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セビーリアの理髪師

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15部分:第一幕その十五


第一幕その十五

「成敗しなければ」
「まだ言うのか」
「そもそも暴力はだね」
 バジリオは言うまでもなくバルトロの側に参戦してきた。彼の横から言う。
「よくはないのだが」
「これは大義だ」 
 伯爵は手前勝手な理屈を出してきた。戦争の理屈である。
「それならば」
「だから待てっ」
「待ちなさいっ」
 二人は剣を抜こうとする彼を止めた。
「弁護士を呼ぶぞ」
「弁護士!?」
「そう、弁護士だ」
 バジリオが言う。強張った顔で。
「そうすれば君はだな。いや、この場合は警察か」
「待ってくれ先生」
 バジリオにバルトロが突っ込みを入れてきた。
「この場合は軍の将校の方がいいぞ」
「将校ですか」
「そうだとも。兵隊なのだからな」
「確かにそうですな」
 バジリオもバルトロのその提案に頷く。
「兵隊ならば。そちらの方が」
「しかも憲兵のだ」
 バルトロはわかっていた。
「それでいいではないか」
「わかりました。それでは」
 バジリオはそれを受けてすぐに軍の駐屯地へ向かおうとする。そこにフィガロも来た。
「また何の騒ぎで?」
「何だ、君か」
 バジリオは扉を開けると出て来た彼を見て顔を不機嫌にさせた。
「君には用はないんだがね」
「私にはあるんですよ」
 フィガロはその言葉に笑って返した。
「実はですね。ロジーナさんに」
「あら、また私」
 ロジーナが朗らかな声を立てるとバルトロが不機嫌な顔で彼女を睨む。
「何かしら」
「はい。それは」
 実はリンドーロのことである。彼がいるのを横目で見ながら暗号的に示唆する感じで言おうとするがそこでまたしても異変が起こるのだった。
「何の騒ぎだ?喧嘩か?」
「!?今度は何だ!?」
 バルトロは扉の方の声にすぐに顔を向けた。
「今から入りますが宜しいでしょうか」
「どなたですかな?」
 バルトロが扉の前に来てその声に問うた。
「宜しければ名乗って下さい」
「連隊の者ですが」
「ほう、連隊の」
「アルビーニ大尉と申します」
「おお、これはいい」
 実際に将校が来たので顔を綻ばせる。まさに渡りに舟だ。
「士官殿が来られるとは」
「何の騒ぎでしょうか」
 大尉は扉の向こうからバルトロに問うた。
「実はですね」
「はい」
「そちらの兵隊さんがいきなり上がり込んできて騒いでいるのですよ」
「何とっ」
 将校としては聞き捨てならない話であった。すぐに声色が変わる。
「それは大変だ」
「何とかして下さい」
 バルトロはここぞとばかりに言う。
「本当に困っていますから」
「わかりましたっ」
 将校も真剣な声で答える。
「それではすぐにでも」
「はい、どうぞ」
 扉を開ける。するとすぐに軍服を着た士官が多くの兵士達を連れて家の中に入って来た。
 
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