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魔法少女リリカルなのは・限界状況に挑む少女達(難易度大幅UP)

作者:歪んだ光
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終わりにして始まりの闘い

 
前書き
お久しぶりです。読んでいてくれている人がいたら、遅れてすみません。 

 
ジュエルシードの反応があった林の中に足を踏み入れる。この近くには児童公園があり、普段は朝から夕方まで子供達の声が絶えない。
「バルディッシュ?」
“It has been lost ”
「そっか……もう、管理局が動いたのかな?」
しかし、最近は子供達の声が途絶えて久しい。そんな淋しい木々の中を一人の少女が散策していた。黒いシャツに少し黄色がかかったホットパンツを着用した金髪の少女。夕焼け色に染まった林の中をただ一人で歩くその姿は幻想的だ……そのまま消えてしまいそうなくらい。
「アルフ、そっちはどう?」
林の中の小道を歩いているとき、その少女は突如、誰も居ないところに話しかけた。すると、草が鬱蒼と茂る向こうから大きな――ややもすればドーベルマンをも噛み殺しかねない――犬が出てきた。オレンジ色の体毛に、額に埋まった宝石が印象的だ。そんな、普通の動物より野性的な犬が人語を解するとは皮肉な話だろうか。
「いや、こっちも全然だよ」
そっか、と一言悔しげに返す。
「ただね、気になる事があるんだけど……」
「うん?」
「ジュエルシードの痕跡があったところに……フェイトと同い年くらいの小さな女の子がいたんだよ」
はて?と首を傾げる。確かに、そんな危険なところに女の子が居たのは不思議だが、特に気にするほどの事ではない。その子が管理局の人間である可能性は0に近いから。管理局に所属し、ジュエルシードに対処出来る、自分に近い年齢、という条件に当てはまるのは、名に知れた『クロノ・ハラオウン』という……十年に一度の天才と称される少年ただ一人だ。
アルフと呼ばれた犬の話からすると、その場に居たのは女の子だ。
「それで、その子がどうかしたの?」
しかし、とりあえずはアルフの話が先だと考え、フェイトという少女は先を促した。
「その子、フェイトと同じくらいの魔力を持ってた」
「ッ」
その瞬間、何とか叫びだしそうになった声を殺し、状況を整理する。
まず、自分達の目的はジュエルシードの確保。管理局に気付かれる前に最低でも7個は確保する必要がある。当初の計画では、魔法が認知されていない第97管理外世界なら、ジュエルシードを確保するライバルが居ないので比較的時間をかけてジュエルシードを確保できるという話だった。管理局の方も、母さんが事件を起こして注意を反らすから問題無い筈だった。しかし、ライバルがいるなら話は別だ。もし、その子がジュエルシードを回収しているなら、自分もうかうかしていられない。出遅れた事を考慮すると、下手をすれば7個回収するのが不可能かもしれない。
「バルディッシュ、アルフ。行くよ……今日中に一個は確保する」
“OK”
「分かったよ、フェイト」
告げると、2つの影はそろそろ暗くなり始めた空に消えていった。
.
.
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.
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.「……あった。やったよ、アルフ。1つ見付けた」
フェイト達がジュエルシードの捜索を初めて2時間後、運良く発動前のジュエルシードを見付けた。幸運な事にそこは山の中で、時間が時間なのか周りには誰も居なかった。
「アルフ、結界はいらない。すぐに片付ける」
告げると、アルフの了承を聞かずに黒のバリアジャケットを纏い、ジュエルシードに向かっていった。
一見無謀に見えてこの判断、実は案外悪くなかった。ジュエルシードが真に恐ろしいのは発動中だ。発動前に封印出来るなら、ある程度のリスクには目を瞑ってもお釣りがくる。故に、アルフもバルディッシュもその行動を止めることをしなかった。
……故に、アルフは次の瞬間
地面に叩きつけられたフェイトを信じられない思いで見た。

「フェイト!」
地面に叩き付けられたフェイトを目にし、アルフは主の元に駆けつけようとしたが
「来ちゃダメ!」
フェイトの制止で駆け付ける事は無かった。
「このジュエルシードの周りだけ、重量が……重い……!」
「……してやられた訳か!」
発動前というのは獲物を誘き寄せるためのブラフだった。
「何とかレジスト出来そうだから、アルフはサポートを」
言いながら、何とか立ち上がる……出来たのはそれだけだった。
「ぐ……動きが」
戦闘において、フェイトが一番頼っているのが自身のスピードだ。防御より回避を。一瞬で間合いを詰める最高の武器。しかし、フェイトが動けなければ用を為さない。彼女の戦闘方は近づいて斬る、それが基本にして奥義だ。近接戦では類い希な際を発揮するが、遠距離戦は滅法弱い。ジュエルシードは相も変わらず、土の上に転がっている。しかし、そこまでがどれほど遠いか。
「辿り着けないなら、撃つまで!」
しかし、遠距離戦が苦手と言っても対人を前提とした場合の話だ。年齢不相応なその魔力を砲撃すれば、ジュエルシードを封印する事くらいは叶う。
「プラズマ」
撃つは近・中戦闘を前提とした、彼女の数少ない大火力の砲撃魔法。遠くの敵を撃つことと引き替えに、威力・発射速度を上げた必殺の魔法。
「スマッシャー!」“Plasma Smasher ”閃光の斧から放たれた雷は音より速く魔の宝石を穿ち、霧散した。
「な!?」
理由は簡単。単純にフェイトが間違えていただけだ。発動中のジュエルシードは一つでは無い。二つあった。一つが防御を担当し、もう一つが森に迷い込んだ獲物を捉える。最も、フェイトには知り得ないことだったが。肝心な防御用のジュエルシードが見つからないのだ。幾ら何でも分が悪い。一旦引くべきか?
「アルフ、一旦うわっ!?」
しかし、ジュエルシードはそれを許さなかった。突如、地面から樹の根や蔦が飛び出、フェイトの四肢と喉を縛り地に貼り付けた。
「かはっ……」
これが狙いだったのだろう。重力と拘束のダブルトラップで相手を封じ、止めを刺す……ギロチンで。
「っ!?フェイト、逃げて!」
禍々しいまでの刄を見たアルフが真っ青になって、バインドでフェイトの喉に狙いを定めるギロチンを掴もうとするが……
「バインドが……!?」
ギロチン自体が高密度な魔力で構成されているので、生半可な魔力で作られたバインドでは触れただけで消されてしまう。
「くっ……魔力が、拡散する……」
一方のフェイトも喉を締め付ける蔦に気がとられ、魔法が行使出来ずにいた。
「マズ……い?」
自分の喉に迫ってくるギロチンから目を反らしたとき、丁度人の頭くらいの大きさのモノと目があった。
(ああ、そうか。だからこの森には誰も居なかったのか)
走馬灯の様に、この森に入った人たちの最期が思い浮かんできた。
(アルフ……何言っているか解らないよ)
子供の頃から一緒にいた家族が何か必死に叫んでいたが、上手く聞き取れなかった。
そんな事を考えている内に、無慈悲な刃は少女の首を刈ろうと迫っていた。
(私、ここで終わっちゃうのかな……)
一秒が惜しかった。見たいモノがあった。叶えたい思いが……あった。それを一秒で叶えるには、余りに時間が足りなく、だからこそ余りに愛しかった。
(人の最期は案外あっさりしたものなんだ。)
恐らく自分の死を悼んでくれるのは、アルフだけだろう。でも、直ぐに魔力がきれて死んじゃうだろう。せめてもの救いは、そうすればアルフは悲しまなくて済むことくらいかな。
……所詮、人形である自分にはお似合いの最期かもしれない。
ああ、もう刃がそこまで迫っている。
バルディッシュがプロテクションを張ってくれているけど、意味を為さないだろう。
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.
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「……ごめんね」
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..
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それが最後だった。魔力で構成された刃は、その頭の付け根を切り裂いた。付け加えるなら、赤い血しぶきが印象的だったか…… 
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