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万華鏡

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第十話 五月その二


「アシナガバチね」
「そうね。あの蜂はね」
「確かに刺すけれどスズメバチよりはずっとね」
「ましなのね」
「こっちから極端におかしなことしなければ大丈夫だから」
「だから大丈夫ね」
「クラスの中にも入って来ないしね」
 窓でシャットアウトされている。その心配は今はなかった。
「大丈夫よ」
「そうね。じゃあ」
 琴乃は今は蜂のことは大丈夫だと認識して安心した。この話は昼休みに食堂で一緒に食べる他のメンバーにも話した。
 景子はその蜂の話を聞いてきし麺を食べながら言った。
「蜂って食べられるけれどね」
「蜂の子?」
「そう、それ」
 それの話をするのだった。
「長野では食べるから」
「そういえば長野ってイナゴも食べるわよね」
「ええ、そうよ」
 景子はこのことも話した。
「それが結構美味しいのよ」
「食べたことがあるの」
「そう、一回長野に行ったことがあって」
 それでだというのだ。
「その時にね」
「それで美味しかったのね」
「そうなの。ただ」
「ただ?」
「癖があるから」
 景子はこうも琴乃に話した。
「一緒に飲むお酒も選ぶからね」
「日本酒?」
「日本酒でもね」
 ここで景子が出した酒はこれだった。
「濁酒がいいかも」
「また独特なお酒ね」
「そうでしょ。琴乃ちゃん濁酒は飲んだことある?」
「ないわ」
 琴乃はざる蕎麦を食べながら景子に答えた。
「清酒はあるけれど」
「それでも濁酒はないのね」
「あれって美味しいの?」
「清酒より甘い感じでね」
 甘酒もその一種だ。アルコール度は濁酒の方が低い。
「それで味自体も癖があって」
「そうなの」
「だから。清酒よりもね」
「濁酒なのね」
「そっちの方が合う感じね」
「もう濁酒の方が少ないし」
 時代の発展によりそうなった。清酒が多くなったのも江戸時代の発展があってこそだ。
「私もちょっとね」
「そうなの。実は私もね」
 景子自身も言う。
「その時まで濁酒は飲んだことなかったけれど」
「それではじめて飲んで」
「結構よかったのよ」
 こう笑顔で琴乃に話す。
 そしてきし麺をまたすすってこう言った。
「ただ。こうした麺類とかにはね」
「濁酒は合わないのね」
「多分清酒ね」
 そちらが合うというのだ。
「オーソドックスにね」
「濁酒ってそんなに癖があるのね」
「甘いのよ」 
 清酒と比べてそうだというのだ。
「まあ清酒も甘いけれどね」
「日本酒だからね」
 米から作る、そうなるのも当然だ。 
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