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私 あの人のこと 好きなのかも やっぱり好きなんだよ 昔からー

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3-8

 翌春3月 私は合格していて、独り生活になることをお母さんも、もう諦めているみたいだった。受験する前には、お父さんにそのことを話していたみたいだった。その時、お父さんが私に

「もう 女でも自分に技術を持って、第一線で活躍している時代だ お父さんは反対しない 真織も頑張ってな」と、普段、私にはまともに話したことは無かったのだけど、言葉少なげに話し掛けてくれていた。だけど、どうも、お母さんは伊織利さんとのことは、打ち明けていないみたいだった。

「なぁ お母さん お父さんって、マオのこと 嫌いなんかなぁー あんまり 話掛けないよねー」

「そんなことないよ! マオのことは 可愛いって言っているよ でもね 我が子ながら 眩しくて、まともに向かえないんだってこと 言ってたことあったなぁー それでカナァ もともと無口でそっけない人だからね」

 私が、受験の為、出発する時、お父さんが京都駅の新幹線乗り場に見送りに来てくれていた。私が席に座った時、しきりにホームから手振りを交えて何かを話し掛けてきてるんだけど、聞こえない。そのうち、電車が出てしまって、しばらくするとメールが来た。お父さんとはラインで繋がっていないのでショートメールだ。(となりは、おっさんだから気をつけろ)って。お父さんは、それなりに私のことを気にしているんだと、少し笑ってしまった。確かに、隣の席は40代位のビジネスマン風なのだ。さっきから、お弁当を食べていて、食べ終わると、私に

「さっきの 窓の外 お父さんですか? 心配そうでしたね」

「えっ あっ はい」お父さんから気をつけろとメールが来ていたので、私は出来るだけ関わらないようにしようとしていたのだが

「お嬢さんは旅行?」

「あー ちがいます 受験でー」

「そうかー だから 余計に 心配だったのカナ? 僕の娘もね 今年 受験だってね 広島の大学に行くことになったんだ 僕のとこは神戸なんだけどね 瀬戸内海の近くが良いんだってな 神戸だって瀬戸内海なんだけどなー ねっ?」と、この人 私になんとか話し掛けたいんだ。私 警戒しながら

「娘さんは 独り暮らしするんですか?」

「そーなんだよ 反対したんだけどね 無駄な抵抗だった! 父親なんて わが子から お願いします 許してください なんて涙出されると あっけなく崩れるもんなんだよ 仲が悪くなりたくないもんなー」

「そんなもんなんですかー 哀しい?」

「そりゃー そうだよ 3人兄弟でね 女の子ひとり 末っ子なんだ 余計だよ お嬢さんも合格して、親元を離れることになるんだろう? さっきのお父さんの気持ち わかるよ」

 それからは、私も警戒心がなくなって、娘さんのこととか親の気持ちとかを話していて、東京駅で別れる時も 頑張ってな合格を祈っているよ と 言ってくれていた。そこから、東北新幹線で1時間弱。駅に降り立った私は、少し驚いていた。思っていたより、ずっと都会っぽく、ビルが多いのだ。私が田舎者なのかと。とりあえず、キャンパスへの下見と、試験会場を確認して帰る時、校門のとこで剣道部だというサークルの人に呼び止められて 

「明日から 試験ですよねー 竹刀を振ってみませんか? 肩の力が抜けますよ!」

「あっ あー 私 けっこうです」

「みんな 結構ですって言うんだけど ここは栃木 ケッコー 日光なんだよね!」

「はぁー? ・・・」無視して通り過ぎようとしたんだけど

「まぁ まぁ この竹刀も 振ってよって泣いているんだよ」 私は、振るって言葉に余計に反応していたのだ。

「振ったら・・・それでも・・・受け止めてくれますか?」

「えっ はぁ まぁ 面を被って良いんなら・・ 面で」

 簡単に持ち方と打ち込み方を教えてもらって・・・めん! じゃぁ無くて 勝つって言うんだよって・・・・私は、教えてもらった通りに 思いっ切り 「カツ!」と、振り下ろした。ブキッというような不気味な音がして・・・

「ははっ なかなか君はすじがいいよー きっと 合格するよ! 入学式で待ってるからね」

「ちゃんと 受け止めてくださったんですか?」

「ああ ちやんとな」

「良かったー ありがとうございました」

「? ? ?  君は変わってるねぇー 絶対に合格して 剣道部に来てな! 君みたい可愛い娘 剣道が似合うよ」

「でも お面で顔隠すんでしょ それに、それって 汗臭そうで 嫌やー」

「うっ まぁ そのとおり や」

「でも 勇気もらったみたい ありがとうございました」と、宿舎の駅前のホテルに向かったのだ。そして、待っててよね 伊織利さん 私 あなたの元に行くんだからと 試験に臨んだのだった。 
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