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DQ4TS 導く光の物語(旧題:混沌に導かれし者たち) 一~四章

作者:あさつき
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一章 王宮の女戦士
  1-17痛恨

「ホイミン。来るなよ」

 ライアンが一気に畳み掛ける。

 おおめだまの顔色が変わった。

 おおめだまの痛恨の一撃!
 かわす。

 痛恨の一撃!
 ライアンにダメージ。

「ぐっ……」

 ライアンが苦悶の声を漏らす。



 こんなライアンは、見たことが無い。

 古井戸の底では、全ての攻撃を受け止めながら、平然としていた。
 塔の魔物の、どんな攻撃にも、眉を(ひそ)める程度だった。

 そのライアンが、痛みに顔を歪め、苦しんでいる。


 早く、早く行かなくては。

「ライアンさん!」
「来るな!!」

 叫んで飛びだそうとしたホイミンを、強い制止の声が押し止める。

 こんな声も、聞いたことは無い。
 ライアンはいつも穏やかに、語りかけるように話す。

「ラ、イアン、さん」

 今すぐライアンに飛び付きたい。
 飛び付いて傷を癒したい。

 身体が(すく)んで動けない。
 動きたいのに、だって来るなって

「……イア……さ……」

 声が詰まって、うまく出ない。

 視界が歪んで、よく見えない。
 何かが、あとからあとから流れ出ている。
 何かが邪魔して、ライアンがよく見えない。

 滲んでぼやけた視界の中で、おおめだまがゆっくりと、まるでコマ送りのようにゆっくりと腕を振り上げ

「ライアンさーーーーん!!!」



 魔法の剣が鋭く振り抜かれる。

 腹から顔――眼球にかけて大きく斬り裂かれたおおめだまは、動きを止める。
 振り上げられた腕は振り下ろされることなく、力を失って垂れ下がる。
 崩れ落ちるように、硬い床に鈍い音を響かせて、おおめだまは倒れた。

 ライアンががくりと膝をつく。

「ラ。イアッ、さっ。」

 ライアンが、ゆっくりと顔を上げる。
 ホイミンと、視線を合わせる。
 苦痛の歪みを、無理に微笑みに変える。


「ホイミン。おいで」


「……ラッ。ライアンさーーん!!」

 必死に飛び付き、回復する。
 早く、速く、そうしないとライアンが。そんなのは駄目だ。
 もっともっとはやくはやく

「ホイミン。もう、大丈夫だ」

 ライアンの傷が完治しても、ホイミンはホイミを唱え続けた。
 魔力が尽きても、泣きながら唱え続けた。
 まだ、やめない。

 ライアンがホイミンを撫でる。

「もう大丈夫だよ、ホイミン」

 ゆっくりと撫でられて、撫で続けられて、ホイミンはようやく詠唱をやめ、おずおずとライアンを見上げる。
 涙でよく見えないが、苦しんでいない。
 いつものライアンだ。

 叫んで、泣いて、詠唱を続けて、(かす)れ切った声で、呟く。

「ライアン、さん。」 
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