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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第三十二話 グレートゼオライマー

               第三十二話 グレートゼオライマー
慌ただしく食事を採るロンド=ベル。皆かなり焦っていた。
「早く食え、早く」
「わかってますって」
カイがスレッガーの言葉に応えていた。
「だから急いでますよ」
「だったらいいがな」
スレッガーが固形スープを湯に溶かしてそれで乾パンを流し込んでいた。そうしてソーセージを慌ただしく胃の中に放り込んでいた。かなり忙しい。
「とにかくだ。早く食って」
「戦いですね」
「もうすぐ次が来るからな」
「やれやれですね」
カイは思わずぼやいた。
「一年戦争の頃を思い出しますよ」
「けれどあの時に比べたら静かだよ」
ハヤトはそう考えていた。
「それに食事だって」
「そうだな」
それにリュウが頷く。
「もっと冷たくてまずいものだったな」
「今は暖かいソーセージも柔らかいパンも食べられますしね」
「そうだな。それだけ有り難いさ」
「けれどスレッガーさんは乾パンですね」
「これが好きなんだよ」
笑ってハヤトに答える。
「昔からな」
「そうなんですか」
「そういえばカガリも出撃するんですね」
「そうらしいな」
リュウは今度はセイラに答えた。
「元気な娘だ」
「何かロンド=ベルってあんなお姫様ばかりだな」
スレッガーはぼやく。
「おしとやかなお姫様は・・・・・・いるけれどな」
「ですね」
ハヤトもそれが誰かはわかった。
「モニカ王女ですか」
「何かな。どうにも」
スレッガーはついつい首を捻る。
「あの喋り方がな」
「慣れるとそうでもないですけれどね」
セイラは言う。
「そうか?」
「それはちょっとな」
リュウもカイもそれには賛同しねかねていた。
「あまり思えないんだけれどな」
「ですよね」
そしてカイはリュウの言葉に頷く。
「どうにもこうにも」
「あれだけは」
「とにかく急いで戦いに向かわないとな」
スレッガーは干し林檎を食べ終えて皆に言う。
「敵は待ってくれないしな」
「わかってますよ」
「それじゃあ」
それにカイとハヤトが頷いた。
「行きますか」
「戦いに」
皆出撃する。ロンド=ベルの面々は次々と出撃し戦闘態勢に戻る。だが一機だけその姿が見えなくなっていたのだった。
「あれ?」
「マサトは何処なんだ?」
甲児と宙が最初にそれに気付いた。
「前の戦いにもいたよな」
「ゼオライマーが撃墜されたのか?」
「いえ、違います」
それにエレが答える。
「少し準備中でして」
「準備中!?」
「はい」
そう一同に答える。
「そうです。ですからまだ」
「出撃できねえっていうんだな」
「そうです。暫しお待ちを」
また一同に対して言うエレであった。
「戦闘には間に合わせるとのことですので」
「そうか。正直ゼオライマーがいるのといないのとじゃ全然違うからな」
甲児はそれを聞いて呟く。
「できるだけ早いところ戻って来て欲しいけれどな」
「まあせめて甲児君がいるだけでも助かるわね」
さやかは甲児に対して言ってきた。
「そのマジンカイザーとね」
「頼りになるってか?」
「ええ、なるわ」
にこりと笑って告げる。
「だから今度も頼むわよ」
「わかってるぜ。じゃあやってやるぜ」
異常に単純にさやかの言葉に乗る甲児であった。
「今度の戦いもよ」
「何か甲児君って」
美輪はそんな甲児を見てさやかに囁く。
「一番ノリがいいのね」
「だから頼りになるのよ」
そういう意味であった。
「すぐ乗り気になってくれるから」
「そうね」
美輪もそれに頷く。
「確かに強いし」
「マジンカイザーもあれなのよ」
「あれって?」
「パイロットの能力が大きく左右するのよ」
マジンガーチームのマシンの特徴である。
「グレートマジンガーやグレンダイザーと同じでね」
「そうみたいね」
それは美輪も感じていた。
「だから甲児君が乗ると一番いいのよ」
「そうなのね」
「しかも乗り気になると余計にね」
こうも言うさやかであった。
「強くなるのよ」
「タフだしね」
「だから余計に頼りになるのよ」
マジンカイザーを見ながら言うのだった。
「戦いにはね」
「宙さんも戦いになるとね」
美輪も宙について述べる。
「凄く頼りになるのよね」
「宙さんは普段からそうじゃない」
さやかは宙についてはこう評価していた。
「そうじゃないの?」
「まあそうだけれど」
「甲児君なんて普段は」
そして甲児について言う。
「滅茶苦茶じゃない」
「そうね」
それに美輪も頷く。
「かなり酷いわよね」
「酷いっていうか。食べるのは底なしだし」
さっきもかなり食べていたりする。
「やることなすこと破天荒だし」
「大変ね。まるで弟ね」
「ええ、手間のかかる弟よ」
実は甲児の方が年下なのだ。
「本当にね」
「じゃあその弟をフォローするのがさやかの仕事ね」
「そういうこと。それじゃあ」
さやかはその言葉に頷いた。そうして。
「行くわよ」
「ええ、お互いね」
二人はそれぞれ鋼鉄ジークとマジンカイザーの後ろについた。そうして戦いに向かう。戦いは今にも迫ろうとしている。遂に敵が姿を現わしたのであった。
「敵の数三千三百」
キサカが報告する。
「こちらに向かっています」
「三千ちょっとなんだね」
「はい」
ユウナの問いにも答える。
「数としては妥当でしょうか」
「もっと出て来るかも知れないね」
しかしユウナはここでふと呟いた。
「何かそんな気がするんだけれどね」
「勘ですか」
「まあそんなところだね。僕はそんなに勘が動くタイプじゃないけれどね」
「そうですね」
しかもキサカはそれに頷いた。
「ユウナ様はどちらかというと」
「それはどっちかっていうとカガリだけれど」
「既に出撃されています」
トダカが言ってきた。
「スカイグラスパーで」
「そうか。ストライクルージュと違って無理はできないんだけれどね」
「それはそうですか」
トダカの顔が苦くなる。
「それを気にされる方でもありませんので」
「やれやれだね」
ユウナはそれを聞いて困った顔になる。
「どうしたものだろうね、本当に」
「まあいいではないですか」
しかしここでアズラエルがユウナを宥める。
「王女様自ら前線に立つのはここでは普通ですしね」
「それはそうですけれどね」
確かにロンド=ベルではそれが普通であった。
「しかしそれでも」
「心配無用!」
ここでモニターにカガリが出る。パイロットスーツを着ている。
「私は絶対に死なない。いいな」
「つまり絶対に何があっても出撃するんだね」
「私はその方が性に合っている」
そうユウナに答える。
「だからだ。いいな」
「わかったよ。それじゃあとにかく気をつけるだけ気をつけてね」
「わかっている、安心しろ」
「どうだか」
これにはユウナは素直に頷くことができなかった。
「昔からそう言い続けているけれど。木から落ちたりとか鮫に襲われたりとかばかりだったから」
「よく今まで生きていましたね」
アズラエルがそれを聞いて呟く。
「ライオンロボ君みたいな人生ですねえ」
「あんたに言われたくはないぞ」
カガリは今度はアズラエルに突っ込みを入れる。
「あんたも壮絶な人生らしいじゃないか」
「BF団に命を狙われただけですよ」
しれっととんでもないことを口にする。
「激動の河原崎でしたっけ」
「あいつか」
カガリもその名は残念なことに知っていた。
「よく生きていたな」
「まあ運よくですね」
アズラエルはしれっとした様子で答える。
「助かっていますよ」
「あんた他にもあれだったな」
カガリはここで己の記憶を辿る。
「暮れなずむ幽鬼に工場を襲撃されていたな」
「ライオンロボ君との出会いですね」
「何だかんだで色々あったんだな」
「ですが生きていますので」
それで死ぬような男ではないのであった。
「御安心を」
「そうなのか。とりあえずだ」
カガリは言う。
「目の前にBF団が来ても私は戦う。いいな」
「出て来なくていいよ、あの人達は」
ユウナがすかさず突っ込みを入れる。
「一人でオーブの一割破壊してくれたんだから」
「そうだったな」
「あの人達が出て来なくてほっとしているんだ」
ユウナは心の底からそれを喜んでいた。
「死んだかどうかはわからないけれどね」
「死んだのでは?流石に」
「どうだか」
キサカにも首を傾げて答える。
「ふじみ野可能性もあるじゃない」
「確かにそうですが」
実際に不死身と公表されている人間がいるのがBF団なのだ。
「それを考えるとわからないよ」
「嫌な話ですな」
「とりあえず今目の前にいるのが普通の人間で何よりだよ」
インスペクターを前にしてこうも言う。
「じゃあ全軍攻撃」
ユウナはそのうえで命じる。
「すぐに敵を倒すよ。それでいいね」
「了解」
「それでは」
皆それに頷く。そうしてインスペクターとの戦いに入るのであった。
インスペクターもそのまま前に突っ込む。両軍は正面から衝突する。まずは威勢よく双方の攻撃の応酬が行われるのであった。
だがインスペクターの攻撃は全てロンド=ベルに見切られている。的確にかわされ反撃で撃墜されるインスペクターのマシンが目立っていた。
「マシンがゲストのものと同じなら」
「さっきと戦い方は同じね」
シーブックとセシリーがそれぞれのビームライフルで敵を撃ち抜きながら言う。
「それなら数は大変だけれど」
「落ち着いて対処すれば問題はないわ」
二人はそう言い合って攻撃を浴びせる。そうして敵を次々と減らしていくのであった。
インスペクターは数こそ優勢であったが勢いは大きく負けていた。それは上層部も苦々しいながらも認識していた。
「くっ、前にもまして手強いではないか!」
ヴィガジが叫んでいた。
「どういうことだ、これは!」
「まあ怒るな」
その彼にメキボスが言う。指揮を執っているのはこの二人であった。
「まだ戦いははじまったばかりだぜ」
「勢いこそが大事だ!」
ヴィガジはメキボスに対しても叫ぶ。
「このままでは負けるぞ!」
「だから怒るなって言ってるんだ」
それでもメキボスは落ち着いた声で彼に言う。
「それにこれは想定の範囲内だろ?」
「むう・・・・・・」
メキボスの言葉に少しずつ落ち着きを取り戻してきた。
「だったら慌てる必要はないだろう?」
「それはそうだが」
「全ては予定通りだ」
メキボスは言う。
「あの二人がここで出て来ればな」
「勝てるか」
「あのアクシズって基地だけじゃないぜ」
メキボスはそうヴィガジに言って笑う。
「今のところ俺達の最大の脅威であるあのロンド=ベルも」
「殲滅できるな」
「そうなればしめたものだ」
彼は言う。
「地球の技術も手に入れることができるしな」
「さらにな」
「そういうことだ。しかし」
「しかし。何だ?」
「上手くいけばの話だ」
ここで彼は少し慎重になってきた。
「あくまで上手くいけばだ。
「どうした、メキボス」
怪訝な顔になった同僚に対して問う。
「急に顔が変わったではないか」
「いや、地球人だが」
メキボスは彼等について言及する。
「どうもその強さは技術だけではないな」
「闘争本能も既に調査済だぞ」
ヴィガジはこう彼に答えた。
「既にな。だからそれは」
「馬鹿、違うよ」
メキボスはここで彼に言う。
「それだけじゃない。まだ何かあるな」
「何があるというのだ?地球人に」
「それはまだわからない」
彼はそこはまだ言えなかった。
「しかし。それがわからないと俺達は地球人には勝てないかもな」
「馬鹿なことを言う」
しかしヴィガジはそれを頭から否定した。
「地球人は戦闘機械だ。それだけだ」
「戦闘機械か」
「だから危険なのだ。違うか?」
「確かにな」
メキボスもヴィガジのその言葉には素直に頷く。
「戦いだけに特化した人種だ。だからこそ危険だったな」
「そうだ。だから俺達はここに来ているのだぞ」
そうメキボスに告げる。
「だからだ。地球人には戦う以外のものはない」
「ないか」
「それを取り上げ啓蒙する為に俺達はここにいる」
これはヴィガジだけの考えではない。メキボスも同じだ。
「わかったなら余計なことは考える必要はないぞ」
「そうか」
「そうだ。それでだ」
ヴィガジは話を変える。
「あの二人はまだか?」
「もうすぐだな」
メキボスはすぐにこう答えた。
「もうすぐだ。来たぞ」
「むっ!?」
ヴィガジはここで己のマシンのレーダーを見た。そこには。
「よし、いいタイミングだ。これで勝てるぞ」
「多分な」
しかしメキボスの顔は考えるもののままであった。
「これでな。普通ならな」
「普通に戦いは終わるものだ」
ヴィガジの考えは変わらない。
「このまま全軍で取り囲み一気に押し潰す。いいな」
「わかった。じゃあ俺達も行くぞ」
「うむ、当然だ」
「全軍総攻撃に移るぞ!」
今度はメキボスが指示を出した。
「包囲し完全に殲滅する。いいな!」
こうしてインスペクターはロンド=ベルに対して総攻撃に入った。アクシズの後方にインスペクターの新手が姿を現わしたのである。
「数三千!」
「やっぱり来たか」
ユウナはそれを聞いて言った。
「嫌な予感が当たったね」
「昔からそうですな」
トダカがユウナのその言葉に突っ込みを入れる。
「ユウナ様の嫌な予感は」
「それを最初に言ってくれませんか?」
それにアズラエルが突っ込みを入れる。
「今からでは遅いですよ」
「今思い出しましたので」
トダカの言葉はかなり素っ気無いものに聞こえるものであった。
「申し訳ありません」
「左様ですか」
「しかし。まずいですな」
キサカは戦局を見ていた。
「前からも敵はかなり来ていますし」
「後ろの敵に回せるマシンは僅かだね」
「はい」
こうユウナにも答える。
「このままではアクシズを攻められかねません」
「そうじゃなくても後ろからか。囲まれるね」
「どうされますか?」
ここでユウナに対して問う。
「包囲されるのは間違いありませんが」
「だからといって逃げるわけにはいきません」
ここでタリアがモニターに出て来た。
「今は」
「今はっていつもじゃないんですか!?」
横にいたアーサーがそれを聞いて青い顔で言う。
「また三千も出てきていますし」
「それ位の数は今まで相手にしてきているわよ」
脅えるアーサーに対してタリアは平気な顔であった。
「そうではなくて?」
「それはそうですけれど」
「囲まれても戦い抜けるわ」
タリアの言葉には絶対の自信もあった。
「だから安心して」
「そうなんですか」
「メール=シュトローム作戦でもそうだったじゃない」
タリアはティターンズとの最終決戦について言及してきた。
「あの時だって敵の数は半端じゃなかったわね」
「まあそれは」
アーサーもそれははっきりと覚えていた。
「そうですけれど」
「このアクシズもそう簡単には陥ちはしないわ」
タリアはアクシズについても言及した。
「違って?それは」
「じゃあここはあえて逃げないんですね」
「かえってアクシズを敵に渡しては後が大変よ」
「つまりここに留まって戦うんですか」
「ええ、いいわね」
「勇気がいりますねえ」
アーサーはあらためてこう呟く。
「今回は特に」
「何言ってるんですか、アーサーさん」
そのアーサーにメイリンが声をかける。
「艦長に仰ってるじゃないですか、こんなのはいつも普通ですよ」
「ロンド=ベルではだよね」
「そういうことです。折角白服になったんですし」
見ればメイリンも赤服になっていた。つまりそれぞれ佐官、尉官になっているということである。階級がかなりわかり易くなっていた。
「それじゃあ気合見せて下さい」
「わかったよ。それじゃあ」
「まずは前方の敵と決着をつけるわ」
タリアはすぐにそう判断を下した。
「それでいいですね」
「ええ、こちらもそれを考えていました」
ユウナがタリアに応える。
「そうして返す刀で」
「そういうことです。ただ」
しかしここで問題があった。
「後方から迫る部隊を足止めしておきたいのですが」
「それですか」
「誰かいますか?」
ユウナはそれをタリアに対して問う。
「精鋭部隊を送り込むべきですが」
「そうですね」
タリアはユウナの言葉を聞いて目を鋭くさせた。
「誰がいるのか」
「魔装機神辺りでしょうか」
「ですね」
タリアはユウナの言葉に応えた。
「それとヴァルシオーネと」
「それとあの三人ですね」
オルガ、クロト、シャニの三人である。
「彼等に行ってもらいましょう」
「そうですね。そして戦艦は」
「おう、面白そうだのう!」
ケルナグールが声をあげてきた。
「あれだけの敵を相手にするのか!」
「腕が鳴るわ!」
カットナルも名乗り出た。
「わしはそういう戦いも好きなのだ!」
「味方の盾となり果敢に戦う」
ブンドルも当然いる。
「それこそが全く以って」
「次の言葉は」
「やっぱり」
「美しい・・・・・・」
ユウナとタリアの言葉に応えて赤薔薇を掲げてみせる。そうして言うのであった。
「じゃあ御願いしますね」
「それで」
「何かあっさりとしているな」
ブンドルはユウナとタリアの対応に少し不満を見せた。
「私が名乗り出たというのに」
「いえ、そうじゃないですけれど」
「慣れましたから」
二人のあっさりとした対応の理由はそれであった。
「そうなのか。まあよい」
それでへこたれるブンドルではなかった。
「では私達が行こう」
「おうおうブンドルの旦那!」
三人の戦艦の周りについたオルガが彼に声をかけてきた。
「派手にいくからよ!」
「敵は残らず抹殺してやるよ!」
「死ね」
当然そこにはクロトとシャニもいる。
「ギッタンギッタンにしちゃうからね!」
「それはマイクの台詞だ」
シャニはクロトに突っ込みを入れながら後方に向かう。とりあえずは彼等で足止めをするつもりであった。しかしそれは適わなかった。
「死ねーーーーーーーっ・・・・・・ってんっ!?」
「何だあいつ!?」
「ミョッルニル!?」
三人は自分達に向かって来る鉄球を持ったマシンを見た。
「おい、クロト」
オルガは彼の姿を見てクロトに声をかける。
「あれは御前の知り合いか?」
「何でそうなるのさ」
「いや、鉄球持ってるからよ」
彼がそう判断した根拠はこれだけである。
「そうじゃないかって思ってな」
「あんな奴知らないよ」
「そうか」
「おい、御前」
シャニがそのマシンに対して問うた。
「何者なんだ」
「・・・・・・・・・」
だがそのマシンのパイロットは全く答えないのであった。
「答えろ」
「・・・・・・・・・」
再度問うたがやはり答えはしない。
「口がないのか。じゃあ死ね」
どちらにしろ殺すつもりだった。彼はニーズヘッグで両断にかかった。しかしそれはそのマシンの素早い動きの前にかわされてしまった。
「かわした?俺の攻撃を」
「おい、シャニ!」
「来るよ!」
ここで二人の声がした。彼はそれを受けてすぐに上に飛び退いた。これは彼の持ち前の超人的な反射神経がそうさせたのだ。
今まで彼がいたところを鉄球が通り過ぎる。あともう少しで危ないところであった。
「危なかった」
シャニはその攻撃を見て呟く。
「あいつ、只者じゃないな」
「三人共気をつけろ」
ここで劾が三人のところに来た。
「おっ、リーダー」
「来てくれたんだ」
「当たり前だ」
彼は今度は二人に言葉を返す。
「御前等だけじゃ暴走しかねないからな。それでだ」
「ああ」
「どうするの?」
「四人でかかるぞ」
彼はこう三人に告げた。
「リーダーもか」
「そうだ」
シャニの問いに答える。
「この敵は半端な相手じゃない。四機じゃないと無理だ」
「俺達一機ずつじゃ駄目だってのか」
「それっておかしくない?」
オルガとクロトが劾にこう言い返す。これまで簡単に多くの敵をそれぞれ一機ずつで叩き潰してきた彼等ならではの問いであった。
「いや、この敵は半端じゃない。今のシャニとのやり取りでわかるだろう」
「まあそれはな」
「嫌々だけれどね」
二人もそれは認めるしかなかった。
「だからだ。わかったら」
「四人でかよ」
「仕方ないね」
「うざいけれどな」
三人は苦い顔をしていたがそれに頷くのであった。そうして劾の周りでフォーメーションを組んだ。
「周りの敵には目もくれるな」
劾はまた指示を出す。
「この敵だけを相手にしろ、いいな」
「了解」
「わかったよ」
こうして四人でそのマシンに対する。四対一でやっとという有様であった。
四人が苦戦しているその横では魔装機神とヴァルシオーネが足のないマシンと対峙していた。このマシンも五体のマシンと互角に戦っていた。
「何なんだよ、こいつ!」
マサキが敵の巨大な手裏剣に似た攻撃をかわしながら叫ぶ。
「前見たけれどよ。かなり強いじゃねえかよ」
「当たり前さ」
そのマシンから女の声が聞こえてきた。
「あたしのシルベルヴァントはそいじょそこらのマシンとは違うんだよ」
「シルベルヴァント」
ヤンロンはその名前に反応を見せた。
「それが御前のマシンの名前か」
「そうさ。あたしは四天王の一人アギーハ」
そのうえで名乗ってきた。
「覚えておくんだね。隣にいるのはあたしの彼氏さ」
「彼氏だって!?」
「そうさ」
今度はリューネの声に応えた。
「シカログっていうのさ。前にも話したね」
「そういえばそうだったっけ」
ミオの記憶はこの辺りはあやふやだった。
「そうだったような気がするけれど」
「じゃあ覚えておくんだね」
アギーハは笑ってこう言ってきた。
「あたしの渋い彼氏さ。乗っているのはドルーキン」
また彼等に教えるのだった。
「このシルベルヴァントと一緒にね。覚悟しな!」
「くっ、このマシン」
テュッティはグングニルで敵の攻撃を受けながら仲間達に告げる。
「かなり手強いわ。皆でかからないと」
「ちっ、折角足止めに来たってのによ」
マサキは彼女のその言葉に歯噛みする。
「それができねえのかよ。おいブンドルの旦那!」
そのうえでブンドルに声をかける。
「あんた達だけで頼む。いいか!」
「任せておくのだ」
ブンドルはその言葉を余裕を以って受け止めた。
「これだけの相手の方が戦いがいがあるというもの」
「おうよ」
「それではブンドルよ」
ケルナグールとカットナルもそれに応える。
「三百六十度に撃ちまくるぞ!」
「どんどん倒せ!」
彼等は既に戦う気に満ちていた。
「倒して倒して足止めだ!」
「全滅させるぞ!」
「少なくともその気持ちでなければならない」
ブンドルもまた二人に応えて言う。
「では戦うとしよう」
「弾の続く限り撃て!」
「怯むな、決してな!」
三人は自分達の艦を果敢に向かわせる。しかし彼等だけでは限界があるのは明らかであった。まずい、そう思われた時であった。
「皆っ」
不意に美久の声がした。
「待たせて御免なさい」
「美久ちゃんか!」
「ってことはマサトも!」
「うん」
そしてマサトの声もした。
「皆、遅れて御免」
「それはいいけれど」
そのマサトにエイジが声をかけてきた。
「どうしたんだい、今回は」
「そうね。随分遅かったけれど」
アキトもそれを言う。
「何かあったの?」
「これの最後の調整をしていたんだ」
マサトは彼等にそう答えた。
「この新しいゼオライマーのね」
「新しいゼオライマー!?」
「そう、これなんだ」
その言葉と共にその新しいゼオライマーが姿を現わした。見れば以前のゼオライマーよりも鋭角的で威圧的な印象を受けるシルエットであった。
「グレートゼオライマー」
「グレートゼオライマー!?」
「それは一体」
「八卦衆のマシンの力を集めたんだ」
マサトはそう皆に答える。
「そうしてこれまでのゼオライマーより遥かに強力にしたものなんだ」
「おいおい」
それを聞いて宙が声をあげる。
「あのゼオライマーよりもか」
「それってかなり」
美和も言う。
「凄くなっているのね」
「少なくとも八卦の力は全部集まったよ」
マサトはそれを言う。
「その力で地球を。皆を」
「守ってみせます」
美久も言った。
「では早速で悪いけれど」
タリアがそれを聞いてすぐに声をかけてきた。
「後方に回ってくれるかしら」
「後方ですか」
「今そっちが大変だから」
「そうなんだよ」
アーサーもマサト達に声をかけてきた。
「実質ブンドル局長達だけだから。ここは頼むよ」
「わかりました。それじゃあ」
グレートゼオライマーはそれを受けてすぐに動いた。瞬間移動であった。
そうしてインスペクターの軍勢の真っ只中に出た。そうしていきなりデッド=ロンフーンを目の前の敵に向けて放つのであった。
「まずはこれで・・・・・・!」
「いいわ、マサト君」
美久がマサトに対して言う。
「そのままで」
「わかった。それじゃあ!」
風が敵を貫いた。続いて敵艦にプロトン=サンダーを放つ。
「今度はこれだ!」
「わかったわ!」
その雷で敵艦を貫いた。敵艦は腹部を撃ち抜かれそこから真っ二つになった。そうして紅蓮の炎と化して銀河の中に消えるのであった。
「すげえ・・・・・・」
「あっという間に敵艦まで」
ロンド=ベルの面々も驚きを隠せない。それを見ただけでグレートゼオライマーの力はこれまでのゼオライマーのそれとは比較にならないのがわかったからだ。
「これだけじゃないよ」
しかしマサトはまだ言う。
「皆」
ここでアギーハ、シカログと戦っているマサキ達に声をかけてきた。
「すぐに後ろに下がって」
「後ろにか!?」
「まさか」
「そう、メイオウ攻撃を出すから」
マサトは今それを彼等に対して告げたのだ。
「けれどこれまでのメイオウ攻撃とは違うよ」
「違うのかよ」
「うん。烈メイオウ攻撃」
マサトは言う。
「それで一気に勝負を決めるから」
「おいおい、馬鹿言うなって」
オルガがマサトのその言葉を聞いて笑ってきた。
「幾ら何でもここまで届くかってんだ」
「そうだよね」
それにクロトも頷く。
「マサトと僕達の距離はかなりあるじゃない」
「心配無用」
シャニも同じ考えであった。
「届く筈がない」
「いや」
しかしそれは劾が否定する。
「ここは下がる。いいな」
「下がるって」
「あんなに離れてるのに!?」
「杞憂」
「それでもだ」
しかし彼の判断は変わらない。
「マサトの言葉は本気だ。ならば」
「下がるっていうんだね」
「そうだ」
彼はリューネにも答えた。
「ここはな」
「わかった」
そしてそれにヤンロンが答えた。
「では下がろう。勝負はまず流す」
「わかったぜ。じゃあよ」
マサキも本能的にマサトの言葉が間違いなとわかっていた。それで彼も動くのだった。
「下がるぜ」
「そういうことだ」
彼等はすぐに下がった。それを受けて安全圏まで退くとマサトはすぐに攻撃に入るのであった。
「それじゃあ美久」
「ええ、マサト君」
美久もマサトの言葉に応える。
「あれをしましょう」
「うん、これで決める!」
ゼオライマーが動く。その両手の珠が輝き。
拳と拳を合わせると破滅の光が輝いた。そうして周りをその光で包み込むのであった。
「!これは!」
「・・・・・・・・・!」
アギーハもシカログもその光を受ける。それが破壊の光であることはすぐにわかった。
「シカログ!」
アギーハはその光が迫る中でシカログの方を見た。
「かわすんだよ、いいね!」
「・・・・・・・・・」
シカログはここでも話さない。だがそれには行動で応えた。
二人はすぐに動いた。そうしてその光を何とかかわす。だが他のインスペクターの者達はそうはならなかった。インスペクターはグレートゼオライマーの烈メイオウ攻撃により壊滅的なダメージを受けてしまった。
そこにあるのは残骸達ばかりであった。僅か一撃により。それにより勝負は決まってしまった。
「ちっ、何てことだい!」
アギーハは壊滅した己の軍を見て歯噛みした。
「これじゃあアクシズ攻略も何にもありゃしないよ!」
「それでアギーハ」
ここでメキボスがそのアギーハに声をかけてきた。
「どうするんだ?こっちももう数がないんだがな」
「仕方ないね」
今の言葉が全てを表わしていた。
「撤退するしかね。作戦は失敗だ」
「馬鹿を言え!」
ヴィガジがそれに反対する。
「まだ戦える!それでどうして撤退だ!」
「おいおい、無茶言うな」
しかしメキボスはそれを制止する。
「後方の軍が壊滅だぞ。それでどうやって戦うんだ」
「くっ・・・・・・」
「わかったな。ここは諦めろ」
そうヴィガジに告げる。
「全軍撤退だ」
「止むを得ないというのか」
「ああ。じゃあ全軍撤退だ」
「わかったよ」
「・・・・・・・・・」
アギーハとシカログもそれに応える。メキボスはそれを受けて今度はヴィガジに顔を向けた。
「それでいいな」
「フン」
そしてヴィガジも渋々ながらそれに頷いた。
「では決まりだ。撤退だ」
メキボスの言葉と共にインスペクターの軍勢は撤退していく。こうしてロンド=ベルはアクシズでの連戦を凌ぎ見事守りきったのであった。
「危ないところだったね」
シンジが戦いが終わったのを見て言った。
「あの後ろから来た軍がそのまま来ていたら危なかったよ」
「そやな」
それにトウジが頷く。
「マサトはんが来てなかったら危なかったで」
「そうだね。あと少しでだったよ」
「そやけどな。ただ」
ここでトウジは言う。
「あのグレートゼオライマーの凄さはな」
「凄いなんてものじゃないよ」
シンジもそれには言葉がなかった。
「あの強さはね」
「強いっていうかね」
アスカも話に入ってきた。
「何ていうのかしら。圧倒的じゃない」
「御前ギレン総帥みたいなこと言うな」
「何て言ったらいいかわからないのよ」
アスカもそうした意味ではシンジと同じであった。
「あれだけ凄いと」
「ネオ=グランゾンみたいだったね」
「いや、あそこまではいかんやろ」
トウジは流石にそれは否定する。
「あれはまた圧倒的や」
「マスターガンダム」
レイがポツリと呟く。
「あの方の様に凛々しく素敵な」
「あれはまた常識無視してるし」
やはりアスカはすぐにマスターアジアを否定しにかかってきた。
「とにかく。桁外れに強いのは事実ね」
「そうだよね。凄い力が参加したのは事実だね」
シンジの言葉が一番妥当と言えた。
「これでまた困難を乗り越える力が加わったんだ」
「それは君達もよ」
ミサトが四人に対して言ってきた。
「ミサトさん」
「確かにグレートゼオライマーの力は凄いわ」
それは彼女も認めるところであった。
「それでも君達も凄いのよ」
「僕達もですか」
「ええ。だからもっと頑張りなさい」
そう声をかけるのだった。
「四人でね」
「はあ」
シンジは少し頼りない返事を返した。
「そうします」
「けれどミサト」
アスカは顔を少し顰めさせていた。
「あたしはマスターアジアにはなれないからね」
「別になれなんて言わないわよ」
ミサトもそれは言わない。
「超人になれなんて」
「超人なんだ、あの人」
シンジはその言葉を聞いて何やら思ったようである。
「やっぱり」
「まあ常人離れしているわね」
ミサトも否定できないものがそこにはあった。
「それもかなりね」
「かなりってどころじゃないわよ」
ここでもアスカは拒否感を露わにさせる。
「あんな妖怪仙人みたいなのはね。変態って言うのよ」
「変態なんだ」
シンジはその言葉に今一つ首を傾げるのであった。
「それは少し違うような気も」
「しかもそれ言うたらなあ」
トウジも言うのだった。
「ガンダムファイターは全員そやぞ」
「あの変態爺さんとゲルマン忍者だけは違うわよ」
とにかくこの二人には拒否感を露わにするアスカであった。
「何なのよ、いっつもいっつも変態みたいな技出して」
「それがいいのよ」
レイの嗜好は少なくともアスカのそれとは全く違っていた。
「颯爽と現われて悪を倒して去っていく」
彼女はマスターアジアを見ていた。
「何て素敵な方なのかしら」
「その通りだ!」
顔をポッと赤らめさせるレイに対してドモンが叫ぶ。
「それこそ師匠!俺の師匠だ!」
「せめて人間ならね」
「そやから御前は」
トウジはアスカに突っ込みを入れる。
「あの人にはあれこれ言うなや」
「言いたくもなるわよ」
しかしアスカも引かない。
「あれだけ変態だとね」
「とにかくね」
ミサトが話を打ち切ってきた。
「戦いも終わったし帰りましょう」
「そうですね」
そしてそれにシンジが応える。
「それじゃあゼダンに」
「アクシズのビールもかなり楽しませてもらったし」
「何時の間に!?」
今のミサトの言葉にリツコが突っ込みを入れる。
「貴女何時の間にそんなことを」
「大人の女の時間は二十四時間じゃないのよ」
右目を悪戯っぽくつむってリツコに応える。
「それは貴女も同じだと思うけれど」
「私は別にそんなことは」
「あら、何か年下の子とデートしていたそうじゃない」
「うっ」
しかもここでギクリという顔になるリツコであった。
「あら、図星だったのかしら」
「い、いえそれは」
言葉がしどろもどろになるリツコであった。
「気のせいよ。風の噂よ」
「風の噂!?」
シンジは今のリツコの言葉に首を捻る。
「そうなのかな」
「違うんじゃないの?」
アスカもそう思うのであった。
「この場合は」
「と、とにかくね」
リツコは必死に言葉を遮って強引に終わらせにかかった。
「帰りましょう、いいわね」
「はあ」
シンジもそれに頷く。
「それじゃあ」
「じゃあ作戦終了」
ミサトが全員に告げる。
「ゼダンに帰還します」
「了解」
皆それに頷く。こうしてアクシズでの連戦は終わったのであった。ゼダンに戻った彼等はとりあえず一息つくのであった。束の間の休息であったが。

第三十二話完

2007・12・24 
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