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髑髏天使

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第五十六話 使長その十八


 そこにだ。全員でいた。姿は戻ると同時に元になった。
 その彼等の前にだ。男がいた。そしてだった。
 彼等を見据えてだ。こう言ってきたのである。
「遂にだな」
「貴様との戦いの時が来たな」
「そうだな。つまりだ」 
 それがどういうことなのかだ。男は彼等にそのことも話した。
「貴様等は遂に混沌の中心に迫ったのだ」
「最後の戦いだな」
「そうだ。そこに迫ったのだ」
 まさにだ。そうだというのである。
「貴様等はそこに迫りそして」
「死ぬというのだな」
「これは忠告だ」
 神としての言葉だった。混沌のだ。
「今のうちに知人には別れを告げておけ」
「別れをか」
「貴様等は間違いなく死ぬのだ」
 だからだというのである。
「そうしておけ。いいな」
「言うものだな」
 それを言われてもであった。牧村はだ。
 平然としてだ。こう返すのだった。
「貴様が勝つと決まっている様だな」
「では貴様等が勝つというのか」
「私には敗北はない」
「それは絶対にか」
「そうだ、絶対にだ」
 それをだ。断言してみせる男であった。
「それはない。別れの挨拶を終えたらだ」
「それならばか」
「来るのだ」
 男からだ。誘いの声をかけたのである。
「待っているからな」
「待たなくても心配はいらない」
 今度は死神が男に話す。
「こちらから出向くからだ」
「それでか」
「そうだ。待つ必要はない」
 男のその漆黒の姿を見据えての言葉だった。
「こちらから行くからだ」
「そうか。それではだ」
「残る三柱」
 残った混沌の神々の数である。
「その貴様等を全て倒させてもらおう」
「ちょっと凄いよ」
 目玉もここで話す。
「今の僕達はね」
「凄いのか」
「とにかく。こちらから行くから」
「無論私達もです」
 老人もだった。男に対して話すのである。
「こちらから出向くつもりですから」
「貴様等もか」
「はい、そうです」
 老人は魔神達を代表して男に話す。そうしているのだ。
「そうさせてもらいますので」
「では。来るのだ」
 男はだ。今は待っているとは言わなかった。それでだ。
 ここまで告げて姿を消してだ。後には牧村達が残った。
 その彼等はだ。男が消えるとだ。
 まずは魔神達がだ。こう牧村に話したのだ。
「それではです」
「最後の戦いがはじまるけれどね」
「今は帰らせてもらう」
 こう彼に言うのである。
「これからです。正念場は」
「最後の最後で、です」
 老人と小男の言葉だ。
「私達もその前にです」
「精一杯遊んできます」
「思い残すことがないようにか」
 人間の考えでだ。牧村は彼等に問い返した。
「それでか」
「そうなりますね」
 老人はそのことを否定しなかった。
「これからは」
「貴様等もか」
 牧村は老人の話を聞いて静かに言った。
「では俺もだ」
「遊ばれますか?」
「遊ぶがそれ以上にだ」
 何をするかというのである。
「挨拶をして回るか」
「挨拶か」
「そうだ、挨拶だ」
 死神にも答えるのだった。
「挨拶をして回る」
「混沌の中心に入る前にだな」
「必ず生きて帰る」
 その考えも述べるのだった。
「何があろうともな。しかしその前にだ」
「暫しの別れだな」
「それ位はしておかないと気が済まない」
 他ならぬだ。牧村の気がだというのだ。
 そうした話をしてだ。そのうえでだった。
 彼は死神とも別れた。そうしてであった。
 混沌の中心に向かう前に為すべきことを果しに入った。それは彼の一つの覚悟でもあった。戦う者としての強い覚悟だったのである。


第五十六話   完


                  2011・4・4 
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