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帝国兵となってしまった。

作者:連邦士官
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 準備にもらった期間中に俺はあの国民の麦の会と連絡を取り、必要だろう物資や情報を集めていた。あの期間は実質的な休暇ではあるが仕事をしているように見せないとならない。頼んだものは意外だがそれはすぐに届くこととなった。

 なんでも、国民の麦の会が戦場だからと独自の護衛を連れて、補給部隊としてバークマンの期待に沿った補給を提供しているらしく、補給部隊を守っているのはパウラーという退役した軍人が指揮を採り、多くは退役した軍人で構成される武装輸送隊とのことで、独自に開発した戦車で武装をしているらしい。顛末はこうだ。

 国民の麦の会が独自に持っているトラクター技術の転用により、安く頑丈で軍馬のような戦車を作れないか機関博士のリーゼル博士と街の技術者で麦の会が買収した車工場の工場長、クルツ・T・ルサーホルへに依頼した時に接触してきたのが秋津島の技術者畑富美男少佐と聞いた。

 3人が中核の研究班により、空冷リーゼルエンジンを完成させたらしい。
その結果できたのが件の戦車だ。下手な部隊より強いらしい。どんな戦車か実物を見てないからなんとも言えないが。

 高級志向の空冷リーゼル搭載型とやすいガソリンエンジン型の2パターンあるらしい。装甲厚も違い、溶接と避弾経始を取り入れ、対戦車型廉価版の駆逐戦車、歩兵支援用の廉価版の突撃砲、機銃を並べた対空戦車なども配備され、バークマンが高い評価を与え。特に対空戦車の4連装2.5cm対空機銃を敵地の陣地やせり出してきた敵兵に撃ち込んだことを評価しており、その戦果はイスパニアの屠殺機と言われるほどの恐ろしいものだったらしい。

 補給はかなり手厚くなり、帝国で刷られた各種朝刊が夕方には全て主要な部隊には届いている。中でも人気なのは娯楽記事じみている麦の会会報だ。麦の会は麦の会で戦時病院も開いているらしく、敵味方問わずに治療をしているらしい。

 頼んだものがやってきた。この戦いに必要なものだ。
 
 そんな話を聞いたりしているうちに、あれから本当に長いようで短い一週間を体験した。俺自体はただ寝ていた。そう寝ていたのだ。任された兵士たちにも一律、一週間の休暇を出し、訓練費で宴会を開いた。寝るのは問題の解決を早める。寝るという行為は頭を整理するのと同じだ。だからこそ必要なのだ。

 そして、そのたった一週間にも世界は大きく動いている。この間に読んだ色々な資料から得た情報を顧みるに、事態も物事も刻一刻と変わっている。何より変わったのはその戦況だ。それはイルドアのバルブ総司令による歴史に残るだろう深夜に1個軍の上陸成功があった。

 だが、こちらを一変させたのは一番は帝国議会とダキア議会がイスパニア共同体に対して、論拠としてルテラ証言を採用し、正式に国家として宣戦布告を行ったことだ。

 この宣戦布告により一気に、帝国とダキアでは戦時経済に移行をし、この戦いは限定戦争ではなく、バークマンの指導のもとに総力戦の構えを整え両国共に国家戦略統計局を創設をしたらしい。それらの膨大な処理を行うためにノルマンとズセなどの人物からなる計算機械の開発も進んでいるとバークマンからの手紙に書いてあり、バークマンから俺にどうすればいいとか訳の分からない話ばかりきたので、個の能力が低いならリレー方式で真空管でも使えばいいんじゃないのかと適当に返した。

 帝国とダキアの宣戦布告を見た、イルドアも正式にイスパニア共同体に対して宣戦布告を発布したが彼らの主戦場はイスパニアではない。戦時動員によって出来た人的な余裕で動かせた11個師団を使ったイスパニア共同体の領土である南方大陸植民地が主戦場で帝国のスパイからの報告によれば多くが新装備であり、戦車も多数見られ帝国から買い付けたバイクや車により完全な機械化を済ませており、帝国や秋津島からでも果てはフランソワなどからも買った航空機により、かなりの数の航空団を作り送っているらしく、イルドア内からは一国多国籍航空団と皮肉を言われてるらしい。帝国とダキアがイスパニア本土にかまけている内に植民地を得るために編成されたのだろうと帝国の参謀本部は分析していた。

 司令官部にアルモンド・ディアースとエミリオ・ボルーノ、グラッイアーニやメルセなどを送り、バルブの部隊の比ではない人材と装備を送っているとのことだ。

 そして極東では帝国との同盟を根拠に秋津島皇国もイスパニア共同体に宣戦布告をし、宣戦布告と同時に彼らは準備していたであろうイスパニア共同体に属する南洋諸島とフィリピン的な島の攻略を即座に開始し、イスパニア共同体の植民地軍は世界各地で負けているらしく、この流れに乗ったのかまた蛮行許しがたしの世論により、非公式ながらフランソワの退役軍人会からも反イスパニア共同体勢力に義勇軍が送られている。同時にフランソワ政府はイスパニア共同体の非合法とイルドアの脅威から現地民が住む南方大陸植民地を保護するという名目でイルドアと示し合わせたかのように、イスパニア共同体植民地を分割した。

 連合王国はというと連合王国の市街地でルテラたちがやった演説にざわついており、先に保護していたマカロネシアしか確保できずに沈んでいた。

 一方で反イスパニア共同体義勇軍には連合王国の貴族の中からもやって来ていた。アカと手を結んだ連合王国政権の非難は富裕層からゆっくりとやってきており、連合王国共有財産党が公認を得たとしてデモ行進を行い、連日左派労働組合と右派労働組合が衝突を繰り返して、退役軍人会が両者を鎮圧しているようだ。

 そして、義勇兵は連合王国の隣の島などからも‥‥この戦いが帝国やイルドア、秋津島などを含めて名目に使っているイスパニア共同体に虐げられた民族の独立の戦いでもあることから、アジアや南新大陸などからも人が集まっている。

 相手はこちらに期待してやってきている義勇兵の性質上、こちらも礼儀を尽くす。こちらの心象を良くするためだ。そして、司令部からの命令で彼らと会食する運びとなった。

 参加者はというとリーダー格しか来ていないがあの連合王国の隣の島エーレンの独立派として語られるパブリク・ピエラス、マルセル・コリスなどを主要なメンバーとしたエーレン義勇兵団。ルメリアでの独立活動をしているヨサップ・ブラウス率いる半島人民戦線、エンバー・ホクスターのエールランド社会主義連合、アラブの独立運動家アブデル・ナッシャーのアラブ連盟、ルメリアからやってきた帝国に習って祖国を変えたいと語るカマル・エタータークの大国民党、南新大陸のヤ・ゲーラその他にも何人もいる。

 彼らの中では俺はこのイスパニアにおける民族独立戦争の英雄であり、更には併合される運命だったダキアを同列に扱い、ダキアの革命と改革を指揮した人物となってるらしい。そんなことはしてないし、そんな権限もないので正直、よくわからない。何を革命するのかは知らないがダキアは急速な貴族権の停止と民主議会の制定など帝国を手本にした改革はしてはいる。が、俺はあまり関係ないはずだ。


 「妄想がすぎるのよな。」
 何を一体、この下級な中佐風情ができるというのだろうか?帝国新聞には帝国初挙国一致政権が誕生やら、帝国ダキア一心同体戦争の土と血を分け合った兄弟国家と言う言葉が踊っている。ダキアと帝国の関係は軍事同盟を越えた同盟ではある。ダキアの旧式兵器は戦時体制に移行した為に無くなり、帝国の払い下げにすべて切り替えられ、余った旧式の兵器はカルターニャ、ガスコ、バレルシガ、リーズボルナ独立派のポートランド独立政府を名乗るアントニー・サラザーたちに渡されて軍備を整えていた。

 イスパニア共同体、国家解体戦争と化しており、南部の反乱軍たちが激しく戦えば戦うほど北部のこちらの遊撃戦は有利に進み、勝利の音を鳴らす軍靴は近づいていた。

 着替えを済ませると立ち上がり、会合に向かう。なんで、独立運動家達が集まってるのだろうか?割と帝国とか名乗ってる割に帝国でもなければ神聖でもないからだろうか?帝国内部には独立派があまりいないのはガバガバだからなんだろうな。

 身分もガバガバならやり方もガバガバでそれを能力主義、質実剛健と誤魔化してるフシがある。

 ともあれ、彼らと会うのは気後れする。テロリストなんだよな大半が何なんだろうな。しかも、この台帳にあるモーズレリィーってモズレーじゃないのか?なんでこんなにコイツらは、来てるんだよ。おかしいよな、むしろイスパニア共同体側じゃないのか?これだと連合王国の嫌がらせに対して植民地独立させてやるけどお前、覚悟はいいんだろうな!こっちも死ぬかもしれないがお前も死ぬぞ!ってやり返しているようだ。

 バランスが取れない弥次郎兵衛かつ国内産業海外に移して植民地が本体化してる列強を名乗る実質アジアが本体のアヘンアヘン国家の未来が霧の国連合王国は別にいいとして、アジア拡大をして、フィリピン的な島とミクロネシア的な島々を抑えた秋津島に合州国が何をするかだ。秋津島はこの戦いで電撃的に完全に東南アジアをバスタブ化し、大陸から合州国へ向かう航路を掌握して見せたのだ。

 そして、独立協力として様々なことをやっているらしく、ダキアモデルという謎の単語で締めくくられる独立援助と政財界と産業に自国企業の介入とインフラ整備として紐付きの土建工事を推し進めている。更に言えば、秋津島は古い工作機械を彼らの土地に輸出し、帝国へかなりの工作機械の発注をしているようである。

 現実逃避はさておいて、独立主義者たちに会わねばならない。立ち上がり、準備を始める。着替えたのはスーツだ。

 会場につくと、周りは軍服だらけだ。俺だけがスーツを着ていて、周りは軍服で浮いている。それにしてもなんで呼ばれたんだ?明らかにお題目は怪しすぎる。民族自決とか言われてもな。

 「来ていただいて大変、申し訳ない。私が貴殿らが呼んだフリードリヒ・デニーキン・ジシュカである。どういう縁かは分からないがここに来たのも皆同じ縁。カルターニャ、ガスコ、バレルシガ、リーズボルナの独立という為にこちらは進んでいる。元は邦人保護の為であったがこの国はいや、国と言うには形が違う。イスパニア解放戦線の創設だ。君たちの希望に添えるかは分からないが、彼らは新たなる枠組みの為に歩み始めた。この世界は力なきものは奪われ、力あるものは力に理性を奪われる。皆が搾取され奪われている。旧大陸は広い。お互いに分かち合い、戦いを避けることもできるはずだが、モスコーなどの一部の列強がイスパニア共同体を破壊した。これには連合王国も関わっている。」
 続けて、彼らの前でコーヒーを飲むが苦味に眉をひそめた。フィルター壊れてるんじゃないかこれ?

 「連合王国が関わっていると!?それは‥‥?」
 説明するにしても長くなりそうだから席につくのを促す、席は丸いのと四角いのが2つ並んでいたが近くあった丸い席についた。

 「みなさんも好きな席に座るといい。」
 席に座ると人種の坩堝だ。一応こちらが座るといったのだから、彼らの分のコーヒーを出そうと思ったが苦いのを思い出し、秋津島の将校が送ってきた緑茶を出す。

 「コーヒーや紅茶はだめなようだ。」
 そう言うと何人かは涙を流していた。情緒不安定かな?強化人間かなにかか?疑問しかわからないが緑茶を全員分注ぐ、そして、俺の席の両端に座った人物を見る。

 モーズレリィーとマルセル・コリスだ。多分仲が悪いだろう。巻き込まれるのはゴメンなので適当な席に座っていた人物をそちらに座らせ、両隣を見る。南方大陸のアラブ人風な人と黒人だ。彼らなら喧嘩はしないだろう。その間に座り、彼らにも茶を渡す。

 「なぜこちらに?」
 恐らく、アブデル・ナッシャーだろう。彼に対して俺が面倒事は沢山だからなんてことは言えない。

 「何故と聞く時点でおかしいだろう?皆、自由を求める同志だ。座るところも自由じゃないとな。旧大陸人は旧大陸人で固まって座るのは固定概念に過ぎない。旧大陸も南方大陸も地図上での上下しかない。人間なら尚更だろう?我々を隔てるものはなにもないのだからこちらに座っても問題ない筈さ。」
 そんなことを言うとアブデルだろう人物は高笑いをはじめその場の人物のほぼ全てが笑い出した。

 「中佐はそんな人なのだなと確かにそうだと言えますね。気付かないうちに中佐はあちらに座ると思ってましたよ。」
 いや、絶対嫌なんだがあんなギスギスしそうな席。

 「そんなことはない。私の心はここにある。あちら側にはないさ。」
 会談は始まったばかりだ。なんでこんなことになったんだろうな?世界情勢を鑑みるとゲームじゃないんだぞ!ハーツオブアイアンや提督の決断じゃないんだからあちこちで戦うなよ!それになんでこんな大事になるんだよ!おかしいぞ‥?実質的にイルドアと軍事同盟的な何かになりつつあるし、原作よりかなりまずいことになるんじゃないのか?

 横を見ると窓際に飾ってあったサボテンが花をつけていた。

 
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