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なりたくないけどチートな勇者

作者:南師
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27*飛躍しすぎです

時は昼過ぎ場所は廊下。
自分はエリザと共にふらふらわらわら、廊下をピコピコ歩いている所だ。

しばらくは沈黙が場を支配していたのだが、ただ黙って歩くのにあきたのか、エリザがいきなり口を開いた。

「ナルミ……いや、格闘王。最近どうだ?」

嗚呼、このニヤニヤが憎い…

「……お願いしますからそれ、やめて下さい」

そう、自分が四日前、リム副隊長にウルトラなバックドロップをかまし、決めゼリフを爆発させた瞬間から自分の新たに代名詞として格闘王という名前が定着した。

……ぶっちゃけ、限り無く後悔しております。

「いいではないか格闘王……プッ…格闘王…うん、大変名誉ではないか。で、どれくらい弟子を取った?」

「だーれも。だって自分、エリザの近衛隊の名誉顧問だから。近衛隊以外弟子はとりません。ぶっちゃけめんどくさいし」

自分の回答を聞き、苦笑するエリザ。

「まぁおまえらしいか。だがそのせいで私の近衛隊に入りたいと言う輩が最近増えているのもまた事実なのだ、なんとかしてくれ」

そうなのだ。
なんと、ここ数日で自分に弟子入りしたいという者が何人も、それこそ老若男女関係無く日に日に増えていくのだ。

しかも兵士から学者から、終いには医療関係者からも弟子入り志願が来ていたりする。
あまつさえ、魔法学校から講師として招かれる始末。

兵士は言わずもがな、超監督副隊長による弊害と、自分のKEN○I式バックドロップが原因だが、それ他の方々の理由については、少し過去に遡る必要がある。

ついでに、自分達が今ここにいる理由も同じ時間に判明する。

なので少したそがれながら思い出してみよう。


***********☆


その時いたメンバーは自分とエリザ、そしてスゥ君とテトラ君だった。
そしてなにをやってたかと言うと、所詮お披露目会である。

つまり自分が適当に教えた魔法が完成したとかでエリザによって中庭に引っ張られて来られたのだ。
ちなみに他のメンバーは、休暇や護衛以外の仕事で今はいない。

「…………グラビデ!」

バキバキバキバキ!!

そしてやはりただ今新技をお披露目しているのはエリザだったりする。

ものすごい勢いで案山子(一般兵の基本装備付き)を中心に、中庭の土ごとメキメキ言って潰れていく様はもはや壮観である。

なぜ彼女がこれを覚えるまで至ったかと言うと、先日、今までに無い魔法を教えてくれって言われて真っ先に思い付いたのがこれだったからだ。

だが、重力の概念ってか万有引力の存在すら知られていないこの世界でそれを伝えるのはむつかしい。

だからとりあえず面倒なので、

『何となく範囲内の重さを増大させる感じにやれ。』

って感じに何となくやらせてみた。
したら二日くらいしてエリザが

『ナルミ、出来ん。重さを増大させると言われてもいめーじ出来ん。やっぱりその“ぢゅうりょく”やら“ばんゆーいんりょく”について詳しく説明してくれ。』

とかのたまった。
頑張って使い馴れない言葉をたどたどしく使おうとするエリザの姿になんかクル物を感じつつ、しかたなしに教えてやると自分が言った所、なんかいつのまにか会議室が開放されて城中の魔法使いやら魔法学者が集まり盛大な講義に発展した。

正直、教科書無かったらきつかったです。

ちなみにこの騒動の犯人は、意外にもエリザではなかった。
自分とエリザの会話を耳にしたとある魔法使いが、自分も知りたいがために企画したものだったらしい。

さらに言うと、このあとしばらく魔法使い達に講義のお願いをされ、最終的には講義中の自分の発言のせいでマジで物理学と言う学問が確立した。

その発言とは、物理の先生が言っていた“物理とは物事の(ことわり)と書く。つまりある種の真理を探究する学問である。”と言う所詮受け売りの言葉だ。
だが、自分がそれをぼんやりと発言してしまったら、皆さんはそれを聞いてまるで神が言った言葉の様に感動していた。

もはや宗教である。

ちなみに新しく自分の名前に“真理の解明者”と言う名前が追加された。
正直いらん。

と、言う事があったのだ。
従って、今自分は明るい道を避け、あまり人に会わない道をこそこそ歩くはめになっている。

全く、悪い事しとらんのに。

とりあえず、紆余曲折あってエリザは新たな魔法を手にいれたと言う事だ。

「ナルミ!見てたか今の!」

うれしそうに両手と翼ををぱたつかせながら寄ってくるエリザ。
……なんかイイ。

「ああ、まさか重力すら知らない所からここまでこんなに早くこぎつけるとは思わなかった。」

素直な感想をのべてみる。
すると、エリザは得意そうに喜んで、クルクル謎の踊りを踊りはじめた。

「やっぱり、先生は凄いですよね。僕、一生着いていきます。」

何となくエリザのタモ○モダンスだかスコル○ンXだかわかんない踊りを眺めていると、不意にスゥ君が後ろから声をかけてきた。

「新たな学問の開発から、僕らに合った新型魔法を授けてくれるなんて…カタナもつくってくれましたし、感謝してもしきれません。」

「だね。先生はいつも俺らの及びもつかない考えをもっているし、今に宗教とかできても不思議では無いですよね。」

…まぁ、魔法使いさん方は半分そんな目で見てくださっておりますが。

ちなみに、二人はそれぞれ天○降臨の道しるべと夜○の幻影殺人鬼をマスターしております。

いやぁ……いいよね、東○Project。

個人的にスゥ君には目からビームを出して貰いたかったが。

と、こんな感じに会話をしていると、いきなり目の前に

「ナルミ君!助けて!」

「にょうわ!!」

リム副隊長が出てきた。
彼は見事にこの前、自分考案光学迷彩魔法を習得したのだ。

「リームー!今日と言う今日は逃がさないわよ!!」

「来た!ナルミ君!」

そして彼はそれを悪用していつも自らの彼女をからかって遊んでいたのだ。
だが今回は状況が違う。

「フフフフフ……今まで溜まりに溜まった鬱憤!私の新魔法“れーざーびーむ”の的にしてはらさしてくれるわ!!」

そう、彼女はついに習得したのだ、破壊光線を。
彼女は右手をリム副隊長に向け、そのまま光線を発射した。

自分が最初ミミリィ隊長にこれを教える時は正直かなり困った。
何せ相手が光という甚だしく抽象的なものだからだ。
だが教えると約束したので、とりあえず

『なんか……太陽になって光と熱を一点に集中させる気持ちで。』

と教えてみた。

したら最初は弱々しい光りを全身からユラユラだしているだけだったが、段々安定してきて最終的にはかなりのレベルまで成長した。
さらに先程の物理講習の光分野を受けた彼女はより一層技に磨きがかかり、とうとう昨日完成させるに至ったのだ。

そして、それを知らないで自らの恋人のスカートめくりをした哀れな男がここで焦げている。
命に別状はなさ気なので放置する事にしよう。

自業自得の因果応報である。

「次は手加減しないよ。」

「うぅ……ナルミ君、恨むよ…」

なぜに自分さ。
責任転嫁とか、悪いのはお前だろう。

最近君は調子に乗りすぎだ。
少しは反省して、自重しろ。

そんな願いをかけながら、自分はミミリィ隊長に素晴らしい提案をしてみる。

「隊長。今から新しい体術、“ウルトラバックドロップ”を覚えてみませんか?」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

プルプルふるえながら謝るリム副隊長。

うん、どこのヒグラシ?
こんど鉈でも渡してあげようかな。

「大変魅力的ですが、今は他に用事がありまして…まぁ、こいつのお陰でそれも終わりそうですが」

そう言いながら足でつんつんとリム副隊長を突く隊長。
なんか、最初見た時と形勢が逆転している。

「あらら、残念。じゃあまた今度」

「はい、また今度お願いします」

うむ、いい笑顔だ。
うむ、哀れな顔だ。

どっちが誰かは推して知るべし。

「という訳で姫様、先生」

ん?
自分も?

「魔王様が御呼びのようです。至急、魔王様の私室へ」

んー?
なんで?


************☆


てな事が、さっきあった訳よ。

で、今いるのがその王様のお部屋の扉の前。

うん、自分の二倍はあるね、この扉。「まぁ、なんで呼ばれたかはわからないが、とりあえずはいろうではないか」

そう言って何の躊躇いもなく扉を開き、ずかずかと入るエリザ。
うん、豪傑だ。

まぁ、親の部屋だから普通っちゃ普通か?

「失礼します」

対して、別に王様が親でもなんでも無い自分は一礼してから部屋に入る。

うん、礼儀正しい日本人の鏡。

「あ!おいナルミ!俺と勝負しろ!」

そしてそのまま顔を上げずに回れ右。

では、パイバイキ~ン。

と、いざダッシュをしようと構えた所で自分は襟を捕まれ、グエッてなった。

「待て、どこへ行くナルミ。兄様なんか無視すればいいではないか」

「おい…いくら俺でもそれは傷つくぞ」

「ゲホッ、ゲホッ……無視したら殴られそうなんだもん……」

「…それもそうだな。なにせ、兄様だからな」

そんな馬鹿を一通り扉付近でやっていると、部屋の中から

「そろそろ中に入ってはどう?見ていて楽しいけど、大事なお話しがあるのよ」

そう言うのは王妃様。
他にも、王様とガルクさん、それと見た事も無い赤ポニテのクールビューティ(白翼付き)が机を囲み、椅子に座っていた。

自分が椅子をすすめられ、そこに座ろうとするとクールビューティと眼が合った。

「そいつが、ナルミと言う者か…」

途端、そう言いながらじっくり自分を観察し始めた。
魔力がどうのやら筋肉がうんぬんぶつぶつ言いながら見られる(睨まれる)のは、ぶっちゃけ怖い。

自分が少し困っていると、エリザが救済のつもりかクールビューティに声をかけた。

「姉様、ナルミは私の近衛隊で、こいつの心はランドルフ家の娘、シルバの物です。引き抜きや誘惑はおやめ下さい」

「オイ!!」

何をでたらめを!
とゆーかいつから自分がシルバちゃんに惚れた事になってんの!?

「…誘惑するつもりはないが…まぁいい、私の名はイノム・ネネ・トゥインバル、第二王女だ。よろしく」

「あ、はい。こちらこそ…」

う~む、なんかこう…長門さんを彷彿させる話し方ってか雰囲気ってか声ってか…
目元もなんか似てるような…
うん、そんな感じだ。

きっとショートボブにしたらウリ…三つくらいに似ているだろう。

こっちのが格段に口数が多いけど。

「…なにか?」

「長門の化身がここに…いえ、なんでもないです」

つい凝視して、ついつい口を滑らせてしまった。
まぁ、長門なんて知らないだろうから別に…

……何みんなこっちゃ向いてんのさ。

その後約15秒くらい沈黙が続いたが、エリザがつぶやくように言葉を発した。

「…ナガトとは…創世の女神、ユキルガー・ナム・ナガトーラの事か?姉様が…女神の化身…?」

「はぇ!?」

は?
何創世の女神?

長門様が?

「いやいやいや、違うから。ありえん。長門は長門、ただのヒューマノイドインターフェイスだから」

即座に否定。
あれが創世神なら、団長様は何だって話しですよ。

「…ひーまのいどいんたーへいすとは…いったい何?」

だが食いついたのはイノムさん。
うん、惜しい。

そしてどう説明しましょうか…

……

………うん、これ無理。

「……黙秘権を施行します。みなさん忘れて下さい」

だが、さすがはエリザの姉。

「教えなさい」

押しが強い。

「無理です、できないです」

「…王族の権限を使う。喋るか処刑のどちらがいい?」

そして横暴。

処刑ってなんだ処刑って。

助けを求めようとして周り見るが、どーにもこーにもみなさん興味津々で助ける気配がまるで無し。

孤立無縁の四面楚歌。

……きっとここで逃げ出したら指名手配とかされちゃうんだろうなぁ…

「……横暴じゃありません?」

とりあえず抗議。

「権力は使うモノ。で、どうする?」

失敗。

「……喋らしていただきます」

くそう、今になってわかったよ。

民主主義の素晴らしいさを。


**********☆


「……つまり、ナガトーラは空を統べる姿無き神、ジョーホートーゴーシネンタイが私達の世界の発展を記録するために創造した、通称ひゅーまのいどいんたーへいすと呼ばれる神の使いだったのか…」

うむ、説明的発言ありがとうよイノムさん。
そしてだいぶ間違っているよ。

訂正はめんどくさいからしないけど。

ついでに言うと、ガルクさんの“それはぼうかろいどとは違うのか?”って言う発言でさらに話しがややこしい事になったのはご愛顧だ。

全く、リリスさんはいくら夫婦だからってそんな詳しく話さないでもいいじゃん。
ガルクさんがボカロに食いついた馬鹿二人(誰かはわかるしょ?ヒントは馬鹿兄妹)に対して、あまりに詳しく説明するもんだから二人揃って

『『ナルミ!私(俺)もぼうかろいどを嫁にしたい!造ってくれ!』』

とか声を揃えてのたまってしまう始末なのだ。
いつか苦情を言っておこう。

ちなみに二人には

『…ボーカロイドに心を奪われて、日の光を嫌い、死ぬまで自分の部屋と言う領域から外に出られずに堕落の一途を辿る呪縛がかかる可能性があるんだけど、やりたい?ちなみに10人やったら9人はかかるかも…』

って、引きこもりニートになる可能性を示唆してみたら、顔を青くして引き下がった。

…まぁ、ニコ動が無いこの世界では無いと思うがねぇ。

「…まぁ、ナガトーラやぼうかろいどの話しは一旦置いといて、今回集まった理由についての話しをしたいのだが…。ほれ、イノム、戻ってこい」

いつの間にか話しが脱線…つか電車と間違って飛行機に乗った上にそれが太平洋の真ん中で撃ち落とされたくらいに変な方向にいってしまった所を、思い出したように戻そうとする王様。

ちなみにイノムさんは、なんか一人で怪しくぶつぶつ言っている。
彼女の脳内会議ではすでに髪を切り揃えて仕立て屋に自分から聞いた(吐かせた)セーラー服とカーディガンを作らせるのはもう決定しているようだ。

あとの課題は意外にも勉強嫌いの彼女が本を継続して読めるかどうかだけらしい。

そしてそんな感じに自らの世界にトリップしているイノムさんは、王様の言葉をガン無視してなおもぶつぶつ言っている。

王様、泣きそうな顔しないで。

「……正直、この雰囲気で話すのもなんですが、せっかく集まったのだから話しておきましょう。イノム、そんなに私の拳を唸らせたいのですか?」

「!!……ご、ごめんなさい…」

状況を打破したのは、やはり王妃様であった。

うん、やっぱ怖い。

「さて…今回集まって貰った理由、それは我が国の内部に蔓延る腐った実を取り除くためです」

んー?
ならなんで自分?

「今回やる事は、ナルミさんがガルクに教えたと言う、作戦を実行します。ガルク、詳しい説明を」

あぁ……
あれか……

……

………マジで?


***********☆


それからしばらく、なんか政治的ななんやかんやよくわからない話しを聞かされ、話しかけられるたびに相槌をうったりてけとーな返事をしたりしてると、いつのまにか会議は終わりに近付いてきた。

「よろしいですね。では、異論等は無いようなのでこのように」

そしてそう締め括られ、会議は終了した。

途端に

「よし!ナルミ、いや格闘王!今から真の格闘王を決めるために戦うぞ!」

「何を言うんです兄様!ナルミは今から私に新たな魔術を教えるんです!」

「いや、ナルミにはひゅーまのいどいんたーふぇーすやじょーほーとーごーしねんたいについて教えて貰う。主にナガトーラ神と私の類似点等を中心に」

……何この大岡裁き。
両腕が取れる、しかも襟を捕まれて息がしずらい。
つか、声が出ないから抗議が出来ない。

と、自分が激しく苦しんでいると、王妃様が三人をたしなめる。

「みんな落ち着きなさい。それにナルミさんには私からお話しがあるの。だからしばらくあなたたちの願いは敵わないわよ」

えー、やらぶーぶー、やらの抗議の声が自分の左右と後ろから聞こえたが、王妃様がスッとあげた右拳を見て即座に黙った。
うむ、やはり王妃様強し。

「とりあえず、大事なお話しだから、悪いけどみんな部屋から出て行って貰えないかしら?もちろんガルクも」

「ああ、“鮮血の剛腕”の餌食にはなりたくないからな。とっとと出ていくよ」

そう言い残し、ガルクさんは部屋を後にする。
だが途中、いきなり止まって自分を見た後に天井をぐるっと見回したのはなぜだろう。

「さぁ、あなたたちも」

そう王妃様が言うと、渋々と言った感じに彼女らは部屋を出ようとする。

と、そこでいきなり王妃様が悪戯を思い付いた子供のような顔をして一言

「しかし、ナルミさんはイノムをナガトーラ神の化身って言ってましたし詳しくお話しをしてくれましたが……もしや本物に会った事があったりしますか?」

「「「!!?」」」

バババッと振り向く三人。
それを確認してさらに続ける王妃様。

「天空の神についても詳しく知っているようでしたし……神々との交流があったりしませんか?」

……神との交流ってか神のせいでこの世界にいるんですよ。

だが、それを言う訳にも、かといって良い嘘も思い付かず、ただ黙るしか無い自分。

それを肯定と見なしたのか、後ろから

「な…ナルミ…まさか本当に…」

珍しいエリザの控え目な声が聞こえてきた。

マジでどうしよう。

そんな自分の窮地を救ったのは、自分を窮地に追い込んだあのお方。

「さぁ、あなたたち。私達はいまからナルミさんと大事な大事なお話しがあるの。部屋から出て行ってくれないかしら?」

そう、王妃様である。

なんかかんかほざいていた後ろの人達を拳を見せるだけで黙らす事のできる王妃様。

だが今回は、彼らも簡単には引き下がらない。

「いえ、母様!こんなお話しを聞かされてスゴスゴと戻る訳にもいきません!!」

「ああ、さすがにこれはいくら殴られようが引く気にはならない!!」

「いますぐ、聞きたい」

…王妃様、なにが“あら、からかいすぎたかしら”だ。
変な所で悪戯すんな!!

「ナルミ!!どうなのだ!?」

ヤバイヤバイ。

いったいどうしようか……

「……お前達は彼の生い立ちを、彼の背負うものの重さを理解しているのか?」

!!?

「お前達はただ興味本位で彼の過去を踏みにじろうとしている。それをわかっていて彼に話せと強要しているのか?」

お、王様!!
あんたは偉い!!

王様の勇気ある発言によりたじろぐ三人。

うん、王様を空気と思っていた自分がいたが、心から謝ろう。
ごめんなさい。

「わかったなら戻りなさい。いつか時がくれば、彼から話してくれるだろう」

そう王様が言うと、三人は名残惜しそうに肩を落としながらとぼとぼと部屋をあとにした。

彼らがいなくなると、王様は大きく息を吐き一言。

「……お前、悪戯が過ぎるぞ」

「…ごめんなさい、まさかここまで食いつくとは思わなくて。ナルミさんも、ごめんなさいね」

………やっぱりこの人はあいつらの母親だ、行動原理がにている。

まぁ、謝ってくれたんだ、緩そう。

「まぁ、大丈夫ですよ。王様のおかげで助かりましたし」

そう言って微笑む自分。
うん、寛容さオカン級。

「そう言って貰えるとありがたいわ。……で、今回呼び止めた理由なんですけど」

まぁ、多分予想はつくがな。
あれだろ、あれ。

「ナルミさんに貴族としての地位を与えようと思うの」

そう、自分が出した休暇につい………へ!?

「き、貴族!?休暇についてでなく!?」

「ええ、休暇ももう実は大丈夫なのだけど、一旦こっちを優先しておくわ。実はガルクに頼まれたの、形だけでも貴族として扱う事は出来ないかって。いくらあなたの今の地位が近衛隊名誉顧問だとしても、出身が平民で貴族の地位も無いから、貴族の娘と結婚は難しいのよ」

「いやでも!どうやって!?戦争以外は自分、何もやってないんですよ!?」

「あら、やってるじゃない。戦争でのあなたの活躍や戦後のゴタゴタとかで忘れ去られていたものが」


なんかしたっけ、自分?

「……ありましたっけ?」

「あるわよ……盗賊団“朱きグム”の壊滅、あと戦争の報酬に逆賊の討伐分が入れ忘れられてたのでそれも」

……盗賊団?
朱きグム?

………とりあえず、今一番気になってるのはグムって言葉の意味だったりする自分は色々と駄目な気がしてきた。

「議会はもう通っているわ。これに署名してくれたらもう、あなたはハセガワ家の当主、ハセガワ・ナルミよ。貴族でもそれなりに高い地位だから、ある程度の融通をきかせる事も可能よ」

……マジっすか。
 
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