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赤髪の刀使い

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決意と協力者

「ねぇ…ユウにリズ…手伝ってほしいことがあるの」

SAOの正式サービスが始まった次の日、
アルゴが俺たちに向かって言ってきた。

「なんだ?」

「私は今からこの正式サービスの情報をかき集める。
βと違っているところに、おいしいクエスト情報、モンスター、レアドロップの情報を集める」

それを手伝って欲しいってか?


「あなた達には集めた情報をそれとなく回りに広めてほしいの。
聞いたところによるとβテスター達は初心者(ニュービー)を置いて、我先にと狩場に向かって行ったらしいわ。
さすがに初心者達は捨て置けないし、色々な情報を回そうかと思うの。
そのためには私はちょっと街から離れないといけないし、その間情報を広める人がいなくちゃいけないの」

アルゴのβテスターとしての覚悟だろうか…
こいつのいうβと違うクエストやらを調べるには並大抵の努力では足りないだろう。
こいつは自分の身体を犠牲にしてでもこれから増えるであろう初心者達の死者数を減らしたいという明確な意志が俺には伝わってきた。

「あぁ…分かった」

俺とリズはアルゴの言葉に頷くと、アルゴは一冊の本を渡してきた。

「これはβテストの時のクエストの情報と第一層のモンスターの情報ダ。
モンスターには必ず弱点がある。
ユウは無意識だろうガ、弱点を的確に突いていル。
リズは…戦闘はそこまで向かないだろうナ。生産職になってレベルをあげて低レベル層で狩っていればそうそう死にはしないだろウ。
戦闘に恐れるナ」

アルゴは部屋から出ていこうとする。

「アルゴ…絶対生きろよ」

「身体には気をつけてね」

俺は出て行くアルゴに声をかけ、リズはアルゴに抱きつく。

「…うん」

アルゴはリズからはなれると、フィールドに向かって走って行った。







「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ」

俺たちの目の前では数人の男が、俺達が昨日戦ったフレイジーボア相手に戦っていた。
その数人の男の後ろでは赤い髪のバンダナをつけた野武士を思い起こす男性が数人の男達に指示を出している。

「あわてるな!
モンスターの動きをしっかり見ろ!
隙が出きるまで回避しながら隙が出来たらソードスキルのモーションを起こして当てろ!」

野武士はモンスターの動きをしっかりと見つつ、数人の男たちの周りを警戒している。
危険があればすぐにでも駆けつけてモンスターを倒せるように曲剣を手にしている。

「う・・・・・・らぁぁぁぁ」

男の一人が片手剣に青いエフェクトをだし、フレイジーボアに突進する。
だがその突進は失敗だ。
なにせフレイジーボアもこちらを認識し、突進を始めていたのだから。
初心者がシステムのアシストがあるといっても動体に剣を当てるなどといった芸当は出きるはずもない。

「ちっあの馬鹿!」

野武士の男も駆け出す。
予想通り、突進した男はソードスキルをモンスターにあてることが出来ずに、ソードスキルの硬直で動けなくなる。
そこにフレイジーボアが突っ込……む前に野武士が間に合いフレイジーボアのHPを0にする。

「た、助かったよ。
リーダー」

「気にすんな
ここのモンスターはスキル一発で軽く沈むから落ち着いていけ」

なんていい関係なんだろうか。
出来ないことを皆で補いながら目的を達成する。
俺は男友達が出来たらああいった友情と言うのを持ってみたいと思ったことがある。


パチパチパチパチ


周りで狩っていた人たちからも見事なまでの野武士のフォローを見て拍手が巻き起こる。

「いやーどーもどーも」

この言葉がなかったら完璧だったんだがな。
でもこの言葉を言った後もまったく嫌味というものを感じない。
むしろ、この周りの人たちにちょっとした笑いすら与えてしまった。
HPが0になったら死亡するこのデスゲームの中で、明るく振る舞うことなんて並大抵の事ではないだろう。
それに始まって二日目だ。
この暗い空気が漂う一筋の明るい希望と言ったものだろうか。
この野武士ならば皆を確実に正しい方向に導いてくれるに違いない。

「すみません」

「ん?お嬢ちゃんどうかしたか?」

俺は野武士に声をかける。
やっぱり…俺は嬢ちゃんに見えるか…まぁ活用させてもらうか…
そういや、着替えるものもなかったし昨日のワンピースのままなんだな俺。
性別は男になったが、服ってどうなるんだ?

「あの、私のリアルの友達のβテスターの人からこのゲームのこと聞いてて、
クエストとかモンスターの情報とかを書いた本を貰っているんですけど…
広めるのを手伝ってくれませんか?」

おぃ、リズは鼻を押さえなさい。
乙女としてはその鼻から見える赤い液体は絶対にだめだ。

「お、ぉぉぉぉぉ俺なんかでよければいくらでも協力しますよ。なんでも!」

最初の方、動揺しすぎじゃないか?

「これなんですけど…お願いできますか?」

俺は野武士に向かって上目遣いをしながらアルゴから貰った攻略本のコピーを渡す。
これ意外と俺の精神ダメージ大きいんだが…死んでいく人たちを少なくするための処置だ。
俺の精神ダメージぐらい安いもんだ。
この攻略本は完全にオリジナルと同じものだ。
もらったあとに俺とリズで見てみたがなにが重要なのかよく分からなかったから、とりあえず広める人数を集めて、広めてもらった方が楽だろうと思って、そのままコピーした。

「おぅ。地の果てでも広めてやるぜ!」

「おねがいします」

俺は頭をさげ、口を綻ばせる。

(協力者げっと)






「おっとそうだ。
フレンド登録しないか?
こんな状況だし、ちょっとでも連絡を取れる人が多い方がいいだろうからな!」

なんか下心が見え見えなんですけどー
まぁフレンド登録ぐらい別にいいんだがな。
リズも呼んで野武士とフレンド登録をする。

「クラインさん?」

「あぁクラインであってる。
そっちの嬢ちゃんはユウちゃんで、そっちの嬢ちゃんはリズベットちゃんでいいのか?」

「はい。あってます。リズでいいですよ」

今まで黙ってたリズが俺の代わりに言った。

「そうだ!
今度、俺ら《風林火山》ってギルド作ろうかと思ってるんだが入らねぇか?」

その申し出はやんわりと断っておくことにする。







「ちょっとだけ狩っていこうかな」

近くに沸いたフレイジーボアを見ながら俺はつぶやく。
回りにはまだクライン達がいるからちょっと口調を変えておく。
クライン達と少し話してみたが俺が普通に男だと言っても情報を広めるのを止めるってことは絶対にないだろう。
あのクライン達はどっちかというと自分から命を散らすのではなく、人のために命を散らすような生き方をしそうだ。いや…どちらも生き残るように一生懸命あがいてあがいて、それでいて無事に生き残るような気がする。

俺の言葉を聞き取ったのかクライン達がフレイジーボアを一体譲ってくれた。
俺の狩り方に興味があるのだろうか。

「…ふっ!」

俺はいつものように瞬動を用いてフレイジーボアに接近し、そのままの勢いで5回切りつける。
1発目は両前足の根元、2発目は首、3発目はフレイジーボアの原型であろう猪の心臓のある部分を両断、4発目は胴体を、5発目はついでで両後足の根元を。
2発目の首の時点でHPが0になっていたフレイジーボアは3、4、5といった追撃が終わった後ようやくポリゴンとなって消えた。
俺の目の前にドロップ品と経験値のウィンドウが現れるが昨日と同じだったから、気にせずにウィンドウを閉じた。


「な、なんだあれ!」

クラインが大口を開けて俺と先ほどまでフレイジーボアがいた場所を交互に見ている。
周りの人たちのように「俺もできるのかな」とかいってソードスキルを使って俺の再現をしようとしたりはしないのかな。

「あれは私が現実で練習して出来た技術かな。
現実と殆ど一緒だから再現できたの」

やっぱこの口調疲れる。

「技の名前は!」

「……瞬動だけど」

俺が技名を言うとクラインも目を輝かせて「俺に教えてくれ」って言ってきた。
だが、俺はこの技を身につけるまで3年の月日を要したのだ。
教えてもいいが、何年かかるか分からないというとクラインは落胆したような顔をした。

「あーそういえばその攻略本の中にスキルの説明もあったのだけど。
確か《疾走》っていうスキルがあるみたいね。
そっちを覚えた方が楽かもね」

《疾走》のスキルはスキルを発動すると筋力値を敏捷値に置き換えて少々の間、敏捷値が高くなるスキルである。
まぁ…スキルレベルをあげないと敏捷値に変えれる筋力値の割合は少ないし、効果時間は短いしであまりつかいものにならないらしいが。

「おぅ!おもしろそうなスキルじゃねぇか!」

なんて生き生きした顔なんだろうか。 
 

 
後書き
えーあー…

一話目あげてからお気に入り登録があったのに少々驚きが隠せないです…。

一話目は少々張り切りすぎて文字数が6000字超えになりましたが、通常は3000字程度を目標として書いていきたいと思います。

気まぐれで書いているので、いつ更新が止まるか分かりませんがよろしくお願いします。

あっちなみにアルゴの本名とかは勝手に自分でつけました。


 
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