、それはどうやら違ったらしく、しっかりなのはとフェイトたちの耳に届いていた。


「だめぇ―――ッ!! 願っちゃだめ!!」
「やめてっ! 燐夜、それに願ったら――――」


なのはの声は燐夜に聞き届けられず、フェイトの声は途中で遮られた。
アルフも止めに入ったが、間に合わない。ユーノは龍雅の起こした爆発からなのはとフェイトを守るのが精一杯でもはや、声も出そうになかったが、駆けなしの力を振り絞って燐夜を止めに魔法を行使する。それすらも間に合わない。


「俺に力をくれ。黒い闇の、何物も飲み込む闇の力を」
〔…………〕


頭に響いていた声は、静まった。
そして遅れて燐夜をユーノのストラグルバインドが縛り付けた。
龍雅は踏み込もうにも踏み込めずに、手を(こまね)いていたが、今のうちにとばかりに攻撃を仕掛ける。


「壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)」


二回目の爆発。
これに燐夜を止めに入ったアルフも巻き込まれた。再び、あたりを覆う黒煙。
それを見たフェイトは、龍雅を睨みつける。
視線を感じたのか、龍雅は睨みつけているフェイトを見るとただ一言。


「気にしなくてもいい」


この言葉は、フェイトの琴線に触れた。
バルディッシュを手にして動きを封じ込められていたバインドを無理やり破り、龍雅に飛び掛かる。


それに気づいた龍雅は一瞬驚いた表情をするも、すぐに元の表情に戻してフェイトが降り下げたバルディッシュを想像していた得物で弾いて、すぐにまたバインドで動きを封じ込められた。
フェイトは悲痛な顔をしながらも、弱みを見せない様に睨み続ける。


……次第に視界が晴れてきた。
フェイトの目に飛び込んだのは、碧いエネルギー状のもので守られていたアルフ。
この時点でフェイトはまず一息つく。
次は燐夜である。


なのはも何とか我を取り戻してさっきからずっと事の次第を見ていた。
けれども、燐夜が願いを《ジュエルシード》に言うとは思わなかった。
そこまでして叶えたい願いとはなんなのだろうか。
なのはは自分の立場を忘れてそう思った。今のユーノのために《ジュエルシード》を集める立場を忘れて。


〔その願いは聞き届けられた。存分に使うがよい〕


途端。
燐夜の体から黒いエネルギーが放出される。
碧のように安定性はなく、揺らめいてまだ不安定な状態である。
しかも、碧い力と黒い力が相反し合って危ない状況に燐夜はいる。


だが、それも少しの間のこと。
碧い力と黒い力は共調した。暴走を起こすことなく、燐夜のもとに力として存在している。


見れば、致命傷であった不意を突かれて負った心臓に達する傷も完全に癒えていた。
どうやら力の使い方さえも同じらしく、制御しきれていた。


「くっそ……くっそぉおおっ!!!」


悪態をついて龍雅が燐夜に斬りかかるが、先ほどから手に持っていたブレードで防がれ、自爆覚悟で『壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)』を使っても、防御行動で燐夜の前に黒と碧が混ざったシールドが張られて防がれる。


そして、あっという間に龍雅の意識を刈り取った。
ドサッと音を立てて崩れ落ちる龍雅。


それを見終える前に燐夜は踵を返してその場から去ろうとする。


「「待ってっ!!」」


奇しくも燐夜を引き留める言葉は、全く同じだったなのはとフェイト。
燐夜は振り返りこそはしなかったが、立ち止まった。


「どこにも行かないでっ! 誰も燐夜君を悪く言う人なんていないからっ!」
「どこにも行かないで、ここにいてっ!」


ほとんど同じような言葉。
それでも個人の気持ちがこもっていた。
なのはにはなのはなりの、フェイトにはフェイトなりの気持ちが。
ただ、それでも――――。


「俺は、お前たちの近くにいない方がいい。フェイト」
「温泉旅行楽しかったよ」
「なのは」


燐夜は一旦、間を置いてまた続ける。


「いつまでも俺にくっつくな。一人立ちしろよ」
「そんなの無理だよ……。私には燐夜君が必要なのっ!!」


燐夜は苦笑した。
だけど、振り返ることはなかった。
最後の言葉のように感じられて、ここで引きとめなくちゃって思うなのはとフェイトだが、引き留められない。


燐夜の足元に魔法陣が展開される。
フェイトはもう何もできない。しかし、なのははまだ諦めない。
駆けだす。


なのはは燐夜との短い距離をあっという間に詰めて燐夜に抱きついた。


「行っちゃダメっ! まだ燐夜君は、何もしてない。お兄ちゃんとの仲直りも、なにもかも。それでも逃げるのっ!?」
「だからといって俺が居ていいはずが――――」


――パァン!


…………燐夜には何が起きたか分からなかった。
なのはは、いつまでもうじうじと後ろ向きなことしか言わない燐夜に痺れを切らして、燐夜から離れると一発。
周り込んで燐夜の前に来て頬を叩いた。


燐夜はようやくなにされたか理解した。


「私には燐夜君に言ってないことがたくさんある。聞きたいことだっていっぱいある。あそこにいるフェイトちゃんだってそう」


そう言いながら向こうで立っているフェイトの方を指差す。


「それでも行くの?」
「…………俺が悪かった。ここに残るよ」
「そう! 良かったぁ~」


なのはは喜ぶと今度はフェイトのもとに行った。
何か話している。ここからでは遠くて聞き取ることはできない。
それでも表情からなんとなく予想はできる。


アルフに何か言われたフェイトは、そのまま何も言わずに去ってしまった。
燐夜はなのはに挨拶してからここを去ろうと決めた。
なのはに話しかけられた時に、何でここにいたのとかそういうことを聞かれたが、やっぱり後になって行きたくなったからと誤魔化しておいた。
魔法が使えるのは、素直にもともとミッドチルダ人であったことを明かした。


ちなみに龍雅がここにいた件については、一応誘ったらついてきたとのこと。


      ◯


あの後、転移魔法で去って旅館に戻ったのはいいが、もう深夜である。寝静まった旅館内を燐夜は一人で歩いていた。
フェイトのもとに行くのが気まずいからである。
このまま温泉に行くことに決めた。


どうやら深夜の時間帯は入る人がいないらしく、湯気がただ立ち上っていた。
静かに一人で温泉というもののなかなかに良いものかもしれない。


そう堪能していると、更衣室の扉が開く音が聞こえた。
ここは男湯であるから別に慌てる必要はない。来るのは同性なのだから。


「燐夜」


……どうやら、あの子にはそんなことは関係ないらしい。


「隣、いいかな?」
「あ、ああ、別にかまわない」


入ってきた少女、フェイトは燐夜の隣に来た。
沈黙。
ついさっきにあんなことがあったのだから、何を話したらいいのか分からない。
そんな沈黙を破ったのは、燐夜だった。


「……さっきはごめんな」
「うん、別に気にしてないから大丈夫」


また沈黙。
話が続かない。
また出来た嫌な沈黙を破ったのは、意外にもフェイトからだった。


「……ねえ、今日は楽しかった?」
「ああ、楽しかった」
「そう、それは良かった」


二人はこれ以上話すことはなかった。
ただ、二人は並んで窓から差し込む月明かりに照らされながら、外を見ていた。
二人の頬は赤い。
燐夜は、少し前になのはに思いっきり叩かれたのだから余計に赤かった。





フェイトはこの時に男湯と知らずに温泉に入った事実を知って、顔を真っ赤にすることになるだろうが……
まあ、いいだろう。





 
 

 
後書き
ちょっと、ご都合主義ぽかったかなぁ…… 
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