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ドラゴンクエストⅢ 勇者ではないアーベルの冒険

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第15話 そして、アッサラームへ・・・

「ごくらく、ごくらく」
俺はアッサラームの宿にある共同浴場で旅の疲れを癒していた。

俺はひとりで湯船につかりながら、今日一日の旅程を思い出す。



全体攻撃魔法イオを覚えた俺は、予定通り、ロマリアまでキメラの翼で飛んでから、ロマリアの東方にある、アッサラームの町を目指した。

モンスターに襲われないよう慎重に歩みを進めていたのが幸いし、強敵と出会うことなくアッサラームに到着した。


アッサラームの町は、多くの商売人であふれていた。
だが、あこぎな商人も多く、法外な値段で武器を売りつける奴らに、テルルはうんざりしていた。

「おお!わたしのともだち!お待ちしておりました。売っているものをみますか?」
商人にとって、定価の16倍で買ってくれる客は、ぜひ友達になってほしい相手だ。
セレンは、ためらいがちにホーリーランスの値段を尋ねる。

「おお、お目が高い!36,800ゴールドですがお買いになりますよね」
それだけの金があれば、勇者が装備できる最強の剣が買える。

「おお、お客さんとても買い物上手。わたし、まいってしまいます」
そういって、商人は18,400ゴールドにまけるといいだす。
確かに、アッサラームの宿代7年分をまけさせること自体は、買い物上手かもしれない。

「おお、これ以上まけるとわたし大損します!でも、あなたともだち」
今度は9,200ゴールドにするといいだす。
最初の提示価格で売れることを考えたら確かに大損だ。だが、定価の4倍の金額で買う人間がいるのか?

「おお、あなたひどいひと!私に首をつれといいますか?」
商人は最後には4,600ゴールドとまで言い出す。
定価の倍で売らなければ死んでしまうという商売なら、商売の方法について本当に一度、見直したほうがいいだろう。
商人でない俺でも、それぐらいのことは考える。

とはいえ、冒険者のように、他の町に行き来をして比較できるのであればわかる事実だが、普通の街の人に、それがわかるとは限らない。
だから、知らずに買う人もいるかもしれない。
だが、俺たちは他の街からきた冒険者だ。

俺も最初の頃はテルルと同様、うんざりしていたが、途中から「これはネタだ」などと考えることにすると、下らなすぎるネタとして、逆におもしろく感じてしまった。

そんな俺の様子をみた、セレンは思わず吹き出し、テルルはやれやれといった表情で俺と商人を一瞥する。
俺たちは帰ろうとすると、商人から声をかけられる。
「そうですか、ざんねんです。きっとまた来てくださいね」
ネタが聞きたくなった時に寄るようにしよう。だから、新しいネタを考えておいてくれ。

結局、俺たちは夜中だけ開いているという、別の店で鉄の斧を購入した(もちろん定価で)。

買い物に疲れた俺は、先に休むと言って宿に戻ろうとしたが、セレンとテルルは別のところに行きたいらしい。
「ベリーダンスを見に行くの」
「ああ、そうか」
「アーベルは見にいかないの?」
「別に行くつもりはない」
「本当?」
「たしか、行きたいと目を輝かせていってなかった?」
セレンは俺の答えに疑問符をつけ、テルルなどは事実をねつ造している。

「そんなことはいっていない。楽しみにしていたのは、ここの商人の話し方だ」
「はいはい、わかりました。わかりました」
俺の正直な感想に対して、テルルはニヤニヤしながら答える。
商売相手には、絶対してはいけない対応だ。
俺はテルルの商売相手で無いことを残念に思う。

結局、セレンとテルルはベリーダンスを見にいって、俺はゆっくりと共同浴場で湯船につかることとなった。

浴場があって本当にたすかった。
この世界では、毎日の入浴は一般的ではない。
アリアハンも基本的に、水を含ませた布で体を拭くことが一般的だった。
俺の母ソフィアはきれい好きだったことと、宮廷魔術師の収入の多さからキチンとした浴室を作って俺と毎日入っていた。
父ロイズはそれほどきれい好きではなかったので、簡単に体を拭き、汚れを洗い流すだけだった。


俺は転生したてのころ、母親と一緒に入るのに抵抗をした。
だが、俺がまだ5歳であること。
そして、川に溺れて死にかけたこと(川と風呂は別だという俺の抗議は無視された)から俺は無理やりに、母親と一緒に入ることになった。

「おかあさんと一緒に入るのはいや?」
ソフィアは、視線をあわせない俺に質問する。
「ちがうよ」
「じゃあ、こっちを向いて」
ソフィアは俺の両肩を捕まえて、正面に向けさせる。
自然とソフィアの体に向き合うことになる。
ソフィアは美人であり、転生前の俺よりも年は若い。
俺の心はかなり動揺しているが、体は5歳なので何も反応していない。
俺は体が反応しない幸運に感謝しながら、仕方がないとあきらめた。

結局ソフィアと一緒に風呂に入ったのは、11歳のときまでだった。



「さて、いい湯だったな」
俺は、頭に乗せていたタオルを手に取り、湯船を出た。

「ここのお風呂、男女混浴だって。いやーね」
「まあ、身につけるものがあるから、って」
2人の少女と視線が合う。
「イヤー!!」
「キャー!!」
少女達が声を上げる。
よくみると、セレンとテルルだ。

「混浴だろう。そこまで、騒ぐことはないだろう」
「服を着なさい。服を!」
テルルは赤くなりながら、全裸の俺に指摘する。
テルルやセレンは、フィットネスインナーのようなものを身につけている。

俺は、テルルの指示に従い、服を着る。
「まったく、何も着ないなんて、何を考えているの」
「家の風呂ではこんなかんじだぞ」
「家と浴場は違うでしょう!」
俺は日本の浴場のことを考えて反論しようとしたがやめた。

「次からは気をつけるよ」
「次があると思っているの!」
テルルは語気を強める。
「おい、湯船につからないなんて、不衛生にもほどがあるぞ」
「家にもどればいいじゃない」
「遠足じゃないんだから、毎日家に帰るという話とは違うだろう。それに毎日キメラの翼やルーラをつかうのは、贅沢すぎる」
俺はテルルをなんとかなだめ、毎日実家に帰るという罰ゲームから逃れることが出来た。 
 

 
後書き
入浴時の服装はドラクエ9を準用しました。

えっ、「ぱふぱふ」?
それは、火力発電のことですか?(ちがうよ) 
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