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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第三十三話 アインスト

              第三十三話 アインスト
「何っ!?」
マーグはその報告を聞いて驚きを隠せなかった。
「アルフィミリィが失踪しただと」
「はい」
ロゼが強張った顔でマーグに報告していた。
「姿が見えません」
「出撃したのか?」
マーグはその可能性も探った。彼女は無断で出撃することもあるからだ。
「そちらの可能性は」
「そちらも調べていますが」
ロゼは一応はこう答える。
「ですが」
「何処にいるのかさえわからないというんだね」
「残念ですが」
そうであると。ロゼは答えた。
「今のところ姿は見えません」
「わかった」
マーグは苦い顔でロゼの言葉に答えた。
「とにかく行方を捜してくれ」
「はい、それは」
ロゼも彼の言葉に答える。
「引き続き行っていきます」
「頼むよ。しかしこれは痛いね」
マーグはさらに苦い顔になってロゼに述べるのだった。
「最近彼女の姿が見えなくなることが多かったけれど」
「そもそも彼女は」
「何かあるのかい?」
「出自がはっきりしませんし」
ロゼが言うのはそこであった。
「何者かさえも」
「そういえばあのマシンは」
マーグもそれに応えて彼女のマシンについて考えを及ばせた。
「見たことのないマシンだ」
「地球のものでもゾヴォークのものでもありません」
ロゼもまた言う。
「全く異なったものです」
「そうだね。あれも前から奇妙に思っていたけれど」
「強いて言うのなら彼等に近いものを感じます」
「彼等!?」
「ムゲです」
ロゼが言うのは彼等であった。
「ムゲ=ゾルバトス帝国に。似ていると思われませんか?」
「そうだね」
マーグはロゼの今の言葉に考える顔になった。
「マシンというより雰囲気がね」
「しかも今表に出て来ている彼等ではなく」
ロゼの鋭い洞察力はそこにも考えを及ばさせていた。
「その裏にいる何者かに」
「ムゲ=ゾルバトス帝国についても何もわかっていない」
マーグはそれについても言及する。
「何もね。彼等の調査も頼むよ」
「わかりました。そして」
ここでロゼは言う。
「そして?」
「このネビーイームに本国から派遣される人員が来るとのことです」
「それは一体誰だい?」
マーグは今のロゼの報告に顔を向けた。
「帝から直々に派遣されるのだね」
「そうです。まだそれが誰かはわかりませんが」
「そうなんだ」
それを聞いて少し残念に思うマーグであった。
「誰かさえも」
「ただ、そのまま我々に入るそうです」
「この辺境方面軍にだね」
「ですからそれ程気にされることはないかと」
「わかったよ」
ロゼのその言葉を聞いて納得して頷くのであった。
「それじゃあそうさせてもらうよ」
「はい、御願いします」
ロゼもまた頷いてみせる。
「それで司令」
「うん」
再びロゼの話を聞く。
「まずは彼女の捜索を引き続き行います」
「そして軍事行動は」
「その派遣される人員次第です」
そうマーグに答えた。
「それによりどうするか決めたいのですが」
「今はまだ静観だね」
「そうされるのがよいかと」
こうマーグに提案する。
「外宇宙方面軍の動きがまた活発化しているようですが」
「地球降下には失敗したけれどね」
マーグはもうそれを知っていた。
「それでも主力をどんどん送り込んできている」
「まだ司令部は動いていないようですが」
「そうなんだ」
これはマーグにとっては意外なことであった。
「死鬼隊まで出してきているのに」
「それでもまだ動きはありません」
ロゼは述べる。
「ハザル司令もル=カイン卿も」
「まあそれならそれでいいよ」
マーグはロゼにそう答えて顔を顰めさせるのであった。
「彼等が動くと。いいことにはならない」
「そうですね」
そしてロゼも彼の言葉に頷いた。
「一般市民を攻撃対象にしますし」
「かつてのユーゼス=ゴッツォもそうだったけれどね」
マーグはその顔をさらに顰めさせる。
「そういうのはどうしても好きになれない」
「それは私もです」
ロゼもそれは同じであった。
「あくまで戦うのは軍人相手にのみです」
「その他の存在に剣を向けるのはね。絶対にあってはならないことだ」
「それをどうしてあのように」
「それが彼等なんだ」
言葉がさらに忌々しげになるマーグであった。
「そうして一般市民を殺戮して喜ぶ。バルマーの恥だ」
「その通りです。しかし」
「しかし?」
「ハザル司令は以前はああした方ではなかったそうですね」
「そうらしいね」
これはマーグも聞いていたことである。
「話を聞いていると」
「それがどうしてあのように」
「それは私も知らないんだ」
彼はそうロゼに答えた。ネビーイームの司令室に彼の言葉が響く。
「ルリア=カイツも何も言わないしね」
「あの方もですか」
「けれど。今の彼は好きにはなれない」
マーグはそれははっきりと述べた。
「何があってもね」
「できるなら我々で何とか話を終わらせたいですが」
「ロンド=ベルとの戦いをだね」
「司令」
ロゼはマーグに対して言ってきた。あらためて。
「何かな」
「私は常に司令のお側にいます」
それを言うのであった。
「ですから何かあった時には」
「頼っていいのかな」
「是非」
ロゼがマーグに言いたいのはそれであった。
「御願いします、それで」
「わかったよ。それじゃあ」
マーグも笑顔でその言葉を受けるのであった。
「喜んでそうさせてもらうよ」
「はい、司令は私がお守りします」
こうも言うのだった。
「何があっても」
「それじゃあロゼ」
マーグはそのロゼに対して告げる。
「はい」
「これからも頼むね」
「有り難うございます。それではこれからも」
ロゼはマーグの言葉ににこりと笑って述べる。そうして言うのであった。
「宜しく御願いします」
「わかったよ。それじゃあね」
「はい。それでは」
「暫くは次の作戦に移ろう」
マーグは今は静かにするというのであった。
「火星を攻めたいんだけれどね」
「火星ですか」
「うん。あの星はかなりの資源があったね」
マーグはそれを調べていたのである。
「それを利用したいんだ」
「わかりました。しかし」
ここでロゼは一つ気になることがあった。
「火星にはバームの者達がいますが」
「彼等が」
「はい。それはどうされますか」
「どうするつもりもないよ」
マーグはロゼにこう答えた。
「彼等を根絶やしにするわけにもいかないからね」
「では支配下に置かれるのですね」
「それでいいと思う」
マーグは最悪それで止めるつもりであった。
「それでどうかな」
「わかりました。それではそのように」
ロゼはマーグのその言葉に頷いた。
「進めていきましょう」
「それでは戦力が整い次第」
「うん」
ロゼのその言葉に頷く。
「そうしよう」
「はい。それでは」
彼等は次の作戦のことも考えていた。それは既にはじまっていた。ネビーイームにおいても何かが動こうとしていた。だがそれはまだ全て見えてはいなかった。
ロンド=ベルは一旦ゼダンに戻ったがそこからすぐにまた出撃することになった。今度はサイド2近辺であった。
「何か俺達の出番ってな」
サンシローが大空魔竜の中で言う。
「ひっきりなしだよな」
「今更何を言っているんだ」
それにリーが突っ込みを入れる。
「それはわかっている筈だぞ」
「そうですよ」
ブンタもそれに続く。
「僕達がやらないと駄目ですよ」
「全力でやれってことかよ、常に」
ヤマガタケは少しぼやく感じであった。
「しかも常に全力で」
「そういうことだな」
ピートがヤマガタケのその言葉を肯定してみせた。
「わかっているのなら話が早い」
「それはそれで大変だけれどな」
しかしサコンは真面目な顔で話している。
「だが皆の為にやると思うとな」
「気合が入るってやつか」
サンシローは言う。
「皆の為にだとな」
「その通りだ諸君」
大文字がその一同に告げた。
「では皆で頼むぞ」
「それで博士」
ミドリがその大文字に尋ねてきた。
「うむ、何かな」
「今度は何が出て来たのでしょうか」
「それがはっきりしないのだ」
それに対する大文字の返答は要領を得ないものであった。
「はっきりしない!?」
「どういうことですか、それは」
皆それには首を傾げるだけであった。
「前にバルマーとの戦いで見た植物を思わせるマシンが目撃されたのだが」
「といいますと」
ミドリはそれを聞いて考える顔になった。
「確か。あの赤い禍々しいマシンですね」
「おそらくはな。前にキョウスケ君達と戦ったあれだ」
「あれですか」
キョウスケがそれを聞いて話に入ってきた。今彼とエクセレンは大空魔竜の中にいて話をしていたのだ。そうして今言うのであった。
「あの連中が出て来たんですか」
「確かあのマシンに乗っているのは少女だったわね」
「そうらしいわよん」
エクセレンがミドリに答える。
「何か私に似てる感じの」
「エクセレンにか」
サンシローはそれを聞いて微妙な顔になった。
「違うような気もするがな」
「いや、それが違う」
それはキョウスケが否定した。
「違うようで気配がかなり似ている」
「そうなのか」
「そうなのよ。実はね」
エクセレンもそれをサンシローに言うのだった。
「意外でしょ」
「意外どころじゃないな」
サコンがそれに応える。
「そこにも何かあるかもな」
「生き別れの姉妹はなしよ」
エクセレンは笑ってそのサコンに突っ込みを入れる。
「私そういうのはいないから」
「声が似ているだけじゃないのか?」
リーはよくあることを出してきた。
「案外そうじゃないのか」
「その可能性もありますね」
ブンタはリーの言葉に頷いた。
「ロンド=ベルには多いですし」
「敵味方でもそうだしな」
ヤマガタケもそれは知っている。
「だったらそれだけじゃねえのかな」
「そういえば前にもあったな」
ピートがふと気付いた。
「確かティターンズのサラ=ザビアロフだったな」
「あの娘は大好きよ」
エクセレンはにこりと笑って今のピートの言葉に応える。
「奇麗だし性格も可愛くてしっかりしているし」
「本当に声が似ているのが不思議なのよね」
ミドリも言えた義理ではないが言わずにはいられなかった。
「サンシロー君は大体わかるけれど」
「俺はまた特別だろうな」
自覚はあった。
「声に関しては」
「まあそれは置いておいて」
エクセレンはまずはそれは放置することにした。
「顔も似ているわよん」
「顔もか」
「それもそっくりだったな」
キョウスケもそれを認める。
「やはり何かあるか」
「それも調べておくか」
サコンはここまで聞いて呟いた。
「色々とな」
「何かわかるか」
「それもまだわからない」
サコンでもそれは保障できなかった。
「しかしだ。調べないとわかるものもわからない」
「そうだな」
大文字がサコンの言葉に頷いた。
「調べない限りはな」
「それもそうだな。それでは」
「はい、調べておきます」
サコンも大文字のその言葉に応えた。
「これから」
「とりあえずはまずは戦闘だな」
サンシローは腕を組んで述べる。
「敵を退けてそのデータを手に入れてな」
「そうですね。まずはそれですね」
ミドリもそれに同意する。
「それじゃあこれからサイド2に」
「わかった」
「まずは何はともあれ戦いね」
キョウスケとエクセレンが応える。
「その植物の相手と」
「そうするしかないか」
まずはサイド2に到着するのであった。そうして到着するともうその植物の敵がコロニー近辺に展開しているのであった。
「数は」
「一千もいないか」
ロンド=ベルの面々はそれを見て言い合う。
「数自体はな」
「大したことはないか」
「しかしだ」
感じる者は感じていた。その場の気配に。
「この禍々しい気配」
「これはやっぱり」
ドモンとタケルが言う。
「来ていますね」
「そうだね」
ジョルジュの言葉にサイシーが応える。
「へっ、これだけ気配をプンプンさせていりゃな」
「来ているのがわかる」
ヂボデーもアルゴも同じものを感じている。
「出て来い!」
ドモンが叫んだ。
「もういるのはわかっている!」
「あら」
それに応えて少女の声がした。
「もう姿を出そうと思っていたのですけれど」
「やっぱりいたのね」
ラトゥーニはそのマシンを見て呟いた。
「ここに」
「皆さん」
あの赤い禍々しいマシンであった。そのマシンに乗っている青髪の少女が言うのだった。
「お久し振りです」
「アルフィミィだったな」
キョウスケが彼女に問うた。
「どうしてここにいる」
「私の目的の為ですの」
「目的の為!?」
「それは一体」
「まだお話するつもりはありませんの」
しかし彼女はキョウスケの言葉には答えないのであった。
「申し訳ありませんの」
「申し訳ないはいいけれど」
ガーネットははじめて見る彼女とそのマシンを見て言う。
「この敵。今までの敵とは明らかに違うわね」
「注意して下さいね」
彼女にアラドが言ってきた。
「結構鬱陶しいですから」
「鬱陶しいのかよ」
「はい」
ジャーダにゼオラが答えた。
「触手で攻撃してきますので」
「何か随分嫌らしいわね」
それを聞いてラーダが顔を顰めさせる。
「どうしたものかしら」
「へっ、そんなのは決まってるさ」
その中でカチーナは相変わらずであった。
「何処のどいつでも敵なら叩き潰す。それだけさ」
「それしかないか」
「そうよ」
タスクにカーラが言う。
「それなら話が早いわね」
「まあな」
タスクも彼女の言葉に頷く。
「そう考えれば簡単か」
「あんたはいつも難しく考え過ぎなのよ」
カーラは笑ってそのタスクに言う。
「何でも軽く考えればいいのよ」
「御前は随分と軽く考え過ぎだ」
「そうかしら」
それにはあえて惚けるのであった。
「皆と同じよ」
「じゃあロンド=ベルは楽天的なのか?」
「随分そうだと思うけれど」
「そうか。しかし」
「何?」
またタスクに対して問う。
「だからここまで戦ってこられたのかもな」
「そうかもね。洒落にならない戦争ばっかりだし、ここは」
「というか滅茶苦茶じゃない」
カーラもそれはわかっていた。
「数も何もかもが」
「相手もな。わからない奴ばかりだ」
「今度の敵もね。アインストっていうけれど」
「何者だ?」
タスクはそこをいぶかしむ。
「正体が全くわかっていないぞ」
「そこよ。あのアルフィミリィにしろ」
「何かあるな、ここでも」
「敵がまた増えたのは確かね」
これだけははっきりとわかるのであった。
「それだけは言えるわ」
「とりあえず今は戦うしかないか」
「そういうこと。それじゃあ行くわよ」
「ああ」
カーラの言葉に頷いた。
「それが一番だな。じゃあカーラ」
「ええ」
今度はカーラがタスクの言葉に頷いた。
「攻めるぞ。いいな」
「了解。それじゃあ攻めるぞ」
彼等を先陣としてロンド=ベルは動きをはじめた。アインストの軍勢はその触手を放つがそれは彼等によってかわされ反撃を受ける。まずは幸先のいいスタートであった。
「何だこいつ等」
カチーナは敵を一機ずつ潰しながら言った。
「あまり大したことねえぞ」
「そうですね」
それにラッセルが頷く。
「数は多いですが」
「物力戦でくる相手ってことか?」
「そうだな」
それにキョウスケが応える。
「そうした傾向はあるな」
「そうか、やっぱりな」
カチーナはそれを聞いて納得した顔になった。
「道理で一機一機は大したことはねえぜ」
「全軍に告ぐ」
緒戦でリーはすぐに決断を下してきた。
「戦艦を中心として周囲を警戒しつつ防衛戦にかかれ」
「防衛ですか」
「そうだ」
イーグルの問いにも答える。
「この様子では何時敵の増援が出るかわからないからな」
「そうですね」
そしてイーグルもそれに賛成するのであった。
「そんな感じはしますね」
「あの赤いマシンに乗っている少女も気になりますし
「あの女」
アスカはそのアルフィミリィを見て呟く。
「気をつけるのじゃ。並大抵の気配ではない」
「ああ、そやな」
タータもアスカと同じものを感じていた。
「邪悪っていうかな」
「まあ、タータったら」
タトラはタータの言葉に突っ込みを入れる。
「邪悪なんて過激な言葉を使って」
「過激か?」
「普通だよね」
ジェオとザズにとっては別にそうでもないのであった。
「それ位はな」
「ロンド=ベルじゃ普通だし」
「何はともあれですな」
「はい」
シャンアンの言葉にサンユンが応える。
「迂闊に動いてはなりませんな」
「そうです」
二人は言う。
「だからだ。守りに徹するのだ」
リーはここでも防衛戦を主張する。
「さもないと取り返しのつかないことになるぞ」
「だからかよ。守りに徹しろっていうのは」
「わかったな。もっとも貴様はそれでは満足しないだろうがな」
リーはあえてカチーナを挑発してみせた。
「もっとも敵は次から次に出て来る。それで満足しろ」
「へっ、どうだか」
しかし言っている側から。
「どうぞ」
アルフィミリィが言葉を出すとまた敵が出て来た。しかもロンド=ベルの周りから。
「そのままやって下さい」
「ふむ、予想通りだな」
リーは自分の読みが当たって満足していた。
「これでいい。まずは守れ」
「そのままずっとかよ」
「そうだ、ずっとだ」
またカチーナを挑発するように言ってみせる。
「こちらに流れが向かうまでな」
「流れは今一つわからないな」
キョウスケは言う。
「あの女。何を考えている」
「ううんとね」
何故かここでエクセレンが応える。
「多分ここでは様子見よん」
「様子見だと!?」
「うん、彼女がそう言っているわ」
「そうか」
「そういうこと」
キョウスケはエクセレンの言葉に頷く。しかしここで問題があった。
「ちょっと待って」
「今凄いこと言ってない?」
フレイとメイリンがそれに気付いた。
「?どうしたの?」
「どうしたのって今エクセレンさん」
「あの敵の言っていることがわかったの!?」
二人が言うのはそこであった。
「それ凄く不思議なんだけれど」
「どういうわけですか、それって」
「何となくなのよ」
エクセレンの返答はこうであった。
「それはね」
「何となくねえ」
「どういうことかしら」
「他人のような気がしないのよ」
エクセレンはまた言う。
「だからなのよ。自分でもわからないけれど」
「自分ではわからないって」
「これって」
二人は余計に話がわからなくなった。
「どういうことかしら」
「さらに謎は深まったような」
「それにあれだよ」
ヒメも言ってきた。
「エクセレンさんとあの女の子そっくりだし」
「そうよね」
「それもね」
二人もそれに頷く。
「そこにも謎があるような」
「色々とあるかも」
「気配も似ているよ」
ヒメはそこも指摘する。
「どういうわけかわからないけれど」
「それだからよん。わかるの」
エクセレンも言う。
「このまま守っていて暫くしたら」
「暫くしたら?」
「来るわよん」
「よくわかりました」
アルフィミリィの方からそれを肯定してきた。
「そろそろ参ります」
「来るか」
「それなら」
「あっ、待って」
エクセレンはここで皆を止めた。
「私が相手をしてあげるから」
「エクセレンさんが!?」
「どうしてまた」
「何か私が相手をしないといけないから」
何故かエクセレンはこう言うのだった。
「それでいいわよね」
「どんどん話が訳わからなくなってない?」
「そうよね」
フレイの言葉に今度はルナマリアが応えた。
「けれどあの敵に何かあるのは事実だし」
「ここは見てみた方がいいわね」
「そういうことよん。だから任せて」
エクセレンはにこりと笑って皆に告げた。
「お姉さんにね」
「じゃあまずは守り抜いて」
「待つとするか」
「あたしの性には合わないけれどね」
カチーナにしてみればそうであった。
「まあそれも仕方ないさ」
「貴様は少し血の気を抜け」
リーが彼女に言ってきた。
「単細胞は早死にするぞ」
「何、おい!」
流石に今の言葉には速攻で切れた。
「単細胞って何だ!」
「いや、今のは」
「凄い当たっているよね」
「シン、キラ!」
言わなくていいことをあえて言った二人に言い返す。
「後で、いや今ここで成仏させてやるぞ!」
「今のは本当だよな」
「だからシン」
見かねたアスランが彼を止めようとする。
「いつもそうして言うから大変なことになるんだぞ」
「俺は嘘は言わないんだよ」
「あっ、馬鹿」
「ほお、いい度胸だ」
今の言葉で完全にカチーナが切れた。
「じゃあ死にな、今ここでな!」
「中尉も止めて下さい!」
「戦闘中ですよ!」
ラッセルだけでなくリョウトとリオも彼女を止めてきた。
「ただでさえ大変なのに」
「そうして言い争っていたら」
「敵、また援軍です!」
ここでレフィーナの声が響く。
「全軍警戒にあたって下さい!」
「ちっ、命拾いしたな」
カチーナの今の言葉は当然シンに向けたものである。
「話は後だ。まずはこいつ等だ」
「何だ。助かったじゃないか」
「そういう問題じゃない」
アスランは呆れた顔でシンに突っ込みを入れる。
「全く。次から次に言わなくていいことを」
「それにあんた何度も残骸になってるじゃない」
メイリンも呆れた顔でアスランに続く。
「それでよくもまあ」
「ちぇっ、皆最近厳しいな」
「自業自得よ」
ルナマリアはまた言う。
「全く、これでザフトの看板エースなんだから」
「御前が一番白服に近いんだぞ」
「そうなのか」
実はシンには自覚がない。
「そんなの興味なかったからな、別に」
「そういえば出世とかは興味ないのね、あんた」
「俺は戦うだけだ」
そうしたところは無欲なシンであった。
「マユや皆を守る為にな」
「そうなの」
「ああ、しかしこのアインストは」
「気をつけろ」
アスランはシンとルナマリアに告げる。
「数だけじゃない。俺達の動きを読んでいる」
「読んでいるのね」
「おそらくな。ただの植物じゃない」
「そうですね」
それにレイが頷いてきた。
「この動きは」
「それでどうするんだ?」
「動きを読んで攻めてくれ」
アスランはシンに答えた。
「他の敵と同じようにな」
「何か植物っていってもやることは変わらないのね」
「ならそれでいい」
レイはそれで納得していた。
「やることをやるだけだ」
「レイはそれでいいのね」
「俺もだ」
「あんたはもうわかっているから」
ルナマリアはもうシンには聞いていなかった。
「どうせ突っ込んで派手に暴れるだけでしょ」
「それ以外に何があるんだ」
やはりシンはシンであった。
「だからよ。突っ込んで派手にやるだけじゃない」
「それが俺のやり方だからな」
シンは相変わらずの様子であった。
「違うか?」
「だからよ。全く」
流石にルナマリアも呆れていた。
「どうしたものやら」
「そういう御前はどうなんだ」
「私は接近戦専門よ」
ルナマリアもルナマリアであった。
「だからよ。突っ込むのよ」
「結局俺と変わらないだろ、それじゃあ」
「言うわね」
シンの言葉に顔を顰めさせる。
「わかったら攻めるの、いいわね」
「じゃあ来い」
シンはそれをルナマリアに告げる。
「やってやるぜ」
「サポートは俺がする」
ハイネが言ってきた。
「それでいいな」
「ああ、そっちは頼む」
シンが彼に応える。
「そっちもな」
「了解」
ハイネはそれに応えてセイバーを変形させる。そうしてアインストの周りを飛ぶ。
「俺が後ろを守る。それでいいな」
「ドラグーンでなのね」
ルナマリアがレイに問う。
「そうだ、それでいいな」
「いつも通りだしな」
シンは彼にも応えた。
「わかった。早速仕掛ける」
レイはドラグーンを放つ。そうしてアインストを蹴散らした。
「次は俺だ!」
「攻めるわよ!」
シンとルナマリアも突っ込む。アインストの数に対してその能力で攻める。シンは腕からのビームで敵を次々と葬り去っていた。それに続いてロンド=ベルの他の面々も暴れる。敵は多いがそれでも次第に形成を自分達に有利にさせていた。
「もうすぐですの」
しかしアルフィミリィはそれを見ても表情を変えない。にこやかに笑っているだけであった。
「私がここに来るのは」
既にロンド=ベルはアインストの陣を次々と破りそうしてアルフィミリィに迫っていた。その中にはエクセレンもいた。その横にはキョウスケがいる。
「エクセレン、もうすぐだ」
キョウスケはその中でエクセレンに声をかける。
「正面の敵は多い。だが」
「数で戸惑っていたらやっていられないわよね」
「そうだ。だから攻めるぞ」
「何か正面から強引にっていうのはどうも」
「どうも?どうした」
キョウスケはエクセレンに問うた。
「何かあるのか」
「何かって?」
しかしエクセレンもそれに問い返すのだった。
「ないわよん、何も」
「そうなのか」
「ただ私の趣味なだけよん」
「趣味ってエクセレンさん」
彼等と行動を共にするクスハがエクセレンに言ってきた。
「それってかなり」
「大人の女はそれを受け止めるものよ」
エクセレンはそれでもいつもの調子であった。
「クスハちゃんも大人になればわかるわ」
「大人って」
「ブリット君に聞けばわかるかも」
「それは」
言葉の意味がわかっているのでクスハも顔を赤くさせた。
「その、つまり」
「ちょっとエクセレンさん」
ブリットもクスハに言ってきた。やはり彼も顔を赤くさせている。
「あの、あまり」
「まあまあ。話は穏やかによ」
エクセレンに軽くあしらわれるブリットであった。
「そこはしっかりね」
「はあ」
「とにかく正面から御願いよん」
「戦いですよね」
クスハは一応それを確認する。今までの言葉のやり取りで不安になっていたのだ。
「それって」
「そうよ。安心してね」
「わかりました。それなら」
「クスハ、虎龍王に変形しよう」
ブリットはこう提案してきた。
「接近戦ならそれだ」
「わかったわ、ブリット君」
クスハもそれを受けて頷く。
「それじゃあそれで」
「よし、これで!」
虎龍王になりその両手に刀を持っていた。それで突っ込む。
「突っ込むぞ!」
「わかったわ!」
彼等は突っ込む。そうして周りの敵を両断していく。そうしてアインストの最後の守りを粉砕したのであった。今であった。
「よし、今だ!」
「わおわおーーーーん!」
キョウスケとエクセレンはそれを見て突っ込む。目の前にはアルフィミリィがいる。
「さて、貴女は誰なのかしら」
エクセレンは彼女に問う。
「よかったら教えてね」
「もうわかっていると思います」
これがアルフィミリィの言葉であった。
「貴女は」
「わかってるって言われても」
エクセレンは今のアルフィミリィの言葉に首を傾げる。
「何もわかっていないのだけれど」
「そうですか」
それを聞いても別に表情を変えないアルフィミリィであった。
「御自身ではわかっていないだけです」
「何か余計にわからないのだけれど」
エクセレンもさらにわからなくなった。
「何が何なのか」
「気付かれるだけです」
しかしアルフィミリィの言葉は変わらない。
「私が言うのはそれだけです」
「ううん、さっぱりわからないわね」
それを聞いてもエクセレンは首を傾げるばかりであった。
「何が何なのか」
「それはそうとして」
ここでガーネットはふと気付いた。
「何なのかしらね、この雰囲気」
「雰囲気っていうかよ、あの二人」
「そうね」
ガーネットはジャーダの言葉に頷いた。
「やっぱり似ているなんてものじゃないわよね」
「そっくりだな」
「そうね」
二人もそれを感じているのであった。
「この感じ。全然違う筈なのに」
「エクセレン、気をつけろよ」
ジャーダはエクセレンに声をかけた。
「そいつは御前にやけに関心があるからな」
「何か女の子に愛されてもね」
「愛されるっていうかね、これって」
「かなり違うと思うぜ」
二人はこうエクセレンに突っ込みを入れる。その間も戦っている。
「粘着ってやつかしら」
「ストーカーはどうするんだよ」
「男だったら即刻撃退よん」
意外ときついエクセレンであった。
「女の子だったらどうしたらいいかしら」
「倒す」
それに対するキョウスケの問いは実にキョウスケらしいものであった。
「それだけだ」
「わかったわ。それじゃあ悪いけれど」
エクセレンはアルフィミリィのマシンに照準を合わせながら応える。
「撃墜させてもらうから」
「来ますのね」
「ストーカーって放っていたら危ないから」
いつもの調子で照準を合わせながら言う。
「悪く思わないでね」
「わかりましたですの」
「わかったら帰ってもらえるかしら」
「今日はこれで失礼しますの」
「何っ!?」
それを聞いたキョウスケが声をあげた。
「もう帰るというのか」
「私の今の仕事は終わりましたの」
アルフィミリィはこう答えた。
「だからですの」
「ストーカーは辞めたの?」
「私はストーカーではありませんの」
少なくとも彼女にそのつもりはない。当然である。
「それはわかって下さいですの」
「自覚ないのは駄目よ」
「ですからエクセレンさん」
ブリットは相変わらずの調子のエクセレンに突っ込みを入れる。
「向こうは別にそんなことじゃなくて」
「狙っているんですよ、別の意味で」
またクスハも言う。
「それも何かありますよ」
「その何かの為に」
アルフィミリィは二人の言葉に応える形でまた言ってきた。
「またすぐに会いますですの」
「あら、帰っちゃったのね」
アルフィミリィは姿を消した。それと共にアインストも。
「あっさりしているのね」
「あっさりねえ」
「少し違うような」
皆エクセレンのその言葉には賛成しかねていた。
「とにかくですね」
「何?」
エクセレンは今度はカーラの言葉に応える。
「まだ何かありますよ」
「何かって?」
「バルマーが仕掛けてきましたから」
彼等はまだここではアルフィミリィがバルマーの者だと思っていた。
「連中も色々あるようですけれどね」
「早めにホワイトスターを陥落させるべきか」
ダイテツはカーラの言葉を聞いて考える目になった。
「どうするべきか」
「一応攻撃を仕掛けるべきか」
「そうですね」
テツヤもそれに頷く。
「今のうちに勢力を削いでおきますか」
「そうだな。では決まりか」
ダイテツは言う。
「一旦ゼダンに戻りそれからホワイトスターに向かう」
「はい」
「それでは」
方針が決定した。一旦はゼダンに戻りネビーイームに向かうことになったのであった。
こうしてロンド=ベルは次の作戦に取り掛かることになった。しかしここで一つどうしても引っ掛かるものがあったのだった。
「前から思っていたんだが」
「どうしたんだ?」
ジョナサンにシラーが問うた。
「あの敵は前にも見ているな」
「アインストだな」
「ああ。オルファンにも出て来たことがあったしな」
彼等もアインストと戦ったことがあるのだ。
「その時からバルマーとは違うものを感じるな」
「そうね」
ジョナサンのその言葉にカナンが頷く。
「確かに全然違うわよね」
「そうだな、それだ」
ジョナサンもそれに応える。
「バルマーは機械的なのにあの連中は」
「植物そのものだ。全然系列が違う」
「どっかで動員した戦力じゃないのか?」
ジョナサンにリョーコが突っ込みを入れた。
「バルマーだったらいつもだろ」
「それもそうだけれどな」
ジョナサンもそれは知っている。
「しかしそれにしてはな」
「何かあるんですか、ジョナサンさん的には」
「引っ掛かるんだ、どうしても」
ヒカルにも答える。
「あれだろ?ポセイダルにしろキャンベルにしろボアザンにしろ」
かつてのバルマーの属国や眷属達である。
「機械を使っているというのに何故あの連中だけが」
「偶然の一致じゃないのか?」
ダイゴウジが問う。
「ただそうした技術の奴等を手下にしているだけでな」
「それがバルマー」
イズミもぽつりと言う。
「気にすることはないわ」
「そうかね。俺もジョナサンの旦那の言葉が引っ掛かってきたぜ」
サブロウタはジョナサンに賛成してきた。
「どうにもこうにもな」
「何かあるのか」
「どうなんでしょう」
リョーコとヒカルも言う。
「おいカント」
ナッキィはカントに問うた。
「御前は何かわかるか?」
「何かと言われましても」
カントも首を捻るばかりであった。
「僕にも他のバルマーのものとは違うという感覚しかないです」
「結局何もかもわかってはいないということだな」
クインシィの言葉は的を得ていた。
「アインストに対しても」
「それにアインストって一人だけなのでしょうか」
ジュンはふとそれに気付いた。
「彼女だけですよね、人は」
「あっ、そういえば」
「そうよね」
ヒギンズとハルカが今のジュンの言葉に頷いた。
「一人しかいないな」
「かなり寂しい感じだったけれど」
「他は植物だけですよね」
「そうだな」
メグミの言葉にナンガが応えた。
「あの触手の」
「他には幹部格さえいない」
彼等もそれに気付いたのだった。
「彼女一人だけ」
「やはり何かありそうですね」
ラッセとハーリーも言い合う。
「そこにも何かあるようだな」
「思えば不思議です」
「それに。そういえばだ」
ジョナサンはここでも気付いたことがあった。
「タケルの兄貴だったな」
「マーグさんだよね」
ヒメがそれに応える。
「あの人が何かあるの?」
「あの少女を上手く扱ってはいないな」
「そういえば持て余しているか」
勇はこう表現した。
「少なくとも普通に使っている感じじゃないな」
「色々とありそうだ」
それだけは感じる。しかしそれだけではなかった。彼等はまだ謎があると見ていた。しかしそれが何かまではまだわかっていなかった。
「とりあえず次の作戦だ」
ナガレが一同に告げた。
「ホワイトスターに向かうぞ」
「そうですね。まずはそれで」
「その時にアインストも出るでしょうし」
彼等はこう呼んでいた。
「そうしますか」
「それではまた次の作戦で」
頭を切り替えた。そうして次の戦いに向かうのであった。ホワイトスターでの戦いに。

第三十三話完

2007・12・28 
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