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髑髏天使

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第六十話 最終その十四


「混沌は有ではないことにな」
「それを見越してだったのか」
 神の問いだった。死神の影の口を通しての。
「貴様等が考えを捨てたのは」
「それは違う」
「そうしたことは考えていなかったよ」
 死神と目玉はそれは否定した。
「貴様が我々と同じ考えをするとわかってだ」
「それで対抗しただけだよ」
「それでか」
「そうだ。だがそれがそのまま我々の勝因になった」
「こちらが無になったことがね」
 二人で一つの口で影に話す。
「我々はそれで勝った」
「有に対して無になることでね」
「有になったことを自覚しそれを勝利の要因とみなしたその時にだ」
「君は混沌でなくなっていたからね」
「そうだな。我は混沌でなければならない」
 神も言った。やはり影の口を通して。
「それを忘れていた。迂闊だった」
「ではだ」
「負けを認めるね」
「認める認めないは混沌にはない」
 その混沌の者としての言葉だった。
「ありのままだ」
「最後は混沌として消えるか」
「そうするんだね」
「少し眠る」
 神にとってはその程度のことだった。混沌の原初の神にとっては。
「そして再び目覚めた時には」
「また倒す」
 死神が神に告げた。
「混沌は私が防いでみせる」
「無論我々もだ」
「そうさせてもらうわ」
 魔神達も神に対して言う。目の前の自分達自身を見据えながら。
「貴様等が復活すればだ」
「この世界で遊ぶ為に戦わせてもらおう」
「その時俺はいない」
 髑髏天使は人間として神に返した。
「しかし必ず別の髑髏天使がだ」
「私達と戦うのだな」
「その通りだ。その時にはそうなる」 
 これが髑髏天使の神への言葉だった。
「その髑髏天使と戦うがいい」
「そうさせてもらおう。ではだ」
 次第に混沌の闇を噴き出し終わりだ。そうしてだった。
 髑髏天使の影は赤い炎、死神の影は青い炎にそれぞれ包まれてだ。遂に。
 消えた。何も残らなかった。
 彼等が消え去ったこの時がこそなのだった。髑髏天使達の戦いが終わったということだった。
 それを見届けてからだ。髑髏天使が言った。
「ではだ」
「帰るのだな」
「そうする」
 死神の言葉にも答えた。
「混沌の最後の神が消えたなら」
「この世界も消える」
 そのだ。混沌の世界もだというのだ。
「遂にだ。消えるのだ」
「そうか。そうなるか」
「しかし混沌は残る」
 それは残るというのだ。混沌自体はだ。
「主がいないままだ」
「その司る者がいないままか」
「あの神々はまた蘇る」
 ここでもだ。死神は子の話をした。
「この世界はそれを待つのだ」
「主達の復活をか」
「混沌は消えはしない」
 死神はまた言った。 
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