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ようこそボンゴレⅩ世。実力至上主義の教室へ

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2学期の終わり、動き出すCクラス。

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ようこそボンゴレⅩ世。実力至上主義の教室へ   作:コーラを愛する弁当屋さん

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2学期の終わり、動き出すCクラス。

 

 12月下旬のある日の放課後。今日も今日とて俺はグループメンバーと共にお茶をしていた。

 

 

 —— ケヤキモール、休憩スペース ——

 

「結局、どのクラスも退学者は1人も出なかったそうだな」

「それで良かったんじゃないかな。別のクラスでも退学する人が出るのは嬉しくないし」

 

 最初の話題はペーパシャッフルの最終結果についてだった。

 

「俺も愛里ちゃんと同じ気持ちだな〜」

「そりゃー、仲良くやれるに越したことはないけどさ。学校の仕組み上それも難しいんじゃない? 上のクラスを目指す為には別のクラスを蹴落とさないといけないし」

「その通りだな。愛里や綱吉の言いたいことも分かるが、蹴落とさなければ蹴落とされるだけだぞ。この学校で勝つという事は他の3クラスを犠牲にすることだからな」

「そう……だよね……」  

 

 少し口調の荒くなった啓誠君の言葉にしょんぼりとしてしまった愛里ちゃん。

 

(……本当にそうかな。他の3クラスを犠牲にするしか、勝つ方法はないのかな)

 

「……でも俺は、可能性があるならそこを目指したいと思うな」

「は? おいおい綱吉。Dクラスのリーダーがそんな気持ちじゃ俺達が困るぞ」

「啓誠君の言いたい事は分かるし、真実なんだろうけどさ。何か別の勝ち方があるんじゃないかって思うんだよね」

 

 俺の最終目標である、学年をまとめ上げて学年全体のボスになるという課題。

 

 これを実現する為にも、できればそうなって欲しいとどうしても思ってしまうんだよな。

 

「……ぬるいな。その考えはぬるいぞ綱吉」

「そうだな。お前は優しいから、そう思うんだろうけどさ」

「……実力主義のこの学校では無理なんじゃないか?」

「……そうなのかな」

 

 男子3人から考えを否定されて、やっぱり無理なのかと弱気になってしまう。

 

 そんな俺に助け舟を出すかのように、波瑠加ちゃんが口を開いた。

 

「じゃあさ、裏技的な方法はないの? 最後の試験でCPが全クラス一緒になるとか。それで学年全員がAクラスで卒業〜。なんてことになったりして」

「あ、それ凄くいいと思うっ」

「うん! いいねいいね!」

 

 波瑠加ちゃんのアイデアに俺と愛里ちゃんは喰いついた。だが、男子3人は否定的だった。

 

「残念だが、それは無理だと思うぜ」

「なんで?」

「部の先輩達が話してるのを聞いたことがあるんだよ。最後の試験で同率になった場合は、順位を決定付ける特別試験が追加で行われるらしいぞ」

「ええ? どんな試験?」

「それは分からん。あくまで噂だしな」

「そんな甘くないって事かぁ。ちぇっ、面白いアイデアだと思ったのに」

「……」

 

 波瑠加ちゃんのアイデアは否定されたが、俺は一つの可能性を思いついた。

 

 ……別に4クラスを横並びにしなくても、学年全員が俺達のクラスに入ればいいんじゃないか?

 

 クラスを移動することもポイントがあれば可能らしいし。

 

 ……まぁ天文学的なポイントが必要になるかもだけど、理論的には不可能じゃないなら目指してみる価値はあるんじゃないかな。

 

 わずかな希望を見出していると、明人君が周囲をキョロキョロと見回してはじめ、そして小声で別の話題に移行してきた。

 

「……なぁ、最近Cクラスの様子がおかしくないか」

「Cクラスの様子? どういうこと?」

 

 波瑠加ちゃんが首を傾げながら明人君にそう尋ねる。 

 

 明人君はどこかに視線を向けているので、目で追うと……Cクラスの小宮君が俺達の事を隠れて観察しているのが分かった。

 

(俺も気付いてたけど、他の皆にも意識されてるようでは尾行の意味がないだろうに)

 

 ……いや、むしろ気付くようにしているのかもしれないな。

 

 俺達グループの監視だろうな。

 

 昨日までは俺だけを監視してるっぽかったんだけど、急にターゲットを変更か?

 

 いや、きっとこれにも何か意味があるんだろう。 

 

 この集まりでも何かされてるんじゃないかと心配になり、俺は皆に質問してみる事にした。

 

「ねぇ、皆。気付いたらCクラスの人が自分の事を見てた……みたいな事が最近ある?」

 

 数秒後、質問に最初に答えたのは明人君だった。

 

「ああ。昨日、弓道部に石崎や小宮が顔を出してきた。見学って形になったんだが、四六時中俺のことを睨んできやがった」

「そっか……手を出されたりは?」

「それはない。ただ睨んでくるだけだ」 

 

 手は出して来ないのか……。俺の事を潰そうとしてるんだろうけど、何が目的でクラスメイト達を監視させているんだろうか。

 

「流石に顧問や上級生がいる前じゃ何も出来ないんだろうな。練習が終わる頃には帰ってたぜ」

「……そうだよね」

 

 龍園君が何を狙っているのかを突き止めないと。

 クラスメイト達に迷惑をかけてはおけないしな。

 

 俺が考え事をしている間に、話題はCPの事に移っていた。

 

「Dクラスが鬱陶しくて仕方ないんだろう。3学期からはDクラスがCクラスへと昇格する可能性が高いだろうからな」

 

 啓誠君が考えた事はもっともだ。ペーパーシャッフルを終えて、DとCのCPの差は僅か80まで縮まっているからね。

 

 ここまで差が縮まると、何か問題でもあればすぐにでもクラス交代になるだろう。

 

 まぁ、龍園君の目的は俺を潰す事なんだろうけど……。

 

「3学期には私達がCクラスになってるかもしれないよね〜」

「そ、そうなるといいな」

「……ああ。そうだな」

「でもそうなると……今度は追うだけじゃなくて追われる立場にもなるんだよな」

 

 Cクラスに上がれるかもしれないという希望に皆が浮かれていると、明人君が冷静にそう言った。

 

「確かにね〜、追われるプレッシャーってのもあるもんね」

「ああ。そして、追っかけてくるのはCクラスだ。今まで下だった奴らに追い抜かれた事で恨みも買ってるだろうし、クラスが入れ替わっても最初のうちはポイント差はそこまでない。次の特別試験でポイント差を付けないと、またDクラスに逆戻りもありえるぞ」

『……』

 

 クラス変更後に起こりうる事体を想像し、グループ内に気まずい空気が流れる。

 

 そんな空気を変えたかったのか、波瑠加ちゃんが手をパンっと叩いた。

 

「もう、後の事は後で考えよう! 今は間近に迫った楽しい事を考えようよ!」

「……楽しい事?」

 

 清隆君がそう尋ねる。

 

「周りを見てよ。もうすぐクリスマスだよ?」  

「……そうか、クリスマスなのか」

 

 クリスマス仕様で彩られたケヤキモールの装飾を見て、納得したかのように頷く清隆君。

 

 そっか……。ホワイトルームだとクリスマスとかのイベントなんてなかったのかもしれないな。

 

(ん〜、なんか思い出に残る初クリスマスにしてあげたいなぁ)

 

 心の中でそんな事を考えていると、隣に座った愛里ちゃんが話しかけてきた。

 

「つ、綱吉君は、ク、クリスマスの予定とかあるの?」  

 

 そんな愛里ちゃんの顔を波瑠加ちゃんはニヤニヤ顔で覗き込む。

 

「うわぁ愛里。それってツナぴょんを誘ってるわけ? だいた~ん♡」

「ふぇ!? ち、違う、そういうのじゃないから! 違うんだよ!?」

「え〜。それ以外なくない?」

「そ、そうじゃなくってね。ほら、その……何をするか気になっただけだからっ!」

 

 顔を真っ赤にして否定する愛里ちゃん。

 

(そ、そこまで否定しなくてもいいのに……)

 

 若干の悲しさを覚えていると、他の男子陣も話に加わってきた。

 

「別に、そんな特別な日でもないだろ?」

「池みたいなガツガツ系が騒ぐ日って感じだよな」

「そんな事ないよ、女子の間では意外と大変なんだって! ねぇ愛里?」

「うん。う、噂とか色々出ちゃうもんね」

「そうそう。誰と誰が付き合ってるとかさ。独り身だと、妙に可哀想な目で見られたりね」

「……それは面倒だな」

 

 恋人と過ごすクリスマスか〜。

 

 一体俺はいつになったらそんなクリスマスを過ごせるのかなぁ。

 

「Dクラスでも冬休みの間に色々あると思うよ〜、私は」

「ええっ、誰かと誰かが付き合うってこと……?」

「多分ね。付き合う男女や破局する男女が何組か出るんじゃないかなぁ」

 

 恋愛に詳しそうな波瑠加ちゃんと、その話に興味津々な愛里ちゃん。

 

 一方、男子陣は全然盛り上がっていない……。

 

「今のところDクラスで付き合ってるのは、平田と軽井沢くらいなものだろ? あの2人が破局すると思うのか?」

「ありえない話じゃないよ? 最近の軽井沢さん、平田君じゃない男子とよく一緒にいると思わない? それに、その男子の周りには女子がよく集まってると思うんだ〜」

『……あ〜』

「……ううぅ……」

 

 その時、全員がなぜか俺の方を見てきた。

 

「ん? 何で俺の方を見てるの?」

「……ツナぴょんは鈍感なんだね」

「え? 何が?」

「諦めろ波瑠加。綱吉の鈍感ぶりは凄まじいからな」

「鈍感? 俺は鈍感じゃないよ?」

「あれだけ女子を周りに侍らせておいて、これだもんな」

「え? え? 何の話?」

「ま〜いいじゃん? そこがツナぴょんのいい所でもあるしね」

「まぁそうだな」

「だな」

「? よく分からないけど、褒めてくれたんだね。ありがとう」

『……』

 

 皆の視線が変な気もするけど、褒めてもらえたって事でよしとしよう。

 

「それで? 結局ツナぴょんはクリスマスに予定はあるの?」

「ううん。今のところ何もないよ」

「だってさ愛里。チャンスだよ〜w」

「だ、だからそういうのじゃないもん!」

(あ、そういえば……)

 

 予定について考えていたら、とある事を思い出した。  

 

「ねぇ皆。クリスマスじゃないんだけどさ、今度の日曜に最近新設されたドッグランみたいな所に行かない?」

「ドッグランみたいな所?」

「ああ、なんかペットを遊ばせられる施設か?」

「そうそう、それそれ!」

 

 この間に桔梗ちゃん達と約束したあの話だ。

 

 12月22日が終業式で金曜日。クリスマスは月曜日だから、クリスマスイブに遊びに行くことになるな。

 

「ナッツちゃんと遊べるんなら、行くっきゃないね」

「わ、私も行く!」

「うん。……3人はどうする?」

「俺はいい。この前も言ったが猫は少し苦手でな」

「俺もあんまり興味はないから、遠慮しとくわ」

「そっか〜。わかったよ」

 

 波瑠加ちゃんと愛里ちゃんは参加。啓誠君と明人君は不参加となった。

 

 さて、残った相棒は?

 

「清隆君はどう?」

「……そうだな。じゃあ行かせてもらおう」

「本当!? ありがとう!」

 

 よかったよかった。男子が俺だけだったら辛い所だった。

 

 あ、せっかくだから後で平田君も誘っておこう。そうすれば男子は3人だし、その方が楽しいもんな。

 

「清隆は行くのか。裏切りだな」

「だな。男子は行かない流れだったろう」

「悪いな、なんとなく行きたくなった」

「ふっ、嘘だよ。楽しんでこいよ」

「おう。お前達の分もな」

「なんだ、嘘だったのか? 俺は本気で言っていたんだがな」

『おい』

 

 なんか俺以外の男子3人で漫才が始まったぞ。

 そして俺と同じ事を波瑠加ちゃんも思ったようだ。

 

「お〜い、そこ3人。なんで漫才始めてんのよ」

「しかも啓誠君が大ボケ担当だったとは……」

『違う』

「息ぴったりじゃんw  ねぇツナぴょん?」

「うんw お笑いトリオだねw」

「ふ……ふふっ」  

 

 その時、俺達のそんなやり取りを見ていた愛里ちゃんが笑い出した。

 

 3人の漫才が面白かったのだろうか?

 

「どうしたの、愛里?」

「ご、ごめんね。なんか私楽しくって……そしたらなんか笑えてきたの」

『楽しくて……笑える?』  

 

 よく分からなくて、小首をかしげる俺と波瑠加ちゃん。

 

(……!)

 

 よく見ると、愛里ちゃんは少しだけ目の端に涙を浮かべているのが見えた。

 

 嬉し泣き……だよな?

 

「私、今までこんな楽しい時間過ごしたことなかったから。今凄く楽しいんだ」

「愛里ちゃん……」

 

 今まで1人で過ごすことが多かった愛里ちゃんが、そんな風に思ってくれてるなんて嬉しい事だ。  

 

 きっと愛里ちゃんにとって、このグループが大切な居場所になれたんだろう。

 

 (……俺、このグループを絶対守りたい。いや守って見せる)

 

 心の中でそんな決意を固めていると、波瑠加ちゃんが笑顔で愛里ちゃんに言葉を返す。

 

「ふふっ、下らない雑談ばっかりだけどねw」

「それでいいんだよ。私、こういう話を皆としたかったんだ」

「そっか! それなら良かったよね。あ、私も楽しいよ!」

「うん! えへへ♪」

 

 嬉しそうに笑い合う2人の姿を見て、俺はまた嬉しい気持ちになるのだった。

 

 

 

 —— 清隆side ——

 

 

 グループメンバーと別れた後、俺は買い物をしてから帰りたかったのでメンバー達と別行動を取っていた。

 

 買い物を早々に済ませ、俺は一人でマンションへの帰路についた。

 

「……はぁ」

 

 夕暮れの並木道で息を吐くと、白い煙が吐き出されて、やがて淡く消える。

 

「……寒いな」

 

 体を縮こめて熱を逃さないように歩いていると、前方から一人の見知らぬ女子生徒が歩いてくるのが見えた。

 

 学生証端末を持ち、誰かと電話をしながら歩いているようだ。

 

「雅、生徒会長になった途端に付き合いが悪くなったよね。あはっ、冗談だよ。別に怒ってるわけじゃないよ。でも今度色々奢ってもらうからね? 覚悟しておいてよ?」  

 

 すれ違い様に、セミロングから髪からほんのりとシャンプーの香りがした。

 

「え、生徒会? 悪いけどパスね。私は生徒会には興味ないもん。それにさ、雅はまだ堀北元生徒会長との決着がついてないじゃん。……はい? 何でいきなり告白してんの? 雅がいろんな子に手を出してるのは知ってるんだからね!」

「……」

 

 盗み聞きするつもりなんてないんだが、ああも大きな声で話されちゃ嫌でも内容が聞こえてくるな。

 

 会話の内容から察すると、きっと2年生の女子だろう。

 

「え〜? ……じゃあね、もし堀北元生徒会長に勝てたら、その時は考えてあげてもいいよ? それじゃまたね」  

 

 女子生徒は通話を終えると、ふーっと白い息を吐いた。  

 そして一度立ち止まり携帯をポケットにしまう。

 

「調子に乗ってるなぁ〜、雅のヤツ。……にしても堀北生徒会長には少しがっかりだな、雅を止めてくれると期待してたのに」

 

 ……通話を終えた途端トーンダウンしたな。

 あれは対人用のキャラなのか?

 

「あ、でもあの子には期待できそうだよね〜。なんだっけ。副会長の……沢田綱吉君だったかな?」

「!」

 

 突然綱吉の名前が出てきた事で驚いてしまった。

 思わず立ち止まって振り返る。

 

「うわぁ!?」  

 

 ……しかしその時、ちょっとしたハプニングが起こってしまう。  

 

 2年の女子が、並木道の凸凹した部分で躓いたのか盛大にすっ転んだのだ。

 

「いったぁ〜」

 

 2年生の女子はすぐに起き上がり、顔を赤くしながら辺りを見まわし始める。  

 

 もちろん俺が立ち止まっていることにも気づく。  

 

 文句を言われるかもと身構えたが、2年生の女子は恥ずかしそうに苦笑いするだけだった……。

 

 

 

 —— 翌日朝、マンション入り口にて ——

 

 

「……朝から一体なんだ?」

 

 学校に登校するためにマンションのロビーに行くと、沢山の1年生がロビーにあるポスト周辺に集まっている。

 

「……あ」 

 

 ちょうど近くに博士がいたので声をかけてみよう。

 

「博士、一体どうしたんだ?」

「お。綾小路殿! いやはや、どうにも1年全員のポストに同じ手紙が入れられているらようでござるよ」

「……手紙?」  

 

 気になるので俺は自分のポストへと近づいた。

 そして、自分のポストのダイヤルキーを回す。

 

 ——ガチャ。

 

 中を見てみると、ポストの中には四つ折りにされたプリントが入っている。

 

 俺はプリントを取り出して博士の元へと戻った。

 

「これのことか?」

「そうでござる!」  

 

 博士に確認を取り、プリントを開いてみる。

 

 すると、そこには印刷された文字で、こう書かれてあった。

 

『1年Bクラス、一之瀬帆波が不正にポイントを集めている可能性がある。龍園翔』  

 

「……これは」

 

 この情報は、取引の対価として俺が龍園に渡した情報だった。

 

「龍園殿は、なにゆえにこのような手紙をばら撒いたのでござろうな?」

「……さあな」

 

 こういう形で情報を使ってどうするつもりだ?

 

 一之瀬は別に不正にポイントを集めてるわけではないだろうし、こんな事を告発したところで意味はない。

 

(Bクラスとの取引交渉にでも使うと思ったんだがな)

 

 思っていた用途と違っていて戸惑っていると、周りが騒がしくなってきた。

 

「おい、龍園が来るぞっ」  

 

 Bクラスの男子が、エレベーターから降りようとしている龍園の姿を見つける。  

 

 龍園がロビーに来ると、Bクラスの男子生徒が詰め寄って行った。

 

「おい龍園、どういうつもりだよ!」

「はぁ? いきなり何だよ」

「この手紙だよ! ふざけたもの作りやがって!」

 

 龍園は言い目の前に突きつけられた手紙を見て、ニヤリと笑った。

 

「それがどうかしたか? 面白ぇだろうが?」

「はぁ!? 何が面白いんだよ! こんな嘘の告発しやがって」

「だったら事実無根だって証明しろよ。一之瀬が不正にポイントを集めてないって証拠を出してな」

「そ、それは……」

「どうなんだ? 一之瀬」  

『!』

 

 エレベーターの方を見てそう言う龍園。奴の視線の先には、エレベーターを降りてきたであろう一之瀬の姿があった。 

 

「……今私がここで何かを言ったとしても、君は信じないよね?」

「ああ。それは学校が判断することだ」

「……だよね。皆ごめんね、変な疑いをかけられちゃったみたい」

 

 困った顔で笑う一之瀬。

 

「でも大丈夫だから。ちゃんと学校に説明して不正じゃない事を証明してみせるから!」  

 

 一之瀬は堂々とした態度でそう言い切って見せる。

 

「ほお? どうやって証明してみせるつもりだよ?」

「学校に詳しく説明するだけだよ。私がどれくらいのポイントを持っていて、そしてどうやってそのポイントを得ることが出来たのかをね」

「学校に説明するだけか? その前にここで説明していけよ」

「どうせここで説明した所で、龍園君は信じないのに? 学校から報告を受けた方が不正の余地がなくて信用できるよね」

「……ククク。なるほどな。それも一理ある」

「それでも心配なら、龍園君から学校に言って。手紙に書いたようにさ」

「……じゃあそうさせてもらおう。よほど自信があるらしいしな」

「わかった。じゃあこの後一緒に先生に報告しよう」

「いいぜ? ……そうと決まれば……」

「……待って!」

『!』

 

 終わりそうだった龍園と一之瀬の会話に、待ったをかける者が現れた。

 

 その場の全員が声のした方に顔を向けると……そこには綱吉がいた。となりには櫛田がいて、櫛田が俺が持っている物と同じプリントを持っている。

 

 綱吉は龍園の元に歩いていき、一之瀬の隣に立った。

 

「……この騒動、学校との間に俺も立たせてもらうよ」

「! 綱吉君! いいの?」

「もちろん。友達で生徒会の仲間だもんね」

「あははっ♪ ありがとう!」

 

 綱吉が味方についてくれて、一之瀬は嬉しそうだ。

 

 相手に強力な味方が付いたにもかかわらず、龍園は不気味な笑みを浮かべている。

 

「……ククク。テメェは関係ないだろ?」

「そんな事ない。俺はこの件に口を出せる立場にあるからね」

「はぁ?」

「俺は生徒会副会長だからさ。こういう案件に関わる義務だってあるよ」

「! ……ククク」

 

 ……なるほど、龍園に好き勝手させないように間に立つつもりか。

 

 前の須藤の事件は、Cクラスの担任や伊吹のせいで上手い事Cクラス有利に話が持ってかれていたからな。

 

(……だが、龍園は焦りもせずに笑っているのが気になるな。むしろ好都合だとでも言いたげだ)

 

「ククク、いいだろう。生徒会副会長様の言う事じゃ、逆らえねぇなぁ」

「……公正を保つために、審判はAクラス担任の真嶋先生にお願いする。……いいね?」

「いいだろう。なら、早速学校に話を通しに行こうぜ?」

 

 そして、綱吉は一之瀬と龍園と共に学校に向かった。

 

 集まっていたギャラリーも、主役が居なくなって続々と学校に向い始める。

 

「……俺達も行くか。博士」

「そうでござるな! いざ、参ろう!」

 

 そして、俺も博士と共に学校に向かったのだった。

 

 

 —— ホームルーム前、Dクラス教室 ——

 

 俺が教室についても綱吉の姿はなく、戻ってきたのはホームルームが始まる直前だった。

 

「おはよ〜」

「おはよう、綱吉君」

「よう。……朝から大変だったな」

 

 俺と堀北に挨拶をされた綱吉は、困ったように笑いながら席に着いた。

 

「あはは……見てた?」

「ああ。見てたぞ」

「? 何かあったの?」

 

 堀北はあの場にはいなかったのだろう。事情が分かってなさそうなので俺から説明する。

 

「……てな事があってな」

「……何が目的? 学校に報告するなら前みたいにひっそりとすればいいのに」

「……多分、大勢に見られる事が必要だったんだろうさ」

「どうして?」

「それは分からんが……今回の騒動に、1年生全体の関心を集める為かもな」

 

 堀北への説明もそこそこに、俺は綱吉にあの後のことを尋ねた。

 

「で、どうなったんだ?」

「ああ、それがさ」

 

 綱吉は怪訝な顔をしながら話し始める。

 

「真嶋先生に報告して、最初は明日の放課後に帆波ちゃんの無実を証明する場を設けてもらうことになってたんだけど……」

「……そうならなかったのか?」

「うん。職員室の1年生担当教師のエリアで話をしてたんだけどさ。Cクラスの担任がその場に自分も参加させろって騒ぎ始めてさ」

「……あのメガネ教師か」

 

 1学期の須藤の事件でのCクラス担任の振る舞いが、頭の中で思い出される。

 

「そうそう。それでしつこいから真嶋先生がOKしちゃってさ。その上で、終業式の日しか時間が空いてないから審議を行う日程もそこに合わせろって言ってきたんだ」

「……言いたい放題ね」

 

 堀北がそう言って顔を歪める。

 

「他の担任より年齢も上だからな……。真嶋先生も無碍にできないんだろう」

「……その可能性は高いわね」

 

 堀北が納得した所で、綱吉は話を続ける。

 

「でね。結局審議は終業式後の放課後に行う事になったんだ」

「そうか。……でも、負けはないんだろ?」

「もちろん。龍園君の言いがかりだよ。帆波ちゃんも証明は簡単にできるって言ってたしね」

「……ならまぁ、安心だな」

「うん……そうだね」

 

 問題がないにしては、綱吉の顔はどこか暗い。

 審議よりも龍園の狙いの事が気になるのだろうか。

 

 話がちょうど終わった所で、茶柱先生が教室に入ってきた。

 

 話を切り上げて顔を教卓に向け、俺達は今日も学生としての本分に励むのだった。

 

 

 

 —— 放課後、Dクラス教室 ——

 

 

 放課後になると、綱吉は生徒会へと向かった。

 

 綱吉以外の全員がまだクラスに残っていたのだが、突然の来訪者がDクラスに訪れた。

 

 ——ガララっ!

『!』

 

 その人物は入り口の扉を乱暴に開けると、数名の配下を連れてDクラスの教室内に入ってきた。

 

 ……Cクラスの龍園だ。

 

「なんだお前ら! ここはDクラスだぞ」

 

 須藤が龍園に向かって吠えると、さらに龍園に詰め寄っていく。  

 

 すると平田が慌ててその間に入った。

 

 須藤が手を出さないか心配だったのだろう。

 今は綱吉もいないしな。

 

「Dクラスに何か用かな?」

「同級生のクラスを訪ねちゃいけない理由があるのか? 何をそんなにビビッてやがる」  

 

 龍園は高圧的な態度にも平田にそう返す。

 煽ってきてるようだが、平田は冷静に切り返した。

 

「普通はそうだよね。だけどこの学校では少し事情も変わってくるんじゃないかな? 元々CとDクラスは全く交流してなかったし」

「はっ! 今までが疎遠過ぎただけだ。これからはもう少し積極的に関わらせてもらうぜ?」

 

 龍園は教卓に向かうと、両手を教卓の上に置いた。

 

「沢田はいねぇな? 今日はお前らに提案があってきたんだ」

「提案?」

「そうだ」

 

 龍園はニヤリと笑うと、用件を話し出した。

 

「お前らの中で、沢田の弱みとかを握ってる奴はいねぇか? もしこの場で密告するならば、お礼として個人的にPPを贈呈しよう」

『……』

 

 龍園の甘い言葉に誰も反応しない。

 

 そりゃそうだ。すでにDクラスは綱吉が中心。

 クラスの中心人物をPP目当てに裏切るわけがない。

 

 ……いや、山内は少しそわそわしてるな。あいつは例外だ。

 

「……誰もいねぇか? じゃあ仕方……」

 ——ガタッ。

 

 龍園の言葉を遮るように、椅子を動かす音がクラス内に響き渡る。

 

 その音を鳴らした人物は、高円寺六助だった。鞄を持った高円寺はさっさと教室を出て行こうとする。  

 

 龍園がキレるのではないかと思った奴がほとんどだったが、意外にも龍園は冷静だった。

 

「……ふっ。……おい」

「……はい」

 

 龍園が合図すると、龍園を含めた全員が教室を出て行く。  

 どうやら今出て行った高円寺をら追いかけるらしい。

 

 教室の扉が閉められると、クラス中が騒がしくなる。

 

「なぁなぁ、なんか龍園のヤツすげぇことやりそうじゃね! ついていかね?」

「だな! ってか、あいつら高円寺に何するつもりなんだろうな?」

 

「さすがにまずいんじゃないかしら……」  

「……かもな」  

 

 隣の堀北が俺にそう言ってきた。

 

 だが、高円寺に接触を図ろうとしている理由はなんだろうな。

 

 そう考え込んでいると、明人が声をかけてきた。

 

「清隆、ちょっと様子を見に行ってみないか? 幾らなんでも人数が多い。もしかしたら何かするつもりかも知れない」

「そうだな……。監視の目が多いと言っても絶対じゃないしな」

 

 クラスメイトに何か起きそうならば、綱吉なら助けに向かうだろう。

 相棒の俺がそれをしないわけにはいかないか。

 

「俺も行こう。少人数だと危険だからな」  

 

 明人と話していると、啓誠も声をかけてきた。

 

 俺達が動き始めるより早く、堀北と須藤が廊下に出て行った。

 

「……龍園君、何をする気だろう」

 

 平田が心配そうな表情でいるので、出て行く前に一応俺から声をかけておこう。

 

「平田。おまえは教室に残っていてくれ。池や山内といった賑やかしの生徒達まで来ると、騒ぎも大きくなりかねないからな」

「……確かにそうだね。うん、分かった。くれぐれも無茶はしないようにね」  

「ああ。後、一応綱吉に連絡しておいてくれるか?」

「その方がいいね。わかったよ」

 

 綱吉が来れるならその方が安全だろう。

 須藤がキレて暴走しても、止められるのは綱吉だけだからな。 

 

 平田と会話を終えると、俺達も急いで教室を出た。

 

 

 —— 並木道 ——

 

 

 マンションへの帰り道にある並木道にやってきた俺達。

 

 並木道の途中では、龍園達が高円寺をとり囲んでいた。

 

「いたぜ、すぐに止めるか?」

「少しだけ様子を見ましょう。まだ龍園くんの狙いも分からないわ」  

 

 堀北の意見で、とりあえずは様子を見守ることにした。

 

「なんだい君達。私は呼び止められるようなことをした覚えはないがね」

「悪いな、今日は付き合ってもらうぜ変人」

「!」

 

 変人と言われ目を丸くする高円寺。

 高円寺を変人と思ってる奴は多いだろうが、口にする奴はいなかっただろう。

 

「変人、とは私のことかな?」

「お前以外にいないだろ?」

「ふむん。理解に苦しむ発言だがこの場では聞き流そうじゃないか。私は寛大だからね。しかしこれからデートの約束があるんだ、手短に済ませて貰えるかな?」

「悪いがその用事は後にしてもらおうか」

「おや、帰さないつもりかい?」

「そうだと言ったら?」   

 

 龍園が高円寺に詰め寄っていくのを見て、さすがに堀北も動いた。

 

「待ちなさい!」

「待つ? 何を待つってんだ? ご覧の通り俺は何もしちゃいないぜ?」

「くっ……」

 

 確かに、今はただ会話してるだけだ。……数名で取り囲んでいるがな。

 

「それで? 私に何の用かな?」

「沢田の事だ。お前は……」

「あら、何事かと思えば……随分と面白そうな組み合わせですね」  

 

 どうやら、今回の騒動はDとCクラスの枠だけに収まらなかったようだ。  

 

 騒動を聞きつけたのか、Aクラスの坂柳が3名の生徒と共に姿を見せたのだ。  

 

「……坂柳か。まるで計ったようなタイミングだな」  

「フフフ」

 

 Aクラスの参戦で、合計15人の集まりが出来上がってしまったな。

 

 ——カツン。

 

 坂柳は手にした杖をコンクリートに軽く打ちつけた。  

 

「私がここに来たのは偶然ですよ?」

「はっ、笑わせんな」

「フフフ、このメンバーでクリスマスパーティーに関してのご相談でもなさるおつもりですか?」

「引っ込んでろよ、まだお前に用はない」

 

 坂柳は何がしたいのか、執拗に龍園に絡んでいく。

 

「そう仰らなくてもいいじゃありませんか。パーティーなら大人数の方が面白いですし、私もお仲間に加えていただけません?」  

「……ちっ。ここに留まるつもりなら邪魔すんじゃねえぞ」

 

 不適に笑う坂柳に、龍園は鬱陶しそうにそう吐き捨てた。

 

「ギャラリーが増えるのは構わないが、そろそろ話を進めてもらえるかな?」

「悪いな。色々邪魔が入って話が遅れた。そろそろ本題に入ろうか」  

 

 高円寺が話を進めるように催促すると、龍園は怪しい笑みを浮かべながら用件を伝え始める。

 

「お前は基本的に誰とも関わろうとしないだろ?」

「そうだねぇ。デートをしてもいいと思えるレディーは例外だけどね」

「だが、沢田とだけは頻繁に交流を持ってるそうじゃねぇか。一緒に敷地内をランニングする姿を目撃してる奴がいるんだよ」

 

 ……確かに。綱吉だけは高円寺とコミュニケーションを取る事がたまにあるようだ。

 

 前に聞いたが、高円寺にとっては綱吉は将来的に協力しあう関係だと思っているらしい。

 

「そうだよ? 彼とは交流を持っておかないとねぇ」

「……それはなぜだ?」

「なぜ? それは将来の為さ。彼と仲良くしておく事は、未来で爆発的な利益を生むんだよ」

「……意味不明だな」

 

 綱吉と繋がっておく事で生まれる利益か。

 

 ……まさか。高円寺は綱吉の正体を知っているのか?

 

「意味不明で当然さ。私達のような選ばれし人間の事は、凡人の君には理解できないだろうからねぇ」

「……俺が凡人だと言いたいのか?」

「イエス。物分りが良くて嫌いじゃないよ、ドラゴンボーイ」  

「……」

 

「フフっ」

 

 ドラゴンボーイが気になったのか、坂柳が笑った。  

 

 言われた龍園はそれを無視し、違う話へと移行させる。

 

「その沢田と関わる事で得られる利益とはなんだ? 教えろ」

「嫌だと言ったら?」

「力づくでも吐かせるさ」  

 

 龍園のその言葉を受け、なぜか高円寺が笑った。

 

「ナンセンスな回答だね。君がこの場でその選択を選ぶわけがない」

「生憎と、俺はどんな不都合な場所でも暴れられるんだぜ。利益は度外視でな」

「なるほど? まぁ仮に君がその選択を選ぶのだとしたら、私は私自身とプライドを守るため、向かってくる者全員をノックアウトするけどねぇ」

「……お前1人でやれると?」

「やれない理由を考える方が難しいよ。……だが、今回か2人でやることになりそうだねぇ」

「あ?」

 

 その時、俺達の後ろから誰かの声が聞こえてきた。

 

「……ちょっと待って!」

『!』

 

 その声の主は……綱吉だった。横には一之瀬が立っている。

 

(平田が呼んでくれたようだな。生徒会を抜け出して来てるから、一之瀬もついて来てるのだろう)

 

「……沢田。それに一之瀬か」

「どうも〜。むむっ! これは中々面白い組み合わせだねぇ」

「クスっ。ええ、そうですね」

 

 興味津々な一之瀬の発言に、楽しそうに坂柳が同調する。

 

「龍園君。高円寺君に何を聞き出そうとしてるんだ?」

「てめぇには関係ない。引っ込んでろ沢田」

「Dクラスに乗り込んで来ていて、関係ないとかありえないだろ」

 

 綱吉の登場を受けて、隣の堀北が小さく呟いた。

 

「……各クラスのリーダーが揃い踏みね」

「……そうだな」

 

 Aクラスの坂柳、Bクラスの一之瀬。Cクラスの龍園。そしてDクラスの綱吉。

 

 この場に全てのクラスにおけるリーダーが勢揃いしたわけだ。

 

「……高円寺、最後だ。さっきの質問に答えろ」

「もちろん断ろう。彼がここにいる今、答えられるわけないからねぇ」

「……」

「ちょっとよろしいですか?」

 

 龍園が言葉に詰まると、坂柳が話に入って来た。

 

「沢田君のことをドラゴンボーイさんが潰そうとしているという噂は聞き及んでいましたが、本当のことなのですか?」

「……黙ってろと言っただろ坂柳。それと、次にお前がその呼び方をしたら殺すぜ?」

 

 高円寺の呼び方を真似した坂柳を、龍園は鋭い目つきでジロリと睨んだ。

 

 しかし、坂柳は恐れもせずに続ける。

 

「あら、気に入りませんでしたか? 素敵なネーミングだと思いますけど。……ですが、このメンバーの中で〝殺す〟と発言するのはよくありませんね。普段からクラスメイト達が私のボディーガードを買って出てくれてますが、それとは比較にならない最強のボディーガードがこの場にはいるんですよ? それでも私を殺すんですか? ねぇ、ドラゴンボーイさん?」

「っ!」

 

 坂柳がドラゴンボーイと再度発言すると、龍園は素早く坂柳へと距離を詰めた。  

 

 そして、地面を蹴り上げて跳び蹴りを繰り出す。

 

 ……しかし。

 

 

 ——ドシン!

 

「っ!?」

「……」

「……ちっ!」

 

 坂柳はノーダメージで平然と立っている。

 

 それもそのはずだ。

 

 龍園の飛び蹴りが坂柳に当たる瞬間。綱吉が間に入って、片腕で龍園の蹴りを受け止めたからだ。

 

 蹴りをまともに受けても、綱吉は微動だにせず。

 

 そして、龍園が後ろに戻る為に踏んづけている綱吉の腕を蹴って飛んだんだが、それでも綱吉は微動だにしなかった。

 

「嘘だ。龍園さんの飛び蹴りを受けて微動だにしないなんて……」

「アルベルトでも数歩後ろに下がらされるのに……」

「……unbelievable」

 

 今の光景を見て、Cクラスの連中は驚いているようだ。

 

「フフッ。ありがとうございます。沢田君」

「……当然の事をしただけだ。別に君の為じゃない」

「あら。そうは言ってもきちんと守ってくれましたけどね」

「……」

「フフフ、本当にお人好しですね」

 

 綱吉にお礼を言うと、坂柳は龍園を見た。

 

「龍園君、何がしたかったのですか?」

「……もう一度呼んだら殺すと言ったはずだが?」

「この場には最強のボディーガードがいるから、殺すなどと言わない方がいいと忠告したはずですが?」

「……」

 

 龍園が口を閉じると、坂柳はまたも綱吉に話しかける。

 

「フフフ。これからは仲良くしてもらえます?」

「……君が俺の考えを受け入れられるならな」

「あら、それはできませんね」

「そうか。なら交渉失敗だな」

「残念です。まぁいずれは成功するでしょうし、その時を楽しみにしてますよ」

「……悪いが、そうはならないさ」

「フフフ、つれないですね。まぁそこがいいんですけど」

 

 坂柳のよく分からないアピールを流すと、綱吉は龍園に近づいた。

 

「女の子の……それも杖をついている坂柳に飛び蹴りか? 見下げた奴だな、龍園」

「黙れ。てめぇにそんなことを言われる筋合いはない」

「……狙うなら俺を狙えと言ってるだろう。正攻法では勝てないと諦めてるのか?」

「戦いに正攻法も不正もねぇよ。勝つ為の最善を尽くしているだけだ」

「……とにかく、この場から離れろ」

「ああいいぜ。もう用件は終わったからな」

 

 そう言うと、龍園は綱吉から距離を取る。

 

「安心しろお前達。この遊びももう終わりだ。フィナーレを楽しみにしてな」  

 

 そう締めくくり、龍園はその場から立ち去っていく。

 

「じゃあ私も失礼するよ」

「私達も、失礼しますね」

 

 龍園達に引き続き、高円寺と坂柳達もいなくなった。

 

「……とりあえず終わったわね」

「……だな」

 

 堀北が安堵のため息を吐くと、綱吉が俺達に声をかけて来た。

 

「皆、大丈夫だった?」

「ええ。綱吉君、腕は平気?」

 

 龍園の蹴りをくらった綱吉の腕を見て、堀北が心配そうにそう言った。

 

「平気だよ。皆が無事ならよかった」

「ツナ、お前やっぱすげぇなぁ」

「はは、ありがとう須藤君」

 

 須藤に微笑んだ後、綱吉は堀北に再度話しかける。

 

「鈴音さん、クラスに帰ったら皆に大丈夫だったって伝えてくれる?」

「ええ。伝えておくわ」

「よろしくね。じゃあ俺は生徒会に戻るから」

 

 そう言うと、綱吉は一之瀬と共に並木道から去って行った。

 

「私達も戻りましょう」

「そうだな!」

「ああ」

 

 そして、俺達もDクラスへと戻ることになった……。

 

 

 —— その日の夜、ツナside ——

 

 

「ただいま〜」

「ガウ〜♪」

 

 生徒会で帰りが遅くなり、自分の部屋に帰る頃には外はすっかり暗くなっていた。

 

 迎えに来たナッツを抱き抱えながらリビングに入るが、今日もリボーンの姿はない。

 

「あれ? あいつまだ帰ってないのか? 昨日は実家に行ってるはずだけど、今日まで泊まるのか?」

 

 独りごちながら勉強机に鞄を置くと、ダイニングテーブルにレオンがいることに気づいた。

 

「あれ? レオンは留守番なの?」

「……」

 

 レオンは目をパチバチさせながら俺のことを見ている。そして、その足元には一枚の紙が置いてあった。

 

「ん? これを読めってこと?」

 

 俺が紙に手を伸ばすと、レオンは俺の肩に飛び移った。

 どうやら俺にその紙を見て欲しかったらしい。

 

「え〜と、なになに?」

 

 手紙を読んでみると、そこにはこう書いてあった。

 

『ちゃおっす。今日からしばらくイタリアに行ってくる。2~3日で戻るぞ。レオンをお目付役に置いておくから、だらけた生活してもすぐにバレるから気を付けろよ』

 

「……」

 

 手紙から目を離し、肩に乗ったレオンを見る。

 

「……俺のお目付け役?」

「……(こくり)』

 

 俺の言葉に頷くレオン。

 なんて賢いカメレオンなんだろうか。

 

「……じゃあまぁ。お目付役もいるし、トレーニングしてくるかな……あ」

 

 トレーニングに向かおうと思ったが、とあることを思い出した俺はトレーニング前にメールを送ることにした。

 

 学生証端末を取り出して、メールアプリを起動する。

 

「え〜と。宛先はDクラス全員と」

 

 宛先をDクラス全員のアドレスに指定し、本文を入力する。

 

 

 TO Dクラスの皆へ

 

 こんばんは。沢田綱吉です。

 

 今日は皆にお願いがあってメールを送っています。

 

 ○○○-○○○○-○○○○

 

 これは俺の電話番号です。

 

 クリスマスまででいいので、この番号を学生証端末の〝緊急連絡先〟に登録して欲しいんです。

 

 何かあったら、すぐに助けに行けるように。

 

 

 ……そう入力したメールを、クラスメイト全員に送信したのだった。

 

 



読んでいただきありがとうございます♪

次回はついにVS龍園戦!

できたら明日の夜に投稿したい!
……と、思ってます✌︎('ω')✌︎
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