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ソードアート・オンライン~漆黒の剣聖~

作者:字伏
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コラボ編
  番外編 剣聖と紫眼の出会い

 
前書き
どうも皆さんお久しぶりです・・・まずはじめに謝罪を――

一か月とちょっとの間、更新が途絶えてしまい申し訳ありませんでした!!

何かと現実の方が忙しくなってしまいなかなか手が付けられずにいたのですorz
本当に申し訳ありませんでした。

さて、気を取り直して・・・フェアリィ・ダンス編が原作突入する前にコラボ作品を一つはさみたいと思います。
今回のコラボは『pixiv』様でソードアート・オンラインの二次創作小説を手掛けている詩先生の作品とコラボしてみました!サイトの垣根を越えたコラボ作品です!!詩先生の作品を簡単に紹介しますと、≪紫眼≫の二つ名を持つ女オリ主であるレイちゃんがいろいろと奔走するお話です。
そして、今回のコラボについて簡単に説明しますと――

今回のコラボはパラレルワールドものではなく別世界軸つまりIFストーリーものになっております。なので本編の設定を用いつつも、本編とは異なるストーリーが展開されていきます。

みたいな感じです。まぁ、長ったらしく書いても仕方がないので、詳しくはあとがきで説明することにしましょう!では、本編をどうぞ!!
※今回の作品の時間軸はフェアリィ・ダンス終了後となっております。 

 
「インプで凄腕の傭兵プレイヤー?」

ある日、真っ暗で有名なインプ領の中にある一際立派な建物、領主館。そこの執務室にソレイユはいた。なぜソレイユがそんなところにいるのかというと、インプ領主であるルシフェルに呼び出されていたからである。

「ああ、キャラ作ってすぐに脱領したみたいだな」

「ふーん・・・で、何でおれが呼ばれたんだ?」

「連れてきてくれ」

誰を、とは推して知るべきだろう。

「・・・連れ戻す気か?それとも雇う気か?」

「いんや、どっちも違うぜ。前者は俺の掲げた方針に反するからな。後者は雇う理由が見つからない」

「なら、なんでそんな傭兵を探して来いなんて言うんだよ?」

「ただ純粋に会ってみたいだけだ」

「・・・なら、自分で探しに行けよ」

「仕事が忙しいんだ」

確かに領主とは種族を率いる代わりにやらなければならない事が山ほどある。会うたびに愚痴られているのでかなりの量の仕事なのだろう。

「ところで、何でおれなんだ?」

「お前って色々と人脈があるだろ?闇雲に探すよりもそういったものを持っているやつに頼んだほうが早いと思ったからだ」

「・・・はぁ・・・わかった。何時連れてこれるか解らないから捕まえたら連絡するわ」

「了解。吉報を待ってるぜ」

それからソレイユは領主館を後にし、知人のシルフのプレイヤーに連絡を取った。



『その凄腕のプレイヤーはソー君も聞いた事があるはずだゾ』

『≪紫眼≫だっけ?確かに有名だが・・・』

『そういう意味じゃなくてだナ。もっと前から知ってるって意味だヨ』

『・・・・・・おい、それって・・・これ以上先は50000コルって、500じゃないのかよ。ほい』

『まいドー。そうだヨ、今ソー君の思った事は全部あってるよ』

『SAO帰還者、それも攻略組だった奴、か。あんま面識なさそうだな』

『まァ、ソー君はあっちに掛りっきりだったからナ。ついでに言えバ、キー坊やアーちゃんとも知り合いだナ』

『わかった。先ずはキリトたちをたどってみる事にするよ』

という会話をスイルベーンで≪鼠≫の異名をもつシルフプレイヤーと交わしたのが数分前の事。現在ソレイユはフレンドリストを確認したところ、二人がログインして居るので好都合、という事で世界樹の上部にあるイグドラシル・シティにあるキリトとアスナが借りている部屋に向かって高速で移動中であった。
それから数十分後、イグドラシル・シティにあるキリトとアスナの愛の巣(仮)に到着したソレイユは玄関の扉をノックした。

「はーい」

そう言いながら出てきたのはアスナであった。アスナにとっては意外すぎる人物の訪問なのか、驚いた顔をしていた。

「あれ、ソレイユ君?」

「ほかのだれに見えるんだよ?ちょっと聞きたいことがあってきたんだ。キリト君は中か?」

「う、うん、今学校の課題をやってるよ。でも珍しいね。ソレイユ君が私たちに聞きたいことなんて」

「SAO時代の攻略組のことについてだからな」

これまた意外すぎる質問のためか鳩が豆鉄砲をくらったかのような表情をするアスナ。そんなアスナに――

「・・・入っていいか」

と、催促したところ、大慌てでソレイユのことを招き入れてくれた。部屋に上がると、キリトが画面を睨みながらうんうん頭を捻っていた。

「こ、これかな?」

「残念、はずれだ。答えは二番だよ」

「そ、そうか・・・やっぱり日本史とか苦手だ。サンキューな、ソレ、イユ?」

そこで初めてソレイユが来ていることに気が付いたキリト。こちらも鳩豆な顔をしている。

「にぃに!!」

そんなキリトを放っておいて、嬉しそうな声を上げながら抱きついてきたのは原寸大の姿になったユイだった。抱き着かれたソレイユはユイの頭を二、三度撫でた後、机を挟んでキリトに向かい合う形で座った。ユイはソレイユの膝の上である。ちなみに明日菜はキリトの隣をきっちりと確保していた。

「そ、それで、一体どうしたんだ?」

「ああ、実はな・・・≪紫眼≫って呼ばれているプレイヤーを探してんだ」

「≪紫眼≫ってレイのことか?」

「レイ?≪紫眼≫はSAO帰還者で攻略組だったって聞いてるんだけど?」

「だから、レイのことだろ?」

「レイのことよね」

「お姉ちゃんのことです!」

どうやら、レイなる人物が≪紫眼≫と呼ばれているプレイヤーらしい。だが、その前に――

「いや、おれはそのレイってやつに会ったことがないんだけど・・・」

「え・・・そうなのか?」

「噂ぐらいは聞いたことはあるが・・・つか、お前らおれは攻略組じゃなかったこと忘れてない?」

「「あっ・・・」」

「じゃあ、にぃにはお姉ちゃんと見たことがないんですか?」

「ないな・・・って、お姉ちゃん?」

「はいです!レイお姉ちゃんです!」

「ふーん・・・で、そのレイってやつはどんななりしてんだ?」

ソレイユの質問にキリトは当たり前のごとく答える。

「ソレイユと同じインプだぜ」

「・・・・・・はぁ、馬鹿か、お前は。そういうことを聞いてんじゃないんだよ。そのレイってやつの特徴を聞いてんだ」

呆れたように言うソレイユ。キリトは誤魔化すように笑うと改めて≪紫眼≫の外見的特徴を口にする。

「え、えーっと、白髪のポニーテールにスミレ色の瞳が特徴だな」

「武器は何を使うんだ?」

「大剣、だったと思うけど・・・」

「確か、特殊なカテゴリの武器じゃなかったかしら?」

あいまいなキリトの言葉にアスナが補足を付ける。

「特殊カテゴリの武器、ね。ふぅーん。まぁ、外見的な特徴がわかればいい、か。そんじゃ、お邪魔したな」

そういって部屋を出て行こうとするソレイユ。玄関となっている扉を開けたら、黒い服装で白髪のポニーテールをしたプレイヤーが軽く驚いた表情で立っていた。



「まぁ、早い話が、だ・・・ルシフェル、インプ領主があんたに会いたいそうなんだ」

「はぁ・・・」

あれから、玄関で行き会ったプレイヤーが≪紫眼≫のレイであるということがわかると、ソレイユはキリトとアスナの部屋を借りて要件を済ますことにした。キリトとアスナ、ユイは少し離れて事の成り行きを見ている。

「それって、傭兵として雇いたいってこと?」

「いや、違うよ。ただ純粋に会ってみたいっていう領主の我儘だ」

傭兵をしているプレイヤーらしい見解をソレイユは真っ向から否定する。それを聞いたレイはなんとも言えない表情になる。

「まぁ、あれだ・・・俺個人としてはどっちでもいいんだ。とりあえず、今じゃなくていいから、行くにしても行かないにしても一応連絡はくれ」

そう言い残して、ソレイユは今度こそキリトたちの仮住まいを去っていく。もちろんレイとのフレンド登録は忘れずに。

◇◆◇◆◇

「・・・≪Soleil≫・・・ソレイユ、ねぇ・・・」

今日、いきなり出会ってフレンド登録をした自分と同じ闇妖精族のプレイヤーの名前を、私はぼんやりと眺めていた。

「・・・この名前で闇妖精族とか、狙ってるのかしら?」

「ん?何か変なところあるのか?」

私が今いる家の主――キリトが不思議そうな顔で訊ねてくる。すると、そんな彼とアスナの娘にして、私の妹(的存在)のユイちゃんが、わかりやすく解説してくれた。

「パパ。にぃにの名前の≪ソレイユ≫、スペルは≪Soleil≫となるのですが、これはフランス語で太陽を意味しているんです」

「あぁ、そう言われれば、わかる……」

「でもソレイユ君はSAOの時からその名前だし、そこまで深くは考えて無いんじゃないかな?」

なるほど、とアスナの意見を受けて、私はフレンドリストを閉じた。そして、彼の名前よりも気になる点を、二人に訊ねる。

「さっきの、ソレイユってさ・・・SAO生還者なのよね」

「あぁ、そうだよ。向こうもレイのことあんまり知らなかったみたいだけど、会った事なかったっけ?」

「ええ・・・。私がボス攻略に本格参加し始めた頃には、もう彼は参加しなくなってたみたいだしね」

「でも、噂ぐらいは聞いたことあるよね?・・・≪剣聖≫って二つ名も」

「・・・≪剣聖≫・・・ねぇ」

みんなは、その二つ名を彼のプレイスタイルやスキル構成、または彼が所持していたユニークスキルとして捉えているはず。
でも、私はその向こう側にある、別の理由を知っていた。

――かの《黙示録の竜》を、そして《流星》の名を冠したもう一人の天才を討った、もう一人の英雄。

「・・・あのソレイユが、≪剣聖≫で間違いないのよね?」

「ああ。間違いないけど・・・何か気になることがあるのか?」

「んー・・・ちょっとね」

私は悟られないように軽く返すだけでこの話題を終わりにした。唯一人、私の考えたことを理解しているだろうユイちゃんが、心配そうな視線を私に向けてくる。

「(・・・別に、心配するようなことにはならないわよ)」

という気持ちを込めて微笑みかけると、彼女も安心したようにニコリと微笑んだ―――。


――それから数日後。私はある人物をメッセージで呼び出し、今は来るのを待っていた。
場所は、世界樹上――《イグ・シティ》の下にある樹の枝。
その内の一本に腰掛けていると、燐光を巻きながら一人の闇妖精が舞い降りて来た。
ハネッ毛で腰までのびているダークパープルの髪をポニーテールにまとめ、結び目に鈴のついた簪を差している。
服装は黒のシャツにカーゴパンツ、その上から漆黒色の長羽織を着て、首に黒色のマフラーを巻いている。
そして、私と同じようなアメジスト色の瞳をしているプレイヤー――《剣聖》ソレイユ。

「待たせちゃった?」

「そうね。二、三分ほど待ったかしら?」

「それは申し訳ない」

肩を竦めながら謝るが誠意が感じられない。彼は私の座る枝の正面にある別の樹の枝に腰掛けた。

「それで、どうしたんだ?まさか、ルシフェルと会う気になったわけでもないだろ?」

「へぇ・・・鋭いわね」

“彼ら”から聞いていた通り、観察眼にも優れているらしい。
曰く「レイを男にしたら、彼ができるんじゃないだろうか・・・?」とか何とか・・・。失礼な話ね。

「まぁ、インプ領主さんに会っても良いとは思ってるんだけどね。 その前に、君に興味がわいちゃったのよ。・・・≪剣聖≫ソレイユ君」

「キリト君たちに聞いたのか?あんたみたいな人が興味持つことなんて何もないと思うんだけどなー」

溜め息をついてそう答えるソレイユだったけれど、私の次の言葉に表情が一変した。

「そう?興味あるわよ?・・・君はあの≪アポカリプス≫に選ばれたプレイヤーなんだから」

「・・・・・・ふぅーん」

その言葉に、周囲の空気もピリピリとし始める。顔は笑っているが、静謐で荘厳な雰囲気をまとったソレイユに相対する。並のプレイヤーなら、この気に当てられてしまうでしょうね。
でも私はそんな彼を真正面から受け止め、ニコリと笑みを浮かべて返した。

「こう言えばわかるかしら・・・。『恭介さんは強かった?』」

「・・・さぁ、どうだろうな。それよりも――」

「あ、先に言っとくけど・・・今あんたが思い浮かべたやつの、もう一つの方ね」

きっと、私がSAO創始者の茅場晶彦、そして高嶺恭介の二人の関係者だという事までは気付いたはず。でも、今のままだと私が高嶺の関係者だと思われていそうだったから、訂正を加えた。

「それじゃ、あんたは――」

「言っとくけど、≪晶彦兄さん≫達のことで私に同情するのは、大間違いだから。憎まれこそすれ、その反対の感情を向けられるような人間ではないのよ・・・」

――それから、私達は世界中の枝に腰掛け、取りとめの無い話をして過ごしていた。
彼のSAOやALOに対しての意見は、キリト達とはまた違った角度からのアプローチも多く、実に興味をそそられる。
そして、話している内にあの二人が言っていた意味もわかってきた。

「(顔とか性格とかじゃなく・・・“在り方”がどこか似てるのかしらね・・・)」

最初は≪剣聖≫としてかの世界を生きたプレイヤーとして興味を持って、こうして呼び出した。
けど、今はどうも≪ソレイユ≫として、彼に興味を抱いている自分がいた。
そんな事を考えながら彼を見ていると、不意に指を動かしてウィンドウを操作している。

「・・・誰かからメッセージでも届いたの?」

「ああ、ルシフェルからだったよ。『噂のプレイヤーはまだなのかー』って催促のメッセージ」

「へぇ・・・じゃあ、今から会いに行きましょうか?」

言いながら、枝の上に立ち、翅を広げる。

「おれは構わないけど・・・予定とかはないの、レイちゃん?」

「無いから言ってるのよ。それとも、ソレイユの方が都合悪いの?」

「いやいや、そんなことないよー」

言って、ソレイユも立ち上がると翅を広げる。そこからインプ領の方角に向けて滑空していった―――。

◇◆◇◆◇

「つーわけで、おれの隣にいるのがあんたお探しの傭兵だよ、ルシフェル」

ルシフェルがいる執務室に入るなり、彼の第一声がそれだった。イグドラシル・シティからインプ領へ直行した二人はさっそく領主館へと足を運んでいた。

「初めましてだよな。俺はルシフェル、ソレイユから聞いてると思うがインプ領主をやっている。今日は悪かったな、急に呼び出しちまって」

「こちらこそ、初めまして。レイよ・・・それで、なんで呼び出されたのか聞いてもいいかしら?」

「ん?ソレイユから聞いてねぇのか?」

「聞いたけど、本当にそれだけ?」

「ああ、そうだよ」

レイの質問を簡単に肯定するルシフェル。それに呆気にとられるレイ。それはそうだろう。腕利きの傭兵ということで様々な種族の領主と契約してきた彼女からすれば、ただ会いたいだけという理由でこんなところに召喚されたのだ。ソレイユから聞いた時は冗談かと思ったが、そうではなかったらしいということでレイは溜息を吐いた。

「呆れた。本当に会いたいだけって理由で召喚されたのは初めてよ」

「そいつは悪かったな。まぁ、もっと言えば実力も見てみたいっていうのが本音なんだがな」

「なら、ヨツンヘイムにでも行けばいいんじゃないか?」

そこで今まで静観を決め込んでいたソレイユが口を開いた。その言葉に反応したルシフェルとレイだったが、その温度差はかなり激しかった。ルシフェルは名案とばかりな表情で、レイはなんで余計なことをと言いたそうな表情だった。

「名案だな、ソレイユ!といいたいんだけど、レイっちは大丈夫なのか?」

ルシフェルの言いたいことは理解できる。なのでこれ以上面倒を増やしたくないレイは嘘を言ってこの場を離脱しようとしたが、≪剣聖≫と呼ばれたプレイヤーがそんな隙を許すはずがなかった。

「さっき、この後の予定は何もないって言ってたぞ」

「ちょ、ちょっと・・・!」

「そうか!よし、なら今から行くぞ。メンバーは俺、ソレイユ、レイっちとレヴィアで大丈夫だろう」

「なら、おれたちは必要なもん買ってくるわ」

「おう。じゃあ、三十分後に領主館前に集合な」

「あいよー」

そう言って、レイの手を引いて執務室を出て行くソレイユ。手を引かれているレイがいろいろ言っているが、領主館を出るまで無視し続けた。



「どういうつもりよ!」

「いや、だって暇なんでしょ?それに実力も見て見たかったしな」

「むしろそっちが本音でしょ、まったく・・・」

詫びれた様子もなく、むしろ殴りたいほどいい笑顔でそう言うソレイユにレイは殺意がわいたが、決まってしまったことにぐだぐだと文句を言うほどレイは子供でもなかった。

「それで、まさか四人で行くなんて本気で思ってないでしょうね」

「何言ってんだ、そんなの当たり前だろ」

その言葉に一瞬悪い予感が外れて安心するレイだったが、ソレイユと自分の間に見解の相違があるように思えた。そして――

「四人で充分だろ」

それは正解だった。そして、当然のごとくレイはソレイユに詰め寄った。

「ちょ、本気なの!?あのダンジョンは――」

「ALOでも屈指の難易度を誇ってるんだろ?でも大丈夫だって。実力を見るだけだって言ってたからそこまで深くは潜らないだろ」

「そういう問題じゃなくて・・・!」

「必要なものはポーションの類か。結晶アイテムも一応持っていくか」

まぁ、そんなこんなでアイテムをそろえ、約束の三十分後に領主館前に行くとルシフェルとレヴィアが待っていた。本当に四人で行くという事実――さらに言えば、領主であるルシフェルも同行するという事実――を改めて突き付けられたレイは疲れたように溜息を吐いた。

「おっ、来たな。先に紹介しとくわ。レヴィア、そっちにいる白髪のプレイヤーが噂の傭兵だ」

「へー、あの・・・初めましてだな。あたしはレヴィア。よろしくな」

「・・・レイよ。こちらこそよろしく」

「んじゃ、自己紹介も終えたところだし、早速出発しますか」

そういって領地を飛び立っていくソレイユたち御一行。一人納得がいない表情のプレイヤーがいたがそこを気にするプレイヤーは生憎と一人もいなかった。

・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・

「・・・ねぇ、聞きたいことがあるのだけど、いいかしら?」

「どうしたんだ、レイちゃん?」

「私はてっきり二、三匹相手にして帰るものだと思ったわ」

「ああ、おれもそう思ってた」

「領主とレヴィアさんの実力もここまで来る時に見せられたから、あの二人がかなりの実力者だということもわかったわ」

「それは何よりだ」

「だけど、今言いたいことは一つだけよ」

「それは?」

「・・・今のこの状況はなんなのかってことよ!!」

辺りを見回してみると人型の巨人がひい、ふう、みい、よお、いつ、むう――なんと六体もいるのだ。しかも囲まれている。

「そうだなー。さすがにこれは予想外だ」

「・・・随分と余裕なのね・・・」

「そんな身構えてばっかりだと疲れるだけだよ?それに――」

一呼吸置き、ソレイユは口を開く。

「この程度、あの鬼畜フィールドに比べたらたいしたことないしな」

ソレイユの台詞が言い終わると、一体の巨人に轟雷が降り注いだ。連続して落ちる黒い雷だが巨人のHPをすべて削りきるには至らなかった。半分ほど残して雷は止んでしまい、それを喰らい続けていた巨人が雷を落とした張本人へと剛腕を振るう。

「あー、気を付けた方がいいぞー。敵は俺だけじゃないんだからさ」

そういって回避行動をとらないインプ領主殿。それを見たレイが助太刀に入ろうとしたが、それを肩を掴んでソレイユが止める。ソレイユの信じられない行動に文句を飛ばそうとするレイだったが、次の瞬間に聞こえたのは硬い物が砕け散る音だった。その音がした方を向くと欠伸をしているルシフェルと地面に拳をつきたてたレヴィアの姿、そして巨人の成れの果てと言うような感じでポリゴン片があたり一帯に舞っていた。

「ふぁーぁ。さーてと、本腰でも入れますか。大まかな作戦としてはソレイユ、レイっち、レヴィアが巨人たちを撹乱。その隙に俺が特大の魔法をぶっ放す。それで削りきればよし、もし削りきれなかった場合は各々で仕留めるということで。それでいいかー?」

「おれは問題ないな」

「あたしもだ」

「レイっちは?」

「・・・問題ないわ」

そういって巨人に肉迫していく前衛三人。巨人を相手にしながらレイは綿密な情報のもとでアインクラッドで戦い抜いてきた攻略組ではありえない大雑把な作戦だ、と思った。ここに来るまでルシフェルとレヴィアの実力は大体把握しているし、ソレイユから聞いたことだが最古参のメンバーだとか。ならば、ここの巨人のアルゴリズムを理解していることも容易く想像できる。だが、だからと言ってこんな少人数で巨人五体を相手にできるものではない。

「納得してないって顔してるな」

考えていることが顔に出ていたのか、隣で戦っていたソレイユがレイに話しかけてきた。

「・・・当然でしょ。いくら実力があるからってこんなの無謀もいいところよ!」

「まぁ、元攻略組からしたらそうだろうなー」

そういって巨人の剛腕をひらりと躱し、魔法の詠唱を開始する。

「エト・ムンダレット・シー・インセンディウム・アニマ・ポルータ」

「―――――♪」

詠唱を唱え終えると、大量の焔が邪神を焼き尽くしていく。しかし、たかがその程度の攻撃で邪神が倒れるはずがない。そう思ったレイはソレイユの後から即座に魔法を詠唱。巨人の足元に巨大な水の竜巻が巻き起こった。だが、それで巨人が大人しくなるなど夢のまた夢であった。上半身を焔で、下半身を水の竜巻でダメージを喰らいつつも巨人は再びソレイユとレイに向かって剛腕を薙ぐように振るおうとしたが、その直前に巨人の頭上から落雷が降り注ぎ、巨人のHPを削り飛ばした。爆発する巨人。舞い散るポリゴン片。これで残り四体となった。

「レイっちー。俺らのことは気にせず好きにやってみー!できる限りのサポートはするからさー!」

とは、先ほど落雷をおとした人物の台詞である。

「だってさ、どうする?」

「この状況でどう断れっていうのよ!」

ごもっともな意見である。それからレイの雰囲気が変わった。今までは困惑しながら戦っていたのだが、今は歴戦の戦士のように感じ取れる。それを見てソレイユは微笑しながら言った。

「そんじゃ、お手並み拝見といこうか。がんばってね≪紫眼≫のレイちゃん♪」

「あんたこそ、簡単にくたばったりしないでよ、≪剣聖≫ソレイユ」

「こっちでは≪剣聖≫ではないんだけどねー」

残り四体なので自然に一人いた一体ずつ相手にする流れになっていた。



「俺の相手はお前さんか・・・まぁ、めんどくせぇし、レイっちの実力をじっくりと見たいのでさっさと片付けることにすっか」

そういって魔法を詠唱しだすルシフェル。ルシフェルには言い慣れた、一般プレイヤーには聞き慣れないスペルワードを紡ぐ。しかし、それを容易く許してくれるほどヨツンヘイムの巨人は甘くはない。当然のごとく、両腕の剛腕を使ってルシフェルに殴りかかっていく。だが、ルシフェルとて最古参の一人。並みのプレイヤーではないのだ。スペル詠唱をしながら巨人の剛腕をひらりひらりと躱していく。

「エンチャント:ブラック・ライトニング」

それはさながら死刑宣告のようだった。オーラを纏ったルシフェルは容赦なく次の魔法を口にする。

「≪ストリーク・デス≫」

何時ぞやのかませ犬相手に使った魔法である。巨人の頭上に暗雲が立ち込め、ゴロゴロと雷鳴が鳴り響いている。そして――

ピシャ、と光り、ドドドゴーンと連続して地鳴りが響く。

雷が止み煙が晴れると、そこに巨人の姿はなくただポリゴン片が舞っているだけだった。それを一瞥したルシフェルはたった一言だけ呟いた。

「あっけないものだな」

そう言って視線をレイが戦っている方へ向ける。

「さてさて・・・レイっち。君の実力、確と見極めさせてもらうよ」

それから、周りに注意を向けながらもレイが戦っている姿を見物する。手助けなど野暮なことは一切しない。



「ルシフェルの野郎・・・あれでまた邪神が増えたらどうする気だ」

邪神の剛腕を避けながらレヴィアは自種族の領主に悪態をついた。ルシフェルとは長い付き合いなのでスキル構成や好んで使う魔法くらい熟知している。そして、先ほどルシフェルが使ったのは間違いなく≪ストリーク・デス≫だろう。何重もの雷が降り注ぐ魔法で殲滅力という一観点で見ればすぐれている魔法ではあるのだが、演出が派手なのである。それが邪神ホイホイ等というものになりえるのはあれにだって簡単に理解できるはずなのに、なぜこんな場所で使うんだ、とさらに悪態を吐くレヴィアだったがすんでしまったことを言っても仕方がないので自分の闘いに集中することにした。

「つっても、こっちもそろそろ終わるんだがな」

レヴィアの言うとおり、巨人のHPは残り十分の一というところまで来ていた。そして、いまさら手を抜くなんてことはしないのがレヴィアである。

「フランマム・エト・ヴィオレット・エゴ・ジェンム・イグニス・ポテン・ティアム・ツァム・クィ・ラッソ・コクシット・オムニア・デテーリエ・エト・ミテーレ・アド・インフォルニウム・サービット・ウト・ボカント・アドバー・サリオス・ノスト・ロス」

そして、巨人は巨大な炎に包まれる。ソレイユの焔と違い全身を灼いていく。さらにルシフェルとは違い一瞬で相手を消し飛ばすのではなく、継続的に相手のHPを奪っていく。それでもあがく巨人であるが徐々にHPは消滅していき、やがてゼロになり、巨人は破裂してポリゴン片となった。

「まっ、こんなもんだろ」

頼もしい御言葉を残すレヴィア。さすが、ルシフェルと共に最古参として生きる者は違うということが窺えた。



「トンキーでも召喚してみようかな」

なんて呟いたのはソレイユ。巨人を相手にしながら何呑気なこと言ってんだ、という奴もいるかもしれないがソレイユはいたって真面目である。

「指笛でも鳴らせば来てくれんかな」

ちなみに言っておくが、ソレイユは巨人と対峙している最中である。もっと言えば、ソレイユを倒そうと巨人は剛腕を振るっているが、当のソレイユは涼しい顔してその悉くを避けている最中である。

「ま、ちゃっちゃと片付けますか」

ようやく戦う気になったらしい。ちなみにトンキーを召還する案はソレイユの中でボツになった。

「よっと」

巨人が振り下してきたうでをひらりと避け、すかさずその上に飛び乗り走って腕を伝って顔面へとたどり着く。走った勢いを利用して、腰に差してある二刀の内の一刀≪エクリシス≫で抜刀術を繰り出していく。

「あー、やっぱ無理かー・・・どうもベガみたいにうまくいかないんだよなー」

だが、思うようにいかなかった。ALOのダメージ計算には≪武器が振られるスピード≫でダメージが変わる。ソレイユが知る限りこのALOで最高攻撃速度が出せるのはベガである。だからこそ、ベガの技を見よう見まねでやってみたのだが、やはり慣れないことはするべきではなかった。

「あとで教わろうかな・・・」

割と本気でそう考えるソレイユであるが、今は巨人の相手をしなければならないときである。先ほどの勢いが余って、現在ソレイユは落下中。だが、着地寸前で一瞬だけ翅を使い無事に着地する。そして、改めて巨人に向きなおった。

「んじゃ、とっとと死んでくれ」

そして、もう一刀の刀≪ザ・ネームレス≫を抜いた。滅多に見せることのない二刀流。今回は特別だ、と言いたげにソレイユは二刀の黒刀を煌めかせた。



「――――♪」

レイのもつシステム外スキル≪神速詠唱≫で即座に魔法を詠唱し、巨人の隙を作りながら剣で物理ダメージを与えていく。ルシフェルやレヴィアとは違い、レイはソレイユと同じ魔法剣士である。後方に下がり魔法で支援することもできれば、前衛に上がり愛剣である伝説級武器≪バスターソード・オルタネティブ≫で斬りかかることもできる。

「でも、まさか巨人相手に各個撃破なんて作戦をとるとは思わなかったわ・・・」

しみじみと呟くレイ。それはそうだろう。ヨツンヘイムはALO屈指の難易度を誇っている。そこにポップする邪神級の巨人なんか到底個人で相手にできるようなものではないのだ。そう、そのはずなのだが――

「信じられないけど、認めるしかないわね」

チートどころかバグ級の実力を持つ者たちがいるということを、とレイは心の中で思うが、一つだけ頭の隅に引っ掛かるものがあった。

『この程度、あの鬼畜フィールドに比べたらたいしたことないしな』

巨人との戦いが始まる前にソレイユが口にした言葉である。その言葉の真意は謀りかねるが、大体言いたいことは理解していた。

「(フィールドをクリアっていうんだから、恐らくジェネシアスのことよね・・・あそこってそんなに難しいところなのかしら?)」

ジェネシアスを体験したことがないレイはそう思わざるを得ない。だが、それをジェネシアスをクリアした三人が聞けば間違いなくこう答えるだろう。神槍曰く『無理ゲー一歩手前』。瞬神曰く『死にゲー』。剣聖曰く『鬼畜フィールド』。だが、今はどうでもいい、ということで思考を戦闘に切り替える。

「やぁぁああああああ!!」

気合一閃。通常の攻撃から≪バーチカル・スクエア≫を放った後にできた大きな隙をつく形でジェットエンジンめいた効果音と共に突きが繰り出された。だが、それだけでは巨人のHPは消し飛ばせなかった。

「やっぱり、この程度じゃ駄目ね・・・ならば!!」

そう言って先ほどの≪ヴォ―パル・ストライク≫の勢いで出来た巨人との距離を猛ダッシュで詰めていく。巨人の剛腕をかいくぐり、懐に潜り込むと紫色のライトエフェクトがレイの愛剣を包む。

「イヤァァァァ!!」

その裂帛の気合とともに引き絞った剣を敵に向けて突き出しながら、つま先から手首に至る全身の回旋運動を切っ先に集中させる。≪デッドリー・ストライク≫。ヴォ―パル・ストライクの強化版にして、レイが編み出したオリジナル・ソードスキルである。全身の回旋運動によって生まれたエネルギーを、全て剣に集中させて、捻じ込むように穿つ必殺の突きが巨人に向かって放たれる。懐に潜り込まれた巨人にそれを避ける術はなく、直撃を許してしまう。が――

「なっ!?」

僅か数ドットを残して巨人のHPが残ってしまった。そのことに眼を見開いて驚くレイ。ニタリ巨人が笑ったようにレイは錯覚した。巨人が剛腕を振りかぶるのを見たレイは咄嗟に両目を瞑る。しかし、次に聞こえてきたのは何かが破裂する音だった。

「―――?」

恐る恐る目を開けると、そこに写っていたのはハネッ毛の髪をポニーテールにまとめ、長羽織を着ているプレイヤーの後ろ姿だった。



「さーて、と・・・戦利品はどんなのがでただろうな!」

わくわくといった様子で自分のウインドウを見つめるルシフェルだったが、特にこれと言って目立つものはなかった。レヴィアやソレイユ、レイもウインドウを確認していく。

「あたしは特になし」

「右に同じ」

「私は・・・グリモワールが出たわ」

ソレイユとレヴィアはルシフェルと同様目立ったものはなかったらしい。しかし、レイが予想外の言葉を口にした。それによって、話題は一気にそちらに移っていった。

「へぇー、邪神から出るのも・・・めずらしくねぇか」

「そうなの?あんまり見かけたことがないわよ?」

「まぁ、通常ならそれの出現確率って一%程度なんだが・・・ほぼ百%を叩きだした奴がいるからな・・・」

そう言って、ソレイユのことをジト目で見るルシフェルとレヴィア。察しのいいレイはレヴィアの言った人物が誰なのかを即座に理解した。その当人は素知らぬ顔で首をかしげているが。

「せっかくだし使ってみたらどうだ?」

「そうね・・・それじゃ、そうさせてもらうわ」

そういってアイテムウインドウからグリモワールを実体化させ、表紙の部分をタップして使用する。

【特殊魔法を習得します。よろしいですか?Yes/No】

表示されたそれのYesボタンを押すと本のページが自動的にめくれ、あるページが開かれた。そこには習得した魔法の名前が載っていた。

【攻撃性複合魔法『古より出し冷たき闇』属性:闇&水 割合5:5を習得しました】

「複合魔法かー。まぁまぁなんじぇねぇの」

「だなー。下手に強化魔法とかあてても属性が合わなければ持ち腐れもいいところだしな。因みに聞くが、特殊魔法の講義は必要か?」

ルシフェルにそう聞かれレイは頭を横に振った。

「大丈夫よ。ある程度なら知識はあるし、いざとなったらソレイユに聞くわ」

「(ある程度なら、ね・・・)」

何やら含みのある言い方であった。当然ソレイユがその違和感を見逃すはずもないのだが、まぁ、今この場ではどうでもいい事ということで頭の隅に追いやることにした。

「わかった。今日はこの辺で引き上げるとしよう。レイっちの実力も見れたことだしな」

それに反論する者はいなかった。その後、階段ダンジョンに向かおうとしたところでソレイユが回廊結晶を持っていたことを思い出し、階段ダンジョンを抜けるのがめんどくさいという理由から使用することとなった。



「おれはもうログアウトするけど、レイちゃんはどうする?」

回廊結晶で開いた回廊を渡った先はインプ領主館前だった。ソレイユの準備の良さに呆れながらもルシフェルたちと別れ――その際にフレンド登録を忘れずにしてから――ソレイユと領地をならんで歩いていたところでソレイユが口を開いた。

「私は今日習得した魔法がどんなのか見たらログアウトするわ」

「あいよ。そんじゃ、お先に上がるわ」

てっきりレイが習得した魔法に興味を示すものだと思っていたがその当ては外れてしまった。興味を示してもらえなかったことに少しだけ不満に思うレイであったが、ソレイユが手短な宿に入っていこうとしたところで待ったをかけた。

「ちょ、ちょっと待って、ソレイユ!」

「んー?どうした?」

「あ・・・えっと・・・その・・・あ、あの時は助けてくれてありがとう」

恥ずかしさのためか、はたまた別の感情があるのか頬を上気させながらお礼を言ってきたレイ。それを見たソレイユは一瞬だけ呆気にとられるが、すぐに微笑みながら口を開いた。

「どういたしまして」

◇◆◇◆◇

レイsideエピローグ

「・・・・・・ふぅ」

インプ領を離れ、サラマンダー領にほど近い砂漠地帯を飛び立ったレイが、短く息を吐いた。
ソレイユがログアウトした後、言った通りに習得した特殊魔法の試し撃ちに来ていたようだ。
属性が闇と水の複合魔法なので、効果の高い火属性のモンスターが多数ポップするこのエリアを練習場所に選んでいた。

「(・・・まぁ、詠唱ワード数が初級魔法でもかなりあるけど、なかなか相性良いみたいね)」

ウィンドウを開いて、この僅かな時間で稼いだ習熟度をチェックすると、前方に見えて来た世界樹下の街≪央都アルン≫に降り立つ。
今日はどこかで宿をとり、そこでログアウトしようと決めたレイは、アルンの大通りを歩いていた。
すると、目の前に彼女も良く知る一人の男性プレイヤーが、顔をニヤニヤさせて立っていた。

「・・・・・・」

レイは、その場で百八十度ターンを決めると、その男から離れようとする。しかし――。

「おーい・・・さすがにそれは酷いんじゃないかな?レイちゃん」

話しかけられてしまい、さすがにそれを無視するのも悪いと思ったレイは、再び体を半回転させて男に向き合う。

「・・・こんなところで、何してるんですか?恭介さん」

「こらこら。ここじゃあリアルの名前で呼ぶのはマナー違反だぞ?俺の名前は――・・・」

「言わなくていいです。知ってますから・・・・・・」

そのプレイヤーを操っている人物の名は、≪高嶺恭介≫。
レイ――月宮麗の兄である茅場晶彦とは同期で友達でライバルという、もう一人の天才がこの男だ。
SAO事件が起こる前、数回だけ面識があったが、なんとも掴みどころの無い人だというのが、彼女が持つ彼の印象だった。

「・・・ところで、今日は面白い人物と一緒だったみたいだな」

「・・・どこかで見ていたんですか?悪趣味ですよ」

「そんなこと言うなよ。もともと、彼に目を付けたのは俺の方が先なんだからさ」

言いながらバチンとウィンクをして見せる高嶺に、レイは冷めた視線を向けていた。
あの事件の後、現実世界を旅立った二人の天才は、良くも悪くも人間味を増しているように思える。
悪く言えば、キャラが崩壊しているということだ――。

「別に・・・目を付けたとか、そう言うことじゃないですよ」

「本当に、そうなのかい?」

「・・・・・・何が言いたいんですか?」

レイがじろりと睨みつけるが、この男はレイの本気の睨みにも全く怯まない、数少ない人物の一人であった。

「そうだな・・・。晶彦が知ったら、さぞ面白いことになるだろうな・・・とか、言いたいのかも知れないな」

「――っ!?」

だからこそ、顔に笑みを浮かべたまま、レイに対して不遜な態度のままそんなことも言えるのだった。

「・・・今日は遅いので、これで失礼します」

短くそう言うと、レイは再び男に背を向けて、アルンの大通りを足早に歩いて行ってしまう。

「ああ。またな、レイちゃん」

そう言って手を振っている男から、レイは一秒でも早く離れたいと思っていたに違いない。

何故なら、今の真っ赤に染まった顔を見られたら、
それで存分にからかわれてしまうことを、彼女は知っていたからだ―――。

◇◆◇◆◇

ソレイユsideエピローグ

≪紫眼≫レイとヨツンヘイムに行った次の日の深夜、ソレイユは単身でALOにダイブしていた。特にやることはなく、贔屓にしている鍛冶師に武器の砥ぎを頼んだり、トンキー使ってヨツンヘイムを散歩したり、スキルの熟練度上げなどをしていた。
そして、散歩がてらにイグドラシル・シティを歩いていると、見知った人物から声を掛けられた。

「久しぶりだね、ソレイユ君」

「・・・ああ、あんたか」

ソレイユに声をかけたのは医者のような雰囲気のある白いコートを羽織った男性プレイヤーだった。特に驚くことなくそのプレイヤーに答えると一度大きく欠神しながら口を開いた。

「で、珍しいな。あんたがおれに声をかけるなんて。大体おれに声をかけてくるのはあんたの相方なのにな」

「私も君に興味がないわけではないよ。ただ、私以上に彼が入れ込んでいるだけさ」

「ふぅーん・・・で、そんな人が急にどうしておれの前に現れるよ?」

行動の意図が理解できない、という意味を込めてソレイユが聞き返すと、白いコートを羽織った男性プレイヤー、アークライトは頷きながら言った。

「ふむ、少しばかり気になることがあってね。是非とも君とそのことについて話したいと思ったのでね」

「ふぅーん・・・なら、近くの喫茶店でも入る?」

そう言ってソレイユが指差したのは偶然目に留まったNPCが運営するカフェだった。どうする、という意味合いを込めた視線を受けたアークライトはいいだろう、と頷くとソレイユと共にオープンカフェに入っていった。



「で、聞きたいことって何よ?」

「うむ・・・昨日、君はレイ君と一緒にヨツンヘイムに行っただろう?」

「ああ、行ったな。つか、視てたのか。悪趣味もかまわんが、度が過ぎないようにな」

「安心したまえ。その辺りは心得ているよ」

「あっそ」

得意げに言うアークライトにソレイユは簡素に返事を返す。そして、少し話が脱線していたので本題に戻すことにした。

「で、それがどうしたのよ」

「うむ。このゲームでも屈指の難易度を誇るあのダンジョンであれだけの動きができるのは称賛に値する。改めて君のすごさを実感させられたよ」

「・・・おれそんな目立った動きしてなかったと思うけど?」

「そんなことはない。戦っている最中でも周囲に気を配りいち早く味方の危機に駆けつける。言えば簡単だが行うとなると簡単ではないと思うがね」

「・・・それはどうも」

賞賛の言葉にそっけなく返すソレイユ。だが、それに気にせずアークライトは言葉を続ける。

「しかし、一つ分からないところがあるのだがね・・・」

「?」

「なぜ、あの時レイ君を助けに入ったのだね?」

それを聞いたソレイユはアークライトが言わんとしていることが分かった。通常のパーティーなら仲間だから、と答えるだろう。だが、ソレイユはそういったことは一切しない。仲間と言えど剣を握っている間は助けに入るようなことはしないのだ。
つまりアークライトは君は仲間を助けに行くような性格だったかね?と暗に言っているようなものである。

「そうだなー・・・生半可な答えじゃ、あんたは満足しそうにないしなー・・・ふぅー・・・」

そう言って空を見上げながらため息を吐く。そして――

「―――――――――――――――――――」

と優しげな瞳でどこかを見ながら口にした。だが、その言葉は唐突に吹いた風によってどこかに運ばれていってしまった。目の前にいるにもかかわらずそれを聞き取ることはできなかったアークライトはもう一度聞き直そうとしたが、当のソレイユは席を立ち去って行ってしまった。



――目の前で死んでほしくねぇと思ったからだよ――

果たしてそこからくる思いが何なのか、それはソレイユにしかわからない。親愛か恋慕かはたまた別の何かか。他人が理解するには至らない何かがその言葉には含まれていた。
 
 

 
後書き
という訳でコラボ作品でした!どうでしたか?楽しんでいただいたのなら幸いです。

さて、まずはじめにこのコラボ作品は私と詩先生のリレー式になっております。私から始まり、詩先生、私、詩先生、私というふうになっています。その際の区切りは“◇◆◇◆◇”を使っています。

次に今回出てきた詩先生のキャラなどの紹介をしていきましょう!

レイ:pixivで詩が書いているSAO二次小説『SAO if story』シリーズの主人公。白い髪と肌、紫の瞳が特徴的で、≪紫眼≫という二つ名を持つ。茅場晶彦の妹。
※pixivで書かれているカップリングと、今回のコラボは別世界軸にて描かれているので、二股疑惑はありません!(作者談)

バスタードソート・オルタナティブ:レイが扱う伝説級武器。スタイルシフトと言うエクストラ効果により、両手剣・片手剣スキルを一本で使用可能。

神速詠唱:レイのシステム外スキル。システムの認識するギリギリの高速詠唱技。まるで歌っているように聞こえる…らしい。

アークライト:キリトと同じ影妖精族のプレイヤー。長髪を後ろで結わえてまとめ、普段は研究者の白衣のようなコートを羽織っている。戦闘時は漆黒の金属鎧に身を包み、巨大な盾と剣を持って戦う。
中の人は電脳世界に旅立ったレイのお兄さん!

ということです。

そして、もしこれを読んで詩先生の作品に興味が出たらpixivの方も是非ROM専でどうぞ!なかなか面白い作品が待ってるよ!!

最後に感想などお待ちしております。

P.S.今回のコラボはこれで終了ではありません。(なんだって!)ただ、投稿上の問題があり暁ではこれ以上詩先生とのコラボは投稿できないと思います。なので、この続きは番外編としてpixivにて掲載しようと考えています。続きが気になる方はpixivにどうぞ! 
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