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【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス

作者:海戦型
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役者は踊る
  第十幕 「全てはこの一歩から」

 
前書き
スパロボ64やりたいけど出来そうにない。
こうなれば第3次OGに期待するしかないのか・・・でも版権がややこしくなってるって聞くし、大丈夫であってほしいなぁ・・・ 

 
前回のあらすじ:投桃報李・・・親しいものに贈物をあげれば相手も贈物を返してくる。施した徳には相手も報いるという意味。


突然だが、風花はPICの出力配分が通常のISと全く違う。噴射加速というふざけた加速からパイロットを守るため、本来ISを浮かせたりする分に回される出力が多くパイロット保護用に回されて、それでもパイロットにかかる負担は通常のIS以上である。しかも直進用に作られたため機体にスラスターそのものが殆どついていない。
結論、噴射加速以外のすべての空中動作が極端に遅い。
となれば、ユウの取れる戦術はもはや一つしかありえない。すなわち、突撃である。

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「・・・男性って本当に突貫が好きですわ・・・ねっ!!」

アリーナに響くユウの咆哮に、すこし呆れたようにセシリアが応え、ライフル+ビットの計五つの砲身が同時にこちらを狙う。掠めた程度ではびくともしないことに気付いたのか、確実に当たる正面からの一斉集中射撃を仕掛けてきた。流石にこれの直撃を受けたらまずい。既にシールドエネルギーは半分を切っている。
・・・だから、防がせてもらう。

「“鳴動”、エネルギーチャージ完了!放てぇ!!」

アンロックユニットの装甲がスライドし、中から既にチャージを終えた荷電粒子砲の膨大なエネルギーを躊躇いなく解き放つ。冷却系が唸りを上げ、その名の如く大気を震わせながら放たれた巨大な桃色の閃光がレーザーごとブルー・ティアーズを襲う。

「なるほど、シールド内蔵武器でしたか・・・しかしっ!!」
「避けるのは容易い・・・でしょ?」
「!?」

すかさずビットと共に粒子砲を避けたセシリアさんとすれ違いざまに目が合う。確かにこの機体は一度空を飛ぶとほぼ直進しかできない。しかし、その事実を変える方法がたった一つだけある。
それが、この機体唯一の第3世代兵器。だが、これがどんなものか理屈では分かっていても実際に使ったことのない僕にとって、これは一種の博打だった。失敗すればおそらく敗北は必至。成功したとして、すべてうまくいくとは限らない。
この機体の第3世代兵器を使いこなせるかどうか・・・勝負!

「“投桃報李”、発動!!」

瞬間、バーニアで方向転換した機体の足の直線上に空間の歪みが現れる。ユウはそこに向けて思いっきりISの足を延ばした。
一歩。この一歩が逆転の始まりで、そして僕の戦いの本当の始まりだ!

ダンッッ!!

「・・・これは!?」
「賭けに・・・勝った!」

風花が、空を“踏みしめた”。精一杯ばねを利かせた僕と風花は、スラスターを吹かしながらも方向転換。次々に空を踏みしめながらブルー・ティアーズに肉薄する。
まるでアスレチックの様に飛び跳ねるその姿は異様な光景だった。咄嗟にセシリアがライフルを連射して牽制するが、そのすべてが空を踏みしめた方向転換で躱される。PICやスラスターだけでは到底できるはずもない滅茶苦茶なジグザグ軌道。まるでそこに足場があるかのような、そんな動きだった。
突然の事に動揺を隠せなかったセシリアだが、すぐさま事態を飲み込んだのかインターセプターで僕を迎え撃つ。

「第三世代型武器・・・それも空間圧縮技術とPICを組み合わせたものと見ました!」
「何の事かなと言いたいけど・・・ご明察!!」
「虚空に足場を“作る”なんて・・・発想が斜め上に突き抜けてますわね!」

“投桃報李”。指定した座標の空間を瞬時に圧縮し疑似的なバリアを形成、それを同じくバリアで保護した足で踏みしめると同時にPICで慣性を一気に反転させる。結果として虚空を踏みしめた様な挙動が出来るという訳だ。加速したら曲がれなくなるこの機体にとっては正に命綱と言っても過言ではない。またこいつは単純にバリアで敵の攻撃を防いだりすることもできるが、今はそんなことを考えている暇はない。

この土壇場で、しかも一目でここまで解るなんて、やはりセシリアさんは頭脳も実力も本物だと思い知らされる。流石に丸腰で突っ込むわけにはいかないので腕部に篭手のような装備 “義聖”を盾代わりに展開し、インターセプターの鋭い突きを受け流す。

「今のを受け流しますか!」
「接近戦が出来るのは一夏だけじゃないのさ!!」
「ですが、そうそう何度も出来る事では・・・無い!」
「くぅっ!!」

その言葉と共に左腕部が切り裂かれ、絶対防御が発動する。義聖は本来パイルバンカーに近い武器であるため剣戟を受け流せる形状をしていない。しかし、もとより近づいた目的はこれを当てる事ではない。
シールドバリアーが大幅に削られる。投桃報李の使用によるエネルギー消費も含めればエネルギーはもう6分の1も残っていないという事実に焦燥が募る。
(いよいよ余裕がなくなってきた・・・!けど!)

「ここまで近づいてしまえば、こちらのもの!!」

その言葉と共に、“投桃報李”を両拳に展開させる。これが投桃報李の本当の使い方。

「ふんっ!!」
――がきぃぃぃん!!
「なっ!?ブレードが!」

――ISで殴り合いをするための技術だ。

先ずは拳を一発。防ごうとしたブルー・ティアーズのインターセプターが大きく後ろに弾かれる。投桃報李のバリアーは単純な力場と斥力を持った力場の二種類を形成できる。斥力バリアで覆った拳は物や相手を弾き飛ばすことに、そして――通常バリアは直接攻撃に向いている。

「せやぁぁぁぁ!!」
――ガキャァァン!!
「きゃあっ!?」

一瞬呆気にとられたその隙を逃さずもう一発。今度は胸の中心部に叩き込む。絶対防御で防がれるが、バランスは未だに崩れたままだ。ならば――

「う・・・おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「なっ・・・きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

全身の筋肉をフルに活用して拳を連打!連打連打連打!!連打連打連打連打連打連打連打連打連打連打連打連打!!!
有らん限りの集中力と神経を総動員してひたすらに殴りつける。それは体当たりに並ぶほどに原始的な戦闘方。こんな動きをISが出来るのか、と疑ってしまうほどに速く猛撃を加え続ける。IS越しにも拳を握る確かな感触と手ごたえが響く。
“投桃報李”を発動し続けることによって少ないエネルギーがさらに減少してゆくが、それを上回る勢いでブルー・ティアーズのエネルギーも削れてゆく。
セシリアは抵抗を試みるが、この状況下では最早為す術がないのかただ防御を固めている。



 = = =



『うぅぅああああああああああああああ!!!』
「な、何という荒々しい拳だ・・・」
「ふむ・・・あいつめ、また腕を上げたようだな」
「おぉー・・・世紀末救世主になれそうなラッシュだねぇ」

風花の嵐のような猛攻。時折蹴りなども織り交ぜながらも次々に拳を叩き込むその姿はまさに闘鬼。大地を揺らすような咆哮も相まって、今のユウはまるで別人のように勇ましかった。

「お、織斑先生!何ですかあの動き!?ISで相手をタコ殴りなんて前代未聞ですよ!?」
「うむ・・・あれが結章の戦闘スタイルだ、としか言いようがないな」

千冬はユウの本気を何度か見たことがある。彼の戦法はいわゆる剛の拳を前面に押し出した戦い方で、一度懐に入れてしまうと相手が倒れるまで殴り続けるというシンプルすぎるもの。
そこにあえて普通ではない点を挙げるなら、ユウの拳を放つスピードであろうか。
とにかく拳を振り抜く動作と次の拳を叩き込む動作が速い。世界最強の千冬が言うのだから相当なものである。彼との戦いに手慣れた者でなければ初見であのラッシュから逃げられるものは難しいだろう。
しかし、千冬の表情は硬かった。

「だが・・・このままでは結章は負け可能性が高いな」
「えっ!?あんなに攻めてるのにですか!?」
「そうだ。いや、攻めているからかな?」

そう言って目を細める。モニターの先で戦うユウはそれに気付いているのだろうか。いや、恐らくわかっていてやっているのだろう。どちらにしろ今の風花に取れる戦法はそれだけなのだから。



 = = =



「おりゃぁぁ!!てぇい!!ふっ!!はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
(ぐっ・・・!攻撃に切れ目がない!これでは為す術が・・・!!)

まるで無数の拳が同時に殴りかかっているような錯覚さえ覚える突き。
普段の素行からは想像もできないほどに激しく荒々しい動きに見学者たちは驚きを隠せなかった。ユウの“格闘技”というのがどの程度のモノなのか、それを誰も知らなかったからだ。この場で彼の苛烈な一面を知っているのは千冬と、恐らく会場のどこかで見学しているであろう兄のジョウ、そして未だ気絶している一夏だけ。

本来、ISで徒手空拳は無謀な行為とされる。それはISが想定していない戦闘方法であり、実際にやると腕部にかかる負担があまりにも大きいだけでなく反動を打ち消すためにシールドエネルギーまで消費するからだ。だが、この“投桃報李”はそれを可能にさせる。強靭なバリアで包まれた拳は、バリア自体の強度も相まって立派な武器と化す。
そもそも、風花とは本来こういう機体なのだ。“極限まで人体の動きを模した格闘専用IS”という時代錯誤の馬鹿馬鹿しいコンセプトのもとに、極限までタイムロスを削り取った反応速度と関節の自由性と柔軟性、大きすぎて使いづらい脚部の小型化にまるで本物の手のように精巧につくられたマニュピレーター。今までのISでは出来なかったごく小さな領域の技術が反映可能となっている。代償として過敏すぎる反応にパイロットがついていけないという本末転倒な結果になったため倉庫で埃をかぶることになったが、今こうして動いている以上は成功と言えるだろう。
全てはこの動きのために。全てはこの連撃のために。そしてたった今、風花は今その本懐を遂げている。

(思い通りに動く・・・寸分のずれなく、僕の感覚にぴったりISがついてくる・・・!)

ユウは全力で体を動かしながらも、不思議な感覚に囚われていた。今まで、人生で一度も体験したことのない戦いをしている、という得も言われぬ昂揚感。今の自分ならどこまでも行けるという、根拠のない確信。
それは、今までIS操縦者の誰もが見たことのない光景だった。いや、世界の誰しもが見たことのない世界だった。この広い世界で、ユウと風花だけが見ている世界。

(これがIS・・・!知らなかった。こんな凄いものを僕は動かせるんだ!)

いける。僕はまだ進める。風花(こいつ)と一緒ならどこまででも――
ユウはここに来て初めて、IS《インフィニット・ストラトス》という存在に夢中になった。


《風花、シールドエネルギー残量ゼ――》

「でぇぇぇぇぇぇぇぇいッッ!!!」

最後の拳がブルー・ティアーズに突き刺さった。その一撃は直撃し、八方の彼方へと吹き飛ばすような衝撃と共にブルー・ティアーズをアリーナのバリアに叩きつけた。



 = = =



「え、えーっと・・・これ、どうなったの?」
「データ上は風花のシールドエネルギーが先に0になっています。ただ・・・」
「最後の一撃でブルー・ティアーズのエネルギーもゼロになってしまいましたね」

モニタールームは何とも言えない空気が漂っていた。あっという間かつ予想外の事が起こりすぎためか、全員がいまだに戸惑いを隠せない。モニターの先には、あの後エネルギー切れで真っ逆さまに落下して地表に激突し意識を失ったユウと、同じくエネルギー切れで動けないセシリアの姿が映っていた。
千冬はため息をつく。“投桃報李”のバリアは元はと言えばシールドエネルギーを攻撃用に転換したものだ。つまり、殴れば殴るほど自分のエネルギーも少しずつ削っている。ある意味自滅技である。とはいえ、他に有効打もなかったユウにとってはそれしか出来る戦法がなかったのだろう。勝敗を分けたのはBT兵器を避け切れなかったことと最初の体当たりで突撃を警戒されてしまったこと。殴り合いを始めた時点であと少しシールドエネルギーがあれば結果は変わっていたのだが・・・無念。
沈黙に包まれるアリーナ内。困った3人はとりあえ千冬の方を見やる。

「通常ルールなら少しでも先にエネルギーが尽きたほうの勝ちだ。だが、物事には例外がある・・・例えば――」


『この勝負、引き分けですわ・・・いえ、むしろ心情的には敗北感すらありますが』


「――勝者側が試合結果に不服を申し立てた時だ。今回のようにな」



 = = =



「全く、もう何もかも馬鹿馬鹿しく思えてきましたわ・・・」

けほけほと軽く咳をしながら、視線の先――奇しくも一夏と同じ体制で突っ伏したまま動かないユウを見つめる。
正直な所、セシリアは最初から女尊男卑的な思想を持ち合わせてはいなかった。にも拘らずクラスで二人にあんなことを言ったのは、単純に男性二人が実力的に代表に相応しくないと思ったこと。そして二人の器量がどんなものかを試してみようと思ったためである。
結果、二人はただの臆病者ではないことを見せつけた。そしてこの試合でも、たった1週間で自分相手に此処まで肉薄するほどの底力を見せつけた。・・・正直、ここまで無茶苦茶するとは思わなかったが。
素人ながらセンスと剣技で粘り、最後まで食い下がった織斑一夏。
そして、あわや敗北というところまで持って行かれた残間結章。

BT偏光制御射撃(フレキシブル)強襲仕様(アサルトパック)もわざわざ封じず素直に使ってもよかったかしら・・・」

流石に初心者相手に全力を出すのは気が引けたため幾つかの装備と技術を封印して挑んだのだが、これでは手加減する方が失礼だったかもしれない。

「・・・ふふっ、貴方達の真っ直ぐさがちょっと羨ましいわ」

こんな馬鹿正直で滅茶苦茶なクラスメートが居るのなら、IS学園(ここ)では退屈することなど無いだろう。
少なくともあのつまらない母国や空っぽの実家よりは。



かくしてクラス代表決定戦は良くも悪くも一夏とユウの名を改めて学園中に轟かせたのであった。
後の人間の中には“ここから男の反撃が始まった”と高らかに自慢するものもいれば、“この頃から女が自分たちの在り方を見つめ直し始めた”としみじみ語るものもいる。ただ一つ言えることは、この戦いは静かに世界中へと波紋を広げていったという事だろう。 
 

 
後書き
風花の花はうp主のイメージでは桃の花です。桜にしようかと思ったけど暮桜と被るし・・・
今はそうでもないですが、いずれパワーアップしたらその名に相応しい戦いをする予定です。

アサルトパック・・・オリ装備です。出番はないかもしれないけどまぁ「最終決戦仕様」みたいなやつです。ストライク・ガンナーとは別物で、セシリアが母国で有志と共に作成したパッケージでもあります。 
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