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夢遊病の女

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第二幕その五


第二幕その五

「ですから。今朝のあれは」
「あれについては私が知っているよ」
「伯爵様がですか?」
「君は思い違いをしている」
 そうだというのである。
「私は私の名誉にかけてそれを保証するよ」
「そこまで言われるのですか」
「うむ、言おう」
 今度は確かな声になっていた。
「今ここでね」
「ですがアミーナはあの部屋にいました」
 彼は伯爵に顔を見ながら話した。
「貴方が使われていたあの部屋にです」
「それはその通りだ」
「では何故」
「しかしだ」
 ここで伯爵はさらに言う。
「彼女は目覚めて来たのではないのだよ」
「えっ、それは」
「一体」
 これにはリーザとアレッシオも驚きの声をあげた。
「目覚めて来てはいないとは」
「それはどういうことですか?」
 ここで村人達も来た。エルヴィーノを探してである。
 テレサもいる。いないのはアミーナだけだった。
 村人達はこのことをテレサに対して尋ねた。
「アミーナは一体」
「何処に?」
「悲しみのあまり泣き伏してしまって」
 語るテレサも悲しい顔になっている。
「それで家で休ませているのよ」
「そうだったのか」
「気の毒なアミーナ」
「全くだ」
 今は彼女に対して同情している彼等だった。
「早く気を取り戻してくれないと」
「取り返しのつかないことになってしまう」
「その通りね」
 彼等も気が気でなかった。そうしてだった。 
 伯爵はその彼等に対して話すのだった。
「ある人達は」
「はい」
「どうなっているのですか?」
「眠っている時にまるで目が覚めているかの様に歩き回ります」
 こう話すのである。
「そして話し掛けるとです」
「その時は」
「どうなるのですか?」
「話もするし答えもできる」
 そうなるとも言う。
「眠り且つ歩き」
「何という奇妙な話だ」
「全くだ」
 これは村人達の全く知らないことだった。彼等にしては全く奇妙な話だった。
「この病を夢遊病といいます」
「夢遊病!?」
「それがその病気の名前か」
「また奇妙な名前の旗だ」
 こう言ってそれぞれ首を傾げさせる。伯爵はさらに言うのだった。
「私は嘘は言いません」
「それは本当ですか!?」
 エルヴィーノもそれを聞いて首を傾げさせていた。
「それは」
「私の言葉を偽りだと思うのかね?」
「あまり信じられません」
 こう返す彼等だった。
「そんな奇妙な病気があるのですか」
「それは見ればわかることだよ」
 伯爵はここでもエルヴィーノに対して話した。
「何なら今夜でも」
「今夜にでも」
「そうなのですか」
「そう、今夜だ」
 その時間まで話すのだった。
 
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