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珠瀬鎮守府

作者:高村
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木曾ノ章
  その1

 
前書き
以前二話だけ書いたのだけれども、少々多忙にて更新できていなかったので、修正しました。
用語等は表紙裏を御覧ください。
陳腐で拙い文章ですが、それでも良い方は続きをどうぞ。
書くだけ書いて乗っけたので、気づいたらこれも加筆修正をしていきます……
これを投稿しているときは、七話目を書いてる途中です。 

 
「お前が木曾か」
---軍艦学校を卒業するより早く、私に赤い手紙が届いた。
「ああ、木曾だ。あんたの名前は?」
---手紙なんて読まなくても、することは分かっていた。
「柏木だ。ここで提督をしている」
---命を賭して戦う。そして
「じゃあ、あんたが私の提督か。宜しく頼むぞ提督さんよ」
---暁の水平線に、勝利を刻む。
「ああ、宜しくな。そして、ようこそ。鎮守府へ」
---それが、私の、私たちの使命なのだから。



 海における一番の危険は何か。
 嵐や三角波、海藻や海底の地形諸共であった時代も、かつてあった。だが、今現在、海における一番の危険は『敵』である。それは過去、西洋では巨大な蛸や魚として描かれ、船を海に沈める魔物と恐れられた。この日の本の国でも同様に、妖怪などの類として恐れられていたものである。
 ある時、それまでと違った船の形となる『艦娘』が、世界に登場した。武装を施された彼女たちは、戦において、こと海上戦に於いて右に出るものはいなかった。船は新しい進化の形として、人を重武装化したものになったのだ。彼女たちは種別に分かれ、自身を専門化し、兵力として、戦争でその価値を十二分に発揮することとなる。
 けれど、それは長くは続かなかった。誰しもが知っていても、信じていなかった海の『魔物』達が、彼女たちに襲いかかったからだ。魔物たちは国籍艦種を問わず、ただ彼女たちとその港を襲い、蹂躙した。
 人々と艦娘は、その魔物たちを見て唖然とした。それは艦娘の体をなしていたからである。艦娘と見た目は全く似つかずとも、魔物たちは現代の艦娘と同じ専門性と兵装を持ち、十分な脅威となり得た。
 人は、人と争う場合ではなくなった。海において、魔物たちは常に優位であった。海洋国は挙ってこの魔物たちの撃滅に乗り出すことになる。
 人と『魔物』の戦いが幾年月も経つ内に、優位性は傾いた。魔物たちは数が減り始めたのだ。

 だが、今此の時も魔物たちと艦娘の戦いは、終わっていない。




 柏木と名乗った提督は、私が鎮守府につくと、宿舎へ連れて行った。そうして荷物を置かせると、早速連れ出した。元々荷物はないし、動きやすい服装をしている。困ったことはなかった。
 私の前を歩く提督は、白い軍服を着ていた。まだ若い。齢三十ほどだろうか。この型の軍服を着るのは年寄りという先入観があるが、提督はうまく着こなしていた。
 第一印象は大切だ。初めからお互いに負のイメージを持ったならば、いざ戦闘となった時に足を引っ張り合う。提督が優秀ならば、そんなことは起きない。起こさないために、その艦をドッグにしまっておくからだ。けれど、それだけじゃ終わらなかったりもする。要らなくなった艦は、碌な装備もないままに突撃や、解体をされてしまう。情の厚い、否この場合優れぬと言える提督ならば、こうはなるまい。けれど、この男はやりそうであった。故に、なるべくよい印象を持たせなければならない。
「改めて名乗ろうか、俺は鎮守府付属柏木大佐。提督で、此の港の全指揮をしている」
 提督は、私の前を歩きながら、話した。
「軽巡洋艦、木曾だ」
 ああ、しまった。敬語を使わないといけないな。
「早速だが、木曾。お前には第二艦隊旗艦を務めてもらう」
「任せてもらう分には構わないが、質問がある。いいか」
 柏木と名乗った提督は、怒らなかった。私の此の話し方は、軍艦学校の間に酷く注意を受けている。
「話せ」
「まず、話し方はこれでいいのか」
 なので、質問したいことは多々あったが、まずはそれを聞いてみることにした。
「構わん」
 一言で返された。合理主義者なのだろうか。私は小さく肩を竦めると、他の質問に移ることにした。
「じゃ、他のを。私は軍艦学校在学中に抜かれて此処に来た。第二艦隊旗艦もそうだが、何の意味でそうなったんだ」
「答えられん」
「そうかいそうかい」
 この提督、私の質問には最低限しか答えないつもりなんだろうか。
 私も艦娘だ。秘密には触れないでおこう。
「では私からも質問だ。お前は何故戦う」
 提督は、今度は質問を投げかけてきた。簡単な質問である。答えは一つしかないからだ。
「敵を沈めるためだ」
 答えを聞くと、っふ、と。前を歩く提督は漏らした。どのような顔をしていたかは窺い知れない。
「質問はそれだけか? じゃあ、進言したいことがある。俺の艦隊に水上偵察機の類は要らねぇ。魚雷が積める奴らを寄こしてくれ」
 提督は質問にはすぐには答えず、足を止めた。
「お前は自分で仲間を集え」
 しかしそれも一瞬で、また何にもなかったように歩き出した。
「は?」
「私が受け持っている第二艦隊は、お前以外居ない。戦友は自分で集めろ」
「意味がわからんな。提督が配備すればいい話じゃないのか」
「『敵を沈めるため』にその仲間を集うんだな。水雷戦隊でも何でも組むがいい」
「質問に答えていないぞ」
「同志を集え。お前の目的のために動け」
 成程、敵を沈めることしか考えられない奴は、いねえってことか。
 軍艦学校で言われたことを思い出す。『生きて帰還する』という教訓。彼処で私は、しばしば他人の理解を得られなかった。今も、そうであるのか。
「わかったよ。何艦だ」
「五。さぁ駆けろ、集え。“時間はないぞ”。愚図々々していると鋳潰すぞ」
 虫唾が走った。鋳潰すとは、艦娘に対する最高の侮辱だ。
「じゃあ早速行かせてもらうぜ。誰でもいいし、どんな艦隊でも構わんだろ。すぐ集めてみせるぜ」
 提督は何も言わず立ち止まった。私もこれ以上言葉を重ねない。口を開けば、彼に対する罵詈雑言しか出てこなさそうだったからだ。私は後ろを向いて、艦娘の宿舎に走った。



 艦娘が多数在籍可能で、複数の艦娘の治療や武装の類を保管できる場所など、この港の設備は十分にあった。それに伴い敷地面積は十二分に大きかった。
 何が言いたいかと言うと、道に迷ったのである。だけれど、私は世に言う方向音痴ではないと自分を分析している。私はこの港は初めてなのだ。地図などは当然頭に入っていない。更に私の背があまり大きくないので壁向こうが何もわからず。生憎の曇天で方向が失いやすいことが手伝って、中々元の宿舎に戻れなかっただけである。
 しょうがなく、海の傍まで出て行って、海岸を歩いて行くことにした。それが幸か不幸かは知らないが、一艦の艦娘を見ることができた。早速近づいて、声をかけてみる。
「よう。私は本日付けでここに配属された木曾だ。あんたは、なんて名前だ」
 私は、先ほど口調がどうのこうと考えた気がするが、直せる見込みはないように思えた。諦めよう。
「わ、私は吹雪、よろしく」
 いきなりの自己紹介で面食らったのか、吹雪と名乗った彼女は少々どもりつつ答えた。
 少々無礼だが、彼女を頭の先から爪先まで見てみる。私と同じで、武装は施されていない。簡易装甲と武装付加用の場所から見るに、恐らく駆逐艦。水雷戦にぴったりだ。
「吹雪、早速だが私の艦隊に入らないか」
「え?」
 言うことが突拍子もなかったからか、吹雪は驚いた風だった。
「私は本日着任し、第二艦隊旗艦に選ばれたのだが、私以外に第二艦隊に艦娘はいなくてな、仲間を集っている最中なんだ」
「へぇ、そうなんですか。悪くない話ですね、詳しくいいですか」
「水雷戦隊を組みたい。軽巡や駆逐の輩を集めて、敵の懐に飛び込んで殴り合いが主な戦い方となるだろうな」
「危険ではないですか」
「当たり前だ」
 吹雪は、一寸考えたあと、
「お断りさせて頂きます」
はっきりと答えた。
「理由を、聞かせてもらえないか」
 提案を飲む飲まないは吹雪の勝手だ。無理強いするつもりは全くない。だけれど、その理由が聞いてみたかった。
「私は、木曾さん。『死にたくない』んですよ」
「何?」
「私は、死が怖いです。被弾覚悟の戦いではなく、無事にまた港に帰ってこれる戦いをしたいって、私は思っています」
 だから、その申し出は断らせて頂きますと、吹雪は答えた。
「……分かった、時間を取らせたな。じゃあな」
 吹雪に別れを述べて、また宿舎に向かって歩き出した。なるべく早急に、この場から立ち去りたかった。 
 

 
後書き
分かる人には分かったと思う。実は私、軍の知識が皆無です。
読みづらい? テンポ悪い? 直したいのでもっと言ってください。出来れば具体的な改善案も。
誤字が多い? 知っています。言ってくれれば気づいたら直ってるかもしれない。けど、更新は亀に追いつけぬアキレス並の遅さ、より遅いかもしれない。 
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