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魔法戦史リリカルなのはSAGA(サーガ)

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【第一部】新世界ローゼン。アインハルト救出作戦。
【第1章】教会本部、ヴィヴィオとイクスヴェリア。
   【第4節】ヴィヴィオと三人のシスターたち。(後編)



 そこで一拍おいて、ヴィヴィオは突然、『ところで!』と大きな声を上げました。ヴァスラが、びくりと身を震わせて顔を上げてから、また普通の口調でこう続けます。
「ヴァスラさんは、どうして第34回以降の大会にはゼンゼン出場しなかったの? 初出場でいきなり都市本戦にまで行った、それこそ『ミウラさん以来の』期待のルーキーだったのに。……もしかして、私のせいで格闘技自体をやめちゃったの?」
「いえ! それは、全然、ヴィヴィオさんのせいでは無いんです。実は、あの後、年が明けてからすぐに父方の祖父と伯父が亡くなり、次男だった父が実家を継がざるを得ない状況に陥りまして。……それで、家族そろって父の故郷のセクターティに引っ越してしまったんです。
 自分としては、やめるつもりなど全く無かったんですが、セクターティはそもそもDSAAには加盟していなかったものですから……」
〈管11セクターティ〉は、時空管理局が成立する以前の時代には(ほんの180年ほど前までは)ミッドチルダを始めとする〈九世界連合〉とは政治的に激しく対立していた世界であり、今もなお『ミッドへの盲目的な追随(ついずい)を、快く思わない』という住民が過半数を占めている世界です。
 ミッドが主導するDSAAには『あえて加盟しない』というのも、〈セクターティ〉の人々にとっては、むしろ「当然の選択」だったのでしょう。

「あ~、そうか~。『主要な世界』のすべてが加盟してる訳じゃないんだった~」
「ええ。それで、自分もIMCSへの参加はそれっきりになってしまったんです。自分なりに未練はあったんですが、十代前半の未成年者にはどうすることもできませんでした。
 それで、それからはもっぱら〈セクターティ〉独自の小さな大会に出場したり、自分なりに魔法や棒術の訓練に励んだりしていたんですが……その後は、何と言うか、その……いろいろあって、高等科を卒業してから、17歳で家族とは縁を切り、現地の聖王教会本部に転がり込んでシスターになりました」
 ヴィヴィオは、ファラミィの離婚の話と同じように、一体何がどう『いろいろあった』のかは、あえて訊かないことにしました。

【実は、ヴァスラの父親は「セクターティでは有数の名門」であるノーブリュグゼ家の次男坊で、『一般人の恋人との結婚を両親から反対されて、駆け落ちも同然にミッドチルダに逃げて来た』という経歴の持ち主でした。
 彼は、ミッドで無事に恋人と結ばれ、1男2女をもうけ、親子五人で(つま)しくとも仲良く幸せな生活を送っていたはずだったのですが……両親と長兄とその妻子が急死してセクターティに引き戻されてからは、巨大な屋敷に住み、多くの使用人たちに囲まれ、『金なら腐るほどある』という生活をしているうちに、やがて人格(ひと)が変わってしまいました。
 あるいは、ミッドでは妻子のために我慢をしていただけで、こちらの方が「本来の人格」だったのでしょうか? また、当時13歳の「多感な少女」だったヴァスラにとって何よりも耐え難かったのは、本来は一般人だったはずの母親までもが、じきにそれに感化されて人格(ひと)が変わってしまったことでした。
『あんなの……私の知ってる父さんと母さんじゃ無い!』

 そんな家庭環境に耐えきれず、ヴァスラは地元のジムに入り(びた)って、かなり無茶なスケジュールで試合を繰り返し……頭部に衝撃を受け続けているうちに、やがて「グラックハウト症候群」を発症してしまいました。
 そして、ヴァスラは、父親が(かげ)でこう言っていることを知りました。
『せっかく俺が政略結婚の相手を探してやっていたのに、あんな変な病気にかかりやがって。あれ以上デカくなったら、商品価値が落ちるだろう!』
 さらに、兄までもがすでに「向こう側の人間」になっていると知って、ヴァスラはついに「ノーブリュグゼ家」とは縁を切る決意を固めました。
 しかし、セクターティには、ミッドのような「法定絶縁制度」がありません。そこで、ヴァスラは高等科を卒業すると同時に、()()()のままで地元の聖王教会に駆け込み、そのまま「出家」しました。
 後悔など微塵もありませんが、ただ一つ「心残り」があるとすれば、それは、愛する妹フォルナをあの家に残して来てしまったことです。】

 そして、ヴィヴィオが無言のまま小さくうなずいて見せると、ヴァスラは床にひざまずいた姿勢のまま、さらにこう言葉を続けました。
「それから4年ほどして、昨年の今頃には、自分も〈修道騎士〉として正式に叙任(じょにん)されたのですが、ちょうどその頃、前年に〈本局〉の方へ転属になっていた管理局員の友人から、何かの拍子にヴィヴィオさんの話を聞いたんです。『今は無限書庫で上級司書をしてるけど、何だか少し右膝が悪いらしい』と。
 それ以来、『やはり自分のせいなのか』と、ずっと気になって、『時間が()いたら、すぐにでも〈本局〉へ行って、面会を申し込んで』などと、もう毎日のように考えてはいたんですが……」
「まあ、修道騎士の一年目ってのは、どこの教会でも、基本的に休暇なんて取れないからねえ」
セインは肩をすくめつつ、そう助け(ぶね)を出しました。
「あ~。そう言えば、セインも一年目は……〈エクリプス事件〉の前の年だったっけ? 何だか、ゼンゼン身動きが取れずにいたよね」
「うん。あたしは〈JS事件〉以来の『保護監察処分』のせいなんかもあって、正式な叙任は随分と遅くなっちゃったんだけどね。あの年は、イクスのお世話まで、しばしば他人(ひと)任せになっちゃって……ホント、大変だったよ」

「それで、二年目の今年は、たまたま騎士団長の方から『お前は総本部の方で少し修業をし直して来い』と言われまして……それで、こちらへも事前にその旨の連絡をしておいたのですが、三日前になって思いがけずカリム総長から直々(じきじき)にシスター・ユミナが受けたのと同様の御連絡をいただきまして……即座にお受けしたという次第です」
「なるほど~。そういう流れだったんだ」
 ヴィヴィオはようやく「これまでのこと」について納得がいったようです。
「じゃあ……ヴァスラさん。取りあえず立って。シスターが『一介の民間人』を相手にいつまでもひざまずいたままでは異常(おか)しいでしょ?」
「え? ああ! はい。すみませんでした」
 ヴァスラが慌ててヴィヴィオの手を離し、立ちあがると、セインはまたすかさず「これからのこと」について説明を加えました。

「ああ。それでね、ヴィヴィオ。実を言うと、あたしは他にも、以前からカリム総長に頼まれてる仕事があってさ。そちらの方もぼちぼちと進めて行かなきゃいけないんだよ。
 まあ、そちらは、それほど急を要する仕事って訳でもないみたいだから、これからも食事だけは毎回、責任を持って作らせてもらうけど……これから先、特に昼の間、ヴィヴィオたちのことは、こちらの三人に任せっきりになっちゃうと思うんだ。……別に、大丈夫だよね?」
「うん、大丈夫だよ。私、別に『要介護』って訳じゃないんだから。(苦笑)」
「でも、まあ、今は子供を(かか)えた大事な体だからね。……それじゃ、あたしの担当は、もっぱら食事と栄養面ってことで」

 セインはそう言って視線でファラミィに合図を送り、シスター・ファラはそれを受けて言葉をこう引き継ぎます。
「わたしの担当は、セインさんのお手伝いと雑務一般。あとは、おしゃべり相手ですね。(笑)」
 これには、ヴィヴィオも思わず笑顔を浮かべました。

 次は、ユミナの番です。
「私の担当は、主にヴィヴィオさんの健康管理になります。整体師の他にも、いろいろと資格を取ってありますから、何か問題が生じたら……心理的なことでも身体的なことでも結構です。かかりつけの医師だと思って、何でもすぐに、私に言ってくださいね」
「あ~。それは助かります」

 続けて、シスター・ヴァスラは右の拳を左の胸に当て、ほとんど「忠誠のポーズ」を取ってこう語りました。
「自分の担当は、もっぱら身辺警護です。自分は昨夜、カリム総長から『ヴィヴィオさんがテロリストから狙われている』という話を初めてお聞きしたのですが……どうぞ、御安心ください。いざとなったら、この身を盾にしてでも、必ずや自分がお護りします!」
「いやいや、そこまで悲壮な決意は固めなくていいから! 『狙われる可能性がゼロではない』というだけで、実際には何も起きない可能性の方がはるかに高いんだから!」
 ヴァスラのあまりにも真剣な口調に、ヴィヴィオはちょっと引いています。
 それでも、ヴァスラが何やら寂しげな表情を見せると、ヴィヴィオは即座にこう言葉を続けました。
「それより、ヴァスラさん。修道騎士ってことは、棒術も得意なんだよね?」
「そうですね。修道騎士にとっては、ほとんど『必修科目』のようなモノですし。それ以前から、個人的にも、格闘術と同様に『多少は』たしなんでもおりましたので、まあ、それなりに」
 実際には、これは「相当に」謙遜した表現です。

「それなら、私たちにもちょっと教えてくれないかな? 私も少しぐらいは体を動かした方が良いだろうし、妹たちも元々あまりじっとしてることの得意な方じゃないから」
「ああ。そういうことでしたら、喜んで。……しかし、そちらのお二人は、すでに管理局で働いてらっしゃるんですよね?」
「うん。キャリアはまだほんの2年ほどだけどネ」
「ですから、棒術も、まだ言うほどの経験はありません」
「覚えておいて損は無いと思うけど……二人とも、どうかな? 私と一緒に少し体を動かしてみない?」
「もちろん! こんな機会をわざわざ見逃す手は無いヨ」
「でも、私たちはともかく、姉様はあまり無理をしないで下さいね」
「うん、大丈夫。……という訳だから、ヴァスラさん。早速、今日の午後から、よろしくお願いしますね」
「解りました。それでは、棒術用の(こん)を人数分、用意して来ます」
「ああ。それは、あたしがやっとくよ。三人はこのまま昼食まで、ヴィヴィオと昔話でもしてな。……ところで、棍は四本でいいんだよね?」
「えっ? ……ああ。はい! わたし、そういうの、ゼンゼン駄目ですから!」
「私も修道騎士じゃありませんし、元々は『見る側』専門だったんですよ」
 ふと目が合った拍子に、セインから問いかけられて、ファラミィとユミナは慌ててそう答えました。


 そして、またイクスヴェリアの分身がやって来て、カナタとツバサを散歩に連れ出した後、四人はセインに言われたとおり、昔話を始めました。
 まずはアインハルト執務官の話から始まって、話題は当時のIMCSに移ります。
 ファラミィは当時からあまり陸戦競技会の方面には関与していなかったので、しばらく聞き役に徹していましたが、ユミナの解説が一段落したところで、ふとこんな疑問を口にしました。
「でも……私のような部外者が横から言うのも何ですけど……私たちが学生だった頃に比べると、最近はIMCSの人気って少し下火になってませんか?」
「え? ミッドでは、そうなんですか?」
 ユミナも88年からずっとリベルタにいたので、ミッドの近況は今ひとつよく解っていません。

 ヴィヴィオはそんな二人の疑問にこう答えました。
「う~ん。ミッドでの人気が少し下火になってること自体は、悲しいけど、事実ね。理由はいろいろあるんだけど、やっぱり、直近(ちょっきん)では四年前の『テッサーラ・マカレニア事件』の影響かなあ?」
「テッサーラ・マカレニアって、確か、アインハルトさんが引退した後に、都市本戦で連覇した人ですよね? その次の年には、少し変な形で引退した……」
「……ああ! 自分が最後にKOされた時の相手選手ですね?」
 ユミナとヴァスラの声に、ヴィヴィオは大きくうなずきました。
「無所属の選手だったから、引退後はしばらく名前を聞かなかったんだけどね。彼女はその後、薬物中毒で傷害事件を起こした挙句、逃亡先でそのまま中毒死しちゃったのよ」
「「ええ……。(絶句)」」

【これは、()いて日本に当てはめれば、『夏の甲子園で母校を優勝に導いた立て役者が、ほんの数年後に麻薬で身を持ち崩した』といった感じの事件です。悪い意味で、一般世間の注目を集めてしまったのも無理は無いでしょう。
 もしも日本で現実にそのような事件があれば、風評被害が「高野連」や「夏の甲子園」そのものにまで及んでしまうのと同じように、新暦91年以来、DSAAやIMCSもさまざまな風評被害を受けていたのでした。】

「他にも……確か、私の膝が壊れた次の年にも何か似たような事故があって、クラッシュエミュレート・システムの安全性に疑問の声が上がっちゃったこととか……。それから、医学的な根拠は全く無いんだけど、『大人モードへの変身魔法は小児(こども)の体の自然な成長にとって、むしろ(さまた)げになる』なんて話が出て、多くの親たちがそれを()に受けてしまった結果、自分の子供の出場を応援しなくなっちゃったこととか……。いろいろな理由が、少しずつ積み重なったんだと思うわ」
「ああ。その風説なら、私も聞いたことがありますけど……。やっぱり、あれって、根拠の無い話だったんですね?」
 ファラミィの声にも大きくうなずいて、ヴィヴィオはさらに説明を加えました。

「うん。ごく大雑把に言うと、大人モードへの変身魔法は元々、『自分が大人になった時の姿を明確にイメージした上で、それをバリアジャケットのように実体化させて身にまとう』みたいな魔法だからね。もちろん、それなりの魔法資質も必要なんだけど……そうしたイメージにはどうしても『理想像』が混入するし、実際に大人になった時に、小児(こども)の頃にイメージしたとおりの姿にはならないことも意外と多いんだ。
 その点を勘違いして、理想化されたイメージを『本来のあるべき姿』と思い込んでしまうと、実際に大人になってから『こんなはずじゃなかった!』とか言い出すのよ」
「それで、自分の姿が理想どおりにならなかったのを、魔法の副作用のせいにする、という訳ですか? 何だか身勝手な話ですねえ」
 ファラミィも、さすがに呆れ顔です。
「まあ、最初はただ『誰かが軽い気持ちで愚痴を言った』というだけのことだったのかも知れないけど、話が伝わっていくうちに、大袈裟な表現になっちゃったんだろうね。
 コロナも時おり、『両親の身長から考えて、私ももう少しぐらいは背が伸びるだろうと思ってたんですけどねえ』なんて言ってるし。……ああ! もちろん、コロナの場合は、本気で愚痴を言ってる訳でも何でも無いんだけど」
「ああ。私もまさか、自分がこんな体格になるとは思っていませんでした。(苦笑)」
「ミウラさんも一時期よく言ってましたけど、グラックハウト症候群はさすがに予想なんてできませんよねえ」

 ヴィヴィオはヴァスラの言葉にそう応えてから、今度はユミナに話を振りました。
「ところで、リベルタの方では、IMCSの人気が下火になったりはしてないんですか?」
「はい。82年に、サラ・フォリスカルが再び次元世界チャンピオンになって以来、人気は全く衰えていません」
「ああ、そう言えば、アインハルトさんも、その年には『背負っているものの重みが、私とは違い過ぎた』とか言ってましたっけ」
「それは、どういう意味なんですか?」
 ヴァスラの問いには、代わってユミナが答えます。
「リベルタでは、81年に、いわゆる『首都半壊事件』が起きて、とんでもない数の被災者が出たんですが、彼女もその中の一人でした。ですから、首都メラノスの復興がなかなか進まない中、彼女は『打ちひしがれた幾百万の人々に、ひとつでも明るい話題を』と奮起して、そうした人々の期待を一身に背負って世界代表戦に出場していたんです。
 少し嫌な言い方になってしまいますが、それに比べれば、アインハルトさんの方は、ただ単に『仲間や御先祖様の想い』を背負っていただけでしたからね。
 それでも、サラさんとアインハルトさんとの準決勝は、内容的には事実上の決勝戦でした。サラさんとの決勝戦の相手は、試合後に『これで勝っちゃったら、私、悪役じゃないですか』なんて、まるで勝ちを譲ったみたいなことを言ってましたけどね。(苦笑)あの当時、私の正直な感想としては、『あんな試合の内容で、よくもまあ、そんなことが言えるなあ』という感じでした」

 そこで、ユミナはふと話題を変え、妙に嬉しげな表情で、ヴィヴィオにこう話を振りました。
「そうそう。そのサラ・フォリスカルですけど、彼女が今、一体何をやってると思いますか?」
「え? いや。ちょっと、そこまでは押さえてないんだけど……」
 ヴィヴィオがやや当惑した表情を浮かべると、ユミナは何やら少しばかり得意げな口調でこう語ります。
「リベルタでは被選挙権は一律30歳からで、メラノスを乗せた巨大人工島は単独で首都特別州という扱いなんですけどね。一昨年の春、彼女は30歳になると即座に、首都特別州の州知事選挙に立候補しました」
「ええ……」

「前知事が弾劾裁判で有罪判決を受けた直後に行なわれた選挙で、どの陣営もあまり準備ができていない短期決戦だったんですが、彼女は老若男女からの広い支持を集め、ブッチギリの得票数1位で、決選投票も何も無しに、そのまま州知事に選出されました」
「え~。じゃあ、彼女は今、首都で州知事をやってるんですか?」
「はい。この2年間で、暗殺未遂事件も公表されたものだけで4回ほど、ありましたけどね。〈リベルタの英雄〉の二つ名は伊達(だて)ではありませんよ。
 三回目の時は、街頭演説の最中にSPよりも多人数の集団に襲撃されたんですが、彼女は長剣を振り回して来る男たちを、自分の手足でバッタバッタと()ぎ倒しました。私もたまたま近くで観てたんですが、『リングの外でいきなり襲撃されて、これができちゃう人って、本当にいるんだ!』と驚愕しましたよ。
 大半の聴衆は、もう映画でも見ているかのような大喝采(だいかっさい)で……サラさんの対応があまりにも見事だったので、中には『台本どおりのパフォーマンスか?』と勘違いしてしまう人までいたぐらいでした」
「……私、政治向きの話はよく解らないけど……そういう人には、是非とも頑張ってほしいものですねえ」
「ええ、彼女は本当に頑張ってますよ。今、メラノスでは、汚職も凶悪犯罪も違法薬物も、ものすごい勢いで減少しています」
 ユミナはまるで現地の人間のように、自慢げな口調でそう(こた)えました。

 それからまたしばらくして、ヴィヴィオはふとした出来事を思い出し、またこんな言葉を続けました。
「あ。そう言えば、ファラ。話は変わるんだけどさ。昨年の今頃、中等科の『卒業10周年記念』の同窓会があってね。私は仕事で出られなかったんだけど、何だか、ファラは『行方不明あつかい』になってるみたいだよ」
「もういいですよ、そのままで。(苦笑)」
 ファラミィは「それほど親しい訳でも無かった昔の知り合い」とは、もう会いたくもないようです。


 こうして、しばらくは楽しい「合宿生活」が続いたのですが……それから二十日あまりの後、同4月の26日には、ヴィヴィオたちの許に思わぬ悲報がもたらされてしまったのでした。


 
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