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赤髪の刀使い

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鋼鉄の城アインクラッド

俺はまわりを見渡してみる。
そこには中世風をイメージして作られたであろう建物が多く立っている。
そして俺のまわりには多くの容姿端麗な人たちが多くいる。

「ここがゲームの中…」

とてもじゃないが信じられないようなグラフィックだ。









俺は元々このゲーム───ソードアートオンライン───を買うつもりはさらさらなかった。
なんでゲームの中でも体を動かさないといけないんだっていう考えの持ち主だったとも言える。
俺が買ったのは、幼馴染に一緒に始めようと上目遣いで頼まれてしまったためだ。
どうにも俺は昔から幼馴染のあの顔に弱い。
ゲーム自体はその幼馴染と3日前から並んで手に入れた。
入手当初は本当におもしろいのか?と疑問に思ってしまったが、ハードを用いてゲームの中の動作を動かすというものよりは自由に動く体での冒険というのも楽しいかもしれない。








俺が今立っている場所は《はじまりの街》というアインクラッドでの初期場所らしい。
俺はまわりの容姿端麗な人たちを見ながら、ネカマ───ゲーム内でリアルとは別の性別のキャラを操ること───が大多数だろうと思いながら適当に街を散策してみることにする。
歩いてみると分かるが、このSAO───ソードアートオンライン───は恐ろしいことに歩くときの地面から返ってくる衝撃や、重力までもが計算し尽されているようにしか感じない。

(これなら色々出来そうだな)

俺の現実で持っていた技術は使えそうだ。
少し歩いていると光の反射の関係で鏡の用になっているガラスを見つけ、自分の容姿を見てみることにする。
実は容姿の設定は全部幼馴染に丸投げしたのだ。
幼馴染の言い分では「絶対あんたがしたら顔1とかでしょうが」とか言われてしまい何とも言い返せなかったのが悔しい。
設定をした幼馴染は自信満々に「完璧!」って言ってたが…一体どうなっているんだろうか。

ガラスには身長は140cmぐらいの小柄な体つき、服装は薄い水色のワンピース、半開きの目とゲーム内ではあまり関係がないであろう眼鏡、茶髪のロングと言えるであろう髪をポニーテールに纏め、青色の瞳をした少女が立っていた。

(…現実の俺じゃん)

その姿は紛れもなく現実の俺の容姿を瞳の色以外、写したようなアバターなのだ。
これでも歴とした男なのだから神様という人物を呪いたい。
もうすぐ高校生だっていうのに、141cmしかない低身長…悲しすぎる。
というかなんで今まで俺はワンピースを着ていたのに気がつかなかったのだろうか…。
現実で両親や、幼馴染に無理やり着さされていたから違和感を感じなかったのか…
それだと男として終わってる気がする…

「いたー!探したんだよ。ユウ」

俺が自分の容姿を見ながら落胆していると後ろから声をかけられた。
ちなみに俺の現実の名前は篠崎(しのざき)優希(ゆうき)。
女の子っぽい名前だが男なのだ。
両親が女の子が欲しかったって言う願望をそのまま名前に反映させてしまったため、
名前が女の子っぽいのだ。
その影響か、俺の体はなぜか女の子みたいだし、顔だって普通の女の子に見える。
そのせいで両親と幼馴染には、女装をよくさせられてたからワンピースなんて特に違和感を感じなかったのだろうか…
だが俺は男だ。俺は男だ。大事な事だから2回言ったぞ。
女装は無理矢理なんだからな…ほんとだぞ

まぁゲーム内ネームは本名を短くした《ユウ》としている。
現実の名前を使わない方がいい?知らんな。今までのオンラインゲームでも基本はユウで通してきたし、違和感がないんだ。

「遅かったな理k…むぐっ」

俺は話しかけてきた雰囲気で人物を特定し、振り向きながらその人物の名前を言おうとすると、口を手で押さえられた。

「ここではリズベットね。リズでいいわよ」

あぁ…そうかここはSAOの中だった…これは気をつけないといけないな。
俺は口を押さえてきているリズ───篠崎里香───に向かって何度か頷くとリズは手を話してくれた。
このリズが俺の幼馴染、名字は一緒だが、血筋はまったく違うただの偶然。
両親の第から続く関係だったりする。

「で、どんな感じ?そのアバターは?」

リズは俺の姿を見て、頷いているがどういうことだろうか。

「なんで俺の体そのままなんだよ」

「だって可愛いじゃない。
そうそう、そのアバターの性別は女の子にしておいたから」

…もう何も言わねぇ。
てヵ今さっき俺が蔑んだ目───実際は無表情(本人無自覚)───で見てたネカマ達と俺は同程度かよ…

「ささ、狩りに行ってみましょ」

リズは俺に文句を言わせる前に《はじまりの街》の外に俺を押していく。
まぁ別に容姿の事は何も言わないんだがな…せめて性別は男にしておいてくれよ…










「ソードスキル?」

俺は聞き覚えのない単語をリズに聞く。

「簡単に言ったら接近戦用のスキルってところかな。
モーションを起こしてあげればシステムが勝手に命中させてくれるんだけど…

こう……やってねっ!」

リズはその辺に落ちていた石を拾うと、フレンジーボアに向かって石は青く光りながら当たる。

「よい…しょっと!」

リズは持っていた剣でフレンジーボアの残っていた体力をすべて削り切る。

俺も何度かリズのマネをしてソードスキルを使ってみているとふと思いつくことがあった。

「…ちょっとやってみるか」

俺は現実でも何万回と使っている構えをとる。
俺は現実ではあまり有名ではないが剣術を教わっている。
護身用に覚え出したものだが俺の習っている剣術は熟練すれば銃の弾を斬ることなんて容易く行えたりする。
聞くところによるとマシンガンの飽和状態でも防ぎきることができるらしい。
前師範代がそれを行えたという話は道場でも有名な話だ。
まぁ前師範代は二刀小太刀だったが、俺は大太刀を用いた剣術を習っている。
俺の大太刀でも銃弾は斬れるが、流石にマシンガンの飽和状態を防ぎきるなんて芸当は流石に出来ない。
飽和状態でなかったらできるかもしれないが。

構えを取った、俺はフレンジーボアに向かって一気に加速。
回りの景色すら置き去りにした一瞬の加速で俺はフレイジーボアを5回切りつけていた。
もちろんフレイジーボアはポリゴンを散らせながら消えていく。
そして俺の目の前にドロップ品と獲得経験値、それとレベルアップのウィンドウが立ち上がった。

「なんでユウはゲーム内のスキルで戦わないかなぁ…」

リズが頭を抱えているが、ゲーム内のスキルを使ったがあんなの使用後に硬直があるわ、スキルの発動までにラグが少なからずあるわで使い物にならないと思う。

ちなみに今俺がフレンジーボアにしたのは、5回切りつけるのはただ早くこの持っている片手剣を振っただけ、一瞬の景色すらを置き去りにする加速は、俺の周りが勝手に《瞬動》と名付けた。
筋肉の使い方さえしっかりと覚えてしまえば、このゲームの中でも再現は結構簡単にできるこということがわかってしまった。
まぁ瞬動の欠点としては、直線にしか進めないのと、精々10メーターが限界ということであるが、まぁ遊びの範囲のこのゲームだとこれくらいで十分だろう。
言っておくが某野菜先生の瞬動とは別物だからな。

「んー何か片手剣って使いにくいな…刀とかないのか?」

出来れば大太刀。
俺の得意な獲物は大太刀なんだが…

「確かあったはずよ。
エクストラスキルで刀のスキルがあったはずだし」

どっかの攻略サイトにでもその情報があったのか?

「ふふん、ユウも知ってるはずよ。
私たちのクラスメイトのSAOβテスターが教えてくれたのよ」

クラスメイトのβテスター…?



「オレっちの事をお忘れかナ?」

急に後ろから声をかけられた。
フードをかぶり、頬に鼠の様な3本線のフェイスメイクをしている女性がそこに立っていた。
フードの隙間から見える髪は金髪だろうか。

「誰だ!」

「あー…えーと」

「アルゴ」

ふむ…この女性はアルゴって名前なのか。

「ユウ、クラスメイトのβテスターのアルゴ」

そんな風に言われたって分かるかよ。
第一俺の知り合いにそんな口調の奴はいない。

「はァ…姫は相変わらずぶっきらぼうね」

急にアルゴの口調が代わり、聞き覚えのある俺のあだ名をいってきた。
俺を姫と呼ぶような奴は一人しかいない。

「おまえ、留衣(るい)か!」

「現実のことはマナー違反だヨ。姫」

アルゴはニヤリと笑う。
まぁ留衣とはクラスの中でも俺と仲がいい、女友達だ。
俺はこんな容姿をしているためか男の友達より女の友達の方が多いという、
嬉しいような悲しいような友好関係なのだ。
携帯のアドレス帳の7割が女性なんだよなぁ…とりあえずクラスの女子のアドレスはすべて持っている。

「さぁて!情報提供者も来てくれたことだしパーティでも組んで狩りましょう!」

リズがそういうとリズからパーティの申請が俺とアルゴに出た。
まぁもちろん拒否する理由なんてないから俺とアルゴは《OK》を押した。







「そら…よっ!」

俺が向かってきたフレンジーボアを片手剣で絡めとるように打ち上げると、そこに投剣が突き刺さりフレンジーボアのHPは0になり、ポリゴンとなって消滅する。

「えいっ!」

俺の横でリズも片手剣を持ち、フレンジーボアのHPをソードスキルを用いて0にして倒しきる。

「いやはヤ、ここまでパーティが楽だとは思わなかったヨ」

俺の後ろから俺が打ち上げたフレンジーボアに向かって投剣を投げつけたアルゴが声をかけてくる。

「そういや、アルゴはなんでそんな口調なんだ?」

どうにも違和感しかない。

「キャラ作りだヨ。
姫も女キャラなんだから口調でも変えてみたらどうかナ?」

それをしたら絶対お前らに現実でからかわれるだけだろ…
アルゴもリズも期待した目を向けないでくれ、絶対にしないから。

「さーってと、そろそろ私は夕飯だし落ちるわ」

リズが落ちるために右手を振ってメニューを出す。

「アルゴはどうするんだ?
俺ももう落ちるが」

「オレっちはβ時代と変わったところがないかを調べてくるサ。
そうすればレベル上げも楽だからナ」

そうか…

「ログアウトがないんだけど!」

リズが声をあげる。

「そんなはずはないだロ」

アルゴもメニューを開き、ログアウトを探し出すので、俺も探してみることにする。







「あったか?」

「ない…どういうこと!?」

アルゴの口調が現実と一緒になってしまっているが、まぁいいだろ。
周りには俺たちしかいないし。

「俺も見つからないな」

「正式初日からバグなんて相当な痛手ね」

俺とアルゴはまぁいずれ運営側から落としてくれるだろうと、サポートセンターにも連絡はせずに話しているが、リズはサポートセンターにメッセージや色々と試しているみたいだ。
まぁ多分このバグは見つかったばかりってわけじゃないだろうし、他の人もメッセージを送っているだろう。
無駄にメッセージを送って運営側が混乱してはいけないだろうから俺たちはとりあえず運営が動くまで待機しておこう。

「今日は家で焼肉なのにぃぃ」

リズが落ちたい理由ってそれか…

「んーβテストの時もこんなバグなんてなかったのだけど…
ログインしてる人数が増えたから起こったバグなのかな」

「さぁな。
俺にはさっぱりだ」

あぁそうだ今の内に聞いとくか。

「そういやSAOには刀があるらしいが、どこで手に入るんだ?」

「第2層目からNPCが売ってるけど…結構扱い辛いらしいよ。
攻撃力的には片手剣以上両手剣以下で、リーチも両手剣ぐらいね
一応片手で振ったり両手で振ったりできるみたいだけど」

そこだけ聞くと結構良さそうな武器に思えるんだが。

「問題は、耐久値が低いってこと、β時代にも何人か刀を使っていたけど、他の武器に比べて2倍くらいの勢いで耐久値がなくなっていくみたいね。
それに刃が薄いから結構あたり判定がシビアらしくて、ボス戦の時は問題ないんだけど、
その辺の小型モンスター相手だと手間取るみたいね」

耐久値が少ないか…まぁ一度使ってみるか。
手に入れれるのは第2層と…

「ん。
分かった」

「もしかして抜刀術とかに興味がお有り?」

アルゴが聞いてくる。
抜刀術か…イメージとしては、
抜刀→斬る→納刀→「またつまらぬものを斬ってしまった」→獲物がバラバラ
とかいうイメージなんだが…

「いつのアニメよ…」

アルゴが呆れてるが、俺にはそんなイメージしかない。


「うがぁぁぁお肉がぁぁぁ」

リズはそんな女子が出さないような声で叫ばない。







急に俺たちの体が光り出した。

「これは…テレポート?」

アルゴが言う。
俺は何かいやな予感がしたため、未だに「肉~」って言っているリズとアルゴを掴む。

「へ?」

「もしかしたら座標が違って別の場所に飛ばされるかもしれないからな」

別のオンラインRPGでも狩場から安全圏へのテレポートでパーティメンバーが街の中でだが、離ればなれになったからこのSAOでもありえるかもしれない。
掴まえておけば座標がそこまでずれることはないだろう。
そして俺らは今までいた狩場から姿を消した。








「ここは…」

「《はじまりの街》…」

俺とリズ、アルゴは周りを見渡すとどんどん青い光が生まれ、テレポートしてきた人達がどんどん集まってくる。


《WARNING》《WARNING》《WARNING》


急に周りの景色が赤くなり空に文字が浮かび上がる。
その文字の隙間から血のような液体が漏れだし、集まって人の形をとる。

「なんだありゃ」

俺は血が集まって人の形となった赤いフードを見上げて声をあげる。

「…怖い」

俺にリズが抱きついてくる。
客観的に見たらレズなんだろうが…まぁ今はそんなことは関係ない。


『ようこそ。私の世界へ。
─────長いので割愛(by作者────
これにてソードアートオンラインの正式サービスのチュートリアルを終了する。
プレイヤー諸君の健闘を祈る』

そうして茅場と名乗ったアバターは消えていった。


「リズ…アルゴ…どっかに宿をとるぞ」

でないと人の波に飲まれそうだからな。
俺は現実の世界の姿になったリズとアルゴを連れて中ランクぐらいの宿の3人部屋を借りた。

「なんで…なんで…こんなことに…」

リズがベッドの上で足を抱えながらつぶやいている。
こういうときに俺はなにも言うことが出来ない性格が悔しい。

「里香…私がSAOに誘ったばかりに…ごめん…こんなことに巻き込んじゃって…」

そんなリズを慰めるようにアルゴもその横に座る。
宿屋は完全な防音と聞いていたが、キャパシティーオーバーなのだろうか小さいながらも怒号や叫び声、泣声が聞こえてくる。

「留衣は自分を責めるなよ…こんなことになることなんて誰も想像してなかったんだから」

俺は抱き合う二人を俺は見ながらちょっと眼福って思ったりしながらこれからどうしようかと考える。

「なんであんたはそんなに落ち着いてるのよ」

リズが聞いてきた。

「一応、内心は色々考えてるよ。
俺たちは現実に戻ることが出きるのかどうかとかな…そこまで感情に出てないだけだ」

まぁ大きな理由は女子二人の前で取り乱したくないってだけなんだがな。
 
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