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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第六十一話 百鬼と竜魔

               第六十一話 百鬼と竜魔
ロンド=ベルは間も無く日本という距離にまで来た。そこで通信を入れた。するとすぐにミスマルが出て来た。
「おお、そろそろだと思っていたよ」
「そうでしたか」
「うむ、これまでのことは聞いている」
こうシナプスに答える。
「それでブリット君は大丈夫だね」
「はい」
シナプスはすぐに答えた。
「先程目覚めました」
「そうか、それは何よりだ」
まずはそれを聞いて安心するのだった。
「貴重な戦力だ。何かあってはな」
「その通りです」
「それでだ。作戦のことだが」
話はすぐにそこに至る。
「君達は北九州に入ってくれ」
「九州にですか」
「そうだ。彼等は今宮崎県にいる」
九州南部だ。
「そこを北から攻めて欲しいのだ」
「北からですね」
「今我々は鹿児島及び大分方面から攻めている」
「南と東からですか」
「そして福岡方面だが」
「そちらの戦力はどうなっているのでしょうか」
「残念だが手薄なのだ」
こう言って顔を曇らせてきた。
「どうにもこうにもな。先の攻勢で大きなダメージを受けてしまった」
「そうだったのですか」
「それで今は福岡や佐世保、岩国で戦力の回復に務めている」
その事情も話す。
「今回の作戦に間に合うかどうかは微妙だ」
「それで我等がその代役に」
「最初からそこから攻めてもらうつもりだった」
既に戦略として決まっているとのことだった。
「しかしだ」
「そういった事情で我々だけで、ですな」
「済まない。頼めるか」
「無論」
軍人として当然の返事だった。
「それではそのように」
「済まないな、君達にばかり困難な任務を頼んで」
「何、構いませんよ」
ヘンケンが笑ってこう答える。
「それがロンド=ベルですからね」
「それがか」
「言うならば地球の便利屋です」
わざとふざけてこう表現してみせるヘンケンだった。
「それだけのものは貰っていますしね」
「給与はそんなに高いものではなかったと思うが」
「それ以外にですよ」
こうも答えるのだった。
「ここにいたら色々と見られますしね」
「そうなのか」
「そういうことです。それではこれより」
「いや、少し待ってくれ」
しかしここでミスマルは言ってきた。
「!?何か」
「その、あれだ。ユリカはどうしているか」
「ミスマル艦長は今大河長官と打ち合わせ中です」
「そうか。ではここには出られないのだな」
「はい、そうです」
シナプスが答えていた。
「ですが御呼びすれば」
「そうか。それでは」
「あの、司令」
「おお、ユリカアァァァァーーーーーーーーーッ!」
ナタルの声を勘違いしての言葉だった。
「早速出て来てくれたか。お父さんはなあ!」
「あの、司令」
ナタルは少し戸惑いながらもそのミスマルに対して言う。
「何だい!?怪我はなかったかい!?寂しくはないかい!?」
「私はその。ナタル=バジルールですが」
「むっ!?」
言われてやっとそれに気付いたのだった。
「ナタル=バジルール少佐か」
「そうです」
額に汗をかきながら彼に答える。
「先程からいますが」
「そうなのか」
ミスマルはもう元の顔に戻っている。実に早い。
「失礼した。声が娘のものにそっくりだったからな」
「よく言われます」
これはナタル自身も自覚のあることだった。
「フレイ=アルスター少尉及びステラ=ルーシェ少尉もですが」
「同一人物ではないね」
「違います」
また実にはっきりとした否定であった。
「あとマイヨ=プラート少佐とヘンケン艦長も違いますので」
「それはわかっているが」
「最近どうも何かとそういう話が多くて困ります」
「そうなのか」
「誰なのでしょうか。キラ=ヤマト少尉におかしなことを吹き込んだのは」
「おかしなことだと」
「近頃槍を振り回し赤いジャケットを好んで着ています」
キラも変われば変わるものだ。
「何かに目覚めたようで」
「バサラだな」
「バサラ!?」
「あっ、いや」
ミスマルもここから先は言わなかった。
「何でもない。気にしないでくれ」
「左様ですか」
「それでだ」
「はい」
また話が戻る。実によく脱線するが。
「北九州からの攻撃だがおそらく君達は敵の主力と当たる」
「主力といいますと」
「そちらにはフローラ及びヒドラー元帥の姿が確認されている」
「フローラにヒドラー元帥」
その二つの名を耳にしてそこにいた者達の顔色が変わる。
「彼等がですか」
「そうだ。くれぐれも用心してくれ」
「はっ」
ナタルが応える。
「彼等は指揮官として邪魔大王国、百鬼帝国の主軸だからな」
「そうですな。特にフローラ」
ヘンケンは彼女に注目していた。
「彼女はあらゆる状況に対応できます。かなりの者です」
「だからだ。破壊工作にも警戒してくれ」
「そうですね。確かに」
ここでナタルの目が光った。
「以前より何度か破壊工作を受けてきていますし」
「君達はそうだったな」
「その通りです。それもありますから」
ナタルはまた答える。
「警戒していきます。それでは司令」
「うむ」
「これで。以後作戦にかかります」
「頼む。今回の作戦も君達にかかっている」
「はい」
またナタルが応える。
「お任せ下さい。それでは」
「頼んだぞ」
こうしてミスマルとの話が終わった。話を終えたナタルがヘンケンと共にラーディッシュに戻るとそこではマイヨが難しい顔をしていたのだった。ナタルもすぐにそれに気付く。
「少佐、何か」
「むっ、バジルール少佐」
「何かあったのですか?」
「実はだ」
マイヨはそれに応えて話しだした。
「実は?」
「最近どうも間違えられるのだ」
「ああ、成程」
それが何故かは今先程のミスマルとの会話でわかることだった。だからこそ頷いてから答えるナタルであった。
「艦長やランディスさんとですね」
「その通りだ。貴官もそうだな」
「はい」
まさにその通りだった。
「何かと」
「この前は何故か言われた」
「何とでしょうか」
「周りからオンドゥル語を話して欲しいと」
「オンドゥル語!?」
ナタルはそれを聞いて思わず眉を顰めさせた。
「何でしょうか、それは」
「詳しいことは私もわからない」
マイヨもこう言って首を横に振る。
「何処かの星の言語だろうか」
「何処でしょうか、だとすると」
「わからない。しかもだ」
「ええ」
「私がナレーターだったからわかる筈だと」
「はあ」
これまたマイヨにとってもナタルにとってもわからない話であった。
「しかしそう言われても何が何だかな」
「そういうことはよくありますね」
「全くだ」
真面目な二人は真剣に言い合う。
「アスラン=ザラも蝿がどうとか言うようになったしな」
「あれも意味がわかりません」
アスランにとっては意味があるのだが二人が知る筈もないことだった。
「クライマックスがどうだの答えは聞いていないだの」
「リョウト=ヒカワ少尉にしろパンを異様に好きになったしな」
「ええ」
それもあるのだった。
「何が何なのかな」
「わからないことが多いですね」
「貴官はそちらには話を聞いていないか」
「全くです」
首を横に振ってマイヨに答える。
「声が似ているということはよく言われますが」
「そうか、やはりな」
「それで少佐」
「うむ」
ここでナタルは話を変えることにした。マイヨもそれに応える。
「今度の作戦の相手はフローラ及びハドラー元帥ですが」
「周辺の警護には気をつけておかないとならないな」
マイヨはすぐにこう判断を下してきた。
「彼等が相手ならばな」
「やはりそう考えられますね」
「邪魔大王国は工作を好む」
マイヨは既にそれをよく知っているのだった。
「百鬼帝国もな。それならば」
「警護を普段よりもさらに厳重に」
「既にガンダムファイター達が配置についている」
「彼等が」
彼等がいると聞いてナタルの顔が一気に明るくなった。
「それならば心強いです」
「そのうえだ」
マイヨはさらに言う。
「GGGもいればタケルもいてくれている。既に周囲は万全だ」
「それでは我々は」
「そうだ。警護は既に万全だと思う」
マイヨは自信を少し言葉に含ませて答えた。
「彼等を相手にするにはな」
「確かに。では他のメンバーにも当直を当たらせることを増やして」
「それで戦いまで乗り切りたいが。いいか」
「はい」
ナタルの返事は強いものだった。
「それで宜しいと思います」
「わかった。それではだ」
これで話は決まった。
「当直を増やし主力を設けることで」
「それで乗り切りましょう」
「この戦いも激しいものになる」
マイヨはそれも読んでいた。
「だからだ。ここは」
「テロに逢わないように心掛けましょう」
「そういうことだな」
こうして将兵は周囲をマシンや超能力者達に囲まれ厳重な警備を北九州に入った。それからすぐに宮崎に入ることになるのだった。
宮崎との境。そこには既に邪魔大王国と百鬼帝国が布陣していた。圧倒的な物量でロンド=ベルを待ち受けているのであった。
そこには偵察通りヒドラーとフローラもいた。ヒドラーはそのフローラに声をかけてきた。
「フローラ」
「どうした」
彼女もすぐにそれに応えて顔を向けてきた。
「ロンド=ベルだな」
「そうだ」
フローラはまたしてもすぐに答えた。
「既にここに向かって来ている」
「その数は」
「数は変わらない」
「変わらぬか。あれだけの激戦を経てきて」
「わかっていると思うが、ヒドラー元帥」
あえて彼の名を呼ぶ。
「既にそれは」
「確かにな」
そしてヒドラーもそれに頷く。
「わかっている。奴等は手強い」
「そうだ。だからこそ」
「だからこそ。今度は何だ」
「守りを固めておいた」
こうフローラに答えた。
「後は何時でもな。敵が来てもいい」
「用心がいいと言うべきか」
「貴殿はどうなのか」
「私か」
「一人しかおるまい」
またフローラに対して述べる。
「それは」
「違うか?」
またヒドラーは言う。
「それはな。無論わしもいるが」
「それはわかっている」
フローラも言葉を返す。
「だからだ。行くぞ」
「うむ。それではな」
彼等も布陣する。丁度そこにロンド=ベルが姿を現わしたのだった。
「結局破壊工作はなかったな」
「そうだったな」
宙と甲児が話をしながら出撃した。それと共に布陣する。
「あのフローラって女もいるが」
「宙、用心しろよ」
甲児は宙に対して忠告してきた。
「あの女やけにおめえを敵視してるからよ」
「当たり前よ、甲児君」
ここでさやかが甲児に言ってきた。
「あの女は邪魔大王国でしょ」
「あっ、そうだったな」
甲児も言われてそれに気付く。
「そういえばよ」
「ちょっと、忘れてたの?」
「まあちょっとしたことだよ」
「何処がちょっとしたことよ」
さやかは呆れた顔で甲児に対して言う。
「かなり重要なことじゃない。それでどうして忘れるのよ」
「悪い悪い」
こうは言っても反省はない。
「まあこれで覚えたからよ」
「本当かしら」
「信じれないけれどね」
マリアも話に入ってきた。
「甲児のことだから」
「何か俺って全然信用ねえんだな」
「馬鹿だからね」
今度はアスカが参戦してきた。
「あんた、まともに考えたことも覚えていたこともないじゃない」
「何ィ!?じゃあ俺の脳味噌が全然駄目みてえじゃねえか!」
「その通りじゃない」
「アスカ、手前!」
またすぐに怒る甲児だった。
「言うにこと欠いてそれかよ!」
「馬鹿に馬鹿って言って何が悪いのよ!」
「うるせえ、このガサツ女!」
「ガサツ女ですってぇ!?」
アスカもアスカですぐ怒る。
「あんた、レディーに向かって!」
「何処がレディーだこのじゃじゃ馬!」
「今度はそれね!もう容赦しないわ!」
二人で言い争いになる。しかしその間にもロンド=ベルの面々は布陣を進める。そうしてすぐに邪魔大王国及び百鬼帝国の面々と対峙するのだった。
「邪魔大王国!」
宙が彼等を前にして叫ぶ。
「今度の戦いで御前達を滅ぼす。いいな!」
「面白い、司馬宙!」
フローラがそれに受けて立つ。
「その言葉返り討ちにしてくれる!」
「そう上手くいくか!」
宙もまたすぐに言い返す。
「俺のサイボーグとしての力、ここで見せてやる!」
「ならば来い!」
フローラはまた言った。
「この私を倒してみよ!竜魔様の片腕であるこの私をな!」
「大文字博士!」
竜馬が大文字に声をかける。
「予定通り」
「うむ。総員攻撃用意」
大文字は彼等の言葉を受けつつ指示を出す。
「大分及び鹿児島から向かう連邦軍と共同して敵を包囲殲滅する。いいな」
「了解!」
こうしてロンド=ベルと百鬼帝国及び邪魔大王国連合軍の戦いがはじまった。まずはロンド=ベルが果敢に前に出て来た。そのうえで攻撃を仕掛ける。
「ドリルテンペスト!」
隼人はいきなり大技を出して敵を撃つ。それでまずは数機粉々になる。
「次だ!」
「よし!」
今度は弁慶の出番だった。真ゲッター3になるとそこからミサイルを放つ。それでも敵を屠り今度は真ゲッター1になる。竜馬が叫ぶ。
「うおおおおおおおーーーーーーーーーっ!」
巨大な斧を縦横無尽に振り回し敵を粉砕していく。ゲッターが中心となり敵に攻撃を仕掛けていた。
そこには当然ブラックゲッターもいる。武蔵がそのブラックゲッターを獣の如く暴れさせていた。
「ここで御前等を潰しておかないと後が大変なんだよ!」
「HAHAHAHAHA、狙い撃ちデーーーーーーース!」
ジャックもいる。テキサスマックもまた派手に暴れている。戦いはすぐにロンド=ベルにとって圧倒的に有利なものとなったのだった。
「どうしたフローラ!」
「くっ!」
フローラは宙の挑発の言葉に歯噛みする。
「おのれ、実力が増しているか」
「質も量もな」
ヒドラーはフローラに対して冷静だった。
「その分こちらがやられている。このままでは分が悪いぞ」
「では撤退か」
「いや、まだだ」
だがヒドラーはここではそれをしようとなかった。
「まだだ」
「ではどうするのだ、ヒドラー元帥」
「ここは予備兵力を導入する」
まずはそれだった。
「それを側面から差し向ける」
「敵の側面にか」
「既に敵の右翼にそれを隠しておいた」
これはヒドラーの策だった。
「これで倒す。どうだ」
「ふん。ならばそうするがいい」
フローラはあえてそれには賛成と言わなかった。そこには彼女の個人的な感情があった。
「貴殿のな」
「そうか。ならば出させてもらう」
「そうするといい」
ここでも首を縦に振らない。
「貴殿の思う通りにな」
「ハニワ幻人はいないのか」
「いや、いる」
その問いにはすぐに答えてきた。
「しかし」
「しかし。どうした?」
「数が」
ないというのだった。
「それ程ない。しかも配しているのは正面だ」
「そうだったのか」
「出さざるを得ないか」
彼女は呻くようにして言った。
「ここは」
「あえて言わせてもらうがその時だ」
ヒドラーは冷静に戦術的な視点からフローラに述べた。
「そう思うがな」
「わかった。それではだ」
「よし、今だ!」
「伏兵を出せ!」
二人は同時に指示を出した。
「いいか、このまま正面に出せ!」
「敵の側面を叩け!」
こうしてハニワ幻人と鬼達が出る。そしてそれと共に。
「!?あれは」
「一体」
フローラ達の知らない、奇妙な形のマシンが姿を見せたのだった。
「ヒドラー元帥、御存知か」
「いや」
ヒドラーはフローラのその言葉に首を横に振った。
「あの様なマシンは見たことがない。あれは一体」
「おいおい、またあいつ等かよ」
「そうね」
ラウルとフィオナが言う。
「あいつ等、どうしてここに」
「何か魂胆があるのかしら」
「さて、彼等に追いついたけれど」
まずラリアーが言った。
「ティス、今回はどうするんだい?」
「まずは様子見よ」
ティスは彼にこう答えた。
「あいつ等の新しい力のパワーを見るのよ」
「それだけ?」
デスピニスはおどおどとした様子でティスに尋ねた。
「それだけでここに来たの?」
「いや、それで充分だよ」
しかしラリアーはそれでよしとするのだった。
「敵を知り己を知らばっていうしね」
「そうなの」
「そうさ。だから」
ラリアーは頷くのだった。
「ティスの考えに賛成するよ。それでいい」
「有り難う。それじゃあ」
「さて、と。ロンド=ベル」
ティスは離れたところから戦いを見て言う。
「見せてもらうわよ、その新しい力」
「!?今回は動かないのか」
カズマは彼等が動かないのを見て声をあげた。
「何かしてくると思ったんだけれどな」
「今回はただの偵察みたいよ」
ミヒロが兄に答える。
「三機だけだし」
「三機だけだな、そういえば」
見ればそうだった。彼等の他には誰もいない。
「じゃあ大丈夫か?」
「いや、油断大敵だ」
しかしダイテツがこう言ってきた。
「警戒は必要だ」
「結局はそうかよ」
「しかしだ」
ダイテツはさらに言う。
「今は正面の敵に向かえ。いいな」
「わかったぜ。それはな」
「今度の敵軍はかなりの数だね」
「そうね」
統夜の言葉にカルヴィナが頷く。
「援軍が来たから」
「御二人共気をつけて下さい」
シロガネの艦橋からカティアが忠告する。
「どうやらまだ敵が潜んでいます」
「えっ、まだいるの?」
「嘘っ」
それを聞いたテニアとメルアが声をあげる。
「これだけいるのに」
「まだいるなんて」
「って言っている側からやんけ!」
タスクが声をあげた。また敵の援軍だった。やはり百鬼の軍だった。
「どうするんだよ、こんな数!」
「そんなの言わなくてもわかるわ」
しかしレオナはその数を見ても冷静だった。
「倒すだけよ」
「また随分と強気だな、おい」
「いや、その通りだ」
しかしギリアムがそれに頷く。
「倒すしかない。ここはな」
「何かそれっていつも通りなんですけれど」
「いつも通りならそれでいいじゃねえか」
今度はカチーナがタスクに対して言う。
「違うのかよ」
「いつも通りっていやあそうですかね」
「そういうことだ。わかったらとっとと前に出やがれ!」
相変わらず乱暴な言葉だ。
「敵を倒さないと話にならないんだからな!」
「やっぱりこういう展開か」
「けれどタスク」
ラッセルがその彼に声を掛ける。
「敵が来ているから」
「ああ、わかってるさ」
それでも彼はやはりロンド=ベルの一員だった。やるべきことはわかっていた。
「やってやるさ。やるべきことはな!」
「タスク!」
「行くわよ!」
次に二人に声をかけたのはガーネットとジャーダだった。二人が彼のそれぞれ左右を通り過ぎて敵に向かっていく。向かいながらスラッシュリッパーを用意している。
「敵が多いなら多いで」
「戦い方があるだろ!」
「そうだな。じゃあよ!」
「突っ込めタスク!」
カチーナは言う側から自分も突っ込む。やはり彼女はこうだった。
「どいつもこいつも纏めて叩き潰すんだよ!」
「了解!喰らえ!」
それに応えてジガンスクードの拳を繰り出した。
「纏めて殴り倒してやるからよ!」
その拳を縦横無尽に振り回し百鬼帝国の者達を倒していく。彼の勢いがそのままロンド=ベルの勢いとなり押して行く。その中にはクスハとブリットもいた。
「クスハ、ここは俺に任せてくれ!」
「ブリット君、あれをするのね」
「そうだ、あれだ!」
クスハに応えながらヒドラーの乗る移動要塞に向かう。既に真・虎龍王に変形している。
「四神の力、今ここに!」
言いながら剣を構える。
「破邪斬断、万騎両断!」
真・虎龍王に四神の力が宿る。その剣に赤い炎がオーラとなって沸き出ている。そしてそれを手にヒドラーに突き進み皿に叫ぶ。
「必殺!虎王斬神陸甲剣!」
剣を一閃させた。それだけだった。だがその一撃で要塞の動きは止まった。ヒドラーの周囲でもあちこちから爆発が起こっていた。
「何だと!一撃でか!」
「閣下、このままでは!」
驚く彼に部下の一人が声をあげる。
「もちません!」
「ここは!」
「わかっておる。総員撤退!」
彼は即断して命令を下した。
「一時下がるぞ。よいな!」
「はっ!」
「ヒドラー元帥」
壊れかけているモニターにフローラが姿を現わす。彼女はヒドラーに声をかけてきていた。
「何だ?」
「撤退するのだな」
「フン、見ての通りだ」
忌々しげな顔で彼女に答える。
「こうなっては致し方あるまい」
「わかった。では後詰は私が受け持とう」
「貴殿がか」
「そうだ。といっても先に撤退してもらうだけだがな」
表情を変えずにこう述べる。
「それでいいな」
「構わん。わしの部隊もこの要塞ももうもたん」
「わかった。それではな」
「では先に撤退する。よいな」
「うむ」
こうしてまずはヒドラーが撤退しその次にフローラが撤退する。彼女はその時に最後にジーグに対して攻撃を浴びせてきた。オロチの炎がジーグを襲う。
「これは別れの挨拶だ!」
「ふん、当たるか!」
しかしジーグはその炎を何なくかわす。軽快な動きで。
「そんな攻撃!」
「すぐに会う。だがその時は」
「何だというんだ!」
「貴様の最後だ!よく覚えておけ!」
こう言い残して姿を消す。百鬼帝国及び邪魔大王国との決戦はまずは彼等の勝利に終わった。
勝利を収めたロンド=ベルはまずは解放した地区に駐屯しそこで警戒にあたりつつも休息に入った。戦士達に早速食事が出される。
「ああ、これかよ」
「これって?」
「これな、すげえ嫌な思い出があるんだよ」
トッドがチャムに説明していた。実際に彼は嫌そうにその食事が入ったパックを受け取っていた。一人数個ずつあるがトッドはどれも嫌そうな顔で受けていた。
「レーションな。これはな」
「そんなに嫌なの」
「まずいぞ」
顔を顰めさせて言う。
「それもとんでもなくな」
「そんなにまずいの」
「ああ、まずいなんてものじゃねえ」
それをチャムだけでなく皆にも力説する。
「アメリカ軍で一番困るのがこれなんだよ。レーションがな」
「ふうん」
「まさかここで出て来るなんてな。まだあったのかよ」
「噂には聞いていたけれどね」
同じアメリカ人のマーベルも言う。
「実際に見るのははじめてよ」
「牧場の娘さんにはわからんさ。パイロットの苦しみはな」
「トッド、御前本当に嫌なんだな」
「じゃあよ、ショウ」
しかめっ面をショウに向けての言葉だった。
「試しに食ってみろ。すげえからよ」
「マリューさんの料理よりもか」
「ああ、あれは核兵器だから論外だ」
それは論外だろ言う。
「あんなの食ったら死ぬだろうが」
「それはそうだけれど」
「わかったらとりあえずそれを食ってくれ」
あらためてショウに勧める。
「とんでもない味だからよ」
「わかった。それじゃあ」
トッドに勧められるままパックを開けて中身をフォークで突き刺して口の中に入れる。すると。
「どうだ、まずいだよ」
「いや、思ったより」
しかしショウはこう答えてきた。
「いや、むしろ」
「美味いっていうのかよ」
「そうだ、中々いける」
トッドへの返答であった。
「食べられないってわけじゃない。全然大丈夫だ」
「あれ、おかしいな」
トッドはショウのその言葉を聞いて眉を顰めさせた。
「そんなことはないんだがな。じゃあ俺も試しに」
「食べてみるのね」
「食わないと駄目だろ」
チャムに言葉を返す。
「どっちにしろな。食わないと死ぬぜ」
「それはそうだけれど」
「まずはこれだ。ゼリービーンズ」
忌々しげに料理の名前を口にする。
「これのまずさがよ、もうそれこそ」
「凄いのね」
「口が曲がるってもんだが・・・・・・おや」
一口食べて言葉の調子が変わった。表情も。
「いや、結構いけるな」
「美味しいの」
「ああ、美味い」
チャムにも答える。
「思ったよりもっていうかかなりな」
「まずくはないのね」
「平気で食える」
また答える。
「いや、こんなに美味いとは思わなかったな」
「味付けが変わったのか?」
ショウはこう考えた。
「連邦軍も」
「そうじゃないのか?」
アムロがトッドに応えてきた。見れば彼も同じレーションを食べている。
「料理の味は将兵の士気に大きく影響するからな」
「そうなの」
それにレイが応えて呟く。
「私はお肉でなければそれで」
「レイちゃんはまた特別だよ」
光はデザートのアイスクリームを美味しそうに食べている。
「それでも野菜系のレーションを食べていたじゃないか」
「美味しかったわ」
レイは答えた。
「それも結構」
「甘いのが少し残念だけれどね」
海にしてはそうらしい。首を少し捻っての言葉だった。
「私甘いのはちょっと」
「私としては和食が」
風もそれが少し不満なようだった。
「お握りでもあればいいのですが」
「お握り?あるよ」
シンジが早速一個風に差し出してきた。
「よかったらどうぞ。皆で握ったやつだよ」
「お握りですか」
「やっぱりこれだよね」
シンジはにこりと笑って皆に言う。
「こうした時の御飯って。これが一番美味しいよ」
「フン、ソーセージが一番よ」
アスカはいつもの減らず口の中でそのお握りを食べている。レーションのソーセージをおかずに。
「大体ね、あんた何かと」
「猿蟹合戦の猿みたいに食っていて言うんじゃねえよ、赤猿」
またシンが参戦してきた。
「御前はとっとと食い終わって木に登ってウキャウキャ言ってろ」
「シン、今のは言い過ぎよ」
ミレーヌも思わず顔を顰めるシンの今の言葉だった。
「幾ら何でも」
「言ってくれるじゃないの、このシスコンのロリコンの変態が」
「何ィ!?」
そして言い返さないアスカではない。二人はお握りの米粒をそれぞれの頬につけたまま睨み合いだした。
「誰が変態だ!」
「猿って誰のことよ!」
「御前に決まってるだろこの雌猿!」
「レディーに猿なんていい度胸ね!」
「御前の何処がレディーだ!」
二人の言い合いは続く。
「モンキーガールとでも名乗っておけ!」
「ド変態が何を言うのよ!」
「俺は変態じゃない!」
「変態よ!」
最早食事をよそに喧嘩をしている。
「シスコンにロリコンなんてね!恥ずかしくないの!」
「御前に言われなくない!」
「じゃあ認めるのね!」
「誰が!」
もう互いの胸倉を掴み合っている。お握りを食べながら。
「あんたが変態だって!」
「御前が自分を猿だって認めろ!」
「言ったわね!」
「そっちこそ!」
遂につかみ合いになった。やはり仲が悪い。とりあえずこの二人は放置され食事を安全な場所に置かれたうえで話の再開となった。
「それでだ」
「はい」
一同アムロの言葉に応える。アムロはお握りを食べている。
「最初はこのレーションもまずかったんだ」
「俺が知ってるそのレーションですよね」
「そうだ。ところがそれがあんまりにも酷いということで」
「改善されたんだな」
「その通りだ。それが今のこのレーションなんだ」
光にも答えたのだった。
「味付けも変えてカロリーや栄養バランスも改善されている」
「そうなんですか」
「ああ。だからこれだけでもう全然違う」
ショウの言葉に述べる。
「他に色々な食べ物もあるしな。連邦軍の食事はいい」
「そういえば何か」
ふとマーベルが気付いた。
「私達こうした食事は殆ど食べていませんでしたね」
「ああ、そういえばそうだな」
ショウもマーベルのその言葉で気付いた。
「サンドイッチやお握りが多かったな、この場合は」
「そうです」
「そうだった。それを考えると案外新鮮に感じるな」
「保存用の食べ物ですけれどね」
シンジが笑って述べる。
「それでもそういう意味なら」
「そういうことだな。さて」
「はい」
「これを食べたら休もう」
一同にこう言うアムロだった。
「次の戦いに備えてな」
「わかりました」
「それじゃあ」
皆その言葉に頷く。戦士達は今は休息に入るのだった。次の戦いに備えて。

第六十一話完

2008・5・15  
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