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DQ4TS 導く光の物語(旧題:混沌に導かれし者たち) 一~四章

作者:あさつき
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一章 王宮の女戦士
  1-26凱旋

「こいつか。……よりにもよって」

「誰でしたか」

 何か問題でもあったのだろうか。

 名家の嫡男(ちゃくなん)とか、余程優秀な人材であったとか。
 あのような重要な情報を得ていたのだ、優秀には違いない。

「気にするな。これは預かろう」

 知る必要の無いことか。

 ならば、問題には触れない。
 しかし、名は必要だ。

「彼から重要な情報を得たのです。彼の功績として、御前(ごぜん)で報告すべきでしょう」

「また厄介な……。いや、問題無い。報告では、名は伏せておけ。問われることは無いだろう」

 もう詮索するなということか。

「わかりました」

「では行くぞ」


 謁見の間までの廊下の両脇には、王宮戦士たちが整然と並んでいる。
 もはや総出の模様である。

 先導する小隊長の後に続き、震えるホイミンの後ろに手を添えて、王宮を進む。

 謁見の間に入り、御前に(ひざまず)く。
 ホイミンも床に降り、ライアンを真似る。

 国王の声がかかる。

「おお、ライアン!よくぞ戻った、待ちわびたぞ!」

 命じられ、報告する。
 小隊長の言う通り、殉職した戦士の名を聞かれることは無かった。


「このたびのそなたの働き、まことに見事であった。イムルの親子も喜んでおろう。そなたのような家来を持てたことは、わしの誇りだ!」

「身に余る光栄でございます」

「そうじゃ、褒美を取らせよう!」

 きた。

「なにか望みは無いか?なんでも良いぞ、言うてみい。」

「なんでも、良いのですか」

二言(にごん)は無い」


「ならば、王宮戦士を辞するお許しを」


 場がざわめく。

 国王が手を挙げ、静まる。

「理由を申せ」

「は。今回、攫われた子供たちは、幸運にも救い出すことができました。
 しかし、魔物たちの真の狙いである、予言の勇者は、(いま)だ狙われ続けています。
 勇者とは言え、今はまだ子供とのこと。
 世界を救う力が自分にあるなどと、自惚(うぬぼ)れてはおりません。
 しかし、私程度の力でも、無力な子供を守る助けにはなりましょう。
 勇者が失われれば、世界も滅びます。
 私は、まだ子供である勇者も、彼がいずれ救うであろう人々も、人ならざる善良な者たちも、守りたい。
 王宮を離れ、世界を回り、勇者を探し、守ること。
 それが、私の望みでございます。」 
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