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万華鏡

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プレリュードその十


「だよな、やっぱり」
「ええ、そうなの」
「ちょっと探してるんだけれど」
「吹奏楽部はいいかしらって」
「そう思ってるんだけれど」
「吹奏楽な。この学校吹奏楽部も有名だしな」
 八条学園高等部吹奏楽部といえば全国区だ。その名前はよく知られている。
「悪くないよな。ただ結構筋トレとかランニングとかするから運動部みたいだよな」
「あっ、そうだったわね」
 琴乃は新入生のその言葉を聞いて頷いた。
「吹奏楽って腹筋使うし体力もいるから」
「だから運動部並のトレーニングもするんだよ」
「そうだったわね。けれどそれだと」
「ええ。私はちょっと」
 里香が曇った顔になって答えてくる。
「運動は苦手だから」
「じゃあ吹奏楽は止めておく?」
「そうしようかしら」
 こう言ったのである。
「運動をするのなら」
「そうね。里香ちゃんには辛いかもね」
「けれど部活はね」
 どうするかとだ。里香は少し弱い感じの顔で言った。
「音楽関係がいいかなって思うけれど」
「そうね。雅楽とか吹奏楽とか見てたらね」
「いいって思うわよね」
「ええ。じゃあ何処にしようかしら」
「ああ、それならいい部活があるよ」
 新入生が微笑んで二人に言ってきた。
「あたし今からそこに行こうって思ってるけれどね」
「音楽関係の部活よね」
「そこよね」
「ああ、そこだよ」
 明るい口調でだ。新入生は二人に話す。
「そこにしようって思ってるんだ」
「それじゃあ一体」
「何処にするの?」
「現代とかどうだよ」 
 新入生は微笑んで二人にこう話した。
「現代音楽な」
「ええと。現代っていうと」
「そうなると」
「バンドとかどうだろうな」
 やはりだ。新入生は微笑んで話す。
「それどうだよ」
「バンドなの」
「ああ、どうだろうな」
「そうね。バンドね」
 新入生に言われてだ。琴乃はまずだ。
 自分だけが考える顔になった。しかし答えは出ずにだ。
 里香に顔を向けてだ。それで彼女に尋ねたのである。
「どうかしら」
「バンドね」
「私カラオケとかよく行くけれど」
「歌うの好きなの?」
「結構ね」
 そうだというのだ。
「ダンスとかも好きだけれど」
「じゃあバンドとかの曲も歌うの?」
「歌うわ。ポップスとか色々な音楽の歌を歌うけれどね」
「じゃあいいんじゃないかしら」 
 少し考えてからだ。里香は琴乃に答えた。
「バンドも」
「里香ちゃんはどうなの?」
「私もそうした音楽を聴くけれど。ただ」
「ただって?」
「楽器はね。ちょっとね」
 それがだ。どうかというのだ。 
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