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100年後の管理局

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第十八話 五人、同部屋

 
前書き
そこまで重要な話ではありませんが、次の話へとつながるワンステップになります。

この話に限ってではありますが、ささーっと読んでもらっても特に支障はありません。 

 
「あのくそ親父め……。フライ返しで人を気絶させてんじゃねーよ……。」
「あれは和也のせいだからしょうがないだろ。母親とは言え女性を貶めるようなことを言おうとしたんだから。」
「そうよ。それにあの剛士さんの目の前であんなこと言えば、ああなるのは目に見えていたでしょ。」
和也の文句に誠也とエリが合わせて批判する。
和也の父親、剛士は妻を溺愛しているほどの愛妻家だ。
妻を貶すものは息子であろうとも撃墜するその姿勢からも推測できる。
「まあ、親父が母さん大好きなのは知ってたけどな。まさか聞こえているとは思わなかったんだよ。」
和也は何度となく同じ目にあっているが、今回は聞こえていないと思っていたところに不意打ちだったため、対処することなく直撃してしまったのだ。
そのせいもあってか、普段和也は父親の前で母親を貶すことは決してない。
「でも剛士おじさんならどこからでも聞こえても不思議じゃないだろ?」
「…………そうだったな。我が父親ながら人外っぷりは呆れるほどだからな。」
店の端の方での会話を聞きとる聴力といい、お玉を高速かつ正確に投げつける技量といい、やや人間離れしていると言える。
「……まあ、親父のことは今はどうでもいい。それよりもりんか、今日は本当に四人も泊まって大丈夫なのか?」
「え?」
三人からは少し離れた位置でアリスと何かについて談義していたりんかが、和也に呼びかけられて和也の方へ向き、首をかしげる。
「なに?和也君。」
「いや、急に四人も泊まって大丈夫なのかなと思ってな。」
「大丈夫だよ。お父さんもお母さんも今海外だし、元々お部屋はたくさん空いてるから。」
月村家の家は豪邸である。
まず家の門の前に立てば、その門の大きさに圧倒される。
次に門の内側に入れば、その庭の大きさに圧倒される。
玄関にたどり着いて中に入れば、その広さに圧倒される。
といった具合に超豪邸であり、部屋は余裕がありすぎるほどに余裕がある。
だから四人程度急に泊まることになっても何も問題はないのだ。
ちなみに月村家に泊まることになったのは翠屋で次のようなやり取りがあったからである。


「そう言えば誠也君は今日どこに泊まるの?」
美沙がそう誠也に問いかける。
誠也はその質問に驚いた表情を見せた。
「えっ?今日はこちらに泊めてもらえないんですか?」
誠也の疑問は心の底から発せられたものだ。誠也は今の今まで泊めてもらえるものだと思っていたのだ。
「うーん。泊めてあげたいのは山々なんだけどね。」
「昨日から父さんの友人夫婦がこっちに旅行に来ててな。部屋が余ってないんだ。」
「そう……ですか。」
美沙の言葉を継いだ和也の返答に誠也は本気で悩んだ。
言い方は悪いが誠也は寝る場所として高町家を頼って地球に来ていた。
これは連絡もせずに地球に来てしまった誠也のミスと言える。
誠也がどうしようと本気で悩み始めた時、
「じゃあ、私の家に来る?」
そう提案してくれたのがりんかであった。


その後、最終的に全員で月村家でお泊まりするということでまとまり、現在に至っている。
「じゃあ、部屋分けどうする?」
和也がそう切り出す。月村家に来てからもう何時間か経つが、まだ部屋分けを決めていなかったのだ。
「え?五人で一緒に寝るんじゃないの?」
りんかは何を言っているんだろう?という表情で和也に問いかける。
「そうよ。みんなで泊まりに来てるんだから一緒に寝ればいいじゃない。」
エリもりんかに賛同する。
「あのなぁ……。」
男女七歳にして席を同じうせず。
この言葉にあるように、男女はある程度の年齢になればその性に区別をつけなければならない。
それを十五歳にもなって同じ部屋で寝るなど、別の意図があるようにしか思えない。
「誠也も言ってやれ。」
同じ性別である誠也にも賛同を呼び掛ける。
「和也の言うとおり、部屋は男女で分けた方が……。」
誠也も和也と同意見であった。
しかし。
「誠也!あんたはお姉ちゃんと一緒に寝れないって言うの!?」
エリが身を乗り出し誠也に迫る。
誠也は突然そんなことを言われて戸惑ってしまう。
「で、でも……。」
「でもも、何もないわ。誠也は今日お姉ちゃんと一緒に寝るの。」
そう言って、誠也を自分の元へ引き寄せて抱きしめる。
エリは今日一日のやり取りで誠也を大変気に入ったらしい。
実の弟のような可愛がりっぷりだった。
「アリスちゃんは私と一緒に寝るよね?」
「う、うん……。」
アリスは戸惑いの表情を浮かべながら頷く。
りんかはいつも以上に笑顔であったが、それゆえにアリスは頷かざるを得なかった。
アリスはりんかに抱きしめられる。
「どうする、和也?」
「どうするの、和也君?」
どうするもなにも、ここまでされれば答えは一つしかない。
 
 

 
後書き

エリは話の中で描かれていない間に、誠也の事を随分気に入ったようですw

りんかも同じようにアリスを非常に気に入ったようですw

二人にとっては弟、妹のように感じています。
 
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