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英雄伝説 零の軌跡 壁に挑む者たち

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9話

「ちょっといいかい?ランディ・オルランドってものなんだが、特務支援課ってのがどこにあるかわかるか?わからなければセルゲイ警部を呼んで欲しいだが」

ランディが警察本部に来るのが集合時間直前になったのはスタンハルバートを放出品扱いで受領するのに手間取ったからである。整備もちゃんとしておく必要がありギリギリの時間になった。

ピンク髪の受付女性はランディを見て納得したようですぐに事情を察して説明してくれた。

「ああ!あなたが。支援課のみなさんはさっき来たところです。廊下を進んだそこの会議室です」

受付から乗り出して指差しで示してくれたのでお礼を言って会議室に入ると4人の男女がいた。正確には中年の親父と若い男と若い女と子供である。
中年の男が課長としてほかは同僚かな。俺より若い奴ばかりだな。こりゃおんぶに抱っこになるかな。
ランディは一瞬でそう観察すると全員の視線が集中したので、兄貴肌でも見せてやるかなといつものノリを貫くことに決めた。
「こんちわっす。遅れました」


いきなり会議室にズカズカ入ってくる知らない男から気安く声を掛けられて返す奴もいないので返事はなく、赤毛の男は担当課長っぽい中年の親父の前に向かったのだが制止されて。

「お前さんがオルランドだな。これで全員揃ったわけだ。まずは自己紹介からだ。簡単で良いぞ」

全員が着席して、誰から言うのか言われてないので一瞬全員が顔を見合わせて戸惑った。

「あっ、俺からか、すまんすまん。セルゲイ・ロウ。この特務支援課の課長だ。お前たちの上司になる」

課長は自己紹介を終えると男共からだと促した。
場所的に前にいる若い男からの紹介になった。

「ロイド・バニングスです。出身はクロスベル。最近まで外国にいたんですが警察に入ることになって戻ってきました。よろしくお願いします」

この挨拶からわかるようにロイドの第一印象は礼儀正しく真面目だった。
赤毛の男はこれに対抗して茶化すことにした。

「おーおー真面目だね。俺はランディ・オルランド。趣味はナンパにギャンブルにグラビア雑誌鑑賞。見たいのがあればいつでもコレクションを見せてやるぜ」

ロイドは困惑して、やっぱり真面目だと。
無論この時ランディは一冊も雑誌を持っておらず集めていた雑誌類も欲しい奴にやってしまったのでコレクションなんてないのだが、言うだけならタダである。
向かいに座る女子共の目線が厳しいのでランディは内心女子に絡むのはやめておこうと思った。

「初めまして、エリィ・マクダエルです。クロスベル出身です。よろしくおねがいしますね」

「どうも、ティオ・プラトーです。レマン自治州から来ました」

女性陣のエリィの余裕のある優雅な挨拶とティオの無愛想な挨拶が終わるとロイドが立ち上がって課長に説明を求めた。

「それでこの特務支援課というのはどういった活動を行うのでしょうか」

「どうとは?」

「いえ、みんな若いですし」

「新設部署なんだ。期待のルーキーだぞ」

「は、はあ」

ロイドは不安が拭いきれずセルゲイ課長にさらに問いかけようとしたのだが、ピピピという導力音が鳴るとセルゲイ課長が掌より一回りぐらいの大きさの物体と会話し始めた。

(携帯型の通信端末か?実用化されてるなんて)

「ああ。ご苦労さん。後始末は任せておけ」

通信を切った課長は課員に向けて簡潔に説明した。

「喜べルーキーども。この特務支援課がなにをするのか体験させてやる」



警察本部を出たセルゲイ課長に案内されたのは駅前通りの外れにジオフロントの入り口。

「お前たちにはここに潜ってもらい魔獣を掃討しつつ最深部まで到達してもらう。これは総合能力を計る実戦テストだ」

「ちょっと待ってください。警備隊じゃあるまいし魔獣退治は警察の仕事じゃないですよ」

ロイドが抗議したのは常識的な警察の反応だった。クロスベルでは都市部での治安維持を警察が受け持
ち、担当するのは人である。魔獣を相手にするのは警備隊の仕事なのだ。

「クク、普通の警察なら確かにな。だが、支援課は別だ。ほれ」

課長は4人にさっき会話していた物体を渡した。
それは戦術オーブメント。しかも見慣れない新型の第五世代エニグマと呼ばれる新機種だった。

「エニグマですね。やっと導入されましたか」

そう呟いたティオにセルゲイはレクチャーを頼むと黒い手帳、警察手帳を3人分と鍵を渡して去って行こうとする。

「そうだ、ロイド。お前がリーダーな。捜査官資格を持つのはお前だけだからな。説明は試験後にしてやるから、じゃあな」

セルゲイ課長が去って4人だけが残された。
3人はロイドに押し付けられたなと同情し捜査官資格があるなら指示に従うと言ってくれて改めて自己紹介が始まった。
お互いに年齢とタメ口がありかなしかの確認が始まったのだが、やはり注目はティオだった。
こんな子供がなぜだという疑問があったからだ。14歳だと説明すると警察官採用年齢に達していない
のになんでいるんだと。

「私は警察官ではなくエプスタイン財団からのテスト要員です。これをテストしに来ました」

腰に付けていた機械付きの杖を取り出した。
ティオが武器を取り出したことでそれぞれが手持ちの武装を紹介することになった。
ロイドは警察学校で習ったトンファー、エリィは趣味で続けていた導力銃、ランディは警備隊の時から使っているスタンハルバートを取り出した。
全員ちゃんと得物を持っていることを確認してとりあえず息が合うのか、どう連携するのかもわからないので試験をクリアするためにジオフロントの扉を開き薄暗い地下へ潜って行く。 
 

 
後書き
前回でここまで行くはずだったので繋ぎ。
別にすっ飛ばしていきなりジオフロント集合でも良かったんだけどね。フランの顔見せは必要だし。 
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