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ドラゴンクエストⅢ 勇者ではないアーベルの冒険

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第1章 始まりの終わり
  第1話 そして、転生へ・・・

 
前書き
読者の皆様へ

このたびは「ドラゴンクエストⅢ 勇者ではないアーベルの冒険」をお読みくださいまして、ありがとうございます。

この小説は、原作と厨二病と勢いで構成されています。
原作はSFC版ドラゴンクエストⅢ及び公式ガイドブックを基にしています(小説等は読んでいません)が、作者にとって都合のいい展開を行うため、FC版を取り入れたり、SFC版及び公式ガイドブックとは異なる内容もあります。

物語として、個人的には鬱展開は好きでないので、気楽に読める展開を目指したいとは思っています。
あと、戦闘シーンはあっさりですので(筆力的に)、ご了承下さい。

にじファンで以前お読みになった皆様へ

再びお読みいただくことに感謝申し上げます。
基本的に以前の内容とほとんど変更しておりません。
主な変更点としましては、
○話数を再構成して、詰めました。115話→72話
○各章の最後に主人公たちのステータス表記を本文で掲載→各章の最後のあとがきに掲載
となっております。 

 



「アーベル!」
「アーベル!」
ふと、目が覚めると、目の前に見知らぬ男女が、俺に声をかけている。
しかし、アーベルとは誰のことだ?

俺が目覚めたことに気付いた二人は、喜びの声を上げる。
「無事だったのね、アーベル!」
「心配したぞ!」
心配してくれるのはいいけど、誰だろうこの人たち。
お礼をいうために、起きあがろうとするとめまいがした。飲み過ぎたせいか?

頭をおさえる俺をいたわるように、二人は
「無理はしないで、ゆっくり休むの」
「まったく、おとうさんを迎えに行って堀に落ちるとは、アーベルはうっかりものだな」

おとうさんだと・・・。
俺はあわてて、おとうさんと自称する男の方を向く。

昔の西洋風の服を着た男は、自分と同じぐらいの年齢、いや少し若いか。なぜ俺はこの人を「おとうさん」と呼ばないといけないのか?
と、自分の姿を見て驚く。
「!」

おかしい、手足が短い。
まるで子供ではないか。
「な、なんだこりゃー!!」
自分の姿の変化に驚き、あわてて体を起こそうとする。

「どうしたの。アーベル!」
「動くんじゃない。アーベル!」
二人の男女に体を押さえつけられ、子供の力しかない俺は、動くことができない。
俺がなおも手足をバタバタし、叫ぶ様子を見て、男は女に合図を送る。
様子を察した女は、俺の額に右手をあてる。

俺よりも若い(?)女性のやわらかい手が額にふれて、俺は思わずあたたかいなと手足を動かす力を弱めてしまった。
女性は、俺を優しそうに見つめながら、一言つぶやく。

「ラリホー」

俺の頭に突然の睡魔が襲う。
ばたついた手足の動きが止まる。
どこかで、聞いた言葉だと思いながら、俺の力は抜けてゆき、安らかに眠っていく・・・



再び、目が覚めると、俺は周囲を見渡す。
6畳程度の木造の部屋。映画などで見た、昔の西洋風の部屋みたいだ。
部屋には、俺が寝ているベッドと、その隣に木でできた椅子で寝ている女性。そして、木製の温かみの感じられる家具がある。

女性は見たことのない言葉で書かれた本を膝の上に置いている。
俺は今自分が居る場所を考える。

日本語は通じるようだが、ここが日本国内かと言われると少し怪しい。
俺は、少し落ち着きを取り戻したことを自覚しながら、これまでのことを思い出す。



「お先に失礼します」
「ああ、お疲れ。今日はがんばれよ」
「・・・。友人の家に行くのに、何をがんばれと?」
俺は、先輩の激励に質問で答えると、先輩は残念な声を出す。
「お前、今日が何の日かわかっていて、質問しているのか」
「わかっていますが、だからといって何をがんばればいいのですか?」
「あー、やだやだ。お前さっさと帰れ」
「そうします」
俺は、そういって市役所の庁舎を出る。

俺は、地方公務員だ。
だからといって、もてるわけでも無く、多くのカップルにとって重要イベントのひとつであるクリスマスも、俺には無縁のイベントではある。
無縁と言ったら語弊があるな。
俺がこれから行く先は、ある意味クリスマスと関係があるから。
などと自分の考えに浸っているうちに、道中に見知った後輩が視界にはいったので声をかける。

「お疲れさま」
「先輩、お疲れ様です」
10年後輩の女性は、俺の声に何故か嬉しそうな返事を返す。
10年後輩といっても、俺が高卒で彼女が大卒なので年齢の違いは6歳ではあるが。
それにしても、と俺は思う。
彼女もそういえば、独り身だったな。可愛いくて、性格もいいのに、もったいない。

5年前に彼女が採用されたとき、俺と同じ係に配属され、俺は1年間、後輩の指導をしていた。
後輩の指導といっても、担当業務は異なるので、主に役所独特の仕事のやり方についての説明ではあったが。
彼女の仕事の速さと正確さは、すぐに周囲に知るところとなり、敵を作らない性格も加わって、将来の幹部候補とささやかれるようになる。
俺は、翌年の異動で別の課に配属されたが、たまに会うと声を掛け合う程度の仲にはなっていた。

向かう方向は一緒なので、しばらく、世間話をしていると、
「先輩は、今日の予定はあるのですか?」
「残念ながらね。いつものことだが」
「・・・、ああ、あれですか」
彼女は、俺がこれから向かうイベントのことを知っていた。
「残念なら、行かなければいいのに」
「そうはいっても、他に予定はないし」

俺は、そっちはどうなのだ。と彼女に余計な一言をいってしまう。
「せ、先輩には関係ないです」
突然彼女は、怒り出す。
俺は驚いて、彼女の顔を見る。顔がかなり赤くなっている。寒さのせいだけでは無いはずだ。かなり怒らせてしまったようだ。
「すまん。確かに関係ないな」
「・・・、いいです、もう」
どうやら、さらに彼女を怒らせたようだ。
ただ、俺にはその理由がわからない。

俺に姉妹がいなかったことと、随分昔に付き合っていた相手がいたが、それも短期間だったたことから、あまり女性の気持ちがわからないのが原因と思っているのだが、どうだろう?

彼女は俺が黙っていると、意を決したように声を出す。
「先輩、失礼します」
「お、おい」
俺の制止を聞かずに、彼女は急に走り出した。

俺は大声で、彼女に忠告する。
「雪で滑るから、足下に気をつけろよ!」

一瞬彼女は俺の方を向いたが、今度は全速力で走り出した。
俺の声が聞こえなかったのだろうか?

ふと、周囲を見渡すと、多くの視線が俺の方に向けられていることに気付いた。
「・・・」
ああ、みんな誤解しているな。確実に。
俺は大きなため息をつくと、目的地にむかって歩き出す。



「クリスマス中止祝賀会」
俺がこれから向かうイベント名である。
敬虔なキリスト教徒が激怒しそうな名称ではあったが、俺は彼らを否定するつもりは毛頭ない。
ただ、キリストの誕生を祝わないクリスマスイベントは中止すべきだ。というのが、俺を含めた、創設者5人の趣旨である。

残念ながら(?)、結婚したり、彼女ができたりして、創設者メンバーのうち2人が脱落し、現在では3人の参加者となっている。
まあ、賛同者を増やす活動はしていないので、いつかは自然消滅するだろう、と考えているうちに、会場である友人の家に到着した。

「メリークリスマス!」
「メリークリスマス!」
俺はどうやら、会場を間違えたようだ。
「・・・すまん、会場を間違えたようだ。失礼する」
俺の声に反応して、友人二人の声が重なる。
「ちょっと待てー!!」
俺は、部屋に置いている演題のタイトル名を指さす。
「クリスマス中止の中止祝賀会」
いつもより3文字多いタイトルは、去年までの活動を完全否定する内容だった。


「これには、理由があるのだ」
「まあ、ひとまず落ち着こう」
二人は強引に俺を部屋に招き入れ、座らせる。
俺も、しぶしぶソファーに腰掛ける。
「まあ、話を聞いてくれ」
「仕方がない、聞くだけはきこう」

結論からいえば、二人に彼女が出来たのだ。

二次元の。

「ひがむなよ」
「来年には三次元になる。なにか問題でも?」
「・・・いや、問題ない」
二人の話を聞きながら考える。どうしてこうなった?

二人の彼女については、知っている。
ゲームに人生のほとんどを費やすことを決めた俺にとって、そのゲームは話題性も含めてよく知っている。

ジャンルとしては恋愛シミュレーションゲームのひとつだが、これまでとおおきく異なる点が二つある。
一つめは、彼女が出来てからがこのゲームの本番であること。
これまでは、彼女が出来るまでがゲームの目的であることが多かった。
しかし、このゲームは、当然彼女を作る部分もゲームとして作られているが、それは、「彼女と一緒に過ごすため」に必要な部分であり、あくまで序章なのである。
それまでの恋愛シミュレーションゲームは、あくまで彼女(彼氏)を作ることまでが目的であったから、革新的な要素ではある。

もう一つは、相互依存性を高めるゲームシステムである。
ゲームシステムと言えば身も蓋もないが、プレーヤーとして一方的な介入だけでは、いずれ飽きがきてしまう。このため、彼女もプレーヤーに対して、会話やスキンシップによる依存関係を求めることで、プレーヤーに対する責任感を植え付ける。

細かい部分を含めると話は尽きないので省略するが、結果として、恋愛シミュレーションゲームとしては多くの発売数と評価の高さを誇った。
ちなみに、この論評を匿名掲示板に掲載したら、大学生水準の論評という微妙な評価を受けた。
それはさておき、

「お前もやたら詳しいなぁ、実は彼女が居るのじゃないの?」
「お前も昔、コアラの・・・、いてっ!」
俺は、友人の一人にスナック菓子の袋を投げつけ、話を止めさせた。
「言うな。これくらいネットで調べればいくらでも情報が入る」
「興味があるのか、やってみるか」
「3人まで彼女ができるし」
セーブデータの単位が、彼女ですか。
俺は正直、このゲームに興味があったが、俺には向かないと思っている。
何故なら、強く束縛されるのが嫌だからだ。
昔の彼女(ゲームではない)とも、それが理由で別れてしまった。
それはともかく、二人の好意を無視して、いつも以上に酒を飲み、ふらふらになりながら友人の家を出た。


「やばい、飲み過ぎたか」
俺は、友人宅を出てから駅に向かう途中、独り言をつぶやく。

家で普段酒を飲まないため、酒は強くない。
それでも、飲み会などでは、なるべく飲むようにしている。
職場や友人達も俺のことを知っているので、普段は無理をさせることはなかったが、今日は友人二人が彼女の相手に夢中だったことから、一人無視された俺は、あまり話もせず酒だけを飲みつつづけ、今の結果にいたる。

俺は生活用水が流れる川沿いをガードレールに守られて歩いていると、3メートルくらい先の向こう岸から、俺を呼ぶ声が聞こえた。
「大丈夫ですかー」
「ああ、だいじょう」
と、俺は返事をするため声のする方に向かったところ、ガードレールにぶつかる。
それだけなら良かったが、雪で足下が滑り、ガードレールの上を越え、そのまま川の中に。

「ぶ!」

普段は低い水位だが、溶け出した雪が水位を押し上げたことが災いし、俺は溺れた。
酔っていたこともあり、何も出来ず、次第に意識が薄れてゆく。

・・・見覚えのある顔を、みつめながら・・・ 
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