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ランメルモールのルチア

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第一幕その三


第一幕その三

「毎日夜明けにです」
「それは何処でだ」
「あの並木路で」
 その場所も語られた。
「会っています」
「許せん」
 それを聞いたエンリーコの顔はさらに不機嫌になっていく。
「わしの目を盗んでその様なことをしていたのか」
「はい、その通りです」
「それではだ」
 ここでエンリーコはノルマンノに対してさらに問うのであった。
「その男は誰だ」
「それはわかりません」
「わからないというのですか」
「はい、そうです。ですが」
「ですが?」
「まさかと思うのですが」
 不吉な顔をしての言葉になっていた。
「あの者は」
「誰なのですか?」
「まさかとは思いますが」
 さらに語っていくが顔に浮き出ている不吉さはさらに高まっていた。
「あの男か」
「どうやら」
「何ということだ」
 それを聞いたエンリーコの顔がさらに憤怒で高まっていく。
「残酷で忌まわしい感情だ。この疑念に身体が凍り震え」
「エンリーコ様、どうかここは」
 ライモンドが何とか彼に対して言う。
「落ち着き下さい。冷静に」
「穏やかにです」
「穏やかにだと!?この髪の毛を逆立たせるこの心は最早静められはせん」
 こう言って怒りをさらに増し言葉も出していく。
「わしの妹が我が家にこの様な恥辱をもたらそうとは。これ程罪深い恋を犯し」
「まだわかりませぬ」
「わしを裏切る前にだ」
 最早彼はライモンドの言葉を聞けなくなっていた。
「わしが雷に打たれてもこれだけの恐ろしい運命はあるまい」
「まだはっきりとしませんが」
 ノルマンノもこう断りはした。
「ですが。このままでは」
「エドガルドなぞと共にいられるものか」
 苦々しい顔での言葉だった。
「何があってもだ」
「どうかここは落ち着かれて」
 ライモンドは彼を何とか落ち着かせようとする。しかしそれはできなくなろうとしていた。
「どうか」
「ノルマンノ様」
「ここにおられましたか」
 ここで何人かの狩人姿の男達があらたに庭に入って来た。
「調べてきました」
「その通りでした」
「そうか、やはりか」
 ノルマンノは彼等のその言葉を聞いて頷いたのだった。
 そうしてそのうえで。エンリーコに顔を向けてまた言った。
「この通りです」
「ではやはり」
「はい、そうです」
 まさにそうだと話すノルマンノだった。
「あの男です」
「話せ」
 エンリーコはその密偵達に対して告げた。
「詳しいことをだ」
「はい、それでは」
「お話しましょう」
 こうして彼等は話をはじめた。その話は。
「あの塔の崩れかかった入り口に入るとです」
「そこにしじまの中を蒼ざめた一人の男が通り過ぎました」
「その男だというのだな」
「そうです」
 まさにその通りだという。
 
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