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ドラゴンクエストⅢ 勇者ではないアーベルの冒険

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第8話 そして、旅立ちへ・・・

「アーベルさんと、テルルさんと、セレンさんですね」
「はい」
「説明は養成所で聞いているとおもいますが、再説明は必要ですか?」
「いいえ、必要ありません」

俺とセレンとテルルはルイーダの店の2階で冒険者登録の説明を受けていた。
とはいえ、既に養成所で登録内容については、承知しているが。
俺たちは、登録をすませると、パーティを組み、王宮へと向かう。
セレンは、説明した男から「あなたは、なかなかふつうですね」と言われたことに、かなり腹を立てていた。


結局、パーティは3人で組むことにした。
俺は本来、4人でパーティを編成することを考えていた。
編成人数は大事である。
実は長い旅を続けるうえで、男女混合の3人パーティは危険なのである。

冒険者養成所の統計データによると、長期間男女でパーティを組むと恋愛関係に発展する可能性が高い。
恋愛関係自体は問題ないが、残されたメンバーが問題になる。
冒険者養成所の統計データによると、残された1人は結局パーティから外れてしまうのだ。
俺はパーティ編成についての講義を、前の世界での男女混合の音楽ユニットを思い出しながら聴いていたが、自分がその立場に置かれるとなれば、複雑な心境だ。

相手から、恋愛関係を迫られることはないと思うが、俺も男だ。欲求が高まれば何をしでかすかわからない。
そんなことで、パーティが崩れると当初の目的が果たせなくなる。

とはいえ、適当に新たな人を入れることもできない。
自分たちと同時期に冒険者養成所を修了した冒険者は、既にパーティを組んでいる。
若干残っている冒険者は、「らんぼうもの」の戦士のように、パーティに入れることのほうが、3人でいることよりも問題が生じてしまうようなものばかりだった。

既に活動している冒険者を加える手もあるが、行動の主導権を握られることになる。
結局、当面は3人で行動し、時折アリアハンに顔を出し、良さそうな冒険者がいれば仲間に加えることにした。

王宮へ向かう途中、勇者候補生にあった。
この勇者候補生はあと2年すれば、旅に出ることができる。
父オルテガにも負けない素質があると噂されているが、国家機密であり、本当のことはわからない。
ただ、俺が見る限り、彼以上の勇者はいないと考えている。
わずか6歳のときに見せた覚悟は、今日にいたるまで変わっていないのだ。

俺はセレンとテルルを待たせると、勇者候補生に話しかける。
「久しぶりだな」
勇者候補生はうなずく。
俺は、最初の頃こそ勇者候補生を恐れ、さけていたが、こちらが敵対しないかぎり問題ないと理解してからは、積極的に話をしている。
俺は、前の世界の名前を捨て、アーベルとして生きている。彼は、勇者として生きている。ある意味、似たもの同士だからかもしれない。
いまでは、表情だけで勇者候補生の答えをほぼ読み取れる。

「一足先に、旅に出るよ」
勇者候補生の顔は少し心配そうな顔をする。
「大丈夫だよ。無理はしないさ」
俺の言葉でも、心配そうな様子は消えない。
「本当に大丈夫だよ。バラモスは残しておくから」
勇者候補生は、驚いた顔をしたが、すぐに笑顔になった。

俺はバラモスを倒さない。
その代わりゾーマは俺が倒すけどな。
「俺は勇者じゃなくて、魔法使いだから」
勇者候補生はうなずく。
「魔法使いといっても、童貞ではないけどな」
勇者候補生は驚く。

しまった。前の世界の冗談を使ってしまった。

確かに、前の世界では童貞ではないが、前の世界の話自体、禁句だった。
この勇者候補生は、このような冗談を他人に話すことはないが、それでも用心しなければならない。誰が聞き耳を立てているかわからない。
「すまん。今のは忘れてくれ」
勇者候補生は、うなずいた。
「帰った時は、みやげものでも買ってきてやるよ」
勇者候補生は、嬉しそうにうなずいた。

「そうだ、もし旅にでたら頼みたいことがある」
俺は勇者候補生にひとつ頼み事をした。

勇者候補生と別れて、セレンとテルルのところに戻ったが2人の様子がおかしい。
「どうしたんだ、2人とも」
「・・・」
「知りません!」
セレンは無言のままだし。
テルルは怒っているようだ。

待たせすぎたのだろうか。それとも、勇者候補生と一緒に話をしたかったのか。
「セレン、テルル。すまなかった」
「え、え?」
「べ、別に謝ってもらっても・・・」
「王宮に行くまでに、あいつとした話しをしようか」
急に2人は、顔を赤くする。
「・・・」
「こんなところで話さないでよ!」
勇者候補生とは、たいした話はしていないが、聴きたくない話を持ち出すこともない。

俺たちは、無言のままで城内にたどり着いた。


「冒険者アーベルよ」
「はっ」
俺は、王の前で片膝をついた姿勢で答える。
「そちに、アリアハンの使者を命じる」
「謹んでお受けします」
「ロマリアとポルトガに行き、船を手に入れるのだ」
「はっ」
「では、身分証と書状を受け取るがいい」
「はっ」

アリアハンの王から、身分証と書状とを受け取ると、俺は再び王の前に膝をつき礼をする。
「では行け、アーベルよ」
俺は、後ろを振り返り出口を目指す。
途中、父ロイズを見かけたがお互いに無視をする。
俺は、1階で待っている、セレンとテルルのもとへと向かった。

俺は、1人で王と対応した。
別に3人でもかまわなかったが、万一俺が交渉に失敗しても、責任を取るのは俺1人で十分だ。
逆に成功したら、3人で王に報告すればいい。
セレンとテルルもその事は知っているので、文句は言わない。

3人そろった俺たちは、そのまま街の外へと向かった。
既に冒険の準備は出来ている。
一日も無駄にはしたくない。
俺は原作知識を使って、少しチート気味なことをしている。
装備面の改善である。

キセノン商会の協力を得て、出世払いということで、アリアハンで用意できる最高の武器を用意してくれた。
防具についてはさらに優遇してある。
キセノンは、ランシールから「みかわしの服」を3人分調達してくれたのだ。


「おじさん。ありがとうございます。金はお返ししますので」
「別にお金はいいよ。娘の持参金代わりということで」
「必ず、お返しします」
「アーベルよ、即答するのか。ひどいやつだ」
「文句は、テルルの意見を聞いてからにしてください」
このようなやりとりを経て、初期資金1000Gと一緒に出世払いになったのだ。


町はずれでは、母ソフィアが俺を待っていた。
俺はセレンとソフィアの顔を見たが、2人とも親子の別れに気を遣って、2人きりにしてくれた。

「母さん。行ってくるよ」
「気をつけてね、アーベル」
「大丈夫だよ。母さんの息子だから、簡単には死なないよ」
「アーベルったら」
「ロマリアに着いたら、一度戻るよ」
キセノン商会で買ったキメラの翼を見せる。

「待っているわ、アーベル」
「ああ、いってくる」
「その前に、アーベル」
「なんだい、母さん」
「アーベルはどっちと結婚するの?」
「えっ」
「どっちもかわいいから、困っているの?」
「母さん」

確かに2人ともかわいい事は否定しないが、今ここで聞くことか。
「冒険が終わるまでには、決めなさいよ。私みたいに一目惚れするのもいいけど」
母親はいたずらっぽく笑った。
「そのときは2人が納得するような娘を見つけなさいよ」
「それは、厳しいかも」
「そうね」

母親は俺を抱きしめる。
「気をつけてね」
「うん」

俺は母親と約束した。
 
 

 
後書き
第1章が終了しました。

第1章終了時点でのステータス

テルル
商人
ぬけめがない
LV:1
ちから:7
すばやさ:10
たいりょく:6
かしこさ:15
うんのよさ:6
最大HP:12
最大MP:14
攻撃力:23
防御力:40
EX:0
くさり鎌、みかわしの服、皮の盾、ターバン

セレン
僧侶
ふつう
LV:1
ちから:6
すばやさ:9
たいりょく:6
かしこさ:8
うんのよさ:6
最大HP:8
最大MP:15
攻撃力:22
防御力:33
EX:0
くさり鎌、みかわしの服、皮の盾、皮の帽子

アーベル
きれもの
LV:1
ちから:5
すばやさ:9
たいりょく:5
かしこさ:19
うんのよさ:4
最大HP:9
最大MP:13
攻撃力:13
防御力:31
EX:0
ブロンズナイフ、みかわしの服、おなべのフタ、皮の帽子 
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