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100年後の管理局

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第十五話 地球、海鳴市

 
前書き
ついに地球へと舞台が移ります。
 

 
西暦2104年、地球の技術は遥か昔の創造作品、ドラ○もんやア○ムで描かれているような世界を作り出せるほどに進歩していた。
人は自在に空を飛び回り、街には多くのビル群が立ち並び、そのビルの隙間の道路を走る車は地面にタイヤがついておらず、むしろタイヤすらなく、地面と一定の距離をあけながらひゅんひゅん走っていた。
さらに地面の多くは黒く覆われ、降りかかる幾多の汚れは弾き飛ばし、降り注ぐ太陽光で人類のエネルギーをまかなっている。そこら辺を見れば多くの緑が生い茂り、人が生きるための酸素を生み出していた。
二十一世紀より人類が夢見た世界の理想、恐らく二十一世紀初期の人間がこの場に来たのならそう思うことだろう。
そして同時に疑問に思うだろう。一体どれほどの技術革新があったのかと。
二十一世紀に抱えた社会問題は解決され、人々は健やかにそして便利に暮らせる世界。
そんな世界を作る立役者となった一族がここ、海鳴市にある。


「全く和也の奴、あたしたちをこんなに待たせるなんてどういうつもりよ!まったくもう!」
「エリちゃん。それはしょうがないよ。翠屋がとっても忙しいらしいし、和也君に抜けられちゃうとお店が回らないみたいだから。」
海鳴の街を一望できる緑生い茂る丘のふもと。そこでは男たちの目をひきつけてやまないような美しい女性二人が会話をしていた。
一人は金色の髪を短く切りそろえた女性。背は165センチ程度であろうか。全体のシルエットとしてはすらりとしたモデル体型であり、現在着用しているシャツとショートパンツの組み合わせは、夏におけるかっこいい女性!というイメージをそのままとりだしたかのようであった。
対してもう一人の紫髪を長く伸ばした女性は、背は160センチ程度であろうか。隣に居る女性と比べてしまうとやや背が小さく感じる。ただその女性にはその背の小ささなどは無視できるような最大の特徴があった。それは男を惹きつける色香である。白いワンピースで令嬢のイメージが強く見えているが、その隙間からのぞく肌からは色香が漂い、見ている男の視線をこれでもかと釘づけにしてしまう。
しかし、幸か不幸か女性たちのいるあたりは基本的に人は訪れないので、周りの男は誰もいない。
「そんなこと分かってるわよ。仕事だし、向こうを優先するのは当然だけど、でもなんか私よりそっち優先なのかー。って思っちゃうのよ。」
「ふふ。やっぱりエリちゃんは和也君が大好きなんだね。」
「なっ!?」
にこにことしながら紫髪の女性はエリと呼ばれた金髪の女性に問いかける。
金髪の女性は、すぐさま顔を真っ赤にさせ口をぱくぱくさせる。
紫髪の女性はにこにことした微笑みを絶やさず、金髪の女性は口をぱくぱくさせたまま、両者とも何も言わず沈黙が訪れる。
そして沈黙を破ったのは金髪の女性であった。
「バ、バカ言ってんじゃないわよ!あ、あたしは別に和也のことなんて……。」
顔を真っ赤にしたままうつむき、最後は尻すぼみになりながら言い訳をする。
だがそんな態度からして導き出される答えは一つしかない。
その答えが分かってしまうからこそ意地悪く紫髪の女性はこう言う。
「そう?エリちゃんが和也君のこと好きじゃないんだったら、私が全部もらっちゃうよ?」
「そ、そんなのだめよ!」
咄嗟に顔をあげて、そう主張する。
顔をあげた先では紫髪の女性が先ほどよりもさらに笑みを深くしていた。
「う、うう……。」
金髪の女性はたじろぐ。
けれどもそんな様子を見ても紫髪の女性は何も言わず、ただニコニコと金髪の女性を見守る。
やがて金髪の女性はあきらめたかのように叫び出す。
「ああもう!!そうよ!大好きよ!私だって和也のことが大好きよ!!」
その表情は真っ赤で熟れたリンゴに遜色ない色である。
紫髪の女性はなおも表情を変えずニコニコとほほ笑んでいる。
それを見た金髪の女性は真っ赤な表情のまま反論する。
「そういうりんかだって和也のこと大好きでしょうが!!」
「うん、そうだよ。私も大好き。」
あっけらかんと紫髪の女性は言ってみせ、またも口をぱくぱくさせる。
しばらくした後、もう負けたわと言わんばかりにがっくりと肩を落としてしまう。
そんな時、今まで微笑みのまま表情を変えなかった紫髪の女性が、丘の方を見て表情を驚きに変える。
「ねえ、エリちゃん。あれを見て。」
「え?」
金髪の女性は丘の方を見上げる。
二人の見つめる先では白い光が集ってい始めていた。
それは徐々に大きくなっていき、一分ほど時間がたった後は人の大きさほどになる。
次の瞬間には白い光ははじけ、中から二人の男女の子供が現れる。
一人は栗色の髪。もう一人は金髪だった。
「エリちゃん。」
「ええ。行きましょう。」
二人は丘に向けて走り出した。


「地球よ!私は帰ってきた――!」
両の手を広げ、眼下に見える街に向かって唐突にそんなことを叫び出す少年。
もしもこれを傍から見ている人がいたならどん引きするだろう。
実際問題、隣に居た少女は他人のふりなのか、わずかに距離を取っていた。
「ちょっ!アリス!?」
そんな少女を見た少年――高町誠也は距離を取るアリスに待ったを呼び掛ける。
「はい。何でしょうか、高町さん。」
「ちょっと待って!その他人行儀やめて!」
物理的な距離のみならず、心理的な距離すらいきなり取り始めたアリスにショックを覚える誠也。
「じゃあ、なんであんなことしたのよ。」
「いや、なんとなく。久しぶりの地球だから、やらなきゃいけない気がして。」
どこぞの毒電波でも受信したのであろうか。
「ったく。やめなさいよ、そういうことは。見ているこっちが恥ずかしい。」
「……はい。」
アリスに叱られて縮こまる誠也。
その光景は尻に引かれる男性と、尻に引く女性の構図がぴったり合っているように思えた。
「この後はどうするの?地球に行くなら任せてほしいって言うから全部任せたけど。」
「これから和也のところに連絡を取ってそっちに向かう。」
「そう。なら任せたわよ。」
ちなみに、アリスも誠也も地球での連絡手段となる物は持っていないが、レイジングハートに頼めば、通信網の中に入り込むくらい造作もないことだったりする。
それじゃ、と首から下げたレイジングハートを取り出し連絡をつけようとするが、それは横から聞こえてきた声によって中断させられる。
「こんにちは。」
そこに居たのは紫髪の女性と金髪の女性の二人組であった。
 
 

 
後書き
美少女二人登場。
エリにりんかの二人です。ついでに名前だけですが和也という人物も登場。
エリとりんかが一体何者かは次回。
和也という人物の完全な正体は次々回でしょうか。
お楽しみに!

 
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