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FAIRYTAIL-ダークブリングの力を操りし者-

作者:joker@k
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第一九話 試合×中止×勝負

 鉄の森(アイゼンヴァルト)によるギルドマスターの定例会を狙ったテロ事件は各紙一面見出しにでかでかと載っていた。ただメディアでは報道されていなかったが、どうやらナツが倒したエリゴールだけは捕まらなかったらしい。信頼のおける者からの情報なのでそれは確かだ。まぁあの程度の奴なら何ら問題はないだろう。

 また表舞台に出てくるとしてもほとぼりが冷めてからだろう。ああいう闇ギルドの連中は逆恨みして狙ってくるがその頃には復讐の標的とされるであろうナツとの実力差は大きく開いているだろうしな。



 それよりも今考えなければならないのは今回の事件で評議会がどう動くかだ。
 ゼレフの遺産が持ち出されたことについて各メディアは報道していなかったが、情報は出回るもので魔導士ならば今回の事件の真相はすぐ知ることに、いやすでに知っている人もいるしれない。何せ各ギルドのマスターが狙われたのだ。ギルドメンバー達は少なくとも知っているだろう。

 そしてそこから情報が流失し評議員達の責任問題にまで発展する可能性が出てくる。それを見越してジジイ共は必ず手を打ってくるだろう。その時、魔法界の秩序のためと評してフェアリーテイルがターゲットにされる可能性がある。

 例えそのテロを阻止したとしてもだ。だがそこで重い罪を被せてくるかと言ったら、そうはならないだろう。リスクがデカすぎる。フェアリーテイルからの反発は勿論、あの時いたギルドも抗議してくるであろうことは馬鹿でも分かる。ゆえに……


「難しい顔してどうしたの?」

「――ミラか。いや特に何の問題にもならないだろうってな」

「何の話? それよりも、もう始まっちゃうよ」

「あぁ? それこそ何の話だ」

「何のって、今からエルザとナツの試合が始まるのよ。ルシアだって今日はそのためにギルドに来たんでしょ」

「俺はいつもギルドにいるだろうが……赤ワインが切れたな。もう一本開けてくれ」

「もうっ! 今はワインよりも試合でしょっ!」

 そう言うやいなやミラは俺の腕を強引に引っ張りギルドの外へと向かっている。さすが元S級、力強さが半端じゃない。

「どうせエルザが勝つんだ。今のナツじゃ逆立ちしたって勝てねぇよ」

 ナツの爆発力は仲間相手だとあまり発揮しないしな。あれが発揮できれば希望はあるんだが、まぁ無理だろう。爆発力が出るときは大概敵対しているギルドを相手にしているときだ。

「いいからいいから。もうギルドの外じゃお祭り騒ぎだよ? ルシアも一緒に行こうよ。それとも私と一緒じゃ、嫌……かな?」

 不安そうな表情を浮かべているミラの唇に軽く触れるぐらいのキスをしてから彼女の手をやや強引に取る。

「行くか」

「うん」

 まんまとミラの罠にはまった気もするがそこは気づかぬフリをしてやるのも男の甲斐性ってものだろう。やれやれと思いながら何時ものクセで胸元から煙草を取り出そうとしてやめた。今は口寂しいわけじゃないからな……。


 いつの間にかミラが俺の腕を組んでおり、少ししな垂れかかりながら歩き出す。ミラの胸の感触と髪のシャンプーの香りに意識が持っていかれる。慣れないもんだな。
 ギルドの扉を開くと外にはギルドメンバーや何事かと集まってきた野次馬達で盛り上がっていた。

 懐かしい。俺がギルドに初めて来たときもこんな感じだったな。まだ幼かった頃のグレイとラクサスと勝負したものだ。少し遠くにいるマカオを見ると時が経つのは早いなと感じる……老けたな。そんな昔の思い出にしみじみと浸っていると背後から声を掛けられた。

「腕なんか組んじゃって、ご両人とも見せつけてくれるねぇ」

「あら、カナだってこの間ルシアとデートしてたじゃない。これくらい良いでしょ?」

「な、何でそのことをミラが知ってるのよっ!? ……ルシアあんた」

「言ってねぇよ」

 そこにはカナがジュエルの詰まった箱の前に胡座をかいて座っていた。どうやら今回の配当担当者はカナのようだ。俺たちと話ながらも続々と賭け金を握り締めたギルドメンバー達を捌いている。昔からやっているだけあって手馴れてやがる。

「ルシアとミラは賭けないの?」

「私は遠慮しとくわ。そういうの苦手だし」

「俺も今回はパスだ。別に金には困ってねぇしな」

「あっそ。ならそこに突っ立ってないで早く場所確保しに行きな。並んでる奴らの邪魔にもなるしね」

「ん、またな…………あぁそうだ。次のデートはいきなり酒場じゃなくて違う所にしとけよ?」

「うっさい! 嫌ならルシアもデートプラン考えろ」

 そういうのは苦手だと一言告げて、その場を後にする。
 カナに言われた通り場所を見通しの良い場所を確保しなければならないが、すでに良いところは埋まっている。さて、どうするかと考えているとエルフマンがこちらに手を振っているのが見えた。どうやらすでにミラが手を打っておいたようだ。

 そこに辿りついてからすぐにルーシィーが凄い勢いでやってきた。どうやらエルザとナツが試合することに対して思うところがあるらしい。その後すぐにグレイもやってきて、何やら盛り上げっている。

「あんたとナツとエルザが妖精の尻尾のトップ3でしょ?」

「はぁ? くだんねぇ。誰がそんな事言ったんだよ」

 ルーシィとグレイのやり取りを聞いてミラが俺の腕に顔を埋めてショックを受けていた。どうやらミラが言ったみたいだ。そんなミラにグレイがあたふたしならがもチラチラと俺の顔色を伺っている……別にそんなことで怒らねぇよ。
 片やグレイの側で顎が外れている程驚愕しているルーシィ。多分俺とミラの関係を知らなかったのだろう。そんな二人にお構いなしでエルフマンが不満そうに話し出す。

「最強と言われると黙っておけねぇな。妖精の尻尾にはまだまだ強者が大勢いるんだ……俺とか」

 エルフマンの発言を皮切りに外野にいた連中も喋りだす。

「最強の女はエルザで間違いないと思うけどね」

「最強の男となるとミストガンやラクサス、ルシアもいるしな。何よりあのオヤジも外す訳にはいかねぇな」

「私はただナツとグレイとエルザが一番相性が良いと思ったのよ……」

 あのオヤジとは間違いなくギルダーツのことだろう。恐らく俺とラクサスの二人がかりでも勝てるか怪しい程の実力者だ。何せ未だ全力で戦ってる姿を見たことがない。ギルド最強は間違いなくギルダーツ……それにマカロフだろう。戦わずして勝つ、これができるマカロフは同じステージにはいないのかもしれない。



 そんなことを話している間にどうやら試合が始まるようだ。
 エルザは炎帝の鎧を身に纏い耐火能力に特化させている。どうやらいつものようなお遊びとはならないようだ。

 マカロフによる試合開始の合図がこの場に響き渡った。

「―――始めいっ!!」


 先に仕掛けたのはナツ。両手に得意の炎を纏い一直線に突撃をかけるが、エルザは容易にその攻撃を見切り、カウンターを仕掛ける。
 その鋭い剣戟をナツも余裕を持って、尚且つ次の攻撃時に力を十二分に出せるような態勢で避ける。

 エルザはまるで物語に出てくる騎士のように堂々と、ナツは一見不格好に見えるが予想しにくいアクロバティックさで対応し攻撃を凌ぐ。

 その手に汗握る激しい応酬に見学者達も魅入っている。だが、まだまだウォーミングアップの段階だろう。ここからさらにスピードも上がってくるはずだ。

 そんなこれからの所で邪魔が入った。

「そこまでだっ!! 私は評議員の使者である。先日の鉄の森テロ事件において、器物損壊罪他十一件の罪の容疑でエルザ・スカーレットを逮捕する」

「な、何だとぉぉぉぉおおおおおっ!!!」


 さて、予想内で想定内だが面倒な事になったな。






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇







 先ほどまでの騒々しさとは打って変わり、ギルド内は静まり返っていた。
 エルザの逮捕に対し、不満げな表情を全面に出している者やただ裁判の結果を落ち着いて待つ者、何故か俺にチラチラと視線を送っている奴までいる。
 別に俺は暴れたりしないぞ。透明のグラスに閉じ込められているナツ代理のようにな。

 あの評議員の使者の介入があった後、ナツは案の定暴れだしエルザを連れて帰るため逃亡を図った。勿論評議院に喧嘩を売るなど許されるはずもなくその場にいたギルドメンバー全員でナツの捜索に出た。
 その結果、見事変身魔法でトカゲとなり逃げ出そうとしたナツをマカオが捕まえ透明のグラスの中に閉じ込められている。がしかし、その時にナツとマカオが入れ替わったのだろう。

 最近依頼で失敗したマカオをナツとルーシィが救出したことがあったらしい。恐らくその恩に報いるためだろうが……マカロフの奴は既に気がついてやがるな。ナツが向かったとしても問題なしと思っているのだろう。相変わらずの先見の明だな。伊達に歳は食ってないということか。


「だがまぁ、ナツが暴れれば幾日かは牢屋行きになるだろうな」

「何か言った?」

 俺の独り言にミラが反応してきた。それを誤魔化すようにカウンターに置かれている炭酸飲料を飲み干し、席から立ち上がる。

「いや……そろそろマカオの下手な演技にも見飽きてきたところだって言ったんだ。茶番はもういいだろ」

 その言葉にギルド内にいたメンバーのほとんどは意味がわからないといった顔を浮かべ、それとは対照的に焦った顔をしているのがトカゲ姿のマカオだ。ミラは気がついていたようで苦笑いを浮かべ、マカロフは変わらず毅然とした態度でいる。

「そろそろナツがフィオーレ支部に到着する頃だろう。丁度いい、俺もあそこで調べ物をしようと思っていた所だ。ついでに捕まえてきてやるよ。いいだろ?」

「……ふむ、今から追いつけるというのなら問題ないわい。あの馬鹿を捕まえてこい」


 了解、マスターと一言告げてから俺は瞬間移動のDBワープロードでフィオーレ支部へと飛んだ。このDBは目視できる範囲と印をつけた場所になら一瞬で移動することができる能力だ。勿論距離や物によって消費するDBPが変わってくるが。




 支部から少し離れた所に無事到着し、ナツを待つ。
 周囲には支部以外の建造物等無くただ荒野が広がっている。それゆえに一際大きい支部がよく目立つ。

 ここは魔導士を裁く裁判所でもあり貴重な書籍などが置かれている書庫も存在する。今回の主な目的はナツの捕獲ではなく書庫だ。俺のゼレフに関するある程度の情報はここの書籍や資料から知り得たものだ……立ち入り禁止エリアだったが俺にはそんな文字は不思議と見えない。

 そんな支部を背にして腕を組みながら待っていると、前方から凄まじい砂埃と雄叫びを上げながら走ってくる人影が見えてきた。やっと来たようだな。さて、どう説得したものか。

「ウオォォォオオオオ!! ん!?」

 どうやらナツも俺の存在に気がついたようで、目の前で急ブレーキをかけて無事止まった。

「ル、ルシア!? なんでここに……」

「お前を連れ戻そうと思ってな」

「うっ!? で、でもルシアも知ってんだろっ! エルザはテロを止めたんだ!逮捕されるなんておかしいだろ!」

「…………」

 このセリフを聞いて俺に悪戯心が芽生えてしまった。

「もう裁判だって始まってるかもしんねぇ。このままじゃ」

「エルザが有罪になるってか? なら有罪判決を受けさせればいい」


 俺のこの言葉にナツの顔色が変わる。いつもの無邪気さはなく、エルザと試合をしていた時の真剣ながらもどこか楽しそうな顔ではない。そう、この顔は正しく敵対している者に向ける顔だ。

「――本気で言ってんのかよ。ルシアはエルザと仲良かったじゃねぇか」

「お前が勝手にそう思ってるだけだろ?」

 その場に張り詰めた空気が流れピリピリと肌に当たるこの空気感がたまらなく心地よい。


「どけよ」



「どけてみろよ」


 ナツが両手に激しい炎を纏わせる。それは先の試合時とは比較にならない程の強烈な炎。まるでナツの感情がそのまま乗り移ったかのような憤怒の炎。その激しい炎のせいか周囲の気温までもが上がっていくように感じる。

 そんな炎にあてられてか口元が自然と釣り上がり、俺も気分が高揚してきた。と同時にナツにこんな気分にさせられるとは、時が経つのも早いものだとも思う。
 そんな俺の不敵な笑みを見てかナツの怒りのバロメーターはさらに上昇していた。


「そこを、どけぇぇえええええええ!!!」


 ナツの怒号が合図となり闘いの火蓋は切られた。 
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