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万華鏡

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第十四話 成果その八


「そういう人が先生とかやるのよね」
「それって凄くとんでもないことよね」
「お母さんでも言えるわ」 
 武道の心得はないがそれでもだというのだ。
「それはとんでもないことよ」
「そうよね、やっぱり」
「武道を人に教えるなら」 
 それならばだというのだ。
「心もしっかりしていないとね」
「駄目よね」
「ましてや先生じゃない」
 それなら余計にだというのだ。
「心の鍛錬もできていないとね」
「駄目よね」
「そうよ。そうなっていないと駄目よ」
「けれどそうでない人もいるのね」
「間違っても危険な技とか生徒にしたらいけないし」
 空手でも当然ある。
「あと一本取られない様な技もね」
「生徒にしたら駄目なのね」
「そんなの生徒が真似したら大変よ」
 そもそもこの問題もあった。
「問題外でしょ。そうでしょ」
「確かに。言われてみれば」
「試合でしたらどう?」 
 母は真顔で娘に問うた。
「そんな技を」
「テニスでもあるわよね」
「そうよ。あるのよ」
「やったらいけない技って」
「それは先生がやったら絶対に駄目よ」
 母は何時になく厳しい口調で娘に話す。
「そんなことをする先生がいたらね」
「どうしたらいいの?」
「その先生のいる部活には絶対に入ったら駄目よ」
 また絶対だった。
「何があってもね」
「絶対なの」
「そう、絶対になのよ」
「けれど例えば軽音楽でも」 
 里香が今していることだ。今では彼女にとって掛け替えのない、友人達と共にそうなってきているものである。
 それでもかとだ、娘は母に問うたのである。
「駄目なの?」
「どれだけ素晴らしいことでもやっている人、教えている人が駄目だとね」
「駄目なの」
「じゃあ里香ちゃんはキーボードに唾や痰を吐く人に教えてもらいたい?」
「えっ、痰!?」
「そう、そういう人にね」
「それはちょっと」
 難しい顔で言う里香だった。
「遠慮したいわ」
「そうでしょ?ラケットや竹刀を蹴ったりとか」
 そうしたこともだというのだ。
「そんなことをする人に教えてもらうのはね」
「やっぱり」
「そうなるでしょ」
「ええ」
 里香は俯いた顔で母に答えた。
「とても」
「でしょ?だからそうした人とはね」
「絶対になのね」
「教えて貰ったら駄目よ」 
 それこそ碌なことにならないからだというのだ。
「それにそうした先生にい部活ってね」
「その部活は?」
「悪い人ばかり入るから」
 そうなるというのだ。
「いい人は入ってもすぐに出て行くから」
「その先生が嫌になって」
「それで残るのはおかしな人だけなのよ」
「何かそれって」
「そんな部活にいてもいいことはないわ」
「軽音楽部でも」
「そう、どんな素晴らしいことをする部活でもね」
 それを行う人が問題だというのだ。 
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