友達はいますか

「そうしてくるからな」
「じゃあ頑張ってこいよ」
「そうしてくるな」
　言いながらそいつも大ジョッキで飲む、それから言うことは。
「やっぱりビールは美味いな」
「夏はこれだよな」
「ああ、ビールに限るよ」
「飲み過ぎたら痛風になるけれどな」
　この心配はある、けれどビールより美味い酒はそうそうない、だから俺は夏も冬もビール派だ。痛風上等だとさえ思っている。
「いいよな」
「ああ、じゃあ合コンでも飲んでくるな」
「そうしてこいよ」
　そいつとこんな話をした、食べ放題飲み放題で安くしこたま楽しんだうえで。
　それから数日俺はやっぱり遊んで大学に行ってバイトもして楽しく過ごしていた、その中でだった。
　別のツレからだ、そいつのこうした話を聞いた。
「入院したって？」
「ああ、そうなんだよ」
「何だよ、女の子に噛まれでもしたのかよ」
「そりゃ猫だろ、違うよ」
「じゃあ何で入院したんだよ」
「酒だよ」
　それだとだ、そのツレは俺に言って来た。
「それでなんだよ」
「酒かよ」
「ああ、酒な」
「酒飲み過ぎたのかよ」
「合コンで女の子に乗せられてな」
　そのせいでだというのだ。
「ウォッカな、もう何杯もストレートで飲んだらしいんだよ」
「おい、それはまた無茶だな」
　俺もウォッカのことは知っている、飲んだことはないにしても。
「あれ劇薬みたいなものだからな」
「アルコール度九十超えるからな」
「それでそのウォッカをかよ」
「そうなんだよ、一人すげえ可愛い娘がいたらしくてな」
「それでその娘に乗せられてか」
「飲んでな」
　それでだったというのだ。
「飲み過ぎて倒れたんだよ、ボトル二本空けてな」
「ウォッカのボトルをか」」
「今急性アルコール中毒で入院してるよ」
「馬鹿かよ」
　俺は呆れて思わずこう言った。
「一体何やってんだ、あいつは」
「俺もそう思うけれどな」
「仕方ねえな、それじゃあな」
「それじゃあっていうと？」
「いや、ちょっと見舞い行かないとな」
　俺は反射的にこう思った、、そのうえでの言葉だった。
「病院わかるか？入院してる」
「八条病院だよ」
　町で、いや日本でも屈指の規模の総合病院だ、そこに入院しているらしい。
「そこに担ぎ込まれてそのままな」
「入院してるんだな」
「それで見舞いに行くんだな」
「ああ、行って来るさ」
　俺は笑って答えた。
「今日にもな」
「そうか、俺も行くつもりだけれどな」
「今日か？」
「いや、明日だよ」
　こう俺に答えてきた。
「明日行くよ」
「そうか、明日か」
「ああ、明日な」
「わかった、じゃあ俺は今日行くな」
　それでどう行くかというと。
「見舞いのもの持って行ってな」
「わかってると思うけれど酒は止めておけよ」
　これはジョークだった、言った方も笑っている。