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【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス

作者:海戦型
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役者は踊る
  番外編 「佐藤さんの調査報告書:残間兄弟の事情に迫るの巻(前編)」

 
前書き
ストックが尽きてきたのでしばらく更新止まります。1週間以内には更新再開できればいいな~・・・ 

 
これはクラス代表決定戦の数日後に作成された資料であり、本編の時系列とは少しずれたある日の調査報告書である。


AM 5:30

佐藤さんはその日、朝の5時には目を覚まし、綿密な準備と精神統一の末にその場所にスタンバイしていた。
場所は学生棟1026号室・・・が見える廊下の曲がり角だ。この時間帯に起きている生徒など稀、しかも廊下に出ているとなるとほぼ皆無だ。
ではなぜ彼女はこんなに早く起き、このような場所でじっとしているのか?それは――。

ガチャッ、と音を立てて扉が開く。

「んじゃ行くぞユウ」
「ん。今日は一夏は参加しないんだっけ?」
「ああ、今日は箒嬢ちゃんと剣道の稽古だそうだ」

――出てきた。学園に4人しかいない男性IS適性者のうち2人、残間兄弟だ。二人ともジャージ姿であり、手には小さめのバッグを引っ提げている。

(えーと朝の五時半、残間兄弟が部屋から出てくる。追跡開始・・・っと)

手元のメモ帳に素早く書き込んだ佐藤さんは二人に見つからず、かつ見失わないように追跡を開始する。
佐藤さんは二人の行動を見張るためにこんなことをしていたのだ。
何せこの二人、原作にはいないのだから今一どういう人物かが分からない。そこで佐藤さんは思い切って今日一日彼らの・・・主に同じクラスのユウの動向を探ってみることにした。
先ずは第一段階。ちらりと話に聞いた二人の“朝練”とやらを観察させてもらう。



 = =



(ふーむ・・・汗をかくイケメンって無駄に絵になるなぁ。盗撮すればいい値で売れないかな?)

などと思いながら佐藤さんは双眼鏡で二人を観察し、片手で持った焼き明太子入りおにぎりを咀嚼する。朝ごはん前とはいえ軽く物を入れておいた方が観察もはかどる、という正しいのかどうか微妙な理論の元に持ってきたものだ。ちなみに自作であり、昨日のうちに用意しておいた。・・・少々多く作りすぎてしまったが。

それにしても結構イケメンな同年代男子を眺めても全然興奮したりしないというのは年頃の乙女としてどうなのだろうか?転生の所為で枯れちゃったとか無いよね?

朝練の内容は特別変わったものではなく、軽いストレッチ、筋トレ、ランニングだった。・・・お、今走り終えたようだ。すかさずお手製集音マイクで声を拾ってみる。(盗聴器も考えたがばれるリスクがより高そうなのでやめた)

「ふー・・・ほれ、タオルとドリンク」
「ありがとう、兄さんもほら」

呼吸を整え、自前のスポーツドリンクで水分補給か。バッグの中身はそれだった訳だ。
傍から見たらまんまアスリートに見える(ISはスポーツ扱いだからあながち間違っては無い)とか考えながらお茶を啜る。今のところ変わったところはないが・・・問題はおそらくこれから。ワンサマーが漏らしていた“組手”がそろそろ始まるんじゃなかろうか。
そう思っていると、思いのほか早くそれは始まった。




「さて、時間もないしそろそろやるか!」
「今日こそは一本取ってみせるよ!」

声が終わるや否や既にユウは飛び出しており、兄との組手が始まった。の、だ、が・・・。

「踏み込みが足りん!」
「うわっと!まだまだぁ!!」
Too Easy(他愛無し)!!動きが直線的すぎる!」
「のわぁぁっ!?」

遠くで見物している佐藤さんが素人目にも見ても内容は一方的だった。ジョウの間合いに入るや否や投げキャラもびっくりの超反応でユウの攻めを捌いていく。ユウはフェイントやカウンター狙いなど様々な方法で攻め入ろうとするが、指一本触れることが出来ていない。しかもジョウは開幕から一歩も足を動かしておらず、息も全く切らしていない。バケモノですかアンタ。

「特に動きに問題なし!でも俺には通じないぞそぉい!!」
「理不尽!?ぐはぁっ!!」

一際派手に投げられたユウはそのまま地面を転がり、やがてぱたりと手を地に着いた。

「今日は此処まででいいな?」
「うん・・・今日も駄目だったか」

毎日のようにこうやって組手をし、自分の動きの問題を改良し、兄の動きを注視し、少しずつだが上達してはいる。だが・・・これだけやってもまだ兄の足元にも届いていないという事実に少し顔を歪める。手をかける隙間もない絶壁が目の前に鎮座している錯覚さえ覚える巨大な差。
だが、まだ終わっていない。たとえ兄が百歩先にいたとしても。たとえ僕がその百歩の到達したときに兄がさらに百歩前へ前進していたとしても。それでも僕の歩みが止まるわけではない。足跡が消えるわけではないから。
いつか兄の隣に・・・本当の意味で対等な場所に立つその日まで、僕の歩みが止まることは無い。
そう決意を改め兄の方を見ると、なぜか目を細めて遠くを眺めていた。

「・・・あれ?どうしたの兄さん?」
「ん?ああ。視線を感じたからちょっと探ってみたんだが・・・別に悪意はなさそうだから放っておいてもいいか」
「視線?こんな時間にいったい誰が・・・?」
「・・・おぉ、呑気に手を振ってるぜ。えぇと・・・『こちらにはお構いなく』・・・手話とはやるじゃねぇか」
(兄さんが見てるのって角度からして隣校舎の屋上だよね?裸眼でそこまでくっきり見えてるのかこの人・・・!?)

っていうかこっちを見ていたのは一体誰なんだろうか?何はともあれ、もう時間があまりないので撤収と相成った。


結論:残間兄弟は武闘派





AM 8:00

私佐藤さん、今食堂にいるの。
あの後部屋に戻って寝坊助さんのベルーナ君を起こした後、私は再び残間兄弟の観察に移った。
今度は二人のの食生活にズーム、イン!!

(兄も弟も和風朝食セット・・・量も普通か。味覚は似通ってるっぽいね)

ちらりとのぞいたが、別に食いしん坊キャラとか偏食家では無いようで一安心(?)である。

「・・・サトーさん。隣、いい?」
「どうぞどうぞ」

ここでベル君登場であるか。残間兄弟はめぼしい情報がなかったのでせっかくだからベルーナ君の食情報、を・・・・・・。

「ベルーナ君?その料理・・・何かな?」
「・・・オオトカゲの煮込み、らしい」
「参考までに、何でそれ頼んだの?」
「・・・食べたことなかったから。はむっ・・・まあまあ美味しい」

つーかこの学園の食堂にそんなメニューあったのかよ!?どんだけ国際色豊か!?
むぐむぐと料理を咀嚼するベルーナ君は子供みたいで可愛らしいが、その皿に乗った限りなくリアルなトカゲの足がすべてを台無しにしているような気がする。いやむしろギャップで萌えている猛者もいるが、流石に私にそんな高度な妄想はできない。

「明日は・・・サソリの天ぷらにするか、それとも卵かけごはん(※)に挑戦してみるか・・・」
「・・・・・・ゲテモノ料理、好きなの?」
「食べたことのない味が、好き」

(※鶏卵を生食するのは日本人くらいのもので、海外では生卵はゲテモノ食の部類である。詳しくはググるべし)

結論:ベルーナ君は常に新しい味覚を求めている。


ついでに昨日作りすぎたおにぎりをお弁当としてベルーナ君にあげてみた。表情には出ていないが興味津々で弁当を見つめ「ライスボールを食べるのは初めて」と随分ご機嫌だった。かわいいぜ・・・。

ちなみに佐藤さん自身は気付いていなかった。周囲の生徒達がその光景を見て、“佐藤さんはベルーナ君狙い”という見当違いな認識をしていたことを。

「オマエのために よなべして おべんとうつくってきたんだ!」
「佐藤さんが抜け駆けした!ずるーい!」
「くっ・・・!邪魔しちゃいけないオーラみたいなのが漂ってるのがまた悔しい・・・!!」
「ベルーナ君の心と胃袋を鷲掴みにする気か!?やらせはせん、やらせはせんぞ!」

「・・・ホームルームが始まるからとっとと食事を終えんか、馬鹿者共!!」


佐藤さん、実は天然タラシ疑惑浮上。




AM 10:30

「・・・このように、第4世代ISはまだまだ実用化には程遠い状態です。
 展開装甲の技術も未だ実験段階ですから、実用化されるのは早くとも2年後くらいと言われています」
「はい!はい!質問があります!織斑君の“白式”の装備の一部に装甲展開の技術が使われてるって聞いたんですけどそこの所どうなんですか?」
「え!?そうなんですか?」
「え!そうなのか!?」
「え?」
「えっ」
「えっ?」
「・・・自分のISの特性位は頭に入れておけ、この馬鹿者」

 すっぱーん!と軽快な音を立てて千冬先生の出席簿が馬鹿者(他称)の後頭部に直撃して「あぶぽ!?」という間抜けな悲鳴が響いた。

元気いっぱいつららさんの質問内容が初耳だったのかテンパる山田先生。何を隠そう一夏もその情報は初耳であり、自分で自分のISに吃驚しているという間抜けぶりである。
というかつららさんはそんなことよく知っていたな。言動はあれだけど意外と勤勉なのかもしれない。

「雪片弐型と参型に搭載してあるんだったっけ?展開装甲」
「へーそうなのか。佐藤さんは物知りだなぁ」
「自分のISの特性を赤の他人に教えてもらう奴があるか!」
「一夏ぁぁぁ・・・・・・あれだけ勉強に付き合ってあげたのにお前って奴は・・・!!」
「す、すまん箒、ユウ!今度はちゃんと思えたから、な!」

(ワンサマーの頭脳は相変わらず・・・対するユウ君はちゃんと勉強できる子だねぇ・・・)


結論:ユウ君はしっかり者


なお、千冬は顔には出さなかったが自分も白式の展開装甲を知らなかったためちょっと恥ずかしい思いをしていたことは神のみぞ知る。




PM 0:30


昼休みタイム。

「いいか一夏!待っているだけでは駄目だ!時間が許す限り腕を磨け、鍛え上げろ!剣道もISも体力勝負!そして最後に物を言うのは・・・努力と根性だ!!」
「間違っているぞジョウさん!目の前の困難を打ち破るのは根性でも才能でも奇跡でもない・・・今まで戦ってきた己の闘志だ!!」
「二人とも間違っています!最後に勝利する者は・・・勇気あるものでーーーす!!!」
「それ本質的には全部根性論だよね!?」

そこには謎のカオス空間が広がっていた。

「ねぇ布仏さん?何であそこの4人はあんな話してるんだい?」
「それはね~・・・おりむーに足りないものは何かって話をしてるうちにヒートアップしたからだよゆーゆー」
(残間弟のあだ名は“ゆーゆー”で決定・・・っと)

めもめも。それにしてもあそこの3人(ジョウ・箒・何故か山田先生)は盛り上がりすぎである。というか山田先生何やってんすか。何故かみんなの背後にソロモン72柱序列8番とかコンガラ童子とかのスタンドが戦っているように見えるのはきっと気のせいだろう。
それにしてもモッピーは原作から脳筋っぽいところがあったけどこの世界のモッピーは別の方向に突き出ているようだ。これも後々何かの手掛かりになるかもしれないからメーモメモメモリータ。

「ちなみにのほほんさん、私にはどんなあだ名付けてるの?」
「え~?佐藤さんは佐藤さんだよ~?」
「え、いや、だからあだ名・・・」
「佐藤さんはおりむーやゆーゆーの事どう思ってるの~?」
「え?別にタイプじゃないしどうでもいいんだけど」

あだ名付けてもらえなかった・・・クスン。ついでに最後の発言で周囲が「なん・・・だと・・・」状態です。んなこと言ったって私どっちかっつーと年下趣味だもん!一緒に居て面白そうではあるけど男女の関係になりたいかというとノゥである。

「・・・やっぱり佐藤さんは唯者じゃないね~」
「いやいや唯者だよ。何所にでもいる見た目でどこにでもいる名前のね?」

ちょっと真面目な目で見つめられた。解せぬ。
そういえばのほほんさんは学園の裏側にいるんだっけ?警戒されてる・・・訳ないか。

結論: 一夏に足りないものは情熱・思想・理念・頭脳・気品・優雅さ・勤勉さ・ついでに速さ


後編に続く・・・。 
 

 
後書き
佐藤さんはイケメンになど靡かないのだー!!
ちなみに佐藤さんの中での男子ーズの評価は・・・

  一夏:性格も顔もそんなにタイプじゃない
  ユウ:顔はちょっとタイプだが特別好きじゃない
 ジョウ:判断情報不足。特別惹かれてない
ベルーナ:恋愛対象とはちょっと違う意味で好みかも

ってな感じ。 
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