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100年後の管理局

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第十話  最終兵器、苦戦

 
前書き
前回の続き 

 
黒づくめの人たちは、先ほどまで抵抗していた局員全てを沈黙させ、ロストロギアの回収を急いでいた。
「まずいぞ……。管理局の増援が来た。」
「封印処理はまだ終わらないのか?」
「後少しだ、これだけ強力なロストロギアだからな、相当厳重にやっとかないと暴発しちまう。」
通信妨害の結界を張っていただろう人が増援の存在を告げるも、ロストロギアの封印作業は多少なりとも難航していた。
今扱っているロストロギアはS級と言う次元世界を滅ぼしかねないロストロギアである。
その封印を疎かにしておくと最後に痛い目を見るのは自分である。
「WASが飛んできた!気付かれたぞ!」
「気付かれても大丈夫だろ。入口はしっかりと塞いできたんだからな。」
本来ならばこの100メートル下にある研究施設に向かうエレベーターは入ってくれば分かるような位置にあるはずだった。
しかし、テロリストたちは用意周到なことに増援をこちらに来させないためにわざわざその入り口を偽装してきたのだ。
「よし!封印完了!」
「こいつに入れてさっさと撤退するぞ。」
封印を施したロストロギアを外部魔力の影響を遮断する特殊な箱に入れる。
そして、さっさと撤退しようと入口であるエレベーターに向かったその瞬間。
「魔力砲来るぞ!上だ!」
一人がそう叫び、それと同時に三人はその場から大きく離れる。
その次の瞬間には桜色の閃光がその場をぶち抜いていった。
三人はそのあまりの大威力に少しの間呆然としてしまう。
三人のミスはここでわずかの間でも呆然としてしまったことであった。
我に返り、すぐさま移動しようとしたその時にはすでにぶち抜かれた縦穴から一人の少年が現れていたからだ。

「本局所属高町誠也一等陸尉だ。ロストロギア強奪の現行犯でお前たちを逮捕する。」


(あの手に持っている箱がロストロギアだな。)
誠也は相手を冷静に観察し、その手に持っているのがロストロギアだろうというあたりをつける。
「その手に持っているロストロギアをこちらに渡せ。さもなければ武力行使で以て強制的に渡してもらうことになるぞ。」
それは警告。
脅しでも何でもなく、相手がそのようなそぶりを見せれば即刻武力行使を行うつもりであった。
とはいえ当然と言えば当然だが、テロリストたちはその警告には応じなかった。
「お前が高町誠也………!」
それどころか三人のうちの一人が凄まじい恨みを込めたようにつぶやく。
他の二人も声には出さなかったものの、態度に凄まじい憎しみや恨みがこもっていた。
しかし、そんな感情をぶつけられた誠也は戸惑ってしまう。
ここまで凄まじい恨みをぶつけられるような覚えがなかったからだ。
(でも管理局所属だし、そんなこともあり得るか……。)
一体いつかは分からないがどこかで恨みを買っていたのだろう。
そこそこ有名になってしまっていたし、仕方のないことだと割り切った。
「お前たちがどんな恨みを俺に抱いているかは分からん。でもそのロストロギアは渡してもらう。」
『Accel shooter』
すると、先ほどまで何もなかった空間に桜色の光が瞬き始め、数瞬もしないうちに無数の魔力球が出現していた。
どれもこれもバカげたような魔力のこもった魔力球を前に三人はわずかにたじろぐ。
しかし、三人は念話か何かで会話をしていたのだろう、表情を切り替えて目配せをしあう。
それに気付いた誠也はそんなことはさせるまいとアクセルシューターを放とうとするが、
「散開!」
そう相手が叫ぶと、真ん中に居た相手は誠也に向かって突っ込み、左右に居たロストロギアの入った箱を持った相手と、もう一人は左右にそれぞれ開いた。
「GO!」
それを見た誠也はすぐさま20の魔力球を正面の相手に。
他それぞれ15ずつの魔力球を左右に開いた相手に向かわせる。
「はっ!」
けれども、正面に居た相手は自分に向かって来た魔力球だけでなく、他の仲間を追っている魔力球すらも腕の一振りで消滅させる。
魔力球を消滅させたことで目の前の障害となるものが取り除かれ、まっすぐに誠也に突っ込んで行く。
この展開は完全に誠也の予想の外側にあった。
しかし誠也はその程度で動揺せず、相手の接近を簡単には許さない。
「ショートバスター!」
『Short buster』
威力と射程、貫通能力を犠牲に、チャージ時間を極限まで小さくした魔法を打ち込む。
しかし、これも横にステップすることでかわされ、さらに前に詰められてそのまま繰り出された拳をレイジングハートで防御する。
(くそっ、このままじゃ取り逃がす!)
けれども正面に居る相手から繰り出される拳には殺意がこもっており、うかつに背を向けることを許さない。
だからと言って、自分が開けた大穴から脱出し全力で逃走している二人をこのまま取り逃がしてしまえば、相手にS級ロストロギアを渡してしまうことになる。
(どうすればっ……!)
繰り出される拳はレイジングハートで防ぎ、牽制としてショートバスターとアクセルシューターを打ち込むも回避される。
こんなことしている間にも逃げた相手はみるみる遠のき、探知圏内の外に出ようとしている。
このままでは飛行による高速移動の手段を持たない誠也では追うことができず、遠距離狙撃の牽制すらままならなくなってしまう。
そのせいで普段なら絶対にしないミスをしてしまう。
「邪魔だ!」
『Divine buster』
大きく飛びのき、できるだけチャージを短くしたディバインバスターを放とうとするが。
「それは悪手だ。」
そう言った相手に懐へ飛び込まれてしまう。
もてる魔力を総動員して防御魔法を張るも、相手のパワーの前にシールドは破られなかったが吹き飛ばされてしまう。
衝突により壁が粉砕され、誠也の周りに瓦礫が落ちてくるが、バリアジャケットのおかげで誠也の体には直接当たらない。
「くぅ……。」
(今のは勝負を急ぎ過ぎたか……。でも……!)
焦ってしまう。
取り逃がしてしまえば何に悪用されるか分からない上に、悪用されればどこの次元世界が崩壊するかも分からない以上、絶対に逃がすことはできない。
でもだからと言って心に焦りを抱えたまま、目の前の相手を打倒することは難しい。
ではどうすればいいのか。誠也が必死に考えていると。
《こっちに任せてや!》
頭に声が響き渡る。
相手は結界を維持していなかったのだろう。
通信妨害が晴れたことにより念話が通じるようになり、この念話が届いた。
この念話が一体誰のもので、自分にとってどういう意味を持つのかを誠也ははっきりと理解した。
「まさか、あの程度で死んだのか?」
立ちあがらないのを不思議に思っていていたのだろう。
砂煙の中に居る誠也に相手は不用心に近づいてくる。
そんな隙を見逃す誠也ではない。
不安要素も無くなった誠也は自分のありったけの魔力を注ぎ込んだ砲撃を打ち出す。
「ぐぁっ!」
相手は警戒を緩めていたせいでわずかに反応が遅れる。
直撃は避けたもののその余波だけで吹き飛ばされてしまう。
けれどもすぐさま体勢を整え、正面を睨む。
すると、ゆっくりと泰然とした歩調で誠也は歩み出てくる。
「そっちは任せたぞ!ひさめぇ!!」
最終兵器全力稼働開始。
 
 

 
後書き
AAAランクが相手になると、焦りに染まった思考では勝利を手にすることはできません。

あと三話続きます。 
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