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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第六十二話 フローラの迷い

              第六十二話 フローラの迷い
 さらなる攻撃に向かわんとするロンド=ベル。彼等はその中でふと疑問に感じることがあった。
「そういえばよ」
「どうしたの、勝平」
「いや、あの三人組だよ」
恵子に話していた。
「あの連中は何の為に出て来ただ?偵察にしろよ」
「只の偵察じゃないって言いたいのか?」
「何かそんな気がするんだよ」
勝平は宇宙太にもこう答えた。
「何かよ」
「確かにな」
宇宙太も彼の言葉を聞いて考える顔で頷いた。
「あの連中の動きは最初からどうも怪しいな」
「御前もそう思うのかよ、宇宙太」
「ああ」
勝平に対して答えた。
「そんな感じは俺も感じていた」
「そもそも何者だ?」
「また違う世界から来たみたいだけれど」
恵子も言う。
「それでも謎が多過ぎるわよ」
「そうだ、一体何なんだよ」
「それは俺にもわからない」
宇宙太もここでは首を傾げるだけだった。
「奴等の組織のこともな。全くな」
「何か修羅ってのもいるしよ」
「あれもわからないわよね」
「わからねえことだらけだよ」
勝平の言葉はまさにその通りだった。
「最近急にこうなってきたじゃねえか。いや」
「前からよ」
恵子はこう訂正させた。
「偶然にしても出来過ぎてるわ」
「そうだよな、そういえば」
「ガイゾックにしろバイストンウェルにしろだ」
宇宙太は言うのだった。
「他にもバームにしろキャンベルにしろボワザンにしろ」
「偶然来ているけれど」
「偶然が続き過ぎている」
彼が言うのはそれだった。
「あまりにも。それに」
「それに!?」
「いや、これは俺の勘なんだが」
まずはこう前置きしてきた。
「ひょっとしたら」
「ひょっとしたら?」
「グランゾンが関係あるのか?」
彼はこう言うのだった。
「まさかとは思うが」
「おいおい、話が飛躍し過ぎじゃねえのか?」
それは勝平により否定された。
「幾らグランゾンでも偶然を引き起こす力があるっていうのかよ」
「幾ら何でも考え過ぎか」
「ええ・・・・・・いえ」
しかし恵子はここでふと感じたのだった。
「あれっ、けれど」
「どうしたんだよ、恵子」
「そういえばよ」
彼女も言う。
「グランゾンがいない時って殆ど何も起こっていないわ」
「そうか!?いや」
ここで勝平も気付いた。
「そういやよ。あのマシンがいるといつも何か起きるよな」
「必然的なこと以外が起こる可能性が確かに異常になる」
宇宙太の言葉は勝平には少し難しいものだった。
「グランゾンがいる時に色々な勢力が出て来ているな」
「確かにそうだね」
「マサトさん」
ここでマサトが三人の前に出て来た。
「僕のゼオライマー、今はグレートゼオライマーにしろ稼動したのはグランゾンが復活してからだったしね」
「そうですね、そういえば」
「ゼーレもまた彼と関わりがあったし」
木原マサキはゼーレと関わりがあった。人類補完計画が失敗した時の為の冥王計画だった。もっとも木原マサキはそれを悪用していたが。
「彼がいる時にゼーレはああなって」
「終わりでしたね」
「あの碇司令のことだからまだ生きているかも知れないけれどね」
彼はふとこう考えたのだった。
「ひょっとしたらだけれどね」
「そうですか」
「とにかくおかしいって言えば本当におかしい」
マサトはまたそれについて言及した。
「何故かグランゾンがいる時にいつも」
「今の戦いだってそうだよな」
勝平は今の彼等の戦いについても述べた。
「あの連中だって急に出て来たよな」
「百鬼帝国に邪魔大王国ね」
「急によ。地の底からな」
「前以て何かあったにしてもだな」
「そうだよ。こんなに地球規模の相手が出るなんてやっぱりおかしいぜ」
彼にしては珍しく頭を使った言葉だった。
「しかも次から次って。何なんだよ」
「そうよね。違う世界からもだし」
「セフィーロにしろそうだね」
マサトはまた言った。
「違う世界だった。バイストンウェルも」
「しかもどの世界も崩壊に瀕していましたね」
「そうだね」
宇宙太とマサトがそれぞれ言い合う。
「有り得ない程度急激に崩壊していたり今まで出たことのないような人間が出たり」
ルーザのことである。
「おかしい。グランゾンがいると」
「はい。しかも全部の世界が崩壊に向かっているなんて」
「どう考えても有り得ない。何が起こっているんだ」
マサトは腕を組んで思案の顔になった。そのうえでまた言うのである。
「様々な世界全体で」
戦いの前でも彼等の不安はあった。その頃フローラは竜魔帝王と面会していた。そのうえで報告も行っていた。
「そうか、鬼共はかなりの力を失ったか」
「はい」
こう帝王に告げていた。
「ですがまだまだ余力があります」
「しぶといな、思ったよりも」
「百鬼帝国のブライ皇帝もまた表に出て来ませんし」
「それはわかっていた」
竜魔はそれはわかっているとした。
「当然のことだ」
「当然ですか」
「そうだ。出て来たならば。俺もそうだが」
「帝王様も?」
「俺によって倒されるからだ」
不敵な笑みと共の言葉だった。
「その時はな」
「そのうえで彼等の国を乗っ取ると」
「間違いなく向こうも同じことを考えている」
こうも述べる。
「我々はそうした関係なのだからな」
「左様ですか」
「そうだ。だからこそフローラ」
あらためてフローラに声をかける。
「奴等の行動は逐一知らせよ。よいな」
「わかりました」
「それではだ」
ここまで話したうえでまたフローラに声をかけてきた。
「また出撃せよ。よいな」
「はっ」
こうして彼等はまた戦いに向かう。既に百鬼帝国も出撃しており再び戦いがはじまろうとしていた。
「フローラ、また出て来たか!」
戦場において。宙とフローラは互いに睨み合っていた。まずは宙が言った。
「今度こそ御前を倒す!覚悟しろ!」
「戯言を!貴様なぞに私は倒せぬ!」
「何っ!?」
「私はフローラ!竜魔帝王様の片腕!」
自らこう名乗る。
「その私を倒せる者なぞこの世にはいない!」
「そうかよ、じゃああの世で本当に倒してやるぜ!」
宙は今の彼女も言葉を聞いてさらに言ってきた。
「この手で倒してやってからな!」
「面白い、来い!」
「言われなくてもやってやらあ!」
「あれ?」
二人が対峙する中で敵の陣を見ていたユリカがふとした感じで声をあげた。
「今回は百鬼帝国の指揮官さんがいらっしゃいませんね」
「あの移動要塞はないです」
ルリもそれを確認していた。
「それにあの謎の三機のマシンの姿もありません」
「そうですね」
「どちらも今のところは、ですが」
一応はこう前置きする。
「いないのは確かです」
「はい。では我々は」
「どうされますか、今回は」
「まずは全力で敵の左翼を叩きます」
丁度海沿いにその左翼はあった。
「正面から攻めると共に」
「それで鹿児島及び大分方面に展開している連邦軍と共同するのですね」
「その通りです。これでどうでしょうか」
「いいと思います」
ルリはユリカのその提案に頷いた。
「それで」
「わかりました。ではすぐに」
「ただ」
「ただ?」
「敵は地底に隠れますのでその前にできるだけ叩きましょう」
「はい、それでは」
「全軍進撃です」
ルリが指示を出した。
「機動力のあるマシンは敵の左翼に回り込んで下さい」
「ナデシコはどうしますか?」
「左翼に回ります」
静かにハーリーの問いに答えた。
「エステバリス隊と共に」
「わかりました」
「ハルカさん、それで御願いします」
「わかったわ、ルリルリ」
ハルカは笑顔でルリのその言葉に応えた。
「それじゃあそれでね」
「そういうことで」
「じゃあ無線は」
メグミもメグミで動いていた。
「各機に入れて、これでオッケーです」
「有り難うございます。それでは」
「はい」
ユリカが応えた。
「エステバリス及びナデシコは敵の左翼に回ります」
「了解!」
ハーリーが応えた。こうして彼等をはじまりとしてロンド=ベルはその動きを開始したのだった。フローラと宙は中央で派手に激突した。鋼鉄ジーグがヤマタノオロチに向かう。
「行くぞフローラ!」
「来い鋼鉄ジーグ!」
二人が早速激突する。そのまま激しい戦いに入る。
戦いはまずはロンド=ベルが敵の左翼への集中攻撃を成功させた。そのまま勢いに乗る。
「ハァッ!」
ジョルジュが跳ぶ。そのうえでローゼスハリケーンを放つ。
その攻撃で邪魔大王国のハニワ幻人も百鬼帝国の鬼達も潰されていく。そこにドモンが突っ込む。
「うおおおおおおおおおおおおおおっ!」
拳を縦横無尽に繰り出して群がる敵を叩き潰していく。ガンダムファイターの戦いが敵の動きを制していた。
「よし、勢いに乗ったな」
「そうですね」
ラーディッシュの艦橋でナタルがヘンケンに対して答えていた。
「このままいけるかと」
「よし、では戦艦も前に出していこう」
ヘンケンはここで積極策に出た。
「それでいいな」
「はい、機だと思います」
ナタルもそれに頷くのだった。
「今がその」
「よし、ラーディッシュ前へ!」
「了解!」
アドレアがそれに頷いて応える。
「それじゃあこのまま」
「前面に火力を集中させろ!」
ヘンケンはこう指示を出す。
「敵が来たらそのまま倒す。いいな!」
彼に続いて他の艦艇も前に出る。それと共にロンド=ベル自体の攻撃も激しくなる。それを受けてロンド=ベルはその攻撃をさらに激しくさせる。それによりフローラ達はさらに追い詰められていた。
「フローラ様、どうされますか」
「これ以上の敗北は許されん」
苦い顔で部下の問いに答える。
「援軍を出せ」
「わかりました。それでは」
「左翼に向かわせろ」
こうも指示を出す。
「いいな、左翼だ」
「わかりました。それでは」
「このままでは我が軍の敗北は逃れられない」
指揮官である彼女が最もよくわかっていることだった。
「それだけは。ならん」
「はい、確かに」
「そして鋼鉄ジーグ」
今闘っている宿敵も見せる。
「貴様も・・・・・・倒す!」
「やれるものならやってみろ!」
左右から闘いに入ろうとするハニワ幻人をその拳と蹴りでそれぞれ一撃で叩き潰しつつフローラに対して応える。
「フローラ!今度こそ御前に引導を渡してやる!」
「やらせるものか!」
二人はまた激突する。ヤマタノオロチをジーグの蹴りが撃つ。それでヤマタノオロチは大きく揺れる。しかしまだ撃墜されてはいなかった。フローラも立っていた。
「この程度で!」
「まだやるのか!」
「言った筈だ。貴様を倒す!」
激しい敵意と共に言葉を吐き出す。
「ここでな!」
だがその時だった。
「フローサ様、レーダーに反応です!」
「連邦軍か!?」
「いえ、左翼からです」
「左翼!?海からか」
「はい」
部下はフローラに答えるのだった。
「海から。敵が現われました」
「連邦軍の海軍ではないのだな」
「違います、これは」
「これは!?」
「ムゲ=ゾルバトス帝国です」
「何だと!?」
今の報告を聞いてフローラも思わず声をあげた。
「ムゲ=ゾルバトス帝国だと!奴等が何故ここに」
「わかりません。ですが」
「もう来ているというのだな」
「そうです、かなりの数です!」
既にムゲの大艦隊が海に展開していた。丁度ロンド=ベルの後ろにいた。
「来たかムゲ=ゾルバドス帝国!」
「ほう、まだ生き残っていたか」
シャピロもいた。彼は邪魔大王国及び百鬼帝国の軍勢を見て言った。
「案外しぶといものだな」
「やいシャピロ!」
忍がシャピロを認めて彼に対して問う。
「どうしてここにいやがるんだ!何しに来た!」
「こちらも色々とあってな」
「まだ地球の支配者にでもなるつもりじゃないの?」
「そうだな」
雅人と亮はこう予想を立ててきた。
「懲りないっていうかね」
「無謀としか言いようがないな」
「御前達俗物には私の考えはわからぬ」
シャピロは彼等に何を言われても平気な様子だった。
「所詮な」
「じゃあ何の為なのさ」
「答えるつもりはない」
サラに対しても言った。
「俗物にはな」
「よく言うよ、自分だけ高みに立っているつもりなのにさ」
沙羅は既にシャピロを見抜いていた。
「あんたはそれだけなんだよ」
「ではそう思っておくがいい」
だがシャピロは己を知らずに言葉を返すのだった。
「御前達が思っているようにな」
「へっ、相変わらず馬の耳に念仏かよ」
忍はそんなシャピロに対して言い放った。
「で、地球をどうするっていうんだ?」
「勘違いするな藤原」
シャピロは忍に対しても言う。
「我がムゲ=ゾルバトスはこの様な小さな星に興味はない」
「じゃあ何なんだ、わざわざここまで来るのはよ」
「話がわからないよね」
ヂボデーとサイシーが突っ込みを入れた。
「所詮戯言でしょう」
「下らん話だ」
ジョルジュとアルゴもばっさりと言い捨てる。その程度だと言わんばかりに。
「それを言うつもりはない。だが」
「だが?」
「銀河の理を超える」
シャピロはこう述べた。
「その為にここにいるのな」
「何かよくわからねえが屁理屈こねてるのだけはわかるぜ」
忍もシャピロのことをその程度にしか見ていなかった。
「どっちにしろ戦うんだろう。来やがれ!」
「シャピロ!」
友軍のヘルマットからも声があがった。
「詰まらん問答はいい。戦うぞ!」
「そうだ!」
「ここで奴等を叩き潰す!」
ギルドロームとデスガイヤーも言う。
「折角ここまで大軍を持って来たのだからな!」
「わかっている。どちらにしろ奴等は倒さなくてはならない」
シャピロも彼等に対して応えて述べる。
「では全軍攻撃だ」
「邪魔大王国もだな」
「当然だ。我々にとっては奴等も敵だ」
一言だった。
「ならばだ」
「よし!全軍攻撃開始だ!」
ヘルマットが指示を出した。
「このままロンド=ベルを叩き潰せ!」
「同時に邪魔大王国と百鬼帝国もだ!」
ギルドロームも叫ぶ。
「纏めて潰してしまえ!」
「皆わしに続け!」
デスガイヤーが出た。
「敵は疲れている。一気にだ!」
「くっ、こんな時に来たのかよ!」
ハッターはそれを見て声をあげる。
「全く、戦いってのはどうなるかわからないな!」
「いいことじゃないハッちゃん」
「ハッちゃんと呼ぶな!それに何がいいことだ!」
「ここであいつ等も叩いておけばいいじゃない」
フェイはあっさりとこうハッターに述べた。
「それだけよ」
「それだけ!?」
「そういうこと。丁度邪魔大王国とかはかなり叩いたし」
「むう」
見ればその通りだ。既に邪魔大王国も百鬼帝国もその戦力の七割以上を失っていた。
「あとはあいつ等を叩けばいいのよ」
「それだけか」
「そう、それだけじゃない」
平然とした言葉だった。目の前に大軍を前にしても。
「じゃあチーフもそれでいいわよね」
「うむ」
テムジンは静かに答える。
「俺は戦うだけだ」
「ライデンは?」
「俺もだ」
彼の返事もそうであった。
「まだ戦える」
「じゃあ決まりね。ハッちゃんもそうよね」
「戦うことはノープロブレム!大好きだ!」
「じゃあ。いいわね」
「ああ。ただしだ」
「何よ」
「俺はハッちゃんじゃない!」
彼がこだわっているのはそれだった。
「アーム=ザ=ハッター軍曹だ!覚えておけと言っているだろう!」
「だから長いからやだって」
「くう~~~~~っ、何処まで口の減らない女だ!」
「まあとにかくだ」
輝が二人のやり取りに少し引きながらもハッターに声をかけてきた。
「今度はムゲとの戦いだ。それで行こう」
「オッケーーーーー!!」
異常に立ち直りが速かった。
「じゃあ行こうかブラザー!」
「ブラザーって俺のことかな」
「その通り!」
輝に対して答える。
「わかったらこのまま。攻撃開始だ!」
「何かまだよくわからないけれどそれじゃあ」
輝がバルキリーを大きく旋回させた。
「このミサイルで!」
「やれ、ブラザー!」
バルキリーのあのミサイル攻撃が放たれる。これが合図となりムゲ軍との戦いもはじまった。しかしその間も鋼鉄ジーグはフローラと戦い続けていた。
「喰らえっ!」
「なっ!」
ジーグの蹴りが炸裂した。今度はかなりのダメージだった。それを受けたヤマタノオロチのあちこちから炎があがる。最早戦闘は不可能だった。
「勝負ありだなフローラ!」
「くっ!」
「さあどうする!」
フローラに対して問う。
「まだやるか!それとも!」
「フローラ!」
その時だった。
「!?その声は」
「何だ、今の声は」
フローラとジーグは今の不気味な、地の底から響き渡るような声にそれぞれ反応した。
「貴方様がまさかここに」
「貴方様!?まさかこの声の主は」
「その通りだ、鋼鉄ジーグよ!」
邪悪な声がジーグを呼んできた。
「我が名は竜魔帝王!」
「竜魔帝王!手前がかよ!」
「そうだ!」
声は応える。
「邪魔大王国の真の支配者だ!」
「そうか、そういうことか」
ここで大介はあることがわかったのだった。
「どうかしたんですか、大介さん」
「鉄也君、彼だ」
「彼!?」
「ミケーネの闇の帝王が姿を表わした時彼が恐怖だと言われていたね」
「あっ、はい」
鉄也はそのことを思い出して頷いた。
「そうでした」
「だがそれは違うようだ」
「違う!?」
「そう。本当の恐怖とは」
竜魔を見つつ言う。
「あれだよ。竜魔帝王こそがそうだったんだ」
「そうだったのですか」
「そう。だから」
大介はさらに言葉を続ける。
「彼の恐怖はかなりのものだ」
「確かに。この邪悪な気配は」
本来はそういうものには疎い鉄也もそれを感じ取っていたのだった。しかもはっきりと。
「恐ろしいまでです」
「闇の帝王に匹敵するかそれ以上に」
「けれどよ鉄也さん、大介さん」
甲児は険しい顔になる二人に対して言ってきた。
「それでびびったらどうしようもねえぜ」
「そう、その通りだ」
大介もまた甲児のその言葉に頷く。
「その通りだ甲児君」
「俺達はどんな相手でも敗れるわけにはいかない」
鉄也もそれに続く。
「敗れればその時こそ」
「終わりだろ!?じゃあ今だってな」
「いや、今は様子を見よう」
前に出ようとする甲児を制止した。
「今はな」
「!?どうしてだよ」
「何かおかしい」
こう言って制止するのだった。
「だからだ。様子を見よう」
「それから動くってわけだな」
「そうだ」
「甲児君、その間にだ」
鉄也はまた甲児に言ってきた。
「ムゲ=ゾルバトス帝国軍を倒そう」
「そうだな。それじゃあ」
「マジンガーチームは全力でムゲ軍に向かう」
大介が決定した。
「それで行こう」
「よし!やい男女!」
「小者が」
「御前に小者って言われてもな」
シャピロにこう言われたがどうということはなかった。
「あまり何とも思わねえか」
「ふん、馬鹿にされたことにすら気付かぬか」
「そうじゃねえんだよ」
甲児は反論する。
「これがよ、アスカならとんでもなくむかつくところだよ。だがな」
「だがな?」
「手前には何とも思わねえんだよ、不思議にな」
「では何とも思わないまま死ね」
その言葉と共にまた兵を向けてきた。マジンガーチームに。
「無様にな」
「へん、やらせるかよ!」
甲児は目の前に殺到してきたムゲ軍を見ても臆しなかった。
「数で俺を倒せるかよ!」
「甲児君、右は俺が引き受けた!」
「左は僕だ!」
その鉄也と大介が甲児の左右に来た。既にその手には剣と斧がある。
「安心して戦ってくれ!」
「僕達もいる!」
「ああ。頼むぜ鉄也さん大介さん!」
二人の言葉を受けてその拳を構える。丁度正面にいたムゲ軍の戦艦に向けてそれを放つ。
「ターボスマッシャーパンチ!」
拳が放たれそれで撃ち抜く。敵艦は一撃で撃沈され海に落ち大爆発を起こした。
「よしっ!」
「ふん、所詮はその程度か」
シャピロは沈むその戦艦を見て冷徹な目を向けた。
「雑魚は雑魚だ」
「雑魚ですか」
「そうだ」
ルーナに対しても述べる、
「所詮はな」
「わかりました・・・・・・」
思うところがあったが言わなかった。しかしその間にもマジンガーチームだけでなくロンド=ベル全体の激しい攻撃によりムゲ軍はその数を大きく減らしていく。最早彼等の劣勢も明らかだった。
そしてその時にも。フローラはジーグと対峙していた。
「フローラ!」
「はい!」
フローラは竜魔の声に応える。
「鋼鉄ジーグを倒せ!」
「はっ」
その言葉には神妙に頷く。
「ただいま」
「どうしても倒せぬというのならだ」
竜魔はここで言った。
「生命だ!」
「生命!?」
「そうだ。その命を以って鋼鉄ジーグを倒せ!」
「りゅ、竜魔帝王!?」
死ねと言った今の言葉を思わず問い返した。
「今何と」
「御前は俺の人形だ!」
また言うのだった、
「俺の命令は絶対だ!」
「どうしたフローラ!」
ここでジーグもフローラに言ってきた。
「来い!」
「言われずとも!」
追い詰められたフローラはその顔でジーグに応えた。
「私はフローラ!」
まずは名乗った。
「竜魔帝王の忠実な僕!」
「忠実な僕だと」
「そうだ!」
決死の顔でそう宣言したのだった。
「その名にかけて鋼鉄ジーグ!貴様を!」
「宙さん!」
美和が突進してきたヤマタノオロチ、いやその中から飛び出て来たフローラを見て声をあげる。
「来たわ!」
「おいおい、マジかよ!」
カイがそれを見て驚きの声をあげる。
「あいつ、単体で突撃して来るぜ」
「ああ」
それにハヤトが頷いて答える。
「何を考えているんだ、一体」
「まさか」
だがここでアムロが気付いた。
「どうした、アムロ」
「何か気付いたのか?」
「ああ、特攻だ」
アムロは言った。
「あの女将軍、それを仕掛けて来るつもりだ」
「特攻!?」
「まさか」
「いや、そのまさかだ」
アムとはそれでも言うのだった。
「だから要塞から出て単身で」
「何っ!?それじゃあ」
「宙は」
「鋼鉄ジーグ!」
アムロは咄嗟に宙に対して叫んだ。
「かわせ!その女将軍は!」
「くっ!」
「鋼鉄ジーグ!」
その間にもフローラは突き進んで来る。本気だった。
「御覧下さい竜魔帝王!」
己のアルジ煮対して叫ぶ。
「このフローラ帝王の為に立派に散ってみせましょう!」
「くっ、フローラ!」
だがここで宙は。咄嗟に前に出て来たのだった。
「何っ、どういうつもりだ!」
「うわあああっ!!」
何とここで彼はフローラを体当たりで突き飛ばした。その時に彼女が持っていた爆弾を奪い取りそれを空に向かって放り投げた。空では爆発が起こった。
「ば、馬鹿な」
フローラはその爆発を見て言う。地面に倒れ込みつつ。
「何故私を」
「御前の心が泣いているのを感じたからだ」
宙は言った。
「何っ!?」
「悲しみにくれ己の命さえ捨てようとする御前を敵だとは思えない」
「何を言っている、貴様」
フローラには宙が何を言っているのかわからなかった。顔を強張らせていた。
「私は敵だぞ」
「言った筈だ。俺は御前を敵だとは思えない」
宙はまた言った。
「悲しみに心を支配された御前をな」
「馬鹿な!」
フローラはその宙の言葉を否定した。
「だから御前は自分の命を差し出したというのか!」
「そうだ!」
はっきりと言い切ってみせてきた。
「心の弱き者を守る気持ち」
そしてさらに言う。
「愛!愛こそが俺達の力だ!」
「黙れ!」
しかしフローラはそれを否定するのだった。
「愛にそんな力があるものか!」
「そうか」
「そうだ!」
フローラは意固地になって言う。
「私にその様なものはない!」
「・・・・・・わかった」
ジーグはここであらためて頷くのだった。
「御前の中に悲しみを見たのはどうやら俺の勘違いだったようだ」
「ふん」
「御前みたいな生まれながらの悪魔には俺達の気持ちはわかるまい!」
「悪魔だと!?」
「そうだ!」
ジーグは言葉を続ける。
「御前は悪魔だ!」
「私は悪魔なんかではない!」
「いや、悪魔だ!」
だがそれでも彼は言い切る。
「一度だって愛に全てを懸けたことがあるのか!?」
「黙れ!黙れ!」
フローラの言葉は喚きに近くなtっていた。
「御前なぞに私のことなんかわかるものか!」
「フローラ・・・・・・」
「私は生まれながらの悪魔ではない」
肩で息をし苦しそうな言葉だった。
「私の運命を変えたのは」
「むっ!?」
「鋼鉄ジーグ!」
また突っ込んで来た。
「こうなっては貴様だけは!貴様だけは!」
「うおおおおっ!!」
「馬鹿野郎!」
攻撃を受け吹き飛ばされたジーグを見て忍が叫ぶ。
「迂闊過ぎるぜ宙!」
「待ってろ!」
サンシローも叫ぶ。
「今助けに行く!」
「来るな!」
だがその宙が彼等を止めるのだった。
「皆来るな、いいな」
「だが」
「来るなって御前」
レビとリュウセイが思わず彼に問うた。
「その傷では」
「幾らサイボーグでもやばいぞ」
「俺は地球を救う為に」
だが彼は言うのだった。
「母さんやまゆみ、多くの人達の小さな幸せを守る為に戦ってきた」
多くの戦いを経て。そうなっていたのだ。
「その愛の力がある限りこんなこけおどしの妖術などに負けてたまるか!!」
「宙さん!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
「出たな宙!」
甲児がそれを見て会心の声をあげた。
「不死身の宙の火事場の馬鹿力!」
「見ろフローラ!」
司馬宙として、鋼鉄ジーグとしての言葉だった。
「これが愛の力」
「愛だと!?」
「そうだ!」
また叫ぶ。
「これが人間の力だ!」
「人間の力・・・・・・」
フローラはその言葉を聞いて動きを止める。しかしその時だった。
「鋼鉄ジーグよ!」
「なっ!」
巨大な戦艦が戦場に現われた。その艦首にいるのは。
「最早悠長なことは言わん!俺が相手だ!」
「出て来たか竜魔帝王!」
そして彼だけではなかった。
「な、何ィ!」
「まさか!」
ハニワ幻人の軍勢も。かなりの数がいた。
「あれだけの数の軍勢がいたのか!」
「まだ!」
これにはロンド=ベルも驚きを隠せない。しかもそれだけではなかった。
「お、おいまだ出て来るぞ」
「あんなにいるのかよ」
「くっ、今の我々ではこれ以上の戦闘は無理だ」
ブライトはその新手の大軍を見てこう判断せざるを得なかった。
「止むを得ん。ここは」
「そうだな」
それにクワトロが頷く。
「それしかない」
「総員撤退!」
ブライトは正式に指示を出した。
「ここは一度後退するぞ!」
「け、けれど艦長!」
カツがブライトのその指示に対して言う。
「ここで退けば」
「カツ、わかっている筈だ」
そのカツにアムロが言ってきた。
「今の我々にはあれだけの数の相手はできない。それに」
「それに?」
「御前も感じている筈だ」
次に言うのはこのことだった。
「このプレッシャー、只者じゃない」
「確かに」
それは竜魔帝王からのものだった。
「このプレッシャーは」
「だからだ。ここは撤退する」
アムロもそれを言うのだった。
「わかったな」
「・・・・・・はい」
カツが頷くと他の面々もそれに従う。ロンド=ベルはムゲ軍との戦闘も中止し戦場から離脱していく。竜魔帝王は余裕の笑みを以ってそれを見送っていた。
「そうだ、下がるがいい」
「竜魔帝王!」
宙がその彼に対して叫ぶ。
「次だ!次の戦いで!」
「どうするというのだ?」
「御前を倒す!」
それを宣言するのだった。
「それを覚えていろ。いいな!」
だが今は退くしかなかった。ロンド=ベルは止むを得ず撤退する。そして一旦佐世保の基地に戻り。そこでまずは整備と補給を受け反撃に備えるのだった。
そこで宙は。一人浮かない顔をしていた。その彼に美和が声をかける。
「宙さん」
「なあミッチー」
彼は美和に応えてきた。
「フローラは言っていたな」
「ええ」
まずはこう言うのだった。
「竜魔帝王に自分の運命を変えられたてっな」
「そうね」
それは美和も聞いていた。
「ということはだ」
「あの女が血も涙もない冷血将軍になったのにも理由がある」
隼人が言ってきた。
「そうだな」
「ちょっと隼人君」
今の隼人の言葉はミチルに窘められた。
「それは言い過ぎなんじゃ」
「いや、その通りだ」
しかし竜馬がここで言うのだった。
「彼女が本当に心を持たない悪魔なら」
「悪魔なら?」
「あの時宙を後ろから撃っていた」
彼はこう考えていた。
「間違いなくな」
「そうなの」
「それをしなかったってことはだ」
次に言うのは弁慶だった。
「助けてくれた宙に心の中では感謝してたってことだな」
「そうか」
「ああ、俺はそう思うぜ」
それを宙にも言う弁慶だった。
「けれどよ」
「武蔵」
武蔵も出て来た。
「あいつは敵の将軍だぜ。幾ら人の心を持っていてもな」
「ああ」
「おいら達の間には戦う以外の理由はないぜ」
「やはりそうか」
「そしてそれはだ」
また隼人が言う。
「御前さん次第だ」
「俺次第・・・・・・」
「そうだ」
隼人はさらに言葉を続ける。
「俺はあの女に俺達の理屈や心が通じるとは思っていない」
「そうだな、それは」
「しかし宙、御前さんがそうじゃないと思っているなら」
「俺が!?」
「そうだ」
隼人はさらに言う。
「御前さんの好きにするんだな」
「俺がか」
「そうだな」
隼人の言葉に今度頷いたのはサンシローだった。竜馬ではなかった。
「俺達はこれから人知を超えた銀河の危機に立ち向かっていかなけりゃならないんだ」
「サンシロー・・・・・・」
「それにはあれだな」
「はい」
リーの言葉にブンタが頷く。
「敵対していた者同士が」
「手を取り合う」
「それかよ」
ヤマガタケはそこまで聞いて意外そうな顔になった。しかしそれはすぐに元に戻り。
「いや、そうだよな」
「ああ。俺達はそうだったな」
ピートモ。それがわかるようになっていた。
「そうして今まで」
「皆・・・・・・」
「それで宙君」
ミドリが彼に問う。
「どうするの?」
「俺にもまだわからない」
しかし返答はこうだった。
「だが次は邪魔大王国との決戦だ」
「ああ、それはな」
「間違いない」
もうそれはわかっていた。こちらも向こうもそのつもりだった。
「俺は自分自身の使命を果たすのと同時にフローラと話をしてみたい」
「そうか」
「ああ、そうだ」
皆に対して答える。
「そのつもりだ」
「いいんじゃないのか」
それに頷いたのは隼人だった。
「夢見たいな話なのは事実だがな」
「だが嫌いじゃないな」
サコンが言った。
「そうだろう、隼人」
「わかるのか」
「伊達に長い付き合いじゃないだろう?」
そう言って今度は笑ってみせた。
「随分長い間戦っているしな、一緒にな」
「俺も馬鹿になったのかな」
「いや、馬鹿でもない」
「違うのか」
「ああ、大馬鹿野郎だ」
サコンは笑って言ってみせる。
「俺も御前も。ここにいる全員がな」
「皆そうなのよ」
ミドリもそれに頷いて述べる。
「ロンド=ベルはね」
「その大馬鹿野郎がよ」
忍もここぞとばかり主張する。
「やってやるぜ、なあ」
「類友ってやつだね」
「けれどそれでいいじゃない」
「その通りだ」
沙羅に雅人と亮が突っ込みを入れる。
「それならそれでさ」
「大馬鹿で何かを得られるのならな」
「やってみろ宙」
サンシローがまた彼に声をかける。
「御前の力でな」
「俺達も協力させてもらうぜ」
「リュウセイ、皆・・・・・・」
「では整備と補給が終わり次第だな」
レーツェルがここで言う。
「すぐに戦場に戻ることになる」
「そうだな。すぐに決戦だ」
「奴等との」
全員に気合が入る。
「下手をすれば百鬼帝国やムゲ軍も出て来る」
「それならそれで彼等も倒すまでだ」
ギリアムの言葉だった。
「それだけだ」
「その通りです」
ショーンがそれに頷く。
「皆さん、それでは」
「おそらく竜魔帝王は強大な妖術を持っています」
ユンが述べる。
「かつての闇の帝王に匹敵するかそれ以上の」
「闇の帝王以上か」
「だとすれば苦戦は免れない」
「けれどよ!」
それでも彼等の戦意は衰えなかった。全く。
「だらつって負けるつもりはねえ!そうだよな!」
「当然だ!」
皆ジュドーの言葉に応える。
「行くぞ、決戦に!」
「邪魔大王国との!」
こう誓い合う。
「宙、そしてだ」
「ああ、わかっている」
そして宙も。決意は固まっていた。
「戦場に行く、そしてフローラと」
「決めろ、運命をな」
「ああ!」
今ロンド=ベルは邪魔大王国との決戦に向かうのだった。そこには最早何の迷いもなかった。
ロンド=ベルが佐世保を出たその時。フローラは竜魔帝王の前にいた。
「フローラ!」
「はっ・・・・・・」
帝王の怒声に謹んで応えている。
「失態だな!」
「申し訳ありません」
こう謝罪するしかなかった。
「全ては私の」
「言っておくぞ!」
言葉がまた響く。
「は、はい!」
「この恥知らずが!」
「恥知らず・・・・・・」
今の罵倒にはフローラも顔色を失った。
「この私が」
「そうだ!」
帝王はこれまたはっきりと言い切ってみせてきた。
「鋼鉄ジーグに助けられるとはよくも生き恥を晒してくれたな!」
「お、お許しを」
それを言われて平伏しかなかった。
「次の決戦では必ず」
そうして言う。
「鋼鉄ジーグとロンド=ベルを」
「ええい、黙れ!」
しかし竜魔帝王の一喝は続く。
「御前の言い訳も聞き飽きたわ!」
「ですが!」
「使い物にならぬのならいらん!」
こうまで言う。
「御前は粛清だ!」
(やはり)
フローラは竜魔の言葉を聞き心の中で呟いた。
(竜魔帝王の心には人間らしさなぞ欠片もない)
そのことを痛感するのだった。
(不要になれば私とてゴミの様に捨てられるだけだ)
「何だ、その目は」
竜魔帝王はここでフローラの暗い目に気付いた。
「俺のやることに文句があるのか!?」
「い、いえ」
考えを止めてそれは否定する。
「その様なことは」
「目障りだ!」
今度もまた一喝だった。
「御前は牢にぶち込んでくれる!」
「そんな!」
これには流石に抗議した。
「私は邪魔大王国の将軍」
「それがどうした!」
竜魔の声は相変わらずだった。
「その私を。牢になぞ」
「俺の部下に無能はいらん!」
これが彼の返答だった。
「ロボット兵よ、こやつを連れて行け!」
「・・・・・・・・・」
「お許しを!」
フローラは左右の腕をロボット兵達に掴まれながら必死に竜魔帝王に対して叫ぶ。
「お許しを!どうか!」
「五月蝿い!」
しかしそれは聞き入れられなかった。フローラは空しく連行されていく。竜魔はそれを蔑みの目で見つつ呟くのであった。
「馬鹿な女よ」
まずはこうだった。
「この俺に生かされていることを忘れるとはな。だがいい」
しかしここでさらに呟く。
「地上を征服すればもっとましな人形も見つかる」
彼にとっては所詮フローラもその程度でしかなかったのだ。
「それはもうすぐだ。鋼鉄ジーグとロンド=ベルを倒してな」
こう述べて笑うのだった。闇の中で。邪魔大王国と最後の戦いがはじまろうとしていた。

第六十二話完

2008・5・19  
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