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DQ4TS 導く光の物語(旧題:混沌に導かれし者たち) 一~四章

作者:あさつき
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四章 モンバーバラの兄弟
  4-04毒気を抜かれることもある

「田舎は嫌いなんだよ。町が、酒場が恋しいぜ」
「兄さんはいつも飲みすぎなんだよ。たまにはいいだろう」
「うるせーよ」

 言い合いながら歩いていると、犬が激しく吠えながら走り寄ってくる。

「わん!わん、わん!」
「うわっ、なんだいきなり」
「ペスタじゃないか!」

 犬はミネアに盛んにじゃれついている。

「ああ、ミネアが拾った犬か。でかくなりやがって、わからなかったじゃねえか」
「元気だったんだな、ペスタ!」

 ミネアはペスタを撫でまわし、ペスタはますます嬉しそうにじゃれかかる。

「おい。いい加減、行こうぜ。真っ暗になっちまう。ど田舎なんだからよ」
「そうだね。ごめんな、ペスタ」

 ミネアがペスタを離し、歩き出したふたりに、ペスタが続く。

「……ついてきやがるな。いいけどよ、別に。」
「しっかり覚えててくれたんだな。あれから随分経つのに」

 犬のペスタを従えて、ふたりは自宅であった場所に到着した。


 父が殺された日に荒らされ、そのまま打ち捨てられた家は、荒れ果てていた。

 (かたき)への憎しみ、なぜ父がという疑問、失われた幸福な日々の追憶(ついおく)

 様々な想いが去来(きょらい)するのを飲み込み、屋内を通り抜けようとしたところ、何か動くものがある。

「ん?(ねずみ)か?」
「鼠じゃない。スライムだ!」

 咄嗟(とっさ)に武器を構える。

「いじめないでくれよー!ぼくは悪いスライムじゃないよ!」
「喋りやがった!」

 警戒を解かず、武器を下ろさないふたりに、スライムは焦ったようにさらに口を開く。

「あ、そうだ!オーリンて男は、鍵のかかった扉でも、こじ開けることができたよ!」
「オーリンだと?」

 オーリンは、父エドガンのもうひとりの弟子である。
 バルザックからエドガンを守ろうとして、大怪我をしたらしいが、その後の行方がわからなくなっていた。

「お前、オーリンを知ってやがるのか」
「ぷるぷる、ぼくが知ってるのはこれだけだよ、ごめんね。」

 謝られ、毒気(どくけ)を抜かれる。

「いや……。いいけどよ……。」
「君は、どうしてこんなところにいるんだ?」
「ぼくは悪いスライムじゃないから、悪い魔物にいじめられちゃうの。だから、かくれてるんだー」
「お前、勝手に他人の家に……。まあ、いいか。今さら住むわけでもねえしな。隠れるんなら、しっかり隠れてろよ」
「村の人が驚くからね」
「うん、きをつけるー」


 スライムを置いて、裏庭に向かう。

「あんな魔物もいるんだね」
「全く、調子狂うぜ」 
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