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ドラゴンクエストⅢ 勇者ではないアーベルの冒険

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第67話 そして、勇者との冒険の日々へ・・・

「やはり、HPが低いな」
俺は自分のステータスシートを確認しながらつぶやいた。


アーベル
けんじゃ
きれもの
せいべつ:おとこ
レベル:41
ちから:90
すばやさ:255
たいりょく:114
かしこさ:137
うんのよさ:126
最大HP:233
最大MP:277
攻撃力:157
防御力:285
EX:1082742
ゾンビキラー、ドラゴンローブ、みかがみのたて、ミスリルヘルム、ほしふるうでわ

ちなみに、現在の勇者(レベル46)のHPは331、セレン(盗賊レベル39)のHPは352、テルル(魔法使いレベル37)のHPは292であり、大きく引き離されている。
さらに言えば、転職前の俺(魔法使いレベル42)のHP237にようやく届くところだ。

「いや、今回は時間がある」
俺達は、世界中をまわり、アイテムを回収し、その後経験値稼ぎをしている。
とりあえず、時間に縛られないため、とことん戦力強化をめざしている。


世界中を旅したが、そんなに大きな事件は無かった。
ポルトガの北部にある島国エジンベアで、俺達を「田舎者」とバカにされたことに腹を立てたみんなをなだめるため、お話をしたぐらいだ。

みんなから、喜んでもらえるかと思ったが、
「アーベルさん。怖いです」
「アーベル、すてきです。でも、いつもの方がもっとすてきです」
「・・・。アーベル、少しは手加減したら」
勇者、セレン、テルルの反応だ。

俺は、前の世界では田舎に住んでいたので、別に「田舎者」と言われても腹をたてなかったのだが、逆に冷静な口調でたんたんと「お話」をしたことで、エジンベア中を恐怖に陥れたらしい。


そんなことよりも、今後のことを考えることが重要だ。
勇者以外の、転職プランは旅立ちの時までに決めていた。
俺は魔法使いから、商人、盗賊、遊び人をへて、賢者に転職している。
これで、全ての呪文を習得している。
賢者であれば、冒険が終わっても魔法の研究を行うのに適した職業として期待できる。
賢者の成長が遅いのが問題であるが、ゆっくりと旅が出来るので問題ない。

セレンは、僧侶から魔法使いに転職後、盗賊になっている。
セレンが最終的な職業を盗賊にしたのは、正直驚いている。
セレンに聞いた話では、テルルが盗賊になったときにアイテムを盗み取る感覚がいいと聞いたので、やってみたかったとのことだ。

俺としては、ステータス上昇アイテムの習得率が向上するのは大歓迎なので、問題なかったが、セレンは「これが天職です」と断言した。
セレンが、転職の時に気にしていたのは、ダーマの神殿にいる司教が必要最低限しか話しかけてくれないことだった。

それならばと、俺がセレンに渡したのは、「インテリめがね」だった。
セレンは大変喜び、魔法使いから、盗賊に転職するときに使用してみたところ、「司教が話をしてくれたと」嬉しそうに俺に話してくれた。
司教がセレンに言った「そうか、セレンほどの頭脳明晰が盗賊になりたいとはな。これも世の中がいけないからかの。まあどうしてもというのなら、それもしかたあるまい」
で喜ぶのはどうかとおもうが、元国王としては耳が痛い話だ。
それと、司教。
お前にとっても人ごとで済む話しでは無いはずだ。

テルルは、商人から盗賊に転職していた。
最終的には、商人になるということで、いろいろ相談した結果、僧侶、魔法使いの経験を積んだあとで、商人に転職することになった。

俺やテルルは、つねづね商人のMPの有効活用を考えていた。
平和になった後で、魔法研究を考えており、母ソフィアも研究していたが、当面は僧侶と魔法使いの呪文を覚えてからそれを使用することに決めた。
なので、魔法使いの呪文を全て覚えたら商人に転職することになる。

勇者は転職できないので、ダーマ神殿にいても退屈そうにしていた。
勇者は最初のころは、なるべく表情を顔に出さないようにしていた。
「世界を救う勇者は、常に冷静であれ」という教育を施されたためなのか、忠実に守っていたが、最近は少しずつ表情を顔に出せるようになっていた。
俺が勇者に、「退屈なら、一緒に神殿をあるこうか」と声をかけたら、喜んでついてきた。

散歩の途中に、名前を変えてくれるおばあさんに出会った。
一瞬だけ、前の世界の名前を思い出したが、アーベルという名前を変えるつもりはない。
だから、勇者が自分の名前を「いもうと」に、俺の名前を「おにい」に変更しようとするのを、後ろから羽交い締めにして止めた俺を、誰が責めることができよう。

「アーベル、何やっているの」
「2人きりでいちゃつくのは禁止です」
・・・。
テルルとセレンがいた。



「失礼します」
勇者が俺のいた部屋に入ってきた。
ここは、ドムドーラにある宿屋だ。
今日の部屋割りがきまったようで、勇者が俺の部屋に入ってきた。

「日が昇ったので、さっさと寝ますか」
「はい」
俺は勇者に声をかけると、返事を待たずにベッドに入った。
大魔王ゾーマが倒されたので、この世界アレフガルドにも光が戻ってきた。
とはいえ、光だけの世界ではやがて世界が干上がってしまう。
ゾーマの言葉ではないが、光あるところに闇もあるのだ。


現在、アレフガルドでは、昼の間はモンスターが出ない平和な世界だ。
だが、夜になると、モンスターが出現する。
勇者がルビスに仕えていた妖精から話を聞いたところでは、大魔王ゾーマが倒れた後でも、大魔王が集めた闇の力が膨大なため、夜の間だけは、その力によりモンスター「など」が復活するとのことだった。

モンスターなどの「など」の部分には、大魔王が倒されたときに崩壊した、ゾーマ城も含まれる。
祝賀会を開いていたラダドームにいた住民達が、夜中に対岸に見えるゾーマ城が復活したのを発見したことで、酔いがすっかりさめて、再び絶望に包まれた。
だが、翌朝になれば再び消えたので、住民達も胸をなでおろす。

住民達は、昼間は安全なので、町の外を出ることが多くなった。
やがて、あちこちに新しい町が出来るだろう。
逆に、俺達のような経験値を稼ぐことを目的としている冒険者たちは、朝から宿屋で寝て夜に、冒険するという生活を送っているのだ。


「アーベルさん」
「どうした」
俺は、隣のベッドで寝ている勇者から声をかけられた。

ドムドーラの宿屋では、2人部屋が2部屋しか空いてなかった。
大魔王が倒されて、アレフガルド内の移動が増えたことから、宿屋の利用者が増大したためだ。
となると、俺が誰と同室になるかが問題になった。
俺を抜いた、3人が出した結論は、「じゃんけんで決める」だった。
俺の意見?
そんなもの、反映される余地はない。
ただ、問題があった。
俺と相部屋する相手が、毎日変わることを知った他の冒険者の男達が、俺を見る視線が殺気に変わっていることだ。
問題を解決したいが、俺の意見など反映される余地はない。

「今日は、一緒に寝ないのですか」
「今日はではない。今日もだ」
「いいじゃないですか、一度ぐらい」
「いや、女の子と一緒に寝るのはどうかと」
「大丈夫です」
勇者は胸を張って答える。
「母には、ゆうかんなおとこのこのように育てられましたから」
「それ、意味が違うと思うが」
俺は慌てて、反論する。

「これから、夜の戦いに備えて早く休め」
「夜の戦いなんて、なんかいやらしいですね」
「誤解するな。というか、何でそんなことを知っている」
「母には、ゆうかんなおとこのこのように育てられましたから」
本当なら、一度勇者の母親に直接確認する必要が、って何を聞くのだ俺は。

疲れたので、さっさと寝ることにした。
無論ひとりで。
 
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