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DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
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戦う為の力

<バラモス城>

「見て!あそこに宝箱があるわ!お父さん、あの宝箱は危険ですかね!?」
「ん!?………あぁ!アレね…うん…凄いアイテムの臭いがするね!うん!」
マリーに促され、慌てて同意するリュカ。

「またですか…父さん、そんなに凄いアイテムが入ってるのなら、アナタが開けてくれればいいじゃないですか!このパーティー内で、最強のリュカ様が開けて下さいよ!」
「え!?ヤダよ…モンスターだったら怖いじゃん!」
呆れ苛つくティミーの言葉に思わず本音を言うリュカ。

「ちょ…安全なんでしょ!?そう言いましたよね?」
「そんな事は言ってない!凄いアイテムの臭いがすると言ったんだ!安全とは一言も言ってない!」
「こ、この野郎…危険かも知れない宝箱を開けさせようと言うのか!」
あまりの身勝手ぶりにブチ切れるティミー。

「ティミー…大丈夫だ!あの宝箱は安全で凄いアイテムが入ってる!」
父親に凄い剣幕で怒鳴るティミーを宥め、カンダタが宝箱へと近付いて行く。
「カ、カンダタさん!危ないですって…そんな確信は無いんですよ!」
慌ててカンダタを止めようとするティミー。

「自分の父親を信じろよ!お前の親父は信頼出来る凄い人だぜ。そんな人が宝箱を開けろと促すのなら、大丈夫って事だよ」
「し、しかし…」
リュカを信じ切り行動するカンダタ…それでも信じ切れないティミー…
だがカンダタはティミーの言葉を無視し、宝箱に手をかけた。
援護するべく慌てて剣を抜くティミー!

しかしティミーの心配は杞憂だった。
宝箱の中には巨大な斧が1本…
カンダタはその斧を両手で持ち構える。
「それは『魔神の斧』ですわ!以前に図鑑で見た事がありますぅ!」
「魔神の斧…」
カンダタはマリーの説明を聞き、自らの手で握られる斧に見とれる。
「うん。カンダタにお似合いの武器だね!丁度良かったじゃん…武器が無くなったところだったし!」


バラモス城に突入して半日以上が経過し、心身共に疲労がピークに達したアルル達は、丁度良い袋小路に居たので休息を取る事にした。
みんなのお母さん的なビアンカが、携行食を軽く調理し皆に配る。
普通に食すより遙かに美味しくなった携行食を食べながら、ティミーが父親に確かめる。

「父さん…本当は安全だと確信してたんですよね!?」
先程の宝箱の件が気になり…また自分の父親を信じたい彼は、不必要に問いつめる。
「確信は無い!何事も結果を見なきゃ分からないじゃん!?でも大丈夫なんじゃないかなぁ~…とは思ってたよ」

ティミーは少し恥じていた…
自分は父親の事を信じて居らず、他人のカンダタは信頼を寄せていた事に。
父の事を知っているつもりで居た…だが普段の行いに目を奪われ、父の偉大さを忘れていた事に。
しかし聞いた事を後悔する答えが返ってくる。
思わず右手で頭を押さえ首を振る。

「父さん…」
いい加減すぎる父に何かを言おうとしたが…
「ティミーこれで良いんだ!」
一番の被害者カンダタが、ティミーの言葉を遮り話し続ける。
「俺は戦力外になっていた…武器を無くした俺には何も期待出来ないだろ!だから盾として使われても良いと本気で思ったんだ…此処まで来て一旦町へ戻る事は出来ない。俺の事など使い捨ての盾と思い先に進むべきだと!」
「「そんな事出来る訳無い!」」
カンダタの台詞に、ティミーとアルルが同時に声を上げる。

「フッ…ありがとう2人とも。そうなんだ…お前もアルルも優しいから、俺の事を使い捨てにはしないだろう!そうなると武器のない俺はトコトン役立たずだ…町に戻れば、バラモス討伐を遅らせる役立たず…強行すれば、戦力にならない上、守らなければならない役立たず…だが偶然なのか必然なのか、直ぐ側に宝箱が!しかも旦那が中身は凄いアイテムだと言い切った!」
皆が黙ってカンダタの言葉を聞いている…
例外は少女ラーミアだけ…彼女はリュカ以外の者には興味が無いらしく、一心不乱に携行食を食べている。

「俺はアルル達と共にバラモスを倒し世界を平和にすると誓った。だったら宝箱は俺が責任もって開けなければならないんだ!何故なら、このままでは役立たず…そんな役立たずからの脱却に尽力せねば、俺は何時まで経っても役立たずのままだから!」
カンダタは魔神の斧を見せつけ微笑んだ。

「でも今の俺は違うぜ!勇者一行の仲間として活躍してやるからな!」
「カンダタさんは最初からずっと活躍してましたよ!役立たずじゃ無い!」
ティミーがカンダタの目を見て、力強く言い放つ。
「そうだよ、カンダタは役立たずなんかじゃ無いよ。身を呈してミニモンを守ってくれたお前は重要な戦力だよ」
そう言ってミニモンを自分の膝に乗せるリュカ。
皆の心に温かさが広がる…
もう彼等は家族なのだ。

すると突然、口の周りに食べ物を付けた少女ラーミアが立ち上がり、リュカに抱かれたミニモンを突き飛ばす!
「痛ー!な、何しやがる、このアホウドリ!!」
「ミニモン生意気!リュカに抱っこされて生意気!リュカに抱っこされるのはラーミアなの!」
そう言って強引にリュカの膝へ座る少女ラーミア。
思わず笑ってしまうアルル達…

敵本拠地で、食事をしながら爆笑する一行…
普通は常に深刻な雰囲気に包まれるのだろうが、何故だかこのパーティーには無縁である。
全てこの家族の家長の所為だろう…
良くも悪くも、この家族のお父さんは影響力が大きいのだ。



食事も終わり少し離れた所でティミーが見張りに付くと、袋小路では各々が身を寄せ睡眠を取る事に…
モニカと共に毛布に包まるカンダタが、彼女にだけ聞こえるかの様に小声呟いた。
「最近やっと分かってきた…何であの旦那がこんなにモテるのかが…」
「今更かい?…アタイは大分前から気付いてたよ。あれだけの良い男だからねぇ…」
「モニカ…俺を捨てないでくれよ…あの人が相手じゃ勝ち目が無いから」
「ふふふ…安心しな、アタイの男の趣味は最低なんだよ!」
「あぁ…良かった。だったら俺に勝てるヤツは居ねぇぜ!」
「ふふふ…」「ははは…」
2人して思わず笑ってしまう。

すると…
「耳障りだから、こんな状況でイチャつくんじゃねー!」
と、リュカが小声で文句を言ってきた。
「アンタが言う台詞じゃない!」
見張りのティミーが突っ込んでくる。
自分の役目を忘れない子だ!



 
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