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万華鏡

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第九話 春の鍋その三


「お醤油とか味醂だけれど」
「若しくは生姜ね」
 大蒜も使える。和食も香辛料とは縁が深いのだ。
 そして洋食に話が戻る、それはというと。
「やっぱりカレーでもね」
「胡椒よね」
「胡椒で味をつけて」
 それからなのだ。
「何もかもがそれからよね」
「そう、洋食はお肉が多いけれど」
「胡椒ね」
「それをどう使うかが鍵だから」
「それからよね」
 景子も里香のその言葉に頷いて言う。
「おソースとかは」
「そう。あと景子ちゃんパスタは」
「好きよ」
 里香ににこりと笑って答える。
「特にミートソースがね」
「そうなの。パスタはね」
「オリーブと大蒜?」
「その二つは欠かせないから」
 オリーブはパスタに絡める、そして大蒜はソースに必要だ、この二つでパスタの味は全く違ってくるのだ。
「何があってもこの二つはパスタに欠かせないから」
「絶対によね」
「そう。この二つは忘れないでね」
「そういえばお母さんも」
「そうでしょ?この二つは絶対に忘れないでしょ」
「ええ、何があってもね」
 実際にそうだと答える景子だった。
「使ってるわ」
「そういうことよ。やっぱり」
「パスタにはオリーブと大蒜」
「この二つは忘れないでね」
 里香は確かな声で景子に話す。そうしてだった。
 五人はまた部活を楽しんだ。そうしてシャワーを浴びて心まで奇麗になってから部室の入り口のところで集まりこう話をした。
「じゃあいよいよね」
「最後ね」
 こう言い合いその上で美優を見て言う四人だった。
「じゃあ美優ちゃん、今日はね」
「美優ちゃんのところ行くから」
「宜しくね」
「期待してるから」
「ああ、期待してもらうと恥ずかしいけれどな」
 そう言われると実際に照れ臭そうな顔になり美優だった。
「けれどとりあえず美味いもの考えたからさ」
「それで身体にもいい」
「そういうものよね」
「美味くて身体によくてしかも安い」
 見事な三拍子だ。料理たるものこうでなくてはならない。
「それを考えて用意したからさ」
「用意?」
「用意っていうと?」
「まあちょっと考えてさ」
 美優はシャワーを浴びた後の極めて爽やかな顔で四人に応える。
「それで用意なんだよ」
「ううん、っていうと?」
「用意するってことはお料理じゃない?」
「違うの?」
「いや、お料理だよ」
 それは間違いないというのだ。
「ちゃんとしたな」
「けれど用意っていうから」
「ちょっと」
「来てみればわかるさ」
 今は笑顔でこう言うだけの美優だった。四人もその言葉にとりあえずは何なのかと疑問に思うだけしかできなかった。
 それで美優の家に行くとそこにあったのは。
「あっ、これなの」
「それなのね」
「それにしたのね」
「ああ、ちょっと考えたけれどな」
 美優はどや、といった感じの顔でテーブルの傍に立っている。五つの椅子が用意されたテーブルの中央には鍋とコンロが置かれている。 
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