| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

カンピオーネ!5人”の”神殺し

作者:芳奈
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第一部
  三月の戦闘 Ⅳ

 爆発した。

 そうとしか思えなかった。

 鈴蘭が言霊を唱え終わった瞬間、彼女の呪力が桁違いに増加したのだ。それまで、銃弾に呪力を込めるなんて非効率的な方法で攻撃していた為に、目に見えて減っていた彼女の呪力は、戦闘開始前が比較にならないほどに増えていた。

「な、何が・・・!」

 アンドレアは、呻くことしか出来ない。

 常にカンピオーネであるドニの傍にいる彼は、カンピオーネの圧倒的な呪力など慣れきっている。神獣や神々との戦闘の場に居合わせたこともあった。・・・そんな彼の理性が叫ぶ。『こんなことは有り得ない!』と。

 今や鈴蘭の周囲は、体に入りきらずに漏れ出した、圧倒的な呪力の奔流により嵐の様相を呈している。あまりの密度によって、物質にまで影響を及ぼしているのだ。地面は陥没し、建物は倒壊する。ただ其処にいるだけで世界を壊滅させる存在。【魔王】がそこにいた。

「何だ!何だコレは!?」

 叩きつけられる呪力の壁に抗いながらも彼は分析を続ける。他の仲間は、この呪力の嵐に耐え切れず、吹き飛ばされたり、失神したりしている。それが、アンドレアと彼らのレベルの違いを如実に示している。

 確かに、特定の条件で強さを増す権能はあるだろう。例えば、森の神の権能とか。それならば、自身の領域である森にいる場合、それまでよりも強い力を行使できるだろう。・・・だが、

「これ程の力・・・!彼女の権能は一体・・・!」

 仮にも同じカンピオーネである。それなのに、ドニが足元にも及ばない程の呪力を放出するなど、一体どういうことなのか、彼には分からない。如何なる権能を以てすれば、こんな奇跡が起こり得るというのだろうか?

 その時、鈴蘭から漏れる呪力がより一層激しさを増した。突然の事に対処出来なかった彼は吹き飛ばされ、壁に頭を叩きつける。

「ゴフッ・・・!」

 咄嗟に魔術を使って防御したが、衝撃まではどうにもならず・・・彼は気絶したのだった。




「これは・・・不味いかな・・・!」

 一方、ドニは必死に鈴蘭からの攻撃に対処していた。より一層激しさを増した銃弾の嵐。それと同時に物理的な圧力を持って襲ってくる呪力の暴風。しかも、銃弾には先程とは比べ物にならないほどの強力な呪力が込められているのだ。それこそ、【鋼の加護(マン・オブ・スチール)】のような防御系の権能じゃ無ければ、例え神々やカンピオーネであろうとも数秒で存在ごとかき消される程の。

 実際、彼の体も多数の傷が出来ていた。酷いところでは骨が折れている部分もある。このままでは何も出来ずに敗北すると確信したドニは、自身の最強の権能を行使する。

「ここに誓おう。僕は、僕に斬れぬ物の存在を許さない。この剣は地上の全てを斬り裂き、断ち切る無敵の刃だと!」

 【斬り裂く銀の腕(シルバーアーム・ザ・リッパー)】。この銀の腕によって至高の魔剣へと変質した剣に、斬れないものはない。例え、それが物質で無かろうとも斬って見せる!

 彼が剣をひと振りすると、叩きつけられていた呪力の風が一瞬収まった。【鋼の加護(マン・オブ・スチール)】を最大発動したまま、全速力で走る。

 ガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!

 近づけば近づくほど、受けるダメージは増える。・・・が、もう彼はそれを気にしない。

 キンキンキン!!

 と澄んだ音を立てながら、急所に当たる銃弾だけを斬り裂いていく。

「嘘!?」

 雨のように降り注ぐ銃弾を斬り裂くという絶技に、驚愕する鈴蘭。彼女の驚いた声に、ドニはほくそ笑んだ。

「やっと一泡吹かせることが出来た!」

 既に彼我の距離は、10mも無かった。カンピオーネならば、一息で詰めることの出来る距離だ。・・・つまり、

「僕の、距離だ!」

 【鋼の加護(マン・オブ・スチール)】を弱めにする。体の硬度は低くなるが、体重がかなり軽くなった。それにより、今まで以上のスピードを出せるようになった彼は、一足で彼女の懐に飛び込む。

「や、ばっ・・・!」

「ハッ!」

「あ、あああああ!?」

 一閃。彼の剣は、鈴蘭の胴体を切り裂いた。鈴蘭が咄嗟に後退した為に、運良く真っ二つにはならなかったが、【斬り裂く銀の腕(シルバーアーム・ザ・リッパー)】による傷は、カンピオーネの再生能力を多少阻害する。慌てたドニが権能を停止してみても、血が止まらない。流石のカンピオーネの再生能力でも、これほどの傷を短時間で再生するなど不可能のようだ。このままだと助からない可能性もあった。

「・・・あ!マズイ!つい本気になっちゃった!ど、どうしよう!?」





 その時、アンドレアも気絶から立ち直っていた。しかし、これは幸運なこととは言えなかった。

「バカ野郎ーーーーーー!!!」

 何故なら、自分の主であるドニが、【聖魔王】鈴蘭を切り裂いた場面を見てしまったのだから。

「な、何てことを・・・・・・。」

 彼の言葉には、絶望しか含まれていなかった。流石に、幾らなんでも殺してしまうとは思って居なかったのだ。いや、例え死んでいなかったとしても、これ程の傷を負わせるなどあってはならない事なのだ。コレが、カンピオーネが一人しかいない国ならば問題も少ないだろう。文句を言ってきても、力でねじ伏せる事が出来る。・・・だが、この国は【魔界】と呼ばれる国なのだ。

 カンピオーネが四人も存在する、前代未聞の国。その国のカンピオーネを殺害したとなれば、必ず戦争になる。そうなったら終わりだ。幾ら【剣の王】ドニでも、三人のカンピオーネを同時に相手するなんて不可能である。

 しかも、今回の件は完全にこちら側に非がある。勝手に支配地域に侵入して、喧嘩吹っかけて、追い出そうとしたカンピオーネを殺しているのだ。120%こちらが悪い。この状態では、他のカンピオーネに協力を依頼して、共闘することすら不可能だ。

「あ!アンドレア起きたんだ!ねぇどうしよう!?」

「・・・知るか・・・・・・。」

 一気に十歳は老け込んだように見えるアンドレアは、投げやりに呟いた。

「兎に角病院に運ばないと!あ、でもこの空間から出るのって、どうすればいいんだろう!?」

 ドニが喚いている中、アンドレアは目を見開いていた。それは何か、信じられない物を見たような表情だった。

「ねぇアンドレア!?話を聞いてる!?」

「ど、ドニ!後ろ、後ろだ!」

 ん?と振り返ろうとしたドニは、突然の衝撃で吹き飛ばされた。

「な!?」

 途轍もない速度で吹き飛ばされたドニは、ビルの壁に衝突した。流石というべきか、咄嗟に【鋼の加護(マン・オブ・スチール)】を発動していたので大きなダメージは受けなかったが。

「痛~・・・。一体何が・・・。」

 彼は、自分を吹き飛ばした存在を見た。

「あ、ああああああ!」

 そこには、五体満足で、腕を組みながら立っている鈴蘭が居たのだ。

「まさか、これくらいで私を殺せるとでも思っていたのか?」

「は、ははは・・・。」

 笑うしかない、とアンドレアは思った。恐らく、神殺しになってからこの三ヶ月の間に、蘇生能力を持つ神を殺害していたのだ。そして、それが彼女の命を救った。彼らの運命も救った。

 彼女が生きていた以上、最悪の事態は避けられるかもしれない。そこは自分の交渉術次第だが、なんとしても戦争だけは回避してみせる・・・と、この時のアンドレアは安堵しきっていた。

 だから、馬鹿(ドニ)の行動を予知出来なかった。

「変だな・・・。確かに切り裂いた筈なのに。手応えも十分あった。もしかして、翔希の『幻覚』みたいに、五感すら騙す催眠系統の権能なのかな・・・?」

 ドニは、【斬り裂く銀の腕(シルバーアーム・ザ・リッパー)】を発動し直していた。そして、鈴蘭の元へと歩いていく。

「は?・・・ドニ、ちょっと待て。やめろ!もうこれ以上問題を起こすのは止めてくれ!」

 彼の必死の叫びも虚しく、ドニは彼女の元へ辿り着く。

「違うよ。私の権能はそんな能力じゃない。確かに貴方の剣は私を切り裂いた。それは確実。」

「でも、キミの服すら斬れていない。」

 ドニが催眠系統の権能かと疑った理由がコレだ。確かに斬った筈の鈴蘭。その時、メイド服ごとバッサリと叩き切った筈だった。なのに今は、傷どころか血液すら付着していなかった。アレだけ大量の血を流したのに。

「この服は、今修復したばっかりなの!全く、女の子のお腹を斬り裂くなんて鬼畜にも程があるでしょう!?そんな悪い奴にはキツイオシオキが必要だよねぇ!」

 ニヤリと笑う鈴蘭とドニ。

 ムンクのような顔になりながら『止めてくれ』と叫ぶアンドレアを無視して、事態は進んでいく。

 怪獣大決戦の、第二ラウンドが始まろうとしていた。
 
 

 
後書き
次で鈴蘭の権能が明らかになります 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧