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魔法戦史リリカルなのはSAGA(サーガ)

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【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
 【第8章】なのはとフェイト、復職後の一連の流れ。
   【第9節】背景設定8: 第14管理世界シガルディスについて。

 
前書き
 さて、「背景設定4」でも述べたとおり、個々の世界の地理や歴史について語り始めると、もう本当に際限(キリ)が無いのですが、『多少は「舞台となる世界」の背景についても知っておいた方が、本編をよりよく楽しめるのではないか』とも思い、この項目と次の「背景設定9」では、本文の中でもしばしば言及される〈管14シガルディス〉と〈管15デヴォルザム〉について述べてみることにします。
 なお、以下の文章は、本編の内容とはほとんど関係が無い裏設定なので、読み飛ばしていただいても、特に問題はありません。(苦笑) 

 


 まず、惑星シガルディスの平均半径は地球よりも一回り大きく、およそ6500キロメートルありますが、陸海比は27.5対72.5と陸地の割合がわずかに小さいので、陸地総面積も地球と「ほぼ」同等の、1億4600万平方キロメートルあまりとなっています。
 また、「大陸」と呼べる大きさの陸地は三つしかありませんが、その分布は驚くほどに(かたよ)っています。すなわち、ミッドの首都クラナガンと時差が無いラインを「経度0度の基準子午線」とすると、三つの大陸はすべて、東経や西経が90度以上の「裏側の半球」に集中しているのです。
 具体的に言うと、まず「裏半球」の南半球には、総面積が実に1億平方キロメートルにも達する、とても巨大な無人の「超大陸」がほぼ全面に拡がっています。
裏半球の南半球(全球の四分の一)の、実に75%をも超えるほどの面積で、地球で言うと、ユーラシア大陸と南北アメリカ大陸とオーストラリア大陸をすべて一塊(ひとかたまり)にしたのと同じぐらいの面積です。
【なお、実は「超大陸」という用語には「学術的な定義」が存在しないのですが、ここでは取りあえず、そう呼んでおきます。】

 次に、「裏半球」の北半球では、残る二つの大陸が「経度180度の日付変更線」を(はさ)んで、互いに鏡像のように向き合っています。中緯度帯の、およそ西経100度から175度の(あた)りにまで拡がっているのが「東の大陸」で、同様に、およそ東経100度から175度の辺りにまで拡がっているのが「西の大陸」です。
【大陸の名称は、(のち)にクラナガンに合わせて「基準子午線」と「日付変更線」とを逆転させる以前からの伝統的な名称なので、経度に関する「現在の公的な表現」に照らして見ると、これらの大陸の名称は、いささか「ちぐはぐ」なものとなっています。】

 ごく大雑把に言うと、大陸の形は両方とも「南北は3000キロメートルあまり、東西はその二倍ほどもある楕円形」のような形ですが、どちらも長軸は東西軸と完全には一致しておらず、両方とも日付変更線の側を少し北へ持ち上げたような形に傾いています。
 また、面積は両大陸とも1500万平方キロメートルほどで、地球で言うと、「二つ合わせて」ようやくアフリカ大陸ぐらいの広さになります。
 これら両大陸の間は、1000キロメートル近くも離れていますが、飛び飛びに幾つもの島々が分布しているため、たとえ丸木舟でも、島づたいの往来は充分に可能でした。
【裏半球(陸半球)における陸地の総面積は、低緯度帯の島々をも合わせて1億3500万平方キロメートルあまりとなり、裏半球全体の面積の実に50%強を占めています。】

 また、この世界には何千年も前から人間が住んではいたようですが、実のところ、シガルディスの大昔の状況に関して、詳しいことは何も解っていません。
 それと言うのも、この世界もまた「三千年あまり昔の〈大断絶〉の時代」に一度は滅びかけており、それ以前の文献や文物は何も残されていないからです。
 その後、今から2400年ほど前に、先史ルヴェラ文明の人々が「最初の異邦人」としてこの世界を訪れた時、シガルディスの人々はすでに「東西の大陸」に分かれ住み、互いによく似た言語を用いながらも、多くの国々に分かれて、しばしば戦争をしていました。
 この両大陸における最大の問題点は、『地球やダムグリースと同様に、「魔導用のクリスタル」が天然資源としては全く産出しない』ということです。そのため、当時のシガルディスには「魔法文化」はあっても、まだ「魔導技術」がありませんでした。
 また、人々は機械的な動力の大半を「豊富に産出する、質の悪い石炭」に依存していたため、両大陸の大気汚染はかなり深刻な水準に達していたのだと言います。

 一方、当時のルヴェラは、豊かな自然に恵まれた美しい世界で、もちろん、大気にも水にも汚染など全く無く、しかも、ルヴェラ人はみな、それが「当たり前のこと」だと思っていました。
 そこで、彼等は『このままでは、この世界の原住民たちが可哀(かわい)そうだ。それに、このままでは、自分たちも「安心して」この世界を植民地支配し、地上に降り立つことができない』と考えて、「善意の押し売り」を始めました。
 つまり、頼まれてもいないのに、魔力駆動炉や核融合炉や電気関連の技術などを無償で(無節操に)供与していったのです。
 その一方で、ルヴェラの人々は力ずくで、この世界の戦争をすべて終わらせ、貴族階級を排除して常備軍を解体し、四十以上もあった諸国家を統廃合して両大陸をまとめて六つの「属州」に分割し直し、標準語を確定し、石炭の採掘と使用に少しずつ制限をかけながら、何年もの時間をかけてそれらを「完全に禁止」の方向へと持って行きました。

 腐敗した貴族階級を一掃(いっそう)してもらえたことが、よほど嬉しかったのでしょうか。最初のうちこそ「強大な侵略者たちに(おび)えながら」ではありましたが、シガルディスの人々は、やがて意外なほど素直に「善意の侵略者たち」の指示や命令に従うようになり、自分たちの社会のあり方を急速に変えて行きました。
 あえて悪く言うならば、シガルディス人は、理念もプライドもかなぐり捨てて「実利」を取ったのです。
 彼等にとって、当時、蒸気機関は「最新の技術」だったのですが、ルヴェラ人には「あっさりと全否定」されてしまい、蒸気機関車は電動の車両に、蒸気式の外輪船は電動式のスクリュー船に、都会のガス灯も電灯に、馬車もまた電動の自動車に、急速に置き()えられて行きました。

 電気関連の技術はまだしも、魔力駆動炉や核融合炉に至っては、シガルディス人にはまだ「その原理」を正しく理解することすらできなかったのですが、それでも、それらの技術によって、現実に大気の汚染も劇的に改善され、また、人々は炭鉱での危険な重労働からも解放されました。
 すべての戦争が終わったため、もう誰も兵役に取られる心配は無く、遠く離れた土地へも自由に安全に往来することができるようになります。
 こうして、シガルディスの人々は、『戦争で奪い合うよりも、交易で融通(ゆうづう)し合った方が人間(ひと)は豊かになれるのだ』という「当たり前のこと」を学んで行きました。

 また、基本的には貴族階級である「聖職者」が残らず排除された結果、人々は彼等自身の伝統的な宗教を喜んで放棄しました。それと言うのも、その宗教は、今や単なる「貴族利権の温床(おんしょう)」と化していたからです。
 一体いつの頃からか、その教義内容も(ゆが)められ、その時代にはもう大変に権威主義的で差別的な代物(しろもの)に成り果てていました。中でも、身分による差別と女性への差別は、まさに()(がた)いほどの水準です。
 先祖伝来の農地からも追い出され、工場などでただ搾取されるだけの「無産市民」と成り果てていた多くの民衆は、諸手(もろて)()げて「善意の侵略者たち」を歓迎しました。
 それは、当のルヴェラ人たちにとっても全く予想外の熱烈さでしたが、ともかく、シガルディスの人々はこうしてまた、『社会全体で一定水準以上の倫理観さえ維持できていれば、宗教など無くても人間(ひと)は幸福になれるのだ』という「当たり前のこと」を学んで行きました。

 また、ルヴェラの人々は、〈号天〉から突如として来訪した「第四統一王朝」の偵察艦隊を撃退した後、シガルディスを「外敵に対する重要拠点のひとつ」に成り得る世界と判断して、ただの植民地ではなく、半ば独立した「従属国」という扱いにしました。
 シガルディス人はこれを「名誉なこと」と考えて、その後は、みずから進んでルヴェラの下僕(しもべ)となり、やがては植民地支配の補佐や代行まで(つと)めるようになりました。
 そのため、最寄りの二つの有人世界では、今なおシガルディス世界は相当に嫌われているのですが、幸いにも(?)それらの世界は、現在では両方とも管理外世界という扱いになっています。


 さて、先史ルヴェラ文明は、多くの世界に多大なる影響を及ぼしました。
 しかし、〈大断絶〉の数百年後、今を去る2500年ほど前に、ルヴェラ世界の勢力が初めて拡大を始めた頃には……ルヴェラから「北東やや北寄りへ160ローデたらず」の地点には、ヴァドゥガナという世界があるのですが……その世界が、すでに近隣のゼナドリィやフェディキアやリベルタを傘下に収めており、範囲はごく狭いものでしたが、独自の勢力圏を築き上げていました。
 ルヴェラはそうとは知らずにリベルタに手を出してヴァドゥガナと衝突し、ヴァドゥガナはその報復として、すでにルヴェラの傘下にあったマグゼレナに、わざと手を出して来ます。こうして、両国の間には緊張が高まりましたが、双方ともに『全面戦争は回避すべきだ』と判断し、『今後、お互いに相手の勢力圏には侵入しない』という内容の、いわゆる「相互不可侵条約」を締結するに至りました。

 その結果、ルヴェラは正式に、マグゼレナとザウクァロスの他、今で言う外18と無14と無15を手に入れましたが、代わりに、ヴァイゼンとフォルスをヴァドゥガナに押さえられ、ルヴェラの勢力はもう北方へと広がることが難しくなってしまいました。
(文明圏としての「総合的な戦力」を比較すれば、この時点ですでにルヴェラの方が格上だったのですが、当時のルヴェラ人は北方の諸世界に対して、「あえて莫大なコストをかけ、多大なリスクを(おか)すに足るほどの価値」を()(いだ)すことができなかったのです。)
 そのため、ルヴェラは先に、西方と南方の「今で言う、中間領域」に広大な勢力圏を築いた後、改めて東方へ、まずはマグゼレナを経由してパルドネアやモザヴァディーメへと、さらにはシガルディスへとその勢力を拡げていったのですが……いささか出遅れたためでしょうか。その時にはすでに、ゲルドラングはサウティの勢力圏に、ヴェトルーザとハドマンドは〈号天〉の勢力圏に組み込まれてしまっていたのでした。

 なお、〈次元世界大戦〉の直前の時代には、ヴァドゥガナの勢力は王位継承戦争によって衰退し、〈号天〉の勢力もまた局所的な次元震によって衰退していました。
 そこで、ルヴェラの勢力はその(きょ)を突いて、(一時的かつ局地的にではありますが)フォルスやヴァイゼンやヴェトルーザなどにも進出していたのだと言います。
 しかし、1600年ほど前の〈次元世界大戦〉で、ルヴェラの王都と次元航行艦隊は〈ゆりかご〉に問答無用で消し飛ばされ、先史ルヴェラ文明はいきなり崩壊しました。
〈ゆりかご〉は、シガルディスの上空にもその姿を見せましたが、ただルヴェラ人に退去を命じただけで、対地攻撃は一切せずにそのまま立ち去ったのだと伝えられています。

 それでも、シガルディスでは(のち)に、現地人だけでは「ルヴェラから供与された技術」を維持することができなくなり、文明は一旦、大きく後退しました。
 中でも、次元航行技術が丸ごと失われてしまったことと(核融合技術も失われたために)石炭による蒸気タービン発電(地球で言う石炭火力発電)に依存せざるを得なくなってしまったことは、とても大きな痛手でした。

【なお、〈次元世界大戦〉の直後に、ヴァドゥガナでは何らかのロストロギアが暴走し、その世界は荒廃して二度と立ち直ることはありませんでした。
(そして、今も惑星統一政府が存在していないため、現在、管理局の側ではこの世界を〈第21管理外世界〉と呼称しています。)
 また、ゼナドリィとフェディキアとリベルタは、ともに長らくヴァドゥガナの傘下にあったのですから、当時は互いに文化的な交流などもあったはずなのですが、三世界とも自前の次元航行技術を持っていなかったため、ヴァドゥガナの荒廃によって互いに全くの「音信不通」となりました。
 そして、その後は三百年ちかくもの間、互いに独自の歴史を(あゆ)んだためでしょうか。ベルカ人の到来によって交流が再開された時には、これらの三世界は、いつの間にやら互いに「険悪な仲」となっていました。
 そうした中で、ゼナドリィは「独自の勢力」を形成するために、ヴァイゼンやフォルスとの連合を目指し、リベルタは何故か「ヴァドゥガナの後継者」を自認して、ゼナドリィやフェディキアに対しては「あからさまな上から目線」での対応を取りました。
 一方、フェディキアには元々、「人類の居住に本当に適した気候の大陸」は一つしか無く、単独ではリベルタやゼナドリィに対抗することもなかなか難しかったため、フェディキアは(文化的にも共通点に乏しく、首都間の時差も相当なものであったにもかかわらず)南方のマグゼレナと手を組まざるを得なかったのだと言います。】

 また、ルヴェラが定めた六個の「属州」は、地形や植生や方言や食文化などの違いに基づいた、非常に合理的な区分だったため、全くそのままの形で維持されました。
 後に、名前こそただの「州」に変わりましたが、シガルディスではその後も長らく、政治的には州ごとの独立性がとても高い「六州連合」という体制が続きました。

【ごく大雑把に言えば、それらの六州は、両大陸をそれぞれ(ミッドの第一大陸のように)東西にざっくりと三分したような地理区分です。
 また、シガルディスには元々、どの属州にも「その属州の土地全体」を広くまとめて呼ぶような「広域の地名」が存在していなかったため、ルヴェラ人はそれらの属州を、ただ単に「東から順に数字を割り振って」呼んでいました。
 つまり、東の大陸の東側に位置しているのが「第一属州」で、西の大陸の西側に位置しているのが「第六属州」です。
 そうした呼び名はその後も継承され、今なお、それらの六州は公文書においても「第一州」から「第六州」の名前で呼ばれており、また、それぞれの州には「州都」が存在しています。】

 そして、今から1000年あまり前に、「第一戦乱期」を終えたベルカ世界からの次元航行船が、ついにシガルディスにまで到達しました。
 その後、シガルディスは形式的には「ベルカ文化圏」の南端に組み込まれましたが、実際には、ただ単に『その従順な性格ゆえ、さまざまなベルカ系の先進技術が、またもや無償で(無節操に)供与された』というだけのことで、言語や宗教や生活習慣といった「文化的な方面」での影響は、意外なほど限定的なものだったようです。
 また、南西方向にあるジェブロン帝国の勢力も、南東方向にあるズムド王国の勢力も、その最盛期においてすら、シガルディスにまでは届きませんでした。
 結果として、シガルディスはその後も長らく、「宗教への依存性の無さ」などに代表されるような「比較的独自性の強い文化」を維持してゆくことになります。

 しかし、同時に、『ルヴェラ人からもベルカ人からも、「自分たちなりの最新技術」をあっさりと否定され、自分たちだけでは維持することすら困難なほどの高度な技術を何の見返りも無しに与えられてしまった』という歴史は、シガルディス人たちの深層意識に深く刻み込まれ、(のち)の時代に良くない影響を及ぼしました。
 つまり、シガルディス人は『地道に研究を続け、自分たち自身の力で新しい技術をひとつひとつ開発してゆく』という作業に、あまり高い価値を()(いだ)すことができなくなってしまったのです。


 なお、シガルディスに接続する次元航路は全部で10本しかなく、また、最も長い航路ですら、その長さは108ローデしかありません。
 こんなにも「意外と」少なく短い理由は、超大陸の内陸部は大半が「不毛の大地」となっているため、「生物がまともに繁栄している陸地」の総面積それ自体が、惑星全体の表面積に比べると、見た目よりはだいぶ狭くなっているからです。
(つまり、惑星全体規模で「日々生産される魔力素の総量」が標準的な世界よりやや少なく、次元航路を維持するために必要な「余剰魔力素」もまた当然に他の世界よりもやや乏しいのです。)

【また、シガルディスの自転軸の傾きは16度あまりしかないので、個々の土地での「季節による気温や降水量の変化」はだいぶ(ゆる)やかなものになっているのですが、それだけに、乾燥地帯における「雨期と乾季」の差もさほど顕著なものでは無く、結果として、超大陸の内陸部には「目立った雨季の無い」広大な乾燥地帯が(大半は、砂漠や()き出しの岩肌が)拡がっています。
 しかも、超大陸の西岸部には、海岸線に沿って長大な山脈がそびえ立っているため、海を越えて来た「湿った偏西風」も、そこですぐに雨を降らせてしまい、内陸部にまでは乾いた空気しか届きません。それで、超大陸の内陸部はことさらに乾燥しているのです。
 もちろん、沿岸部を始めとする一部の土地には森林も豊かに分布しているのですが、上記のような理由により、この超大陸は今もなお(管理局の「自然保護隊」を除けば)完全に無人のまま放置されています。】

 しかし、幸いにも、数少ない航路の先には「有力な世界」が多く、しかも、それら六つの世界は「歴史的文化的な背景」が互いに異なり過ぎていたため、今はまだ「直接の交流」を持つことが困難でした。
 ミッドチルダは「ベルカ聖王家直轄領」であり、パルドネアは相当に閉鎖的な文化を、デヴォルザムもまた大変に独自性の高い文化を持った世界です。一方、モザヴァディーメは先史ルヴェラ系の文化を、ゲルドラングは先史サウティ系の文化を受け継いでおり、ヴェトルーザもまた〈号天〉の文化から強烈な影響を受けていました。
 当然ながら、それら六つの世界は、(あが)める神も、宗教的な意識も、今はまだ互いに全く異なっています。
 そのため、多少なりとも民意(異教徒に対する嫌悪感)を考慮するのであれば、どの世界もまだ当分は、互いに「直接の交流」を持つことは難しかったのです。
 そこで、ベルカ世界から次元航行技術が再供与されると、シガルディスの人々は「それら六つの世界の間を取り持つ立場」に立つことにしました。つまり、「宗教性の無さ」をむしろ売り物にして、それら六つの世界に『我々が中継貿易の拠点になりましょう』と申し出たのです。
 こうして、シガルディスは次第に、その一帯における「交通の要衝(ようしょう)」という地位を獲得していったのでした。

 一方、ベルカ世界の側から見ると、シガルディスは「搾取できる人材や資源」に、とても(とぼ)しい世界でした。
 そのために、シガルディスは(後に、海半球の側で「魔導用のクリスタル」の鉱脈が発見されてからは、時おり「不平等な交易」を()いられたりすることもありましたが)特に植民地にされることも無く、時おり思い出したように便利に使われるだけで、ほぼ放置されていました。

 それでも、(ベルカ世界は別格として)他の周辺世界と対等の関係で交易を行なうには、やはり「中央政府」が存在していた方が、都合が良いでしょう。そうした状況下で、今から800年あまり前には、シガルディスでも初めて「中央政府」が成立しました。
 と言っても、行政区分はほぼ「六州連合」の頃のままで、ただ『大陸横断鉄道などに代表される陸路の発達によって、大陸ごとの(三州ずつの)まとまりが強くなり、事実上の「二大陸連合」のような形になった』というだけのことです。

【基本的には、この時代の諸制度が今もなお続いており、当時から、第二州都レムニェスタは事実上の「東の大陸の首都」として、また、第五州都ドゥムゼルガは事実上の「西の大陸の首都」として機能していました。】

 なお、シガルディスの人々は、(あれほど多くの技術を無償で供与されていたにもかかわらず)ベルカ世界に対しては特に「恩義」など感じてはいなかったため、ベルカの滅亡に際しては移民の受け入れを「断固として」拒否しました。
 その結果、シガルディスは、「主要な管理世界」の中では唯一の「聖王教会の勢力が全く存在しない世界」となり、今もなお大半の住民が「特定の宗教を信仰することなく」平和な生活を送っています。


 さて一方、惑星シガルディスの表半球の側には、北半球と南半球の温帯に、それぞれ大型の群島があるだけで、大陸と呼べるほどの陸地はひとつも存在していません。
 また、表半球(海半球)で最大の島は、北半球の側の群島の東端部にあり、面積は100万平方キロメートルあまりです。
【地球で言うと、これは「グリーンランドの半分ほど」もしくは「本州の五倍ほど」でしかないので、これを「第四大陸」と呼ぶのは、さすがに無理があるでしょう。
 また、表半球における陸地の総面積は、すべての島々を合わせても1000万平方キロメートルあまりで、表半球全体の面積のわずか4%ほどでしかありません。】

 シガルディスの人々は、自分たちの世界がまだルヴェラの従属国だった頃から、『はるかに海を隔てた彼方には、そういう島々が存在している』ということ自体は(ルヴェラ人から教わって)知っていましたが、とてもとても、そんな遠くにまで実際に船を出す気にはなれませんでした。
 しかし、ベルカ世界でいわゆる「第二戦乱期」が終わった後、今から600年あまり前に、とある善良な(?)ベルカ人から『どうやら、君たちの世界にも海半球で最大の島にはクリスタルの鉱脈があるみたいだよ』と聞かされると、彼等は「半信半疑で」ではありましたが、ようやくその群島に大船団を送り込み、やがて本当に、最大の島で「D-クリスタル」の鉱脈を発見しました。
 後日、その島は、船団の指揮官たちの苗字を取って「ハグジェルム群島」の「チェムゲロン島」と命名されます。
 そして、チェムゲロン島はいつしか流刑地となり、もっぱら政治犯などに強制労働をさせることでクリスタルの採掘が進められて行ったのですが、そうした状況は、ベルカ世界の滅亡後も長らく変わることはありませんでした。
【一方、南半球の側の群島は、どの島も火山活動が大変に激しいため、今も無人のまま放置されています。】

 また、ミッド旧暦465年(新暦で前75年)に、時空管理局が成立して(ただ)ちに統合戦争を始めると、シガルディス世界は、北方のイラクリオンやラシティに続いて「中立」を宣言しました。
「主な交易相手」が敵味方に分かれてしまった以上、ある意味では「交易立国」として当然の選択でしたが、そうした「どっちつかずの態度」は(これまた当然ながら)管理局からは「胡散(うさん)臭いモノを見る目」で見られてしまう結果となりました。
 また、管理局にとって何より腹立たしいのは、『三方の「主敵」(東のデヴォルザム、西のリベルタ、南方の四世界同盟)が、シガルディスを(かい)して経済的に緊密に結びついている』ということです。
 管理局・南方戦線の主力部隊である「ミッドチルダ軍」の内部では、次第に『シガルディスから先に陥落させるべきでは?』という意見が強くなって行きました。

 そして……シガルディスには2本しかない一等航路は、古来、ゲルドラングとヴェトルーザに接続していたのですが……或る年、不意に「ゲルドラング行きの航路」が二等航路となり、代わりに、ミッドチルダ行きの航路が一等航路と()しました。
 ミッドからシガルディスまでは100ローデに達しており、決して「個人転送」で飛べる距離ではなかったため、シガルディスの側では長らくこの変化に気づきさえしなかったのですが、しかし、その頃、ミッドチルダ軍はすでに「転送ポート」の技術を完成させていたのです。
 そこで、ミッド陸軍の特殊部隊は、惑星シガルディスの対空監視網が陸半球の側に(かたよ)っているのを見越して、まずはチェムゲロン島に潜入しました。やがては政治犯たちの協力を得て、シガルディス軍の監視の目が届かない場所に転送ポートを組み立てて行きます。

 そして、ミッド旧暦479年(新暦で前61年)の末。
 潜入部隊はまず情報を収集し、陸半球の両首都から近日中に「資源搬送用の船団」が来ると知ると、早速、〈本局〉に連絡をつけて、相当な数の実戦部隊(空士と陸士)をチェムゲロン島に送り込んでもらいました。
 そして、彼等は幻覚系の魔法をも駆使して、巧妙に船団の乗組員たちとすり替わり、船団が陸半球の両首都に帰り着くなり、それら両首都の軍司令部に対して「同時奇襲攻撃」を加えました。
もちろん、宇宙の側でも上手くタイミングを合わせて、ミッド海軍の(とても「陽動」とは思えない規模の)艦隊がシガルディス軍の「軌道上の軍施設」を強襲します。
 現地の軍司令部は「軌道上での防衛戦」の方にばかり気を取られていたため、突然の対人攻撃に対しては完全に浮き足だってしまい、結果として、この「司令部奇襲作戦」は(若干の幸運にも助けられて)予想以上の大成功を収めました。
 シガルディス軍の敗因は、『最新の転送技術を軽視し、次元航行船の動向にばかり注目していたことだった』と言って良いでしょう。

 両方の大陸で、あまりにも多くの要人が一か所に集まり過ぎていたため、彼等がまとめて捕らえられてしまうと、シガルディス政府としても、一旦は停戦して「秘密交渉」の席に()く以外の選択肢がありませんでした。
 正直なところ、シガルディス人たちは、その席で「莫大な賠償金の請求」とか、「占領軍による直接統治」とか、「不平等条約の締結」などといった、相当に無茶な要求を()まされてしまうのではないかと危惧していたのですが……彼等の悲観的な予想に反し、ミッド軍の全権大使はその席で「破格の好条件」を持ち出しました。
『シガルディスには是非とも「14番目の管理世界」となって、統合戦争の終結に向けて力を貸してほしい』と言うのです。
 確かに、『管理局に軍を統合され、将来的には「独自の軍」を持つことができなくなる』というのは、言い換えれば、『国家主権の「部分的な」放棄を強要される』ということでもあり、心情的にはとても受け入れがたい条件だったのですが、シガルディスの首脳部としても、質量兵器の廃絶やロストロギアの管理といった「管理局の理念」そのものには特に異存などありません。
 それから半年あまりの交渉の末、統合戦争の開始から十五年余を経て、ミッド旧暦480年の夏、管理局とシガルディス世界との間に、正式な停戦合意が成立したのでした。

【実のところ、統合戦争は当初から長らく膠着状態が続いていたのですが、この「シガルディスの陥落」によって、戦況は一気に傾き始めました。3年後の旧暦483年には、早くもデヴォルザムが「最後の統王の英断」によって停戦に合意します。
 そして、さらに旧暦495年、リベルタ連合との停戦合意が成立したことにより、残る「主敵」は南方の「四世界同盟」のみとなったのでした。】


 ところで、シガルディスの歴史を考えれば当然のことですが、旧暦末の「統合戦争」でミッド軍に制圧されるまでは、現在とは正反対に、この海半球の側が「裏半球」と呼ばれ、陸半球の側こそが「表半球」と呼ばれていました。
 その後、シガルディスでは「本局標準時」に合わせる形で、「経度0度の基準子午線」と「経度180度の日付変更線」とを逆転させ、海半球の側を「表半球」と呼ぶようになったのです。
(その結果、『東半球にある大陸が「西の大陸」と呼ばれ、西半球にある大陸が「東の大陸」と呼ばれる』という、いささか奇妙な状況になってしまいました。)
 さらには、ハグジェルム群島を「中央州」と、チェムゲロン島を「中央島」と改称し、その島の東端部、基準子午線上の最適地に「新首都ヴォグニス」を建設して、シガルディス世界の「表玄関」としました。

 しかし、実のところ、それらはただの建前(たてまえ)でしかなく、シガルディス人たちの本音(ほんね)としては、ヴォグニスは単なる「遠く離れた七番目の州に(もう)けられた、主に『管理局や他の世界への対応』を担当する三番目の首都」でしかありませんでした。
 要は、『管理局関連の面倒な話はすべて「(もと)流刑地」の側に押し付け、自分たちは可能な限り、陸半球の側で昔ながらの暮らしぶりを維持しよう』と考えたのです。

 なお、法律の上では、シガルディスには現在、首都は三つあります。
 法律上は、あくまでも「新首都ヴォグニス」の方が「第一首都」なのですが、シガルディス人たちの意識の中では、今でも「東方首都(第二州都)レムニェスタ」と「西方首都(第五州都)ドゥムゼルガ」の方が「シガルディス世界の中心地」となっています。
 その理由は、ひとつには、当然ながら地理上の問題であり、もうひとつには、単なる人口規模の問題です。東西両大陸の人口はそれぞれ12億人を超えていますが、中央州の総人口は(中央島を中心に)わずか4千万人ほどでしかありません。
(合わせて、ほぼ25億人となりますが、他の世界からの移住者は「例外なく」中央州の側に押し込められています。)
 管理局の地上本部も首都ごとにあり、形式的には、ヴォグニス本部が「総本部」と呼ばれているのですが、人口規模に30倍以上もの差があるため、組織としての規模は、レムニェスタ本部やドゥムゼルガ本部の方が格段に大きなものとなっています。

 しかも、管理世界の地上部隊は、どこも「現地採用」が大原則です。
 そして、東西の両大陸には生粋(きっすい)のシガルディス人しか住んでいないので、当然に両大陸の地上本部に所属する管理局員たちも、みな生粋(きっすい)のシガルディス人となっています。
 彼等にとって、他の世界はあくまでも「単なる交易相手」でしかなく、他の世界の住民たちも、大半は「いまだに宗教などを信じている馬鹿ども」でしかないのです。
 どの世界の地上本部も「なわばり意識」のため、〈本局〉とはあまり良好な関係を築けないことが多いのですが……シガルディスでは、人々の心の奥底に上記のような差別意識があるため、ことさらに〈本局〉との仲は険悪なものとなっています。
 しかも、シガルディスでは、「聖王教会が一定の勢力を持つ、現代的な意味でのベルカ文化圏」に属する諸世界における「一般常識」が、あまり通用しません。
〈本局〉に所属する局員たちが、しばしば『シガルディスの連中は排他的で、やりたい放題だ』と腹を立てるのも、あるいは当然のことだと言って良いでしょう。


 また、惑星シガルディスの衛星(つき)は一つだけです。
 その朔望周期(満ち欠けの周期)は27日あまりで、地球の「一か月」にもやや近いのですが、その質量は(ルナ)の半分にも満たず、半径も1400キロメートルに届きません。また、視半径(見た目の大きさ)も13分強と、シガルディスの母恒星(たいよう)より2割ちかくも小さくなっているため、「ぴったりと」重なって見える時にも決して皆既日蝕にはならず、必ず(相当に()の太い)金環日蝕になります。
 潮の満ち引きに関しても衛星(つき)の影響力は他の世界に比べるとかなり小さく、暦の上でも衛星(つき)は昔からあまり重要視されて来ませんでした。その上、朔望周期をそのまま単位として使うと、一年はほぼ「13か月半」という絶妙に中途半端な数字になってしまうため、惑星全体ではこれほど海が広いにもかかわらず、シガルディスでは昔から一貫して「純粋太陽暦」が用いられて来ました。
 春分の日を起点として一年を十二か月に分け、毎年必ず、春分の日が「1月1日」になり、夏至の日が「4月1日」になり、秋分の日が「7月1日」になり、冬至の日が「10月1日」になるようにした暦です。
【ただし、純粋に母恒星(たいよう)の運行にのみ準拠しているため、『何月に31日(余り日)があるのか』ということも、『四年に一度の閏日(うるうび)が何月に入るのか』ということも、その年々(としどし)によってまちまちとなっています。】


 なお、昔のルヴェラの人々が勝手に定めた標準語は、今もそのままに「シガルディス標準語」と呼ばれています。
 文字はシガルディス独自の「ファガル文字」で、計22文字の表音文字です。
(ファガルは先史時代の国家名で、下記のとおり、綴りはPAGALになります。)
 古典標準語は完全に「綴りのまま」発音していましたが、その後、「唇音弱化」と「口蓋化」によって子音の発音が随分と(なま)り、母音の発音も二重母音がみな単母音として読まれるようになった結果、現代標準語では(地球の英語ほどでは無いにせよ)綴りと発音はだいぶズレてしまっています。

 まず、ラテン文字における「X」字が、単独でksやgzといった「二個の子音」を表現するのと同じように、ファガル文字には、それぞれに「一字で」tw、dw、kw、gwの子音群を表現する文字が存在していました。
 しかし、後に唇音弱化によってw音が消失したため、それらの4文字の「通常の」音価は、T、D、K、Gの4文字と全く同じになりました。
 また、さらに後の時代には、T、D、K、Gと、S、Z、N、Lの8文字は、直後に母音のIかEが来ると、「自動的に」口蓋化するようになり、例えばEが来た場合には、それぞれ「チェ、ヂェ、チェ、ヂェ。シェ、ジェ、ニェ、リェ」のように発音されるようになりました。
 ただし、Tw、Dw、Kw、Gwの4文字は、決して口蓋化しません。
(上記の12文字に、P、B、M、H、Rの5文字と母音のA、E、I、O、Uを表わす5文字を加えて、計22文字となります。地球のラテン文字と比較すると、余分な字が四つある代わりに、C、F、J、Q、V、W、X、Yに対応する文字が存在していません。)

 また、唇音弱化により、P字とB字もそれぞれ「普通は」f音とv音で読まれるようになり、母音の「オ」と「ウ」もそれほどは唇を丸めずに発音されるようになりました。
 擬音語などでp音やb音を使いたい時には、P字やB字の上に『原音のまま読め』という符号を付けなければいけません。
 なお、現代標準語では、こうした「原音化符号」の他にも、もう一つだけ「口蓋化符号」という「発音区別符号(ダイアクリティカルマーク)」があるのですが、日常的な文章では、それらの符号はしばしば省略されてしまいます。

 次に、古典標準語には「AI、EI、AU、OU」という4種類の二重母音がまだ残っていましたが、現代標準語では「綴りはそのままに」これを単母音として発音します。
(つまり、現代語の発音には、二重子音も無く、二重母音も長母音もありません。)
 具体的に言うと、EIは「普通のイ」よりもやや口を広く開けた「イ」に変化して「普通のイ」とは区別され、同様に、AIは「普通のエ」よりもやや口を広く開けた「エ」に変化して「普通のエ」とは区別され、OUは「普通のウ」よりもやや口を広く開けた「ウ」に変化して「普通のウ」とは区別され、AUもまた「普通のオ」よりもやや口を広く開けた「オ」に変化して「普通のオ」とは区別されています。
(つまり、現代語の母音は、発音上は9種類あります。)
なお、「広いエ」は綴りがAIなので、直前の子音を「自動的に」口蓋化することはありません。もし、TAIを「チェ」と読ませたいのであれば、T字の上に「口蓋化符号」が必要になり、逆に、TEを「テ」と読ませたいのであれば、T字の上に「原音化符号」が必要になります。

 最後に、音節末子音ですが、古典標準語においては、破裂音は有声音のBとDとGに、摩擦音は逆に無声音のSとHに限られていました。
(あとは、鼻音のMとN、および、流音のLとRです。)
 もちろん、当時は(H字以外は)綴りどおりに発音されていたのですが、現代ではB字とD字は語中では鼻音化して、それぞれm音やn音で読まれています。
【なお、音節末のH字は、当時から単なる「長音符」として読まれていましたが、現代では(語中でも語尾でも)完全に「黙字」(常に読まない文字)となっています。また、方言によっては、G字も語中では鼻音化して、ng音で読まれています。】

 また、現代では、B、D、G、Rの4文字は、語尾においてのみ「黙字」となり、その代わりに、最後の母音はやや長めに発音される傾向にあります。
 例えば、よくある苗字のPAZABRAIDは、今では訛って「ファザムレェ」と発音されており、また、男性名のRAUSKORも「ロスコォ」と、女性名のBAIREHNIGも「ヴェレニィ」と発音されています。

 このように『綴りと発音がだいぶズレている』ため、他の世界の人々にとっては、シガルディス標準語は「書き言葉」としてもかなり習得の難しい言語です。
 また、基本的な語順はミッド語やベルカ語ともよく似ていて、割と親しみやすいのですが、それでも、具体的な文法規則(特に、名詞の格変化や、時制による動詞語幹の不規則な変化など)が、かなり煩雑(はんざつ)で、また、発音の上でも9種類もの単母音を区別する必要があるため、実のところ、シガルディス標準語は「話し言葉」としてもなかなか習得しづらい言語となっています。
 今では全自動翻訳機もよく普及しているため、なおのこと、他の世界の人々の中には、わざわざシガルディス標準語を選んで習得しようなどと考える者は滅多にいません。

 しかし、一般原則として、移民がその世界で新たに市民権を得るためには、その世界の公用語を一定の水準まで習得しなければなりません。それもあって、シガルディスへの移民を希望する者も滅多にいないのです。
 しかも、シガルディスの当局は一貫して、わずかな数の移民希望者をすべて中央州(ハグジェルム群島)に住まわせていました。ある種の「移民隔離政策」ですが、そのため、今も東西の両大陸では生粋(きっすい)のシガルディス人が人口の100%を占めているのです。

【なお、これは余談ですが、先史ルヴェラ文明の言語は、閉音節(子音で終わる音節)が全く存在しないタイプの言語であり、当時のヴァドゥガナの公用語もまた、閉音節にとても乏しいタイプの言語でした。
 そうした言語の話者たちから、長らく影響を受け続けていたためでしょうか。
後に、マグゼレナやザウクァロス、モザヴァディーメやアンドゥリンドゥなどでは、ルヴェラ語の影響で「音節末子音の種類が大変に限られているタイプの言語」が公用語となり、また、ゼナドリィやフェディキアやリベルタでも、ヴァドゥガナ語の影響で同様の現象が起きました。
 また、文字においても、モザヴァディーメやアンドゥリンドゥでは「先史ルヴェラ文字」が、また、フェディキアやリベルタでは同様にヴァドゥガナ起源の「セルン文字」が、古来一貫して流用されています。】



 
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