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髑髏天使

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第六話 大天その三


「この連中を見て受け入れられないならこんな考えは持てない」
「一目見て受け入れていたけれどね」
「あれは僕達の方が驚いたよ」
「全く」
 妖怪達は妖怪達で牧村に言う。
「全然平気で見てるんだから、二回目から」
「髑髏天使になるのだってね」
「最初は驚いた」
 牧村もこのことは認める。とはいっても相変わらずあっさりとした表情だが。
「いきなり目の前に魔物が出て来たしな」
「まあ普通は驚くよね」
「っていうか驚くことあるんだ、牧村さんも」
 妖怪達はこのことに注目していた。
「何かそっちの方が凄いよ」
「ちゃんと感情あるんだ」
「感情のない人間なんていはせんよ」
 博士はそれは妖怪達にはっきりと述べた。
「ゴーレムじゃないんじゃからな」
「ゴーレム!?ああ、あれね」
「イスラエルのあれだよね」
「うむ、そうじゃ」
 博士は妖怪達の言葉に対して頷いてみせる。
「それじゃ。あの動く人形じゃよ」
「ロボットって言うのかな」
「人間の科学とか工学じゃ」
「最近はロボットでもそれは備えられていたりするがの」
 中々細かいところまでわかっている博士だった。
「基本的にはないな」
「生きていれば絶対に感情があるってことね」
「そうじゃ。彼にしてもな」
 また牧村に目を向けてきていた。
「あるに決まっておる。生きていればな」
「けれどそれが乏しいって場合はあるみたいだね」
「そうだよね。何か」
「昔からこうだ」
 牧村はまた博士と妖怪達に対して述べる。
「子供の頃からな。喜怒哀楽は乏しいのは自分でもわかっている」
「わかっているんだ」
「これで困ったこともない」
 だからいいのだとも言うのだった。
「別にな」
「そういうものかなあ」
「笑いたい時に笑って」
 妖怪達は彼の言葉を聞いてそれぞれの口で述べる。
「泣きたい時に泣く」
「それだよね」
「うん、それだよ」
 口々に言い合うのだった。
「そうじゃないと面白くないじゃない」
「折角生きてるんだからね」
「そうそう、思いきり泣いて笑って」
 あくまでこう主張する。
「そうして生きないとね」
「面白くないよ」
「そういえばここの妖怪達は」
 牧村も彼の言葉を聞いて述べる。
「喜怒哀楽が随分と激しいな」
「それが妖怪なのじゃよ」
 博士はこう牧村に話す。
「これがな。喜怒哀楽が激しいのじゃ」
「そうなのか」
「子供がおるじゃろうが」
「子供!?」
「そう、子供じゃ」
 彼が今度牧村に話したのは子供に関してだった。
「人間の子供じゃが」
「そちらの方か」
「左様じゃ。子供は大抵喜怒哀楽が激しいものじゃな」
「そうだな」
 これはわかる正道だった。
「それはな。はっきりとあるな」
「それじゃよ。人間の子供と同じなのじゃよ、妖怪は」
「心が同じという意味だな」
「やっぱりわかるんだ、この人」
「頭はいいね」
 妖怪達はそれを聞いてまた言い合う。
「だからいいけれど」
「何でこう。表情がないのかなあ」
「とにかくじゃ。妖怪はそういうものじゃ」
 その妖怪達の言葉を後ろに聞きつつ述べる博士だった。
「無邪気での。騒がしいものじゃ」
「童心か」
 牧村はここでまた言った。
「つまりはそれだな。それを持っていると」
「そうとも言うのう」
「ではあれか」
 今度はふとあることに気付いた。 
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